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030・ナナさんのイナリ様、可愛くて賢くてめちゃ強いです!


 ナナさんが呼び出したキツネは、ヌイグルミみたいに可愛らしい金色キツネです。


 短い手足と、体と同じくらいの長さ(0.2ユメヒコです)のモフモフ尻尾が目立ってます。


 背中には六角柱の木箱を背負っていて、中からはガラガラという音が聞こえてきます。


 ナナさんの周りでふわふわ浮かんで手足をパタパタさせたり、ナナさんのふわふわの金髪に擦り付いたりしていますね。


「ふふっ、こら、くすぐったいでしょ」


「コンコーン?」


「そうそう。少し大人しくしてて」


「キューン」


 ふと横を見ると、露璃さんが目をキラキラさせたキツネを見つめていました。


「か、可愛い……!」


「そのキツネのお名前は、なんというのですか?」


「アタシはイナリ様って呼んでる。こうやって呼び出すと、基本的にはアタシの周りをふわふわ浮かんでるんだけど、たまに勝手にふらふら飛んでくときもある」


「なるほど!」


「声を掛けたら戻ってくるし、ペンとかスマホとか化粧ポーチとかを取ってきてもらうこともできるよ」


「お利口さんなんですね〜」


 ナナさんが手のひらを上に向けると、キツネのイナリ様がその上に乗って小さく丸まりました。


「それでアタシのジョブって、この子を呼ぶこと以外できることがないんだけど」


「ほほう?」


「……この子、ダンジョンでは役に立つのかな?」


 ふむ、なるほど。


「絶対に役に立ちますよ! だって、ナナさんと同じくらい可愛いですからね!」


「はっ?」


 ナナさんが、ポカンとした表情になりました。


「……ユメヒコ、アンタさぁ。まさかとは思うけど、そんなセリフを皆に言い回ってたりしないよね?」


 すると露璃さんが、無言でナナさんを見て、すごく申し訳なさそうな表情でコクリと頷きました。


「ふーん……。こりゃあ、たいへんだ」


「うん、ほんとに……」


「ダンジョンってたいへんですよね〜。死んだら死んじゃいますし」


【そういう話じゃ、ないんじゃないか……?】


【ユメヒコ氏、恐ろしい子! ……なんだなもし】


 けど、レベル1のままだと戦うのもたいへんかもしれません。


 ここは、余っていたソウルをいくつか使っておきましょう。

 ぽちぽちっとな。


『金村七奈の輝きの巫女がレベル11になりました』


『ジョブスキルとして、「請願(せいがん)御神籤(おみくじ)」「稲荷様(いなりさま)探知(たんち)」を修得しました』




・金村 七奈 15歳

職業:輝きの巫女・レベル11


ダンジョンステータス↓

HP:118 / 118

MP:164 / 164

攻撃力:68

防御力:57

魔法力:121

抵抗力:79

素早さ:61




 ぐーんと強くなりました!

 いぇいいぇーい!


「え、こんなの見えるんだ」


「ステータス、満遍なく高いね……! すごい……!」


 ナナさんと露璃さんが、ウィンドウに顔を寄せ合って見つめています。

 そしてふいにほっぺた同士がちょんと当たって、2人がバッと離れました。


「ご、ごめん……!」


「う、ううん。こちらこそ……」


 2人とも、すっかり仲良しですね!


 そうだ、ついでに装備も整えておきましょうか。


 ボクは、いつものヘルメット(ちゃんと後頭部に名前を書きました)と、新しくゲットした如意旗を装備します。


 露璃さんには、いつものヘルメットと湧き出し水筒、そしてナナさんには、新しいヘルメットと、


「これとか、似合いそうですね!」


 先日ガチャでゲットした、鈴鳴り緋扇を装備してもらいます。


「わっ、急に扇が出てきた!? それに、なんでヘルメットが……?」


「それ、ナナさんの分の装備品です!」


「いや、扇はともかくメットは邪魔でしょ……。それに、髪型崩れちゃうじゃん」


 そう言うとナナさんは、ヘルメットを脱いで返してきました。


「あの、七奈さん、ダンジョンって本当に危ないから、被ってたほうが良いと思うよ……?」


「じゃあ、イナリ様に被せててよ。アタシは、イヤ」


 ふむ、それなら仕方ありません。

 まぁ、ボクとか露璃さんよりは防御力も高いようなので、メットがなくてもそんなに心配はいらないでしょう。


「それより、この、強化プラの日本刀ってのは、誰か使ってるの?」


「いえ、それもまだ使ったことのないやつですね! 装備しますか?」


「うん。アタシ一応、剣道してたから。少しは使えると思う」


 ということで、ナナさんは緋扇とプラ刀を装備することになりました!



『金村七奈は「鈴鳴り緋扇」「強化プラの日本刀」を装備しました』


『アイテムスキルとして、「清涼な風」「居合斬り」を修得しました』




スキル↓

()えるっしょ?

