026・深森さん、とってもとってもリーダーです!
「ほげえぇって、そんな汚ねぇ声出すことあるか?」
「テメーやっぱナメてんじゃねぇのか?」
「ウグイスのチームメンバーだからって調子乗ってんじゃねぇぞ、あぁん?」
大丈夫ですよ!
深森さんは、すごいので!
「いや、無理むりムリ無理むりムリー!?」
「深森が壊れた扇風機みてーに首を振ってやがる」
「深森さんって、意外と機敏な動きもできるんですね」
「ユメヒコくぅーーん! なんでよりにもよって僕なのさー!?」
「だって、先ほどボクが言いたかったことを、一番丁寧に説明できたのは深森さんですから!」
だから一番向いてると思います!
「だからって、なんで僕が……!? 僕、斎藤に無理やり引っ張ってこられただけだし、そもそもリーダーなんて無理なんだが……!?」
「深森さんはリーダーが出来ますし、きっとリーダーを教えるのも上手です! それに、斎藤さんのお友達が困ってるんなら、助けてあげたほうが良いと思います!」
「で、でもぉ〜……」
深森さんの目が、ボクとカラフルお姉さんズの間を行ったり来たりしています。
「……はぁ、しゃーねーな。おい深森、俺からも頼む。コイツらに力を貸してやってくれ」
「さ、斎藤」
「この前ケンカ別れしたばかりだが、それでもダチはダチだ。俺は、ビッグになって見返してやろうとは思ってるが、コイツらに死んでほしいわけじゃねえ」
「私からもお願いします、深森さん。その、私も深森さんなら、この人たちをまとめられると思います」
「善野ちゃんまで……」
深森さんが、お腹が痛い時みたいなへにょへにょ顔になりました。
「……あの、深森サン? その、少しだけで良いんで、助けてほしいっス。もうウチ、頼れる人がいないんス。お願いっス」
白樺さんも、ペコリと頭を下げました。
この場にいる全員からの視線が集まった深森さんは、
「うぐぐぅぅ〜〜〜っ……。あーっ! もう! 分かったよぉ! やれば良いんだろ、やればぁ!?」
と、泣き顔でバンザイポーズをしたのでした。
ありがとうございます!!
「はい、というわけでぇ、キミたちの臨時リーダーをすることになった深森です……。よろしくね……」
「お願いしまっス!」
「えーっと、キミが白樺ちゃんで、ジョブは?」
「祈祷師っス!」
「で、そっちのカラフルなのが……」
「赤松だ。ジョブは剣士」
「青竹だよ。ジョブは槍士」
「黄梅ってんだ。ジョブは戦士」
「……黄梅だけ髪色が緑で、合ってないんだよなぁ……。覚えにくい」
「んだとコラァ!」
「いっそ、黄緑梅って呼んでいい?」
「良いわけねぇだろ!?」
深森さんは、すごーく嫌そうな顔のまま「まぁ、うん」と頷きます。
「とりあえずね、やるからにはちゃんとやるよ。だからキミたちも、ちゃんと言うこと聞いてね」
「了解っス!」
「まずー……、さっきの戦いを見てて思ったんだけど……。キミたち、なんで敵を見つけたとたんに、それぞれが一目散に走っていっちゃうの?」
「なんでって。敵がいたら倒さなきゃダメだろ!」
「倒して稼がないとカネにならねーしな!」
「それに、敵を白樺に近づかせないほうが良いだろうが!」
「……いや、うん。それはそうなんだけど……。斎藤! お前がいた時は、どんな風に戦ってたんだよ!」
「俺がいた時は、俺が一番目立つから、俺のところに敵が全部集まってた。それで、集まった敵から逃げたりかわしたりしてる間に、コイツらが横から攻撃してた」
「斎藤がタンクだったわけね。……ん? なんで斎藤がタンクなんだ? お前、拳闘士だから殴るほうが得意だろ?」
「拳闘士? 何言ってんだよ。ウグイスのジョブは歌のお姉さんだろ?」
「えっ。……斎藤?」
そういえば、深森さんは知らないんでしたっけ。
「斎藤さんのジョブは、歌のお姉さんだったんですよ! それを、ボクが拳闘士に変えたんです!」
「はっ!? お前が歌のお姉さん!? ……に、似合わねー!! あはははははははは!!」
深森さんが、お腹を抱えてゲラゲラ笑っています。
