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025・お友達の皆さん、リーダーが間に合ってません!


「頼むって、マジでこのままだとヤベーんだよ!」


「ウグイスが抜けてから、探索が全然うまくいかねーんだ!」


「このままだと、アタイらまとめて無職のプー子になっちまう!」


 髪の毛を真っ赤に染めたお姉さんと、髪の毛を真っ青に染めたお姉さんと、髪の毛を真緑に染めたお姉さんが、3人で斎藤さんの足に縋りついています。


 すごい、楽しそう!


「だーかーら! 俺は、もうお前らのパーティーから抜けたんだよ! つーか、あんだけ役立たずがいなくなってせいせいしたとか言ってたクセによー! 別れて1週間でそのザマかよ!」


「悪かったよ! あん時のアタイらはどうかしてたんだ!」


「歌って踊って殴られながらキレてるだけのウグイスなんて、いてもいなくても変わんねーって思ってたんだよ!」


「けど、お前がいないとマジでダメなんだ! おい、白樺! お前もウグイスを説得しろよ!」


「え〜……、けど、さすがに先日のはパイセンらが悪いっていうか、斎藤サンもキレて当然っていうか……」


「テメー! どっちの味方なんだよ!」


「ひええ〜!?」


 真っ白なベレー帽を被ったギャルみたいな女の人が、緑髪の人に怒られました。


 コントみたいですね!


