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024・カーブの先の香水屋さんでホームランです!


 午前の授業中は、ずっと露璃さんが不機嫌そうでした。


 今は、給食を食べ終わってお昼休みです。


「ツユちゃん、どうしたの?」


「この土日で何かあった?」


 お友達のお二人も聞いていますが、露璃さんは「んーん、……なんでもないよ」の一点張りです。


 そして、図書委員の活動があるから、と言って露璃さんは図書室に。


 うーん?


 よし。

 こういうときは大人の知恵を借りましょう。


 ボクは、そろそろ起きてるであろう斎藤さんに電話をかけました。


「と、いうことがありまして。それから露璃さんが、なんだかご機嫌ナナメなんです」


「ユメヒコお前……。まぁ、しゃーないか。そんなに気になるなら、放課後一緒に甘いもんでも食べてこいよ。そしたらすぐに機嫌直すと思うぜ」


「ほんとですか! しかし、それだと今日のダンジョン探索に行くのが遅くなってしまうのでは?」


「いや、ちょっと俺のほうでも、野暮用ができたんだ。だから気にせず行ってこいよ」


「分かりました! それなら露璃さんと甘いものを食べてきます!」


「……ところで、いつのまに露璃さん呼びになったんだ?」


「今朝からです!」


「そうか……。善野も振り回されてるな……」


 そんなわけで、斎藤さんからアドバイスをもらったボクは、露璃さんのいる図書室へ向かいます。


 そしてさらにボクは、図書室に向かう途中で、露璃さんが不機嫌になった原因にも思い至りました。


「……あ、ユメヒコ君」


「露璃さん。実はボク、ひとつ忘れていることがありました。ごめんなさい」


 ボクは、露璃さんに頭を下げます。


「え、なに? どうしたの?」


「先日の新居探しのとき、露璃さんのお父さんの弾定さんにはお土産を渡しましたが、お父さんを紹介してくれた露璃さんにお礼をするのを忘れてました。だから、今日の放課後、一緒にお買い物に行きませんか?」


 弾定さんやナナさんには、手土産を渡しましたが、一番お世話になった露璃さんには、まだ何も渡したことがありませんでした。


 だから露璃さんは寂しくなって、不機嫌になったのだと思います。


「え、それって……」


「露璃さんへのお礼のプレゼントを買います。ついでに、喫茶店とかに寄って甘いものでも食べましょうよ」


 露璃さんのお顔が、なんだか赤くなりました。


「その、それって、斎藤さんたちは、来るの?」


「いえ、斎藤さんたちは野暮用があるみたいで、ボクと露璃さんの2人で行くといいって言ってました」


「分かった。行く」


 露璃さんは嬉しそうに頷きました。

 良かった!


「では、約束ですよ! 指切りしましょう!」


「ひえっ!? ゆ、ゆーびきーりげーんまーん……」


 ボクは、小指を立てたまま真っ赤になってる露璃さんをおいて、先に教室に戻りました。


 確か、仲良し男子3人組の皆さんが、ババ抜き王決定戦をすると言っていたので、それに参加しようと思います!


 すると、隣のクラスの前を通ったところで、教室内にナナさんがいるのが見えました。


 何人かの、ギャルっぽい髪型の子たちと、楽しそうにお喋りをしています。


「そういえば、隣のクラスのユメぽんがさー」


 おや、ボクの名前が聞こえました。

 ボクは思わず足を止めます。


「ユメぽん?」


「あれ、ナナっちまだ喋ったことない系?」


「ほらー、隣のクラスの男子ズの中で、一番小さくて可愛い」


「いつもニコニコしてて妖精みたいな子だよ」


「あー、アイツね……。そういえば、ユメヒコって名前なんだっけ」


「そうそう〜。そのユメっち。こないだアタシらが街で買い物してたら、大人の女の人と電気屋から出てきててさ〜」


「めちゃデカのテレビ買ってて、車に積んでたんだよねー! あれって、一緒にいたのユメぽんのお姉さんなんかな?」


「なんか真っ金金の金髪のヤンキーみたいな人と、黒髪ボサボサのオタクみたいな人でさー」


「ふーん。……あれ?」


 あ、ナナさんと目が合いました。

 ボクは、皆さんに向けて大きく手を振ります。


「みなさーん! こんにちはー!」


「え、何アイツ……」


 すると、周りの皆さんも気づいて、手を振り返してくれます。


「ユメぽんじゃん! こんち〜!」


「ユメっち〜、今日も元気ね〜」


「やっほー!」


「え、皆そういうノリなの?」


 すると、ナナさんも、顔を背けながら小さく手を振ってくれました。


 わ、優しい!

 素敵♡


「ひっ、ヤバ」


「ひょええ〜、溶けちゃう」


「出た、デラックス笑顔!」


「……え、なに、どしたの皆?」


 そのあとボクは、自分の教室に戻って皆とババ抜きをしたのでした。


 結果、ボクが最弱王になりました。

 ぴえん!!




