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031・ナナさんのイナリ様、ジャラジャラポイっと大吉です!


「これ、イナリ様のおみくじって、他にどんな効果があるのかな……?」


 ナナさんが、しげしげとイナリ様を見つめます。


「キューン?」


 イナリ様も、ナナさんを見つめ返して首を傾げました。


「えっと、ユメヒコ君のウィンドウで、見れたりしないかな?」


 どうなんでしょう?


 試しに、編成コマンドのナナさんのアイコンをポチっ、スキル一覧の「請願御神籤」をポチっと押してみます。




『請願御神籤:消費MP8』


『全部で100本のクジからランダムで引いた1本の効果が発動する。使用したクジは消滅し、探索中は復活しない』


『効果の強さは下から凶、末吉、小吉、中吉、大吉の5種類。

 効果の種類は、


0、目くらまし

1、光の剣

2、光の雨

3、攻めの加護

4、守りの加護

5、攻めの呪縛

6、守りの呪縛

7、癒しの直光

8、恵みの散光

9、光の障壁


の10種類』


『MP消費の一部を、クジを空費することで賄うこともできる』




「…………??」


「は? どゆこと??」


「えっと、色んな効果がランダムで出るけど、一回の探索中に同じ効果は出ないよ、……ってことかな? それか、同じ効果もあるけど、同じ棒は出ないよってことかな……」


「なるほど……?」


「あと、1回のMPの消費量が多めだけど、さっきみたいな効果が出せるなら、8でも安いのかな……。けど、凶もあるってことは……。それに、空費……?」


「やば。ツユリこれ、一瞬で見て分かんの?」


「え? あ、うん。けど、実際に試してみないと、詳しい効果は分からないね」


「ふーん……。とりあえず、もっかい引いてみよっか。イナリ様」


「コンコン!」


 イナリ様が再びジャラジャラと箱を振り、逆さにして棒を出しました。


 すると、ナナさんの緋扇の鈴がチリンと鳴り、ボクのウィンドウのログに、


『金村七奈は、8番のおみくじを引きました』


『赤線2本。吉凶判定は、末吉。恵みの散光がほんのり出ます』


 と流れました。

 ボクたちの体を淡い光が包んで、すぐにふわっと消えました。


「……え、終わり?」


「みたいだね……」


【たぶんそれ、全体回復的なやつだぞ】


【誰もケガしてへんから、使い損やで】


「なんだか、少しだけ体が軽くなったような気がします!」


「え。あー、回復系だったのかな」


「そうなん? イナリ様、もっかい!」


「コンコン!」


 さらにおみくじを引くと、今度は9番の3本線が出て、ボクらの周りを光の壁が覆いました。


「すごっ。スノードームみたいじゃん」


「ちゃんと触れるね。防御用の結界ってことかな」


「カチカチです! 斎藤さんの腹筋より硬いです!」


 しばらく待っていると、光の壁はチカチカっと切れかけの蛍光灯みたいな光り方をしたあとに消えました。


「よーしイナリ様、もっかい……」


「待って、七奈さん。ユメヒコ君、七奈さんの残りMPを見せてくれない?」


 露璃さんに言われて、ボクはあらためてウィンドウを見てみます。




・金村 七奈 15歳

職業:輝きの巫女・レベル11


ダンジョンステータス↓

HP:118 / 118

MP:123 / 164




「げっ。MP、けっこう減ってない?」


「減ってますね!」


「おみくじ1回でMPを8消費するし、それにたぶん、イナリ様を出しておくのに継続的なMP消費があるんだと思う。私の液体操作も、水を操ってる間は一定時間ごとにMPを使っちゃうし」


「そうなん? てか、やばー。これ、ソシャゲのガチャが楽しくて引き過ぎちゃうのと同じやつじゃん……」


「ガチャ、楽しいですよね!」


『ガチャ最高♡ ガチャ最高〜♡』


「けど、まだおみくじ3本しか使ってないよ? 全部で100本あるんでしょ? 全然使い切れなくない?」


 確かに!


 100本使うには、全部でMPが800必要ですもんね!


【……ユメヒコ氏が掛け算を間違わなかっただけで、少し感動してる自分がいるんだなもし】


【奇遇やな、ワイもやで】


 さすがのボクでも、これぐらいならできますよ!


【じゃあ、7×8は?】


 54です!!


【うん。また今度ツユリちゃんに九九を教えてもらいな】


 はい!!!