「ユメヒコ君、あれって……」


「はい。斎藤さんの元パーティーの方々だと思います!」


「縋りついてる人たち、髪の毛の染め方と髪型がすごいね……」


「皆さんヤンキーですからね!」


 眉を寄せて困り顔の斎藤さんと、斎藤さんの後ろで死にそうな青い顔をしている深森さん。


 2人が揃ってこちらを見たので、ボクは笑顔で手を振りながらそちらに向かいます。


「斎藤さ〜ん! 深森さ〜ん!」


「おう、ユメヒコか。善野はどうだった」


「はい! おかげさまで、花丸満点ご機嫌100点になりました!」


「そうか。……まぁ、なんか、それ以上のことをしてそうな気もするが」


「お、おい、ウグイス!」


「なんだよ」


 ボクと露璃さんに気づいた3色ヤンキー姉さんたちが、ボクを指差して驚愕の表情を浮かべます。


「ま、ま、まさかとは思うが、この天使みてーな可愛いガキが、オメーの新しいチームのメンバーか!?」


「そうだよ。コイツが俺のリーダーだよ」


「んだとテメェ! 前々からショタコンぽいとは思ってたが、マジだったのかよ!」


「誰がショタコンだ、殺すぞ!?」


「だってテメー、学校サボってコンビニ行ったら絶対そっち系の漫画立ち読みしてたじゃねーか」


「たまに白樺に漫画の続き買いに行かせてたのも、知ってんだぞ」


「おい、バラすなよ! マジで殺すぞ!?」


 斎藤さんも顔を真っ赤にしてブチ切れ始め、3色姉さんズとギャイギャイ言い合いを始めました。


 青い顔して露璃さんにもたれている深森さんとか、深森さんに肩を貸している露璃さんが、白帽子のギャル姉さんと無言で頷き合ってため息をついたりしています。


 なるほど。


「皆さん、今も仲良しなんですね〜」


「んなわけねーだろ!?」


「あ、ボクはユメヒコです! カラフルなお姉さんたち、よろしくお願いしますね!」


 ボクが笑顔で挨拶をすると、お姉さんたちは何故か言葉を失いました。


「……ヤバ」


「マジ天使じゃん」


「アタイ、なんか胸が苦しくなってきた……」


「か、かわいい〜〜!!」


「お姉さんのベレー帽もふわふわしてて可愛いですよ!」


「え、ほんと? 分かってくれる?」


「はい!」


 すると、白帽子お姉さんが、嬉しそうにぴょんぴょんします。


「や〜ん、感激〜! パイセンたちも斎藤サンも、ウチのオシャレを褒めてくれたことないからさ〜!」


「その帽子、深森さんとか露璃さんにも似合いそうですよね」


「それって後ろの2人のことだよね! 分かる〜! ウチのコレクションの中から、今度似合うの持ってきてあげるね〜!」


「ありがとうございます!」


 とかなんとか、白帽子の姉さんときゃっきゃしていたら、斎藤さんたちも少し落ち着きを取り戻しました。


「はぁっ……。馬鹿らしい。……それで、お前らは何がどうなってんだよ」


「なんか、毎回死にそうなんだよ。今までなら普通に潜れてたところで、すぐに敵にボコられちまって、全然稼げねぇんだ」


「アタイら4人とも、毎日の飯代もヤベェし、このままだと今月の家賃も払えそうにねぇ」


「アパート追い出されたら、実家住みの白樺の家に上がり込んで居候させてもらわねーとダメかもしれねーんだ」


「それだけはダメだって!? ウチがママに殺されちゃうから!?」


 斎藤さんが、呆れたようにガリガリと髪をかきました。


「お前ら、何でそんなことになるんだよ。俺がいた時は、普通に戦ってたじゃねーか」


「それが、斎藤サン。ウチも後ろで見てて不思議に思うんだけど……、斎藤サンがいなくなってから、パイセンたちがずっとモタついてるというか……、とにかく変なの」


「変ねぇ……。けど、俺はもうコイツら(ユメヒコたち)とビッグになるって決めたんだ。いまさらそっちには戻れねーよ」


「そんなぁー……。うぅー、ほんとにどうしたら良いんだろう……」


 ふーむ、なるほど。


「じゃあ、今から一緒にダンジョンに行きませんか?」


「はっ?」


「えっ?」


「ボク、皆さんが戦ってるところ、見てみたいです!」


「おい、ユメヒコ」


「皆で一緒に行くのなら、ボクたちのパーティーとそちらのパーティーがたまたまダンジョン内で合流しただけになるのでは?」


「いや、うーん……」


 斎藤さんはチラッと振り返って、深森さんと露璃さんを見ました。


「俺らのリーダーがこう言ってるんだけどよー。……お前ら、ちょっと付き合ってもらっていいか?」


「……まぁ、良いけどさ」


「私も大丈夫です」


「よし。じゃあ、善は急げだ。赤松、青竹、黄梅、白樺。行こうぜ」


「……え、その緑髪の人、黄梅って名前なの!?」


「あん? そうだよ」


「分かりにくいだろ! なんで髪色と統一してないんだよ!?」


「良いだろ別に。それに、俺が金髪に染めてんだから、被ったらめんどくせーだろ」


「名前と被ってないほうが面倒臭いだろ!」


「おい、うるせーぞ根暗オタが!」


「ひえっ!?」


「斎藤のツレだからってあんま調子乗ってんじゃねーぞ!」


「すすすす、すみません……!」


 緑髪さんに凄まれた深森さんが、ぺこぺこと頭を下げてます。


 すごい速度です、速い!


「おい深森。こんなバカ相手にぺこぺこする必要ねーぞ。九九の七の段も怪しいようなバカなんだからな」


「九九が怪しいのはテメーもだろ、ウグイス!」


 確かに、九九って難しいですよね〜。


 特に九の段がボスラッシュみたいで、毎回苦戦するというか。


 そこまで行くと、一の段が懐かしくなるというか。


 とにかく難しいです!


「ユメヒコ君。明日から一緒にいっぱいお勉強しようね」


「はい! お願いします!」


 そんなこんなで、ボクたちは近くのダンジョンに向かったのでした〜。




 ▶︎▶︎▶︎


 ここは、以前来たのとは違うゴブリンダンジョンのようです。


 入口の場所も違いましたし、いろんな武器を持った深緑色の小鬼たちが、一度に何体も出てきます。


「よーし、行くぞ!」


「突撃だ!」


「よいしょ、よいしょ!」


 剣を持った赤髪の姉さんが最初に飛び出して、小鬼の一体と戦闘を開始し、


 槍を持った青髪の姉さんが、ぴゅーんと走って一番後ろにいる小鬼を突き始めます。


 そして、少し遅れて棍棒と盾を持った緑髪の姉さんが、赤髪の姉さんの横を抜けてきた小鬼と殴り合いを始めました。


 皆さん、勇ましいですね!