斎藤さんが「分かってんだよ、んなことはよー!?」とキレ返しました。
「ひー、ひー、お腹痛い……。はぁ、笑った」
「テメー、あとで覚えてろよ」
「まぁけど、大笑いしたら気が楽になったや。……キミたち、今から大事なこと言うから、よく聞いてて」
深森さんは、ふーー、っと息を吐くと、真面目な顔になりました。
「これは僕の持論だけど。探索の第一優先事項は、皆が無事に帰還すること。だから僕は、このまま放っておいたらそのうち誰か死にそうなキミたちのリーダーを引き受けた」
それから、赤松さんたちをピッと指差します。
「まずお前ら。次の戦闘では、僕の合図があるまで突っ込まないこと」
「は?」
「意味分かんねー!」
「なんでだよ!」
「あんな、蝶々見つけた保育園児みたいな動きしてたら、命がいくつあっても足りないからだよ」
ボクは、所持品の中からピロピロ笛を取り出して、深森さんに渡しました。
「これ、合図代わりに使ってください!」
「ありがと。ピロロロロロ〜〜! この音が合図な。……って、へっ? ユメヒコくん、これ……」
「ボクがいつも使ってるやつです!」
「は、はあっ!? きゅ、急に渡すから普通に吹いちゃったじゃんか!?」
深森さんは慌てて吹き口を服で拭きました。
「深森……」
「深森さん……」
「だ、だってユメヒコくんが!!」
「それ、とっても良い音が鳴るので、しっかり使ってくださいね!」
ボクがニコニコ顔で言うと、深森さんは耳を真っ赤にして頷きました。
「と、とりあえず、進んでみようか。お前ら、ちゃんと笛の音、守れよ?」
すると斎藤さんが、バカにしたように言いました。
「おいおい深森、そんな難しい指示、この三馬鹿たちに守れると思うのかよ」
「ああ!? んだテメェ!?」
「それぐらいのこと、普通にできるっての!」
「テメーだって似たような頭のくせに、バカにしてんじゃねーぞ!」
斎藤さんが、ニヤリとしました。
「ほーん。じゃあ、深森の笛をしっかり聞いてろよ?」
「たりめーだろーが!」
そんなこんなと言いながら進んでいくと、奥のほうからヒョコッと3匹の小鬼が。
「グギャギャー!」
「グギャギャー!」
「グギャギャー!」
3匹は、武器を振り上げてこちらに駆け寄ってきます。
深森さんは、射的銃にガチャンとコルク弾を装填しながら、
「んーー、お前!」
「グギャッ!?」
小鬼の1匹に眼力を使って、スタンさせます。
それから、射的銃をパコンと撃って別の1匹の脚を撃ち抜いてよろけさせると、元気な1匹だけが先んじてこちらに近寄ってきました。
「赤松! ピロロロロロ〜!」
「っ! お、おう!」
赤松さんは、深森さんの笛の音とともにたったか走っていって、一番先頭の小鬼をズバンと切ると、次に脚を引きずって近寄ってきた小鬼をザパンと切ります。
そして、まだスタンが効いている最後の一体をドスリと突き刺すと、あっという間に3体の小鬼はマナ石に変わりました。
「へっ……? なんか、めっちゃ簡単に倒せた……?」
すると、今度は5体の小鬼がまとめて出てきました。
たったかとこちらに向かって走ってきます。
「青竹! ピロロロロロ〜!」
「お、おう!」
青竹さんが飛び出すと、ぴゅーんと駆けていきます。
その間に深森さんは、ガチャン、パコン、ガチャン、パコンと2体の小鬼の脚を撃って足止めしつつ、1体に眼力で素早さダウンをかけました。
「斎藤、青竹を赤松の隣で止めて」
「あいよ。おい青竹! 赤松の隣で右ならえ!」
赤松さんの横を通り過ぎそうだった青竹さんが、ぴたっと止まって右を見ます。
それから前を見直して、2体の小鬼たちと、それぞれ一対一で戦い始めます。
「おら、連続斬り!」
「食らえ、鎧通し!」
2人はあっという間に2体を倒し、足を引きずっている2体をそれぞれ倒し、素早さダウンしていた小鬼を青竹さんがドスドスっと突いて倒しました。
「黄緑梅、あの2人より3歩だけ前に行って」
「わ、分かった!」
「ピロロロロロ〜!」
深森さんの笛で黄梅さんが駆け出し、その直後、奥から10体の小鬼たちが!