「そのことなんだけど。七奈さん、スキルの説明文にあった空費を使ってみてくれない?」


「くうひ? って、どうやんの?」


「たぶん、頭の中で意識しながらおみくじを引いたら、使えると思う。それか、声に出しながら引いてみるか」


「ふーん。イナリ様、試しに空費で引いてみて」


「コン!」


 ジャラジャラポイっと引いた棒は、4番の3本線でした。


『金村七奈は、空費で4番のおみくじを引きました』


『赤線3本。吉凶判定は、小吉。守りの加護が発動します』


『防御力と抵抗力が上昇します』


 これは、防御バフってことですね!


「ユメヒコ君、七奈さんの残りMP、どうなってる?」


「えーっと、さっきより5減ってます!」


「お、確かにMP消費が少なくすんでるんじゃん!」


「……けど、このログは……」


『空費により、7番の2本線、6番の1本線、8番の2本線、0番の1本線、5番の3本線、2番の5本線を消費しました』


「え、おみくじ6本も消えてるじゃん!?」


「それに、2番の5本線も消えてる。2番だから、さっきの光の雨の、……たぶん一番強いやつ」


「うっそでしょ!? えー!? マジで!?」


 ナナさんがかなりのショックを受けた様子で、ボクのウィンドウを見つめます。


「けど、0番と6番の1本線、つまり凶のやつも消えてますよ!」


「うん。だからこれ、ある程度空費で棒を削っていく前提のスキルなんだと思う」


「ええ? ……あー、なるほど。MPケチって棒をガンガン削っていったら、MP切れる前に全部使い切れるってこと?」


「それプラス、凶とか末吉とかの効果の弱い棒をうまく間引けたら、探索の後半に強いのが引きやすくなる、とか。空費を使うかどうか、どのタイミングで使うかとかを、よく考えなきゃ……」


「……ほえー、すごいね」


「うん。上手く使ったら、すごく面白いスキルだと思う」


「いや、そうじゃなくて。ツユリが」


「へっ? 私?」


「うん。ちょっと見ただけで、すぐにそこまで分かるんでしょ? 伊達にメガネじゃないね、賢い」


「た、確かに伊達メガネではないけど……!? い、いや、そういう意味じゃないよね……」


「露璃さんは、賢いのにメガネまでかけてて素敵ですよね〜」


「ゆ、ユメヒコ君まで……!」


 ちょっと慌てる露璃さん。

 そんな露璃さんに、イナリ様がふわふわと寄っていきます。


 そして露璃さんのほっぺに鼻先をツンツンとしてから、ナナさんの側に戻りました。


「……ふーん。よし、とりあえずこれで、おみくじの引き方は分かってきたね」


「そ、そうだね……」


「それなら、いつまでも入口近くで止まってないで、そろそろ奥に進んでみない? 一番奥にいるボスを倒したら、クリアなんでしょ?」


 そう言うとナナさんは、腰に吊っていた強化プラの日本刀を抜きました。


 ナナさんは、楽しそうにニヤッと笑います。


「イナリ様だけじゃなくて、今度はアタシの戦うところも、見ててよ」




 ▶︎▶︎▶︎


 プラ刀装備のナナさんを先頭に、ボクたちはてくてくと歩いていきます。


「これ、プラスチックだけあって、竹刀より全然軽いね。けど、これでほんとに斬れるのかな?」


 ナナさんは、左手で刀の一番下のところを持って、片手で何度か振りました。


 ヒュンッ、ヒュンッ、と風を切る音が鳴って、とても格好良いです。


「うわ〜、シュパッと振ってピタッ、となってますね!」


「面打ちの素振りは、死ぬほどやったからねー。中学に上がってからはたまにしか振ってなかったけど、これだけ軽けりゃヨユーでしょ」


 そうしていると、少し先の噴水の泡の中から、ぽよ〜んと何かが飛び出しました。


 バレーボールサイズの、青くてぽよぽよした丸いやつです。

 さっきのが玉転がしの大玉だったので、こちらは小玉というところでしょうか。


 青い小玉は、ぽよんぽよんと跳ねながら先頭に立っているナナさんに迫ります。


 ナナさんが、左手で持ったプラ刀を、すっと目の前に構えました。


「ナナさん!」


「めぇーーん!」


 飛びかかってくる動きの小玉を、ナナさんがプラ刀で迎え打ちます。

 プラ刀が小玉にぐにょんと沈み込み、小玉は反対方向に弾かれました。


 すごい!

 見事に命中です!