子稲荷(こいなり)使役(しえき)

請願(せいがん)御神籤(おみくじ)

稲荷様(いなりさま)探知(たんち)

清涼(せいりょう)(かぜ)

居合(いあい)()




「スキルも、なんかいっぱい生えてきた」


「アイテムのスキルだね。それに、このスキルって……?」


「先ほどレベルを上げました! えと、「しょうがんおかみひし」と「いねにさまたんち」でしょうか?」


請願(せいがん)御神籤(おみくじ)」と、「稲荷様(いなりさま)探知(たんち)だよ、ユメヒコ君……」


「さすが露璃さん、難しい漢字もスラスラ読めちゃうんですね、素敵♡」


「ひうっ、まぶしい」


 するとナナさんが、ボクと露璃さんを交互に見た後、少しだけ唇を尖らせました。

 それからウィンドウに目を落とします。


「……ねぇ、ユメヒコ。こっちの着替えってボタンは何?」


「そっちは、今までボクがガチャで当てた衣装にお着替えできるボタンですよ。ほら」


 ボクが今まで手に入れた衣装の一覧を見せると、ナナさんはじっとラインナップを見つめます。


「ユメヒコさ、この中で、一番アタシに似合う衣装ってどれだと思う?」


「そうですね、ナナさんは背が高いので、このチャイナドレスとか似合うんじゃないでしょうか?」


「じゃあ、それ」


 ボクがコマンドをタップすると、ナナさんの姿がポンッと変わりました。


 おお、これは……!


「どう、ユメヒコ? 似合ってる?」


「めっちゃ似合ってます!!」


 ナナさん、真っ赤なチャイナドレス姿になりました。


 髪の毛がパンダの耳みたいなお団子になっていて、服はノースリーブで裾にスリットが入っているので、ナナさんのスラッと長い手足がすごくカッコ良く見えます!


「わー……! ほんとにすごく似合ってるね」


「はい! ばえてます! 素敵です〜♡」


「……ふふふ。ありがと♡」


『ピロリン♫ 金村 七奈の絆値が+1されました』


『絆値ボーナスとして、単発ガチャチケットを1枚進呈します!』


 さて、それではナナさんの服を元に戻しまして、


「え、戻しちゃうの?」


「さすがに、その格好でダンジョンは……」


「んーー。まぁ、分かった。メットは無理だけど、着替えはまたしたらいいもんね」


 ということでナナさんは、セーラー服姿で腰にプラ刀を吊って、手には緋扇を持った姿になりました。


「それじゃあ、ダンジョンに入ってみましょうか!」


「よし、行こっか」


「うん」


 ということで、ボクらは新しいダンジョンに突入したのでした。




 ▶︎▶︎▶︎


 新しいダンジョンは、なんだか泡泡したところでした。


 大きな公園というか、高低差のある遊歩道というか。

 歩道と階段で繋がったいくつもの広場に、これまた様々な大きさの噴水が置かれているのが見えます。


 そして、噴水と言いましたが、水ではなく泡が噴き出しています。


 噴水下の水場も泡泡でいっぱいになっていて、周りの地面にまでこぼれた泡がパチンパチンと弾けて消えています。


 他にも、葉っぱの部分が泡になった木が歩道の横に立っていたり、シャボン玉みたいな泡がそこらへんにふわふわ浮かんでいたり、とにかく泡だらけのダンジョンですね。


「すごっ。ダンジョンって、思ってたよりキラキラしてんのね」


「なんだか、メルヘンの世界みたいだなぁ……!」


 浮かんだ泡でキラキラしている場所なので、露璃さんとナナさんの目も心なしかキラキラしています。


 太陽光が反射して綺麗ですもんね!

 しかし、ダンジョン内で太陽……?


【それはもう、そういうもんだから】


【暗いステージばかりだと、女性人気が落ちるんだなもし】


 なるほど!

 ゲームのお約束というやつですね!


「あ、大きな泡が漂ってきたよ」


 露璃さんの頭の上に大きなシャボンがふわふわ寄ってきて、パチンと割れました。


 すると、露璃さんの鼻がひくひく動いたかと思うと、


「え、この匂いって……、ふわぁっ……」


 露璃さんの目が、急にトロ〜ンとなって、足がフラフラし始めました。


「うわっ、なにこれ、酒臭っ!?」


 確かに!

 斎藤さんの飲んでる缶ビールみたいな匂いの、強いやつです!


