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017・ユメヒコ組、リベンジです!


「やってきましたよ、ネズミーランド!!」


「やめろ、バカ」


 さぁ、今日こそ皆の力でクリアしてやりましょう!


「ラットダンジョンか……。ラットより迷路がややこしいから、俺も一回しかクリアしたことないな」


「しかもここって、毎回構造が違うって話なんだろ? 無駄に歩かされるのは、クソゲー感強いよなぁ……」


 大丈夫ですよ!

 今日は4人なので、昨日の2倍です!


 しかもただの2倍じゃなくて、ボクたちなら2×2で200人力です!

 さらに10倍ですよ、10倍!!


「ユメヒコ君、今度私と一緒に、期末テストに向けたお勉強しようね」


「ほんとですか! ありがとうございます!!」


 善野さん、優しい!

 素敵♡


「ひうっ。ま、まぶしい……」


「善野のやつでも、あれは慣れてないんだな」


「ユメヒコくんの笑顔、破壊力ヤバいよなぁ……」


 さて、まずは装備を整えましょうか。


 斎藤さんは、鉄腕ナックル。

 深森さんは、射的銃とヘルメットと膝当てサポーター。

 善野さんは、湧き出し水筒とヘルメットですね。


 そしてボクも、ヘルメットとバットを装備して準備完了です。


「あれ、ユメヒコ君。このヘルメットって、ユメヒコ君がいつも被ってるやつじゃない?」


「あれ、そうですか?」


 同じものが3つもあると、どれがどれか分からなくなりますね。


「けど、防御力は変わりませんので、今日は善野さんがそれを被ってください!」


「…………!? ……う、うん。被るね」


 善野さん、なんだか恥ずかしそうにして、ヘルメットに顔を埋めてしまいました。


 はて?


