023・お隣の同級生と仲良くなれました!
おや、この女の子は……?
どこかで見たことがあるような……?
「……あ! もしかして、金村さんですか?」
「えっ……。……なんで?」
「ネットの写真で、お顔を見たことがありまして! 確か、……なんとかかんとかモ、というのをしているのでは?」
「読モね。……けど、モデル活動ではNANA名義にしてるんだけど?」
「そうなんですか? じゃあ、ナナさんとお呼びしたほうがいいですか?」
「いや、アタシはなんで苗字を知ってるのかを、……あー、もしかして、これ?」
と、ナナさんは玄関前に積まれた段ボール箱を指差しました。
確かに、宛先が金村七奈様になっていますね。
「しまったな……、セキュリティ良いからって油断してた」
「お荷物、たくさんありますね。何を買われたのですか?」
「……なんでアンタにそんなこと言わないといけないわけ? 男の子だからって、調子に乗らないでよ」
「ふむ……?」
なにやらナナさん、ご機嫌ナナメさんのようですね。
……あ、そうか!
「すっかり忘れていました。ナナさん、少し待っててください」
「は? あ、ちょっと……!」
ボクは自分の部屋に戻って冷凍庫を開けると、昨日の買い物の時に善野さんに言われて買っていた「つまらないものですがセット」を手に取りました。
そして紙袋に詰めて玄関を出てカギを閉め直すと、袋ごとナナさんに差し出します。
「これ、つまらないものですが!」
「え、急になに」
「ボクたち、この土日でここに越して来たんです! それで、こういうお引っ越しの時は、お隣さんにお土産を渡すものだと聞きまして」
ナナさん、ボクが礼儀知らずだと思ったから、ご機嫌が悪いのでしょう。
挨拶は人付き合いの基本。
古事記にもそう書いてありますからね!
「…………うざっ。そういうの、いいから」
「? 良いですよね! ご挨拶って!」
「話も通じないし……。はぁっ、もういいから、テキトーに置いといてよ」
「はい! 中身はピョンシェールの銀縞ロールケーキですので!」
「えっ? ……それってまさか? ……ちょっと、見せて」
ナナさんに紙袋を渡すと、ナナさんは「……マジだ、ヤバ。……冷凍庫入れとこ」と言って、玄関ドアを開けたまま部屋の中に。
あ、そうだ。
「ナナさーん。この、玄関前のお荷物、中に入れときましょうか?」
「え。なんで?」
「お荷物、たくさんだったので! それに、お名前を見られるのが嫌みたいだったので、他の方に見られないように、中に入れておこうかと!」
「あー、ありがと……?」
「いえいえ! どういたしまして!」
よいしょよいしょと全ての荷物を玄関内に運び込み、ナナさんがキツネのキーホルダーのついたカギでガチャンと閉めます。
「あ、そういえばボク、待ち合わせをしてたんでした!」
「え?」
「それでは、これからもお隣同士、よろしくお願いしますね」
ボクは、ナナさんに深々と頭を下げてから、階段に向かって走りました。
「……変なヤツ」
後ろから、ナナさんの呆れたような声が聞こえた気がしました。
▶︎▶︎▶︎
「善野さーん! おはようございます!」
待ち合わせ場所の公園前には、すでに善野さんが来ていました。
「おはようユメヒコ君。今日も元気だね」
「はい! 善野さん、昨晩は楽しかったですね!」
「へっ……!? ……あ、引っ越し祝い会のことだよね。うん、楽しかった」
「またやりたいですよね! 今度はもう少し難しいダンジョンをクリアしたお祝いとかで、やりたいです!」
そんなことを話しながら、学校を目指しててくてく歩きます。
「そういえば、ナナさんに会いましたよ」
「ナナさんって、……えっ、金村さんに!? どこで?」
「玄関先です。お隣の307号がナナさんのお部屋だったみたいですよ」
「ええー……!?」
善野さんが、びっくり仰天〜、みたいな表情になりました。
「それで、善野さんに教えてもらって買ったロールケーキを渡したら、喜んでくれてました」
「それなら、良かったんだけど……」
「家も隣で、学校も一緒だというなら。まさしくナナさんは、すでにボクたちの仲間みたいなもの、ということですね!」
すると、善野さんが、少し不満そうな表情をしました。
おや、どうしたのでしょうか。
「ユメヒコ君。さっきから、その、ナナさんっていうのは……」
「? 金村さんのことですよ?」
「それは、分かるんだけど……」
……?
