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027・深森さん、とってもとってもアネゴです!


 それから何度か小鬼たちと戦うと、だんだんと赤松さんたちの動きもスムーズになってきましたね。


 大群が出てきても慌てず、言われたとおりの動きをすることができています。


「深森サン、ちょースゴいじゃないっスか! パイセンたち、めちゃ戦えてますよ!」


「ははは、いやぁ、それほどでもないけどね!」


 深森さんもすっかり鼻高々の様子で、隣を歩く白樺さんと話をしています。


「またアイツは、すぐ調子に乗ってやがる」


「でも、確かに深森さん、すごいね。普段からもっと自信持ってたら良いのに」


 斎藤さんと露璃さんも、ボクと一緒に深森さんたちの後ろを歩いています。


 ちなみに、たまーに後ろから小鬼たちが駆け寄ってきてるときもあるんですが、


 露璃さんがアチアチ水球を顔にぶつけて怯ませている間に斎藤さんが素早く踏み込んで殴り倒す、という戦い方で特にピンチはありません。


 ボクもマナ石を拾ってポケットに入れています。


【こいつらのは、300円ぐらいだな】


 ジュース2本分ですね!

 かんぱい!


「おい深森! お前、俺たちが後ろをカバーしてんのも忘れんなよ!」


「分かってるよ斎藤! ありがとうな!」


「分かってんなら良いけどよぉー」


「というわけで、白樺ちゃん。斎藤たちがいないときは、キミが後ろの警戒しないとなんだけど。キミ、回復以外なら何ができるの?」


 確か、白樺さんのジョブは、祈祷師でしたっけ。


 そして白樺さんは、スキーの時に持つ棒みたいな長さの細長い杖を装備しています。


 あれって、「棒で叩く」のスキルが使えるんでしょうか?


「ウチはー、回復のほかは、味方の攻撃アップ、防御アップ、速度アップ、敵の攻撃ダウン、防御ダウンができるっス」


「へぇー、意外とスキル多いんだね」


「あー、いや。これ全部『祈りの言葉』っていう1つのスキルなんスよ。スキル使いながら詠唱すると、詠唱の内容によって効果が発動するんス」


「なるほど。僕の『眼力』が、ランダムに何種類かデバフかかるのと、似たようなものなのか」


【眼力と違って、効果は自分で選べるんだなもし】


【代わりに、使えるのが1種類ずつで、タメ(詠唱時間)があるから、先読みが必要なんだよな】


【低レアのわりに、玄人向きのスキルやで】


「いろんなことができるんですね! 素敵です〜♡」


「ひえっ、ウチとは違うガチ陽キャ笑顔〜……。心臓止まりそう……」


「分かる。ユメヒコくんの笑顔、致死性だよな……」


「深森さんも、とってもリーダーしてますね! カッコ良い!」


 と、そこに、小規模集団をボコボコにしてきたカラフルお姉さんズが戻ってきました。


「へへへ、どうだったよ深森サンよぉ」


「アタイらだって、これぐらいできるんだぜ!」


「なぁなぁなぁ! アタイってタンク? ってやつで、防御重視なんだよな! けど、ついクセで棍棒から使いそうになるんだけど、どうしたらいいんだ!?」


「じゃあ、右手に盾を持ったら良いんじゃない?」


「右手に盾を……!? そ、そんなことしていいのかよ!?」


「良いでしょ。剣とか槍ならともかく、棍棒だったら左手でもそんなにムズくないだろうし。それに、お前のスキルのシールドバッシュって、右手で盾持ってるほうが威力強いんじゃないか?」


「た、確かに!!」


 さっそく黄梅さんが盾と棍棒を持ち替えています。


「お、おい! 黄梅だけズリーぞ!」


「アタイらにも、何かアドバイスないのかよ!」


「えー? あー、それなら。白樺ちゃん、さっきの後方警戒の話の続きなんだけど。もし後ろから敵が近づいてきたら、青竹に速度アップバフをかけてあげて」


「へ? 青竹パイセンに?」


「うん。青竹、白樺ちゃんからバフ来たら、お前らってそれに気づけるの?」


「ああ。頭の中にチャリーンって音が鳴るし、明らかに身体の動きがよくなるからな」


「じゃあ、今後は、チャリーンって音が聞こえたら一旦目の前の敵から素早く距離を取って、後ろを確認して」


「なんでだ?」


「その時は、白樺ちゃんがバックアタック……、後ろから来た敵に襲われてる場合があるから。後ろ見て、白樺ちゃんが手を振ってたり、まさに攻撃されてるときは、一番足の速いお前が全力で助けに来てあげて」