【あー、酔泡トラップか】


【アルコールというか、それっぽい匂いで混乱状態にしてくるやつだ】


「まさか露璃さん、この匂いで酔ってしまったのでしょうか!?」


「はっ? それ、ヤバくない? ちょっとツユリ、扇いであげるならしっかりしな」


 ナナさんが緋扇を開いて、露璃さんをパタパタと扇ぎます。


 すると、露璃さんの目がハッキリして、パチクリしました。


「……はっ!? あ、あれ、ここはどこ? 私は何を……?」


「露璃さん、ほわほわしてましたよ!」


「え、え、ほんと?」


「マジマジ。ヤバい顔してたよ」


【清涼の風の混乱回復効果で、元に戻ったんやな】


【ツユリ氏、アルコール臭に敏感なんだなもし】


「そ、そんな顔してた……!? は、恥ずかしい……!」


 露璃さんが顔を真っ赤にして、手で隠してしまいました。


「大丈夫ですよ! 先ほどの顔でも露璃さんは可愛かったですよ!」


「余計に大丈夫じゃなくなった……!?」


「ツユリが茹で蛸みたいになってる……」


 すると、また大きな泡がこちらに漂ってきます。


「ん、あれも危ない感じ? イナリ様、お願い」


「コンコーン!」


 ナナさんのキツネ、イナリ様がふよふよ〜っと飛んでいって、漂ってくる近くの泡を体当たりでパチンパチンと割っていきます。


 すごい!

 あんなに遠くまで飛んでいってます!


「30メートルぐらい先まで離れていけるんだね」


「そうそう。アタシの目の届かないところには行きたがらないけど、見えてるならあれぐらい飛んでいける」


 近くを漂う泡をあらかた割り終わると、イナリ様は戻ってきました。


 割れた泡で濡れた体をぶるぶるぶると振ると、背中の木箱からガラガラと音がしました。


「ナナさん、このイナリ様の背中の箱って、何が入ってるんですか?」


「え、知らない。音はするけど、そういうもんじゃないの?」


「イナリ様、ちょっとこちらに」


「キューン?」


 ふよふよと寄ってきたイナリ様にお願いすると、背中の木箱を貸してくれました。


 振ってみると、ガラガラというか、ジャラジャラというか、絶対何か入っている音がします。


 それに、箱の上蓋のところには、小さな穴が空いています。


 ……あ、分かりました!


「ちょっと開けますね。えいっ」


「えっ!? あ、ほんとに開いた……!?」


 六角柱の木箱の上蓋を取ると、中に細い棒がたくさん入っていました。


 棒の先端には、0から9までの数字と、数字の下に1本から5本の赤い線が引かれています。


「これって、おみくじの箱なんじゃないですか?」


「おみくじ?」


「コンコーン!」


 イナリ様が嬉しそうにコクコク頷いています。

 それからボクのほっぺに鼻先をスリスリしてきました。


「あ、じゃあ七奈さんの請願御神籤ってスキル、このおみくじ箱を使うってこと?」


「そうなの? これ、おみくじ箱だったんだ……」


 数えてみたところ、棒は全部で100本ありました。


 数字は、0から9で10本ずつ。

 赤線の数は、各数字ごとに1本が1つ、2本が2つ、3本が4つ、4本が2つ、5本が1つです。


「ありがとうございました、イナリ様」


「コンコーン」


 ボクは、数えた棒を箱に戻してイナリ様に返します。


 イナリ様は、よいしょよいしょっ、という感じで箱を背負い直し、ナナさんのところにふよふよ戻りました。


「キューン?」


「え、なに、どしたの?」


 イナリ様が背中の箱をガラガラ揺らします。


「キューン!」


「おみくじ、引けってこと?」


「コン!」


「じゃあ、一回引こうか」


「コンコン!」


 イナリ様が背中の箱を前抱きにし、踊るようにジャラジャラと振り始めました。


「……あれ? 向こうから、何か近づいてきてない?」


 露璃さんの言葉のとおり、大玉転がしの玉みたいなのが、奥の方からボヨンボヨ〜ンと跳ねてきています!


 大きい!

 それに、けっこう重そうです!


「えっ。なにあれ。やばっ」


「水膜の傘で逸らす……? けど、意思があってこっちに来てるなら、どのみち倒さないとダメなのかな……」


「コンコン、コーン♫」


 そうしていると、ジャラジャラ踊っていたイナリ様が、おみくじ箱をくるっと逆さまに。


 1本の棒がぴょこっと出てくると同時に、ナナさんの持っている扇の飾り鈴が、カランカランと鳴りました。


『金村七奈は、2番のおみくじを引きました』


 すると突然、晴れているはずの空に、もくもくと黒雲が広がります。


 ぼよぼよ大玉が、ボクたちから10メートルぐらいのところまで迫ってきました。


『赤線4本。吉凶判定は、中吉。光の雨が降り注ぎます』




 ズダダダダダダダダダダダン!




 と、雷色の光の雨が、ぼよぼよ大玉のいるあたりに土砂降りのように降り注ぎました。


 うわー、すごい勢いです!?


「ひえっ、眩しい……!」


「え、これイナリ様がやってるの……!?」


 10秒ほど降り続いた光の雨がやむと、黒雲がすぅーっと消えて晴れました。


 ぼよぼよ大玉はすでにマナ石になっていて、ボクたちは揃ってイナリ様を見つめます。


「イナリ様、強くない……?」


「強いね……」


「めちゃ強いです!!」


 イナリ様が、嬉しそうに「コンっ♫」と鳴きました。


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