037・激レアお兄さん、どうやらとってもハーレムみたいです!
翔子さんの言っていた男性探索者(激レアさんですよ!)を目指して、ボクたちはガヤガヤとダンジョンを駆け進みました。
途中で出てくるタイヤはザクっとしたりグサっとしたりポカポカしたり水球でドーンとしたり、
小さいコウモリみたいな敵は、分割した小水球で包んだりイナリ様が捕まえたりしてから、ザクっとしたりグサっとしたり、
「ブルルルルルルルルゥン!!」
一台だけ、軽トラみたいな敵もフルスロットルで突っ込んできたのですが、露璃さんが水球を床一面に広げて凍らせると、
「ブルルルルルルルルゥン!?」
ツルっと滑ってグルングルンとスピンすると、壁にドーンとぶつかってそのままマナ石に変わりました。
「普通に交通事故じゃん……」
「さっきの軽トラ、まぁまぁのスピードだったね!」
「あ、軽トラはタイヤよりマナ石が大きいです!」
【ツユリ氏、発想力がすごいんだなもし】
【というか、特性と性格的には、いつも常に色んな使い方を考えてるんだろうよ】
さすが露璃さん!
素敵です〜♡
「うっ……! ……ふうっ。だんだん、耐えられるようになってきた……」
「ツユリ、毎回そんな死にかけの顔するの……?」
「ツユっち、ユメっちの笑顔に激弱すぎじゃない?」
露璃さんは、図書委員ですからね!
「そういえば露璃さんって、どうして本が好きになったんですか?」
「え!? えーっと……。その、昔から文字を読むのが好きで、それと、いろんな空想のお話に触れるのが好きだったから……」
「いや、今聞く話??」
「でも、確かにツユっちって、頭良さそ〜! あたし、今度の期末で赤点取ると大会前に補習あるから、ヤバいんだよね〜……」
「アンタはマジでヤバそうだね……」
「ボク、今度のテスト期間中は、露璃さんと一緒にお勉強会をしようかなって思ってるんですけど、せっかくなので皆でお勉強会をしませんか?」
「ほんとー! やるやるー!! ツユっち、あたしのことも、よろしくお願いしぁーっす!」
「う、うん。七奈さんも、大丈夫?」
「あー、うん。ぶっちゃけアタシも理数以外はちょいヤバだから、ツユリに教えてもらえるんなら猫に小判だわ」
「うん……。ちなみにそのことわざ、使い方間違えてるよ?」
「え、マジで!?」
ということで、ユメヒコ組のお勉強会の開催が予定されました!
やったぁ〜!
あ、ついでに。
皆さんそれぞれのお友達とかも連れてきて、皆でお勉強するといいかもしれませんね!
「皆で、楽しく仲良くたくさんお勉強できるなんて、とっても素敵だと思います〜♡」
「ひうっ……!? さ、さっきより眩しい……!」
「ユメヒコ、どっからその笑顔出してんの」
「ユメっちって、ニコニコしてるときが一番可愛いよね〜」
さて、そんなことを話しながら進んでいたら、鉄骨の柱の向こうに、先のほうを歩く集団が見えてきました。
あ、どうやら追いついたようです!
「全部で5人いますね! こちらもイナリ様を合わせたら5人いるので、おあいこですね!」
「コンコーン♫」
すると、イナリ様がふよふよーっと飛んでいって、あちらのパーティーの背後でコンコンと鳴きました。
一番最後尾を歩いていた黒髪ロングの女性が振り返り、驚いたような表情を浮かべます。
そしてその隣の白髪ショートカットの女性も振り返り、赤メガネの奥の目をキラリと輝かせました。
「こら、イナリ様! 帰っておいで!」
ナナさんが、振り返った女性たちに短いお手々を振っていたイナリ様を呼び戻します。
すると、向こうの女性たちもボクたちに気づいて、さらに驚いたような表情に。
「あれ? あのセーラー服って、もしかして草薙中の子たち?」
「…………学ラン姿のチビ男子までいるじゃん。……けっこう可愛い」
白髪の女性が、赤メガネをクイッと上げました。
黒髪ロングお姉さんが、前を歩いていた他の3人を呼び止めます。
「中原くん、北海さん、西嶋さん」
「ん? どうした、東野……、って、子ども?」
中原くん、と呼ばれた男性が振り返ると、なるほどこれはイケメンですね!
翔子さんが興奮していたのも分かります!