「斎藤。黄緑梅を目立たせて」
「おう。黄梅ぇ! お前の初恋の相手をバラされたくなかったら、全力で叫べ!」
「はあっ!? ……う、うおおおおおおおおおおっっ!!!」
一番先頭に立って全力シャウトした黄梅さんに向かって、全ての小鬼たちが殺到してきました。
なかなかの迫力です!
ですが、黄梅さんは盾と棍棒をクロスさせて小鬼たちを待ち受けます。
「うぐぅっ!? こ、このぉ!!」
全ての小鬼が正面から殺到しますが、殺到し過ぎて渋滞になっています。
「斎藤。2人を」
「はいはい。おいお前ら! 黄梅だけに美味しいとこ持っていかれる気か!!」
「なにを!?」
「負けるか!」
赤松さんと青竹さんが、黄梅さんの左右から小鬼の集団を挟み、手当たり次第に攻撃していきます。
深森さんも、白樺さんに「黄緑梅をよく見て、早めに回復してあげて」と言いつつコルク弾を装填し、パコンパコンと撃っていきます。
おおー、どんどん敵の数が減っていきますね。
「おらっ、回転斬り!」
「くたばれ、乱れ突き!」
「うおぉー! タフボディ!!」
「勇猛なる者よ、立ち上がれー!」
あっという間に、小鬼たちが全滅しました。
前に出ていた3人が戻ってきます。
「はい、3人とも、おつかれ。ケガは?」
「……してねぇ」
「大丈夫だよ」
「すぐに治してもらったから、問題ない」
「白樺ちゃんは?」
「えっと……、回復、ほとんど使わなかったっス」
「オッケー、やり方はこんなもんかな……。んじゃあ、次の獲物探そうか。赤松」
「お、おう」
「たぶん、お前が一番攻撃力高いだろ。もしこの後デカいのとか出てきたら、そいつ倒すのはお前の仕事だからな」
「わ、分かってるよ!」
「次に青竹。お前は一番素早さが高いんだな。武器も槍でリーチがあるから、素早く突きながら少しずつ下がるだけで雑魚は完封できる」
「な、なるほど!」
「代わりに、デカいのとかの時は、削り役だ。赤松が斬りやすいように、敵の手足を狙って突いたほうが良い」
「分かった!」
「最後に黄緑……、あー、コホン。黄梅は、一番頑丈だ。だから、殴るより受け止めるほうを優先。防御の合間に攻撃するぐらいでいい。お前なら、ここのゴブリン10体相手でも問題ない。自信持っていい」
「おう!」
「もしデカいやつが現れたら、お前が先頭で皆を守るんだ。お前が倒れない限り、皆も負けない。そしてお前の後ろには、頼れる回復役がいる。安心して殴られろ」
「へへへ、任せろってんだ!」
深森さんは最後に「白樺ちゃん、あとでキミができること、色々教えて」と言うと、
「さぁ、さっきの感じで次も戦ってみよう。さっきのやり方に慣れるまで戦ったら、マナ石もガッポリでしょ」
と、手をパンパンと叩いたのでした。