「なるほど!!」


「青竹パイセン、お願いしまっス!」


「任せとけ!」


 青竹さんが、嬉しそうに槍を突き上げました。


「で、赤松。お前へのアドバイスなんだけど」


「お、おう!」


「お前の使えるスキルって、連続斬りと回転斬りだよな?」


「そうだよ! 連続斬りは、素早く2、3回斬るスキルで、回転斬りは、ぐるんと回転してまとめて斬る技さ!」


「じゃあさ、スキルを同時に使ったら、連続回転斬りとかできるの?」


「へ……?」


 赤松さんは、ポカーンとした表情になりました。


「スキルって、同時に使えんの?」


「え、使えるでしょ。僕も、じっと集中して射撃とかするし。斎藤も、鉄拳からの右ストレートとかするよな?」


「するけど、それって同時使用する前提のスキルだからじゃないのか?」


「そうかなぁ……? ユメヒコくん、どう思う」


 ボクは、赤松さんの連続回転斬りを想像してみます。


 ……あ、絶対カッコ良いです!


「やってみましょう赤松さん! 絶対、絶対カッコ良いですよ〜!!」


 ボクは、目をキラキラさせて言ってみました。


 赤松さんが、怯んだように目を逸らしながら、「お、お、おう。そうか?」と言います。


 そこで、ボクらから少し離れて試し斬りをしてみると、


「れ、連続回転斬り! ……どわああっ!?」


 なんと、赤松さんが剣を持ったまま竜巻のようにグルグルグルグルっと高速回転しました!


 速い!

 そして、やっぱりカッコ良い!!


