029・ナナさん、ポワンと探索者デビューです!
「てことでユメヒコ、アタシとも一緒に帰ろーよ」
「良いですね、帰りましょう!」
「あ、腕組んでいい?」
「はい!」
ナナさんが、ボクの右腕にむぎゅっと抱きついてきました。
残念なことにボクのほうが背が低いので、ナナさんが少し屈む形になりますが。
「ま、待って待って待って!?」
「どうしました、露璃さん?」
「な、なん、えっ、何が、どういうこと……!?」
露璃さんが、すごく混乱している様子ですね。
どうしたのでしょうか?
「あ、露璃さんも一緒に腕を組みますか?」
「ええええええっ!!?」
「ボクの、ほら、今なら左腕が空いていますので」
露璃さんは、ものすごく何かを言いたそうな様子で、ボクに向かって手を伸ばしかけたあと、
「っ…………、だ、ダメ!」
首をブンブンと横に振りました。
「ゆ、ユメヒコ君。その、そちらの人は、金村七奈さん、だよね?」
「そうです、ナナさんです!」
「えっと、何がどうしてどういうこと??」
「どうやらボク、運命の人らしいですね」
「ねぇねぇユメヒコ、この子は?」
ナナさんが、ボクと腕を組んだままひょいっと首を伸ばして、露璃さんを見ました。
「こちらは、ボクのクラスメイトで隣の席の善野露璃さんです」
「ふーん。ツユリね、よろしく」
「あ、あの、七奈さん」
「ん、大丈夫だよ。ユメヒコはアタシにとって運命の人だけど、ツユリにとってもそうなんでしょ?」
「へっ? あの……」
「だからそんな、警戒しなくて良いよ。お互い、仲良くしよ?」
「…………」
「……うーん。あ、そうだ」
ナナさんはボクの腕から手を離すと、するっとボクの反対側に回って、ツユリさんと腕を組みました。
「な、七奈さん!?」
「じゃあ、今日はツユリと腕組んで帰ろっか。ユメヒコとは、また今度ね」
「分かりました!」
「え、ええぇぇー……?」
露璃さんがとっても混乱した様子になっていますが、ナナさんに組まれた腕はそのままです。
2人とも、もう仲良しになったんですね!
「ねぇねぇ、ツユリ。今日はユメヒコとどこに遊びに行く予定だったの?」
「えっと、それは……」
「なになに、言えないようなとこなの? 意外とツユリって進んでるタイプ?」
「そ、そんなんじゃあ、ないけど……!?」
「じゃあ、教えてよ。そんで、アタシも一緒についてっちゃ、ダメ?」
「ボクたち、普段はダンジョンに潜ってるんですよ!」
「え、ダンジョン?」
ナナさんが、まつ毛の長いお目々をパチクリさせて、驚きます。
「ユメヒコたち、ダンジョンに潜ってるの!?」
「はい! ボクと露璃さんと、あと斎藤さんと深森さんも一緒です! 最近は、カラフルお姉さんズや白樺さんとも潜りました!」
「へぇー、よく分かんないけど、ユメヒコが楽しんで潜ってんのは伝わってくるね」
楽しいですよ、ダンジョン!
皆で一緒に潜ったら、いつもワクワクドキドキハッピッピーになります!
「てことはユメヒコも、体のどこかに紋章があんの?」
「ありますよ、ほら」
ボクは、学生服の前ボタンを外し、シャツをペロンとめくります。
おヘソの下のボクの紋章を見せたところ、2人が揃って「ひえっ」と言いました。
「び、び、びっくりするじゃん」
「ユメヒコ君、急にお腹を見せるのはダメだと思うよ……!」
「あ、ごめんなさい! ……そういえば露璃さんって、どこに紋章があるんですか?」
斎藤さんは右肩に握り拳のマークと、左の首筋には薄くなったト音記号のマークがあります。
深森さんは、右目の斜め下に、右目を囲むような形で三日月マークがあります。
けど、露璃さんの紋章は、見た記憶がありませんね。
「え、私の紋章……!?」
「えー、アタシも気になる。ツユリ、どこに紋章生えてんの?」
「そ、その……!」
露璃さんは、サッとお胸のあたりを手で隠しながら、お顔が真っ赤になってゴニョゴニョと恥ずかしそうにしています。
ふむ……。
「ひょっとして、あんまり見せたくないところにあるんですか?」
「う、うん……」
「それなら仕方ありませんね。恥ずかしいことを聞いてごめんなさい」
ボクはペコリと頭を下げます。
ナナさんが「ふーん」と言いました。
「じゃあ、アタシと似たようなもんだね。アタシも実は紋章生えてんだけど」
「あ、そうか、七奈さんも……」
「ん? うん、生えてる。アタシの場合、左のお尻に紋章があるんだよねー。だから、ファッション雑誌の撮影とかでも、あんまり際どい衣装はNGにしてるんだけどー……、ユメヒコが見たいなら、特別に見せてもいいけど?」
「七奈さん!?」
露璃さんが、アワアワとしています。
ナナさんは「ふふふ、どうする?」と、からかうような表情です。
「ボク、露璃さんの紋章もナナさんの紋章も見てみたいですが、恥ずかしいところにあるものを見るのは良くないと思います。なので、今度紋章の形だけ、イラストに描いて見せてくれませんか?」
「あー、そういう。まぁ、それならオッケーかな。ツユリもそれなら大丈夫?」
「え、あ、はい……」
では、また今度見せてくださいね!