「んーー……、この感触なら」


 ナナさん、今度は両手でプラ刀を持ちます。


 そして、怯んだようにその場でぽよんぽよんと跳ねる小玉に向かって、たったったんっと踏み込むと、


「めぇぇええええんっ!!」


 両手で大きく振りかぶったプラ刀を、バチーーンと小玉に叩きつけました。


 真下に叩き落とされた小玉が反動でばい〜んと高く跳ね上がり、耐えきれないようにパァンと割れて、マナ石になりました。


「うん。斬るってか、叩く感じだね。けど、ちゃんと手応えはあるし、しっかり当てたら問題なさそうじゃん。……お?」


 同じ噴水から、さらに2体の小玉が飛び出しました。

 ぽよぽよ跳ねながらナナさんに迫ります。


「七奈さん。1体は私が」


「オッケー。左をお願い」


 露璃さんの水球がひゅるるっと動いてリボンのようになり、ぽよぽよ跳ねていた小玉にぐるぐる巻き付きます。


 小玉はそのまま落下して地面の上でぐにぐに動きますが、露璃さんの水リボンに抑えつけられて動けません。


「はああぁぁーーっ!」


 もう1体の小玉を、ナナさんは先ほどのような鋭い振り下ろしで打ち据えます。


 ばよ〜〜んと跳ねる小玉。

 その間にナナさんは、腰に吊った鞘にプラ刀を戻します。


「これならどうかな。……居合斬り!」


 ズパンッ!

 っと、目にも止まらぬ速さでプラ刀を抜き放ったナナさん。


 落下してきた青い小玉を一刀両断しました。


 す、すごい……!!


「やった、スキル使ったら斬れるじゃん」


「コンコーン!」


「うん、お待たせツユリ。えいっ!」


 ナナさん、露璃さんが抑えている小玉に駆け寄ると、逆手に持ったプラ刀の切先を小玉に押し付けて体重をかけます。


 ぐにぃ〜〜っと凹んだ小玉でしたが、振り上げてからさらに強く突き込むと、耐えきれないようにパンッと割れてそのままマナ石になりました。


「突き込めば、刺すのもできるっぽいね」


「ナナさん、なんでもできちゃいますね! 素敵♡」


「お! 素敵スマイルいただきじゃん! ……あ、今なら良いの引けそうな予感! イナリ様、空費でゴー!」


「え、七奈さん!?」


「コンコン!」


 すると、ナナさんがスカートのポケットに突っ込んでいた緋扇の鈴がガラーン、ガラーン、ガラーンと鳴りました。

 それからジャラジャラ、ポイっと棒が出てきます。


『金村七奈は、空費で5番のおみくじを引きました』


『赤線5本。吉凶判定は、大吉! 攻めの大呪縛が発動します!』


 あ、大吉です!

 やったぁ!!


【あー、いや、これは……】


 ……?


 あれ?

 何も起きませんね?


「えっ、イナリ様? 今の大吉だったよね?」


「コーン……」


「ユメヒコ君、ログはどうなってる?」


 ウィンドウを見てみると、


『しかし、対象として選択できる敵がいません』


()()となります』


「えっ!? 不発とかあんの!?」


「みたいですね!」


「すぐに発動するから、相手がいないとダメってことみたい……。あ、しかも……!」


『空費により、9番の4本線、9番の3本線、8番の3本線、0番の2本線、3番の5本線、4番の5本線を消費しました』


「5本線、2つ消えてますね!」


「……げっ!? てことは、大吉無駄撃ちだし、他にも大吉2本も消えてんじゃん!? うわー!? ガチでしくった!!」


「な、七奈さん……!」


 ものすごいショックを受けた顔で天を仰ぐナナさんと、同じようにビックリした顔の露璃さん。


 さらにはイナリ様も「あちゃー、ガッカリ」みたいな動きをしています。


 うーん、仲良しですね!


【考えうる限り最大級にハズレなんだなもし】


【これがこのジョブの怖いところだよな】


「でも、ナナさんの予感通り、大吉が出ましたね! ナナさん、すごいです!」


「このザマでも褒めてくれんの!? うわー、ユメヒコ、やばー……」


「けど、七奈さん。今のは勢いに任せた無駄遣いだから、今後は気を付けようね」


「うっ、ツユリは厳しい……。けど、はーい。さすがに今のは言い訳できないわ……」


 しょぼんとするナナさんの肩を、イナリ様がポンポンと叩きます。


 それから、イナリ様の耳がピクピクと動いたかと思うと、ボクらの背後のほうにふよふよと飛んでいきました。


「イナリ様、何かあるのですか?」


 ボクが訊ねると、イナリ様は「コーン」と頷きました。


 そして、




「げっ、マジでいやがった……。本当に、あのあとすぐに来てるとは……」


「あはは〜、念のために来てみて良かったね〜」


 ボクたちの後方から、先ほどの赤髪のお姉さんたちが、姿を現したのでした。


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