 ▶︎▶︎▶︎


 掃除の時間とホームルームが終わり、放課後になりました。


 ボクは、いつものように教室の黒板を綺麗に消して、黒板消しをごおおぉーーっと綺麗にしてから、教室を出ます。


 露璃さんが校門前で待ってくれているので、合流してお買い物に行くのです。


「……おや?」


 隣の教室の前を通ると、ナナさんが1人で残って何かをしています。


「…………」


 静かに、真剣な表情です。

 気になったボクは、教室の入り口からナナさんが何をしているか見てみることにしました。


 トランプを、机の上に不思議な順番で並べて、いくつかの束を作っていますね。


 そして、何枚かの束になったものの、上から2枚をめくりました。


「健康運……、大吉」


 今度は隣の束の上から2枚をめくります。


「友情運……、小吉、か」


 同じように、束の上から2枚を順番にめくっていきます。


「金運……、中吉。仕事運……、小吉。勉強運……、中吉。失せ物……、げっ、凶だ」


「占いですか?」


「えっ!? うわっ……!」


 ボクが声を掛けると、驚いたナナさんがめくろうとしていたカードの束をパササッと落としました。


「びっ……、くりした。ちょっと、急に声掛けないでよ」


「ごめんなさい! それは、占いですか?」


 ボクは、教室に入ってナナさんが落としたカードを拾いながら尋ねます。


「そう、だけど……」


「ボクも、占い好きなんですよ。ほら、おみくじとかって、何回引いても絶対に大吉が出るじゃないですか」


「はっ?」


「だから楽しくなって、つい何回も引いちゃうんですよね〜」


 ボクは、散らばったカードを集め終わると、それを束ねて机の上に戻しました。


 それから、せっかくなので上の2枚のカードをめくってあげました。


「あ、ちょっと、勝手に……! ……えっ?」


 出たカードは、ハートのエースと()()()()()でした。


「なんで……、確かに抜いたはず……」


 ナナさんは、慌ててトランプのケースを開けて、残っていたカードを見ました。


 ジョーカーとダイヤのエースですね。

 ナナさんはさらに驚いています。


「そういえばこの束って、何運のところだったんですか?」


「…………」


「あれ、ナナさん?」


 ナナさんは、ハートのエースとジョーカーを見つめたまま、動かなくなってしまいました。


 ふーむ?


「あ、いけません。善野さんを待たせているんでした。ナナさん、それじゃあまた明日!」


「えっ、あっ……、うん」


 ボクはたったか走って廊下に出ました。

 背後から、「……まさか、ね」というナナさんの呟きが聞こえた気がしました。




「お待たせしました露璃さん!」


 露璃さんと合流したボクは、一緒にとことこ歩いて近くの商店街に行きました。


 さーて、何を買いましょうか。


「露璃さん、カーブとフォークとカミソリシュートだったらどれが良いですか?」


「えっ? カーブ?」


「では、こちらの方向にしましょう」


「えっ、なんで今、野球だったの?」


 カーブの方向にアーケードをてくてく歩くと、大きなデパートが見えてきたのでそこに入ります。


 そしてカーブの軌道に沿って店内を歩くと、たどり着いたのは香水を売っているお店でした。


 香水!

 露璃さんが好きそう!


 ボクは、露璃さんの手を引いて店内に入り、キョロキョロと棚を見回してみて、なんだか一番キラキラして見えるビンを手に取りました。


「あ、それ……」


 店員さんにお願いして試しに少しだけ匂いを嗅がせてもらったところ、とてもスーッとしてフモッとした香りです。


「すごく良い香り!」


「うん……、シトラスと、イチジクと……、あと……、ホワイトムスク、かな?」


「それに、露璃さんにもピッタリだと思います!」


「私は、どちらかというとユメヒコ君のイメージだと思うけど」


「そうですか? 露璃さんが言うなら間違いないですね! じゃあ、これにしましょう」


「えっ」


「だって、ボクが露璃さんに贈るなら、ボクっぽい香りのやつが良いですから!」


 露璃さんが目をパチクリさせながら、絞り出すような声で「そ、そうだね……?」と言いました。


 ということで、店員さんにお願いしてラッピングしてもらい、お店を出てから露璃さんに渡しました。


 露璃さんは、すごく混乱したような表情でしたが、大事そうに香水の箱を抱きしめていました。


 そのあと、デパート内の喫茶店に入ったのですが、カップル限定パフェというのを勧められたので、それを頼んでみることに。


「…………あれっ!? いつのまにか、目の前に大きなパフェが……?」


「露璃さん、これって一つのパフェにスプーンが2本付いてるんですけど、分けっこして食べるものなんですかね?」


「えええっ!!?」


 アイスとか生クリームとかが冷たくて美味しかったんですけど、露璃さんのお顔がずっと真っ赤で、もしかしてロシアンルーレット的な辛いところでもあったのかな、と思いました。


 はて?




 ▶︎▶︎▶︎


 デパートを出たところで、斎藤さんと深森さんに会いました。


 そして、それプラス、


「お願いウグイス! ウチらのチームに戻ってきてよ!?」


「頼むって!」


「この通りだからさー!」


 ヤンキーみたいなお姉さんたちが、斎藤さんの足に縋りついていました。


 ……はて??


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