「……あ、なるほど! 分かりました。善野さんも、これからは露璃さんと呼びますね!」
「へっ!? えっ、急になんで……?」
「だって、露璃さんも名前で呼んでほしそうだったので。……嫌でしたか?」
「嫌じゃ、ないけど……!! 急だったから、ちょっと驚いただけ……」
「じゃあ、これから露璃さんで」
「……!? あのあの、その、……学校の皆の前では、今までどおり善野さんにしてくれない?」
「そうですか? じゃあ、2人の時とか、ユメヒコ組の時は露璃さんで!」
「う、うん……。それで、お願い……」
善野さん、……じゃなかった。
露璃さん、なんだか耳が赤いですね。
ボクは、少し寄り道をしてコンビニに入り、露璃さんに冷たいお茶を買ってあげました。
「どうぞ! 今日は暑くなるみたいですからね!」
「そうだね。……梅雨も、もうすぐ終わりそうだもんね」
はい!
さて、周りに同じ学校の子たちが増えてきましたね。
「善野さん、今日の1時間目の授業って、なんでしたっけ?」
「えっ? あ、うん。今日は国語からだよ」
「国語! ボク、好きなんですよね〜。作者の気持ちを考えるのって、ワクワクしますからね!」
「そこでワクワクするのも、ユメヒコ君らしいよね」
ほどなくして学校が見えてきました。
正門前でボクらの担任の先生が立っています。
「忍野先生おはようございます!」
「おはようございます、忍野先生」
「はい、おはよう。ユメヒコは今日も元気だな。露璃は、ユメヒコと一緒か。珍しいな」
「実はボクお引っ越しをして、善野さん家の近くに住み始めたんです! なので、今日から一緒に登校してます!」
「ほーん? そうなのか?」
忍野先生はボクと露璃さんの顔を見比べたあと、「ま、そういうのも青春かー」と言いました。
「お前ら、仲良しなんだな」
「はい! ボクと善野さんはマブですよ!!」
「ゆ、ユメヒコ君……!」
「そういうことを何のてらいも言えるのは、お前の素晴らしいところだな、ユメヒコ」
えへへ、褒められちゃいました!
すると後ろから、
「……はっ? なんでアンタ、ここにいるの?」
という声が。
「その声は、ナナさん!」
「声デカ……。え、マジでなんで?」
「今日は月曜日ですから、学校の日ですよ!」
「そうじゃなくて……! アンタも、ここの生徒なの?」
「はい! 3年B組の歌方ユメヒコです!」
「しかも隣のクラス!? ……え、同い年??」
ナナさんが首を傾げていますね。
すると忍野先生が、
「なんだ、ユメヒコはナナとも仲が良いのか? お前、なかなかスミに置けないな」
「はい! ナナさんともマブですよ! 住んでる部屋も隣ですから!」
「お、おお? ……そうなのか?」
「……知らない。マブでもないし」
ナナさんは、スタスタと校内に入っていってしまいました。
おやー?
「……ユメヒコ君、行こ」
そして露璃さんもなんだか不機嫌になったように見えます。
おややー??
「ユメヒコお前。……まぁいいか、今日も勉強頑張れよ」
「はい!!」
なにはともあれ、ですね。
ナナさんと露璃さんと、少しずつ仲良くなれた気がします!
いぇい!!