「……あー。ユメヒコ。防具は良いとして、善野の武器はないのか?」


「えっ? 善野さんの武器は、その水筒ですよ?」


「はっ? 水筒が武器? ……あー? もしかして、特殊スキル系なのか?」


「は、はい。水の踊り子ってジョブなんです……」


 ヘルメットをしっかり被った善野さんが、水筒から出した水で水球を作りました。


 そしてそれをぐねぐね動かして、いろんな形を作ってみせてくれます。


「おお、すげぇな」


「へー! こんな、びっくり手品みたいなこともできるんだなぁ」


「この水筒だと、たくさん水を出して色々できるんです」


「色々? ……ふーん。善野ちゃん、何ができて何ができないか、分かってることをあとで教えてよ」


 お、深森さんが、ゲームをしてるときみたいなキリッとした表情になってますね。


【ゲーマーのサガで、検証してみたくなってるな】


【システムを解明するんは、気持ちええからな】


「まぁ、そういうのは追々な。とりあえず、進んでみるぞ」


 ということで、斎藤さんが先頭、ボクがその少し後ろ、深森さんと善野さんがボクのさらに後ろという並びでてくてく歩き始めました。


 入り口では、善野さんが青のスプレーをシュッ。


「……あれっ?」


 善野さんは「これ、こんなに匂い強かったっけ……?」と首を傾げます。


 そして、少し歩くと、まずはネズミが1匹ちゅーっと出てきました。

 斎藤さんの足元目掛けてチョロチョロっと走ってきます。


 善野さんが、昨日のごとく水球で捕まえようとして、


「お? ……ほっ!」


 それより早く、斎藤さんがネズミを踏みつけました。

 足の下で、ネズミがチューチュー暴れています。


 斎藤さんが、そのままサッカーのリフティングのように足捌きだけでネズミを蹴り上げると、


「シッ!」


 左アッパー1発で、ネズミをマナ石に変えてしまいました。


 そして空中に現れたマナ石を、左ジャブでパシっとキャッチ。


 さすが斎藤さん、手慣れてますね。


「なんか……、昨日までより、明らかに体のキレが良くなった気がするな」


「さすが斎藤さん。女子、三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言ったものです」


「いや、これはどう考えても、お前の影響だろ。ユメヒコ、お前なんかしたか? それか、……なんか、変えたか?」


「何もしてませんし、何も変えてはいませんが……、パーティー登録したら指揮官のレベルは勝手に上がりましたよ。ほら!」


 ボクが3人にウィンドウを見せると、3人はそれぞれ顔を見合わせました。


「ユメヒコくん。ちょっとそっちの、ログ見せて」


「ろぐ?」


「えっと、そのウィンドウで出てきた文字の履歴を見れると思うんだ。そっちの、上矢印を押してみて」


 と、深森さんが言うので上矢印を押すと、確かに今まで出てきた文字がたらら〜っと流れて出てきました。


「編成人数で、上限解放されるのか。……これ、他の条件もありそうだな。どんなのがあり得るか……」


「まぁ、そのへんは後にしとけ。今すぐどうこうの話じゃねーだろーし。それより深森、お前もスキルを使ってみろよ。たぶん、前より強くなってんぞ」


「じゃあ……、ちょっと怖いけど、マップ探査してみるよ」


 そう言うと、深森さんは目を閉じて深呼吸をしてから、右目を光らせて周りをぐるりと見回しました。


「ほんとだ。前より遠くまで見える! それにこれ、……迷路の最短ルートも分かるぞ」


「マジか」


「うん……。最短ルートが、ぼんやり光って見えた。たぶん、他のスキル使うまでは目の奥に残像として残ってる。皆、その先は右で、次は左だ」


「それなら、深森さんの案内で進みましょう! れっつ、ご〜!」


 ということで、深森さんの指示に従って、皆でてくてく迷路を進みます。


 一応、分かれ道ごとでは善野さんがスプレーをシュッとし、出てきたネズミは斎藤さんがスキルも使わずに踏み潰していきます。


 あ、そうだ。


「斎藤さん。前にゲットしたブーツがあるんですけど、それを履きませんか。そっちのほうが、踏み潰しやすいと思います」


『斎藤金衣鳥は「ガッチリブーツ」を装備しました』


 斎藤さんの靴が、スニーカーから黒光りするブーツになりました!


「ほほう。……少し重いが、フッ!」


 ビュバッ!

 という風切り音を残して、斎藤さんのハイキックが空を裂きました。


「重い分、勢いが乗るな。よっ、ほっ!」


 それから何度か、試し蹴りをしてみますが、どれも重くて鋭い音がします。


「オラっ!」


 最後に、壁に向かって後ろ回し蹴りを繰り出すと、ズドンっという音がダンジョン内に響き渡りました。


「うひっ、ヤバい音」


「斎藤さん、すごい……!」


 深森さんと善野さんも驚いています。


「斎藤さん、めちゃくちゃパワーアップですね!」


「いいな、これ。硬さも上等だ」


 斎藤さん、嬉しそうです。


「けど斎藤って、かばうとか持ってる割には防具付けないよな」


「あー、使いやすい防具を持ってないしな。それに、素早く動けるほうが、かばいに行きやすいだろ」


「……お前さぁ」


「あれ、ちょっと待って」


 善野さんが、ひくひくと鼻を動かしました。


「どうしました、善野さん」


「……前後から、たくさんの匂いが来る」


「ほんとですか?」


「うん。これはたぶん、昨日みたいな……」


 と、そこに、通路の前後両側から、大量のネズミどもが現れました。


「ヂュー!」

「ヂュー!」

「ヂュヂュー!」


「ヂュー!」

「ヂュー!」

「ヂュヂュー!」


 すごい数です!

 昨日の倍はいます!!