「ところで、このあと皆でダンジョンに行きますか?」
「良いね、行こーよ」
「斎藤さんたちに電話してみますね!」
しかし、電話向こうからは、
「すまん、三馬鹿と白樺に今日も泣きつかれてな……。特に、……ぷはははは。ふ、深森のアネゴが、頼られ過ぎて見捨てらんねーっつって」
「おい斎藤、聞こえるんだが!?」
「アネゴー、斎藤サーン! 行きまっスよー!」
という楽しそうな声が聞こえてきています。
それなら仕方ありません。
「じゃあ、この3人で潜りましょうか。ナナさん、探索者登録はしていますか?」
「いや、紋章自体は中1の冬には生えてたけど、興味なかったから、してない」
「それならまずは登録からですね! 役場の統括局窓口に行きましょう」
3人でてくてく歩いて役場に着いて、統括局の窓口でナナさんも探索者登録します。
それからボクも、編成コマンドを開きました。
ふわふわ金髪の女の子がウインクしてるアイコン、つまりナナさんのアイコンをタップして、露璃さんとともに編成すると、
『UR:水竜舞姫・善野 露璃、UR:純心輝光・金村 七奈を編成しました』
という表示が出ました。
【おお、それか!】
【こらまた、ピーキージョブやで】
【けど、スキルの噛み合いは良いんだなもし】
前世の記憶たちも、ナナさんの加入を喜んでいますね。
ボクも嬉しいです!
ナナさん、素敵♡
「え、なに、どうしたの急に」
「ひうっ……、ユメヒコ君、たまに何の前触れもなく、あのニコニコ顔になるの……」
「ヤバ。自然災害じゃん。というか、ユメヒコがポチポチ触ってるアレ、何?」
ついでに、ナナさんのステータスを読んでみましょう。
・金村 七奈 15歳
職業:輝きの巫女・レベル1
資質
知力:40
心力:28
技力:24
速力:30
筋力:31
体力:41
指揮官適正:14
幸運度:11
特性↓
・好奇心
・存在感
ほうほう、なるほど。
ちなみに、露璃さんのステータスもあらためて確認すると、
・善野 露璃 15歳
職業:水の踊り子・レベル12
資質↓
知力:38
心力:40
技力:41
速力:22
筋力:10
体力:21
指揮官適正:29
幸運度:25
特性↓
・嗅覚鋭敏
・論理思考
となっており、前に見た時よりジョブレベルが上がっていました。
たぶんこれは、ネズミをまとめて300匹以上茹でたときにたくさん経験値が入ったからでしょう。
ダンジョンステータス↓
HP:82/82
MP:178/178
攻撃力:24
防御力:45
魔法力:126
抵抗力:63
素早さ:52
スキル↓
・臭気記憶
・液体操作
・液温変化
・水圧強化
そしてなにより、レベルアップに伴ってステータスが上昇しているのと、スキルが1つ増えていますね。
「へー、こんな風に見えてるんだ」
「あ、私、スキルが増えてる。……水圧強化、か」
「てゆーかツユリ、レベル高っ。2ケタいってんじゃん」
「露璃さんは、すごく頼りになるんですよ!」
「へー、やるもんだね」
というか、ナナさんもダンジョンに入る前にはソウルでレベルを上げておきましょうか。
えーと、ジョブレベル上昇のコマンドは……。
「クソが! 今日もまた稼げなかったじゃねーか!」
すると、少し離れたところから、大きな声が聞こえてきました。
おや、と思ってそちらを見ると、4人組の女性たちが、ベンチテーブルでコーラを飲みながら何かを言い合っています。
「なんでこう、お前らは、もっとキビキビ動けねーんだ! お前らと比べたら、カメのほうがまだ素早いぞ!」
「そんなこと、言われても……」
「そうよ! わたしたちだって頑張ってるんだからね!」
「何言ってんだ! あたしが一番頑張ってるに決まってるだろ! お前たちを引っ張って、一番前で戦ってんだからな!」