「こんにちは、初めまして〜! ボク、ユメヒコっていいます! そちらのお兄さん、お名前は何ですか!」
「俺? えっと、中原 アタルだけど……」
「アタルさんですか! 素敵です♡ 実はボクたち、ぼよんぼよんしてたらアタルさんたちが見えたので、挨拶に来たんです!」
「ぼよんぼよん……?」
すると、アタルさんと一緒に一番前を歩いていた、金髪ポニテお姉さんが「変な奴らだなぁ……」と言いました。
「つーか、なんか怪しくないか、この子たち。中坊たちだけだし、……どこかに悪い大人が潜んでんじゃないのか?」
「おい、北海。失礼なことを言うんじゃないよ。ごめんね君たち、コイツは思ったことがすぐ口に出ちゃうだけで、悪気はないんだ」
「けど、組み合わせは不思議だよね。真面目そうな子にギャルっぽい子に、そっちのキミは落ち着きのなさが運動部っぽいよね。共通点がなくない?」
「西嶋まで……」
薄い茶髪のショートボブお姉さんも、唇に手を当ててボクたちを見つめてきています。
ふむ。
なるほど。
「それはボクたちが、運命を引き当てて仲間になったからですね!」
「運命?」
「はい! あと、悪い大人はいませんが、頼れる大人は別で頑張ってくれてます! 斎藤さんと深森さんです! 深森さん、白樺さんたちのためにアネゴをやってるんですよ〜」
「アネゴ……、って、なんだ?」
北海さんが、首を傾げました。
赤メガネの女性が、小馬鹿にしたように言います。
「いわゆる、ヤンキーとかのまとめ役のことでしょ」
「それは分かってるよ、南郷。ワタシが言いたいのは、どういう意図の紹介の仕方なんだってことだ」
「意図とか、ないんじゃない? たぶんこの男の子、マジで思ったことをそのまま口に出してるよ。アンタ以上だ」
「はぁっ……?」
北海さんが、余計に首を傾げます。
黒髪ロングお姉さんの東野さんが、「まぁまぁ」と執り成しの声を出しました。
「全然、悪い子たちじゃないと思うよ。本当に悪いことを考えてたら、もっとコッソリ私たちに近寄ってきてたと思うし」
「それは確かに。わたしも、その金色キツネが無警戒に呼びかけてきたからには、少なくとも敵意はないと認めるよ」
白髪赤メガネの南郷さんは、イナリ様に向かって「おいでおいで〜」と手招きします。
イナリ様は嬉しそうに「キューン」と鳴くと、南郷さんのところに行って、手の上にポスッと座りました。
「ほら、可愛い」
「可愛いから、なんだっていうんだよ……」
「北海」
「うっ」
アタルさんが、少し険しい顔で北海さんを見つめると、北海さんはバツが悪そうに顔を背けました。
「まったく……。すまないね、君たち。たぶんだけど、先行する俺たちが変に警戒しないように、わざわざ声をかけてくれたってことなんだろう?」
「? いえ! 男性の探索者って珍しいから見てみたかったのと、アタルお兄さんがイケメンだったので、お話してみたかったんです!」
「そ、そうなのかい? 君、変わってるね……?」
「え、でも。ダンジョンに潜ってる男の人って、珍しいじゃないですか?」
ねぇ、皆さん。
ボクが、ボクの仲間たちに振り返ると、3人揃って深く頷きました。
「コンコーン」
あ、イナリ様も頷いてますね!
「というわけなので!」
「どういうわけだ……?」
「アタルお兄さんに、質問したいことがあります!」
「いやまぁ、良いけど」
ボクは、ボクたち皆が気になっていることを、聞くことにしました。
「アタルお兄さんって、この中のどなたとお付き合いしてるんですか!」
「へ……!?」
すると、アタルお兄さんだけでなく、他の4人も揃ってポカーンとしました。
はて?
「ちょっとユメヒコ。何言ってんのさ」
「ナナさん」
「見たら分かるじゃん。どなたかとかじゃないって。全員と付き合ってるよ。ハーレムってやつだよ」
「はっ!?」
「なるほど!」
「なるほどじゃないよ!?」
アタルお兄さんが、慌てたように首を振りました。
「俺とコイツらは、そんなんじゃないよ!」
「えっ……」
「ムッ……!」
「ふーん……?」
「はあっ!?」
「幼馴染というか、昔からの腐れ縁というか……! いつも俺が面倒見てきたけど、別に、そういうんじゃあ……!?」
すると突然、北海さんがアタルさんに飛びかかりました。
「中原ー! 誰が誰の面倒見てるって!?」
「なんだよ! 俺がお前らのだよ!」
「コイツ! 中坊の前だからってチョーシ乗りやがって!」
「乗ってねーよ! てゆーか今俺に乗ってんのはお前のほうだろ! 良いから降りろよ!?」
「アタルくーん? 私も、さっきの発言は少し気になるなー?」
「アタル。くらえっ」
なんと、西嶋さんと南郷さんまでアタルさんに飛びかかっていくではありませんか。
アタルさん、3人にのしかかられて押し倒されました。
そのまま、3人にもみくちゃにされています。
「わっ、わっ、すごいことになってる……!?」
「うわー! おしくらまんじゅうじゃ〜ん!」
露璃さんがアタフタして、翔子さんはワクワクしています。
そして東野さんが「み、皆、落ち着いて!」とアタルさんたちを宥めています。
「なんだ、やっぱハーレムじゃん」
「コン」
七奈さんとイナリ様は頷き合いました。
なるほど。
「皆さん、いっぱい仲良しなんですね〜! 素敵♡」
【いや、その感想はおかしい】
しばらくして、ナナさんの緋扇でパタパタ仰いだら、清涼な風を受けて皆さん落ち着いたのでした。