「あ、アタイのスキルにこんな使い方が……!」


「やっぱ出来たじゃん。MP消費は激しいだろうけど、ボスとかの強敵相手なら、切り札になるんじゃないか?」


「切り札! カッケェ!!」


 赤松さんが、ヒーローごっこしてる子どものように、目を輝かせています。


「あと、白樺ちゃんも。前が安定してきたら、回復以外にもバフが使いやすくなると思うんだけど」


「はいっス!」


「MPに余裕があるなら、戦闘開始時に合わせてバフかけてあげると良いよ。第一優先は、黄梅の防御アップで。タンクが頑丈になれば、全体が楽になるから」


「分かったっス!」


「あと、白樺ちゃんの詠唱って、長い時と短い時があるよね。あれの違いって、何?」


「あれっスか? ほんとーは、きちんと詠唱しないと効果でないんスけど、『詠唱短縮』ってスキルも持ってて、時間ないときは効果量減らして素早く使えるんス」


「なるほど。便利だけど、消費増やして効果が減るのか……。ああ、だから今まではジリ貧になりやすかったんだね」


 深森さんが、顎に手を当てて考えます。


「その詠唱ってさ、どこまで唱えたらMP使うの?」


「へ? どこまでって……、フツーに、最後まで唱えて効果が発動したときっスけど……」


「じゃあ例えば、攻撃アップの詠唱してて、途中でやめて回復の詠唱に切り替えたら?」


「そりゃあ……、回復の分だけMP使うんじゃないっスか?」


「じゃあ、発動するまでの詠唱は、()()()ってことか」


【お、そこに気づくか】


【ハヅキ氏、やっぱ賢いんだな】


「白樺ちゃん。今後は、戦闘前にまず黄梅に防御アップ。それから、後ろを気にしつつ、回復の詠唱を、最後の1、2小節のとこまであらかじめ唱えておく」


「へ……?」


「で、本当に回復が必要なタイミングで、残りを唱えて回復を飛ばすんだ。そうすれば、元のMP消費で素早く回復できる」


「へ!? ええっ!?」


 白樺さんが、とても驚いています。


「詠唱って、途中の時間が空き過ぎたらダメかな?」


「いやー……、そんなことも、ないと思うっスけど……。詠唱以外のこと喋ったり、声を出したりしなければ……」


「じゃあ、また今度、指示出し用のホイッスルとか、ハンドブザーを買いに行こっか。声出さずに音で指示出せるようになったら、詠唱待機しておけるでしょ」


「……はえー。深森サン、賢い……」


 すると、黙って話を聞いていた斎藤さんも「確かに」と頷きます。


「深森。お前、なんでそんなに戦い方に詳しいんだ」


「へ? だって、MMOのレイドボス戦やるなら、戦術って大事じゃん」


「……えむえむおー?」


「多人数参加型のゲームだよ。そこで、たくさん人が集まってボス退治するなら、役割分担とか連携とか、できて当然だろ?」


「……いや、結局ゲーム知識なのかよ!?」


 斎藤さんがツッコミましたが、ボクは深く頷きます。


「やっぱり、深森さんにダンジョンは向いてましたね! 素敵♡」


「うぎゃあーっ!? め、目がー!」


「深森さんから、日光を浴びたヴァンパイアみたいな悲鳴が……」


「深森のは、どっちかっつーと焼石の上のミミズだろ……」


 さて、そんなこんなとありましたが、さらに先に進みます。


 何度か戦闘を繰り返していると、とうとうボス部屋がありました。


「はい、白樺ちゃん」


「は、はい! えと、まずは黄梅パイセンに防御アップっスね! 勇猛なる者よ、己を剣に、己を盾に、己の五体でそこに在れ、今こそ、踏み締めろ!」


 入室前に、まずは白樺さんが防御アップを黄梅さんに掛けます。


「次は青竹パイセンに素早さアップっスね! 勇猛なる者よ、己を剣に、己を盾に、己の五体でそこに在れ、今こそ、駆け抜けろ!」


 それからさらに、青竹さんに素早さアップ、


「最後は赤松パイセンに攻撃アップっスね! 勇猛なる者よ、己を剣に、己を盾に、己の五体でそこに在れ、今こそ、突き立てろ!」


 最後に、赤松さんに攻撃アップを掛けました。


「よーし、バフがかかってる間に勝とう! 突撃! ピロロロロロ〜!」


 深森さんの号令で皆さんボス部屋に突撃です!


 部屋の中央のボス目掛けて3人が固まって突っ込んでいきます。


「おら、来い!!」


 黄梅さんが盾を棍棒で叩いて鳴らします。


 大きな小鬼は黄梅さんの盾をガンガンと殴り始めました。


「えっと、デカい奴は手足を優先して……、オラオラ!」


 青竹さんが、ボス小鬼の背後に素早く回り込んで、膝の裏を槍でチクチク突いています。


「赤松、盾の反対側から斬るんだ」


「オッシャ! オラッ、オラッ、オラァッ!」


 赤松さんが小鬼をザクザク斬ります。


 そして、何度か斬ったところで、


「連続突き! お、効いた!」


 青竹さんのスキルが膝裏に刺さって、小鬼が片膝をつきました。


 深森さんの目がキランと光ります。


「黄梅下がれ! 赤松、決めろ!」


「おおおおーー! 連続回転斬りぃ!!」


 赤松さんが、グルグルグルグル回ってボス小鬼をズタズタにしました!


 ボス小鬼は、そのままバタンキュ〜と倒れて、マナ石になりました。


「や、やった!」


「勝った!」


「アタイら、勝てたよ!」


 カラフルお姉さんズが、喜びながら抱き合っています。


 白樺さんも「す、すごい……! 回復なしで勝てちゃった……!」と驚いています。


「ふ、深森サーン! すごいっス! マジすごいっス!!」


「ははははは! いやぁ、それほどでもあるけどね〜!」


「深森サン、いや、……深森のアネゴ! 自分、一生ついてくっス!」


「ははははは! ……えっ?」


 すると、戻ってきた3人組も、


「アネゴー! アタイらやったよー!」


「うおおー! 全部アネゴのおかげだー!」


「深森のアネゴ! アタイら、アンタの舎弟になるよ!!」


「ええええっ!!? な、なにその呼び方!?」


「アネゴはアネゴっスよ! よし、今日は皆で祝勝会っス! ボーリング行ってゲーセン行ってファミレス行ってカラオケ行って、オールっスよ!」


「待て待て待て!? なんだその無茶苦茶なスケジュール!? あ、おい斎藤! 笑ってないでなんとか言えよ!」


「ぎゃははははは! ふ、深森がアネゴ……!! ぎゃはははははは!!」


「笑ってないで、なんとか言えよーー!? あ、ひ、引っ張らないでーー!?」


「深森さーん! 今日はとってもカッコ良かったですよー!」


「ゆ、ゆ、ユメヒコくぅ〜〜ん!!」


 こうして、斎藤さんと深森さんは、斎藤さんの元ツレの皆さんと一緒に遊びに行ったのでした。


 深森さん、良かったですね!!




 ▶︎▶︎▶︎


 さて、翌朝です。

 今日もボクは、マンション横の公園前で露璃さんと待ち合わせをしています。


「行ってきまーす!」


 ボクが、玄関から出てカギを閉めていると、隣のお部屋のドアがガチャっと開きました。


「ふわあ〜〜っ、ねむい……、あれっ?」


 お隣さんのナナさんが、眠そうな顔で玄関から出てくるところでした。


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