「それは、そうかもだけど……」
「けど、そんな言い方ってないじゃん! ね、アンタもそう思うでしょ!」
「いやいや〜、けどほら、リーダーの言うとおり、リーダーは一番前で敵をバッタバッタ切り倒してるわけだし〜、そのリーダーが指示を出してるんだから、やっぱ私らがもっと頑張らないと〜」
「もう! またアンタはそんな、のらりくらりとした態度して! アンタがデカいのは、この無駄に育った乳だけなの!?」
「あひ〜、揉まないで〜」
赤い髪の女性が怒鳴ってて、金髪ツインテールの方が青髪の方のおっぱいをこね回して、緑髪の方がオロオロしていますね。
あららー。
「げー、最悪。ガラ悪いのがいるじゃん」
「他の探索者の人たち、だよね? 揉めてるみたいだね」
「あんなの、近寄らないのが一番でしょ」
「ボク、ちょっとお話してきますね!」
「はっ!? あ、ちょっと……!?」
ボクはたたたっと駆け寄ると、リーダーらしい赤髪のお姉さんに声を掛けます。
「こんにちはーー!」
「へ? うわっ、激カワ男子だ!」
「お姉さん、そちらのパーティーのリーダーなんですか?」
「そ、そうだけど」
「すごい! リーダーって、たいへんですよね〜」
「そ、それほどでもないけど」
「しかも、一番前で戦ってるのにリーダーなんですか? それってとってもたいへんなんじゃないですか?」
「そうなんだよ! あたしは、コイツらの命と生活のために頑張ってるってのに、肝心のコイツらが……」
「それなら、皆で手分けをしたら、もっと頑張れると思いますよ!」
「な、なに?」
「えーーっ、と」
ボクが、びっくりした表情でボクを見ている女性たちを見回すと、一番おっぱいの大きい青髪の女性とパチっと目が合いました。
「じゃあ、今日からしばらくは、青いお姉さんが皆さんに指示を出してあげてください!」
「へ? ……ええ〜、私〜?」
「はい! 青いお姉さんが手分けしてあげたら、赤いお姉さんも他のお姉さんたちも、きっともっと頑張れると思うんです!」
「けど私、リーダーってガラじゃないし〜」
「それは、そうかもしれません! けど、手分けしてあげたら、赤いお姉さんはとっても嬉しいと思いますよ! ね、赤いお姉さん!」
「え? あ、ああ。まぁ」
「ほら! だから、お試しでやってみてください! 皆さんがたくさん探索できてたくさん稼げたら、たくさん嬉しいと思います! それに、ボクも嬉しいです!」
「君も〜?」
「はい!!」
ボクが、ニコニコとしたまま青いお姉さんを見つめると、「わ、分かったから、そんなキラキラスマイルで見ないで〜」と恥ずかしそうにモジモジし始めました。
「良かったですね、赤いお姉さん」
「え、あ、……ええ?」
「これで明日から、いっぱい頑張れますよ!」
「お、おう……???」
なんだかポカンとした様子の赤いお姉さんと、「私が、リーダ〜?」と首を傾げている青いお姉さん。
「それで、失礼しました!」
と言って、ボクは露璃さんたちのところに戻ります。
「……ユメヒコ、ヤバ」
「ユメヒコ君って、怖いもの、ないの……?」
「怖いものですか? ありますよ! 虫歯になったらイヤなので、食後にはきちんと歯磨きしてます!」
「そういうことじゃねーんだけど……」
「あ、そうだ。赤いお姉さーーん!」
「えっ、また行くん!?」
ボクは、赤いお姉さんから、このあと3人で潜るのに良さげなダンジョンの場所を教えてもらいました。
そして、3人で15分ほど歩くと、大きな噴水のある公園が見えてきて、そこの噴水のところに下級ダンジョンの入り口があるそうです。
「なんかバタバタだったけど、ここがダンジョン入口ってことね。よし、それなら。……おいで、イナリ様」
するとナナさんの目の前に、小さいキツネが突然ポワンと現れたのでした。
うわー、可愛い!!