「斎藤! これ、お前の蹴り音のせいじゃないか!?」


「……かもな」


「お前なぁ!?」


 深森さんが面白い顔でキレています。


 斎藤さんが舌打ちをして「なんとかすりゃあいいんだろ!」と言っています。


「お二方、落ち着いてください。善野さん。両側ですが、床一面にいけますか?」


「や、やってみるね! えいっ!」


 善野さんが、水筒をひっくり返してドババババーー、と大量の水を出します。


 そして出てきた水を通路の両側の床いっぱいに広げて、水たまりを作りました。


「ヂュヂュー!」


 そこにネズミたちがやってきて、ボクたち目掛けてバチャバチャと水たまりに入りました。


「えいっ!」


「ヂュッ!?」


 水に足を掴まれたネズミは、その場で動けなくなりました。


 そこにどんどんと次のネズミたちが突っ込んできますが、善野さんの作った水のカーペットで次々と捕獲されていきます。


「おおう、マジか」


「す、すごい……!」


 ドバドバ出てくる水と、ゾロゾロ出てくるネズミの勝負は、水量で圧倒した水のほうが勝ちました。


 ボクたちの周りの床一面を、もがくネズミたちが埋め尽くしています。


「気持ち悪っ!」


「斎藤さん。責任持って踏み潰してくださいね」


「お、俺がっ!?」


「いや、斎藤が呼んだんだから斎藤が倒すしかないだろ。僕は今、マップ保持のためにスキル使えないし」


「あー、クソ。分かったよ!」


「ボクはバットで手伝えますよ?」


 ボクはバットをブンブン素振りしますが、斎藤さんは首を振りました。


「いい。ユメヒコは、そこでプルプルしてる善野を守ってろ」


 見ると、どうやら善野さんは、大量のネズミを捕獲するためにわりと必死らしく、涙目になって全身がプルプルしていました。


「前よりたくさん動かせるけど……、いっぺんに捕まえとくのは、やっぱりたいへん……!」


 善野さんの全身がぷるぷるしてて、膝の震えに合わせて水面もぴちゃぴちゃ動いています。


 これ、ひょっとして善野さんが力尽きたら、またネズミたちが自由になるのでは?


「頑張れ善野さん! 斎藤さん、急いであげてください!」


「しゃーねーな! おらおらおら!」


 斎藤さんが次々とネズミたちを踏み潰していきます。


 ぴちゅん!

 ぴちゅん!

 ぴちゅぴちゅぴちゅん!


 最後の悪あがきで噛みつこうとするネズミもいますが、硬いブーツには歯が立たないようです。


 10分ほどかかって、なんとか全てのネズミを倒せました。


 ちょっとフラフラしてる善野さんが、マナ石だけをぐにょにょーっと集めたあと、水の制御を手放したようです。


「ふぅ、ふぅ、疲れた……」


「けど、助かったぜ。ありがとよ、善野」


「斎藤のポカをカバーしてくれたね。ありがとね、善野ちゃん」


 大人2人に感謝されて、善野さんもニコッと返しました。


 うんうん。

 皆が仲良くなっていくのはいいことですね。


 ボクは、集まったマナ石をジャラジャラと拾いつつ、深森さんに聞きます。


「深森さん、まだ最短ルートは見えていますか?」


「あ、うん。いけるよ」


「いっぱいマナ石も拾えたので、あとはボスを倒しに行きましょう!」


「そうだね。善野ちゃんも、疲れてるし」


 そうしてボクたちは、ボス部屋までてってこ歩いていきました。




 ボスは、なんか黄色くて電撃を出す体長40センチほどのネズミでした。


「ビ○○ューみたいです!」


「やめろバカ!?」


「近づくと危なそうだなぁ」


「では、近づかずに倒しましょう! 深森さん、お願いします!」


「ま、ここまで道案内しかしてなかったし。最後は任せてよ」


 深森さんが、装填済みの射的銃をぐっと構えます。


「あ、私、抑えておきますね」


「ありがと。デバフもかけとくか。えいっ!」


「ビガガーー!?」


 善野さんの水で捕まえて動けなくし、深森さんが眼力でデバフをかけました。


 そして遠くからパコンパコンと射的銃で一方的に撃つと、ヘッドショット5発ほどでマナ石になりました。


【1000円分のやつだな】


 一日の食費分!

 やったね!


『ラットダンジョンのクリア達成!』


『初踏破ボーナスとして、10連ガチャチケットを1枚進呈します!!』


【全裸教!!!】


 帰ったらガチャの時間だ!!

 やったね!!!


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