「……いや、あれはダメだろー」


 深森さんが呟くと、さらに数体の小鬼たちが奥のほうから駆けてきました。


 最初の一体ずつを倒した3人に、新しい小鬼が二体ずつ張り付きます。


「おらっ、おらっ、連続斬り!」


「やっ、ほっ、そらっ! 鎧通し!」


「えいっ、とうっ! シールドバッシュ!」


 3人は、それぞれスキルを使って2体を倒しましたが、その頃には、さらに3体ずつに囲まれていました。


 この頃には、1回攻撃する間にポカポカポカと3回殴られていて、3人それぞれに生傷が増えていきます。


「おいおい、マジかよ」


「子供のケンカみたいになってきたじゃん……」


 そんな3人に、白帽子の姉さんが祈りの言葉を使って回復をしているのですが、


「勇猛なる者よ、立ち上がれ! ……次はあっち!? 勇猛なる者よ、立ち上がれ! 勇猛なる者よ、立ち上がれー! ……わーーっ!? 回復が追いつかないってばー!?」


 一回に1人ずつしか回復できないみたいで、ワタワタとしながら3人を順番に回復しています。


「白樺さん、だっけ? すごくたいへんそうにしてるね……」


「というか、グッダグダで草。いくらなんでも、あれはダメだろー……」


「おかしいな。俺がいた時は、もう少しテンポ良く倒してたんだが……?」


 なるほどー。


「皆さん、とても一生懸命ですね! 素敵!」


「素敵か……?」


「ブザマにも程があるだろ……」


「あ、なんとか一区切りしたよ」


 ゼィゼィと肩で息をする3人を、順番に回復する白樺さん。


 そして、赤髪の剣士の赤松さんが「どうよ、こんな感じなんだけど」と言うので、


「皆さん、敵に囲まれても怯まずに戦い続けてましたね! 勇敢で、カッコ良いです〜!」


 と、素直な気持ちを伝えました。


「そ、そうか?」


「まぁ、喧嘩とか、ビビったら負けだもんな」


「アタイら、ちゃんと戦ってただろ?」


「はい! 熱いバトルでした! ……ところで、見ていて不思議だったのですが。なぜこのパーティーは、誰も()()()()()()()()()()のですか?」


「えっ? いや、リーダーはアタイだよ」


「けど、赤松さんは指示は出してないですよね。青竹さんも、黄梅さんもです」


「えっ、その……」


 ボクは、青汁みたいに苦そうな顔でマナポーションをぐびぐび飲んでいる白樺さんを見ます。


「この中で、一番全部を見てたのは白樺さんでしたよ。でも、白樺さんもリーダーをしてませんでした」


「へっ? ウチ?」


「はい。白樺さんは、回復がいっぱいなのでリーダーが間に合ってませんでした」


「リーダーが間に合ってない……、って、なに?」


「だから、間に合ってなかったんですよ、リーダーが!」


「……???」


 すると深森さんが「要するに、回復に手一杯だから前衛に指示を出すヒマがない。もっと言うと、指示をするための余裕を作れてない、ってこと?」と言ってくれました。


 そうです!

 たぶんそういうことです!


「まぁ、三馬鹿の動きが前よりバラバラってのは、俺もなんとなく思ったけど……」


「白樺さんの回復自体も、場当たり的になってる気はしますよね……」


 斎藤さんと露璃さんも意見を出してくれました。


 つまり、まとめるとー。


「一度、リーダーをできる人がリーダーをしてみれば良いと思います!」


「リーダーをできる人って……、誰のこと?」


「そうですねぇ……」


 ボクは、皆さんのお顔を順番に見ていきます。

 すると、深森さんとパチっと目が合いました。


「……へっ?」


「ということで深森さん! 試しに白樺さんたちのリーダーをしてあげてください!」


「はっ……?」


「よろしくお願いします!」


 ボクが、ニコッと笑ってお願いすると、深森さんは数秒フリーズしたあと、


「……ほ、ほげぇぇぇええええええええっっ!!?」


 と、腰を抜かして座り込んでしまったのでした。


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