表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/33

013・水の踊り子さんはクンクンしてヒョイっとします!


 後ろから駆け寄ってきたお友達たちに「よく頑張ったね」とか「これはもう勝ち確だよ」とか言われて頷く善野さん。


 ところで、今更ながら善野さんも、ダンジョンジョブをお持ちなのですね。


「え、うん。去年の夏ぐらいに、急に出てきたの。一応、探索者登録もしてあるんだよ」


 ほら、と見せていただいたモグールのアプリ画面には、Fランクの文字が。


「従姉妹の姉さんたちと一緒に、試しに何度か潜ってみたこともあるんだけど。あんまり戦闘向きのジョブじゃなかったみたいで、迷惑かけちゃって。それ以来、潜ってないの」


「そうなんですね。ボクもまだ未登録のGランクなので、似たようなものですね!」


「未登録なのに、潜ってるの……!?」


 びっくりした様子の善野さん。

 そのあと顔をブンブンと振ってから、キリッとした顔になりました。


「ユメヒコ君、あんまりそういう無茶は、しちゃダメだよ。何かあったらどうするの?」


「? 楽しいことがあったら、いっぱい楽しみますよ!」


「……これは本当に、私が頑張らなきゃ」


 善野さんのお友達2人が、善野さんの肩をポンポンと叩いています。

 やるっきゃないね、とか、ユメ君は任せたよ、とか言われています。


「ユメヒコ君、今日のダンジョン探索は、君が無茶しないか私が見ててあげるからね」


「ありがとうございます!」


 善野さん、優しい。

 素敵♡


「ひえっ、そんなニコニコ顔を向けられると……!」


「やば」


「ユメ君、天使過ぎる」


 そんなわけで、善野さんのお友達たちと別れて、善野さんと2人でてくてく歩くことに。


 向かったのは、善野さんのお家の近くにある低級ダンジョンです。


「昔、従姉妹の姉さんたちと潜ったことがあって、中の構造はよく知ってるから」


 ということのようです。

 なるほど!


 そしてボクは、ダンジョンに入る前に善野さんを誘って喫茶店に入りました。


 戸惑う善野さんの手を引いて、テーブル席に座らせます。


「あ、隣に座るので、もう少し奥に詰めてください」


「隣に!?」


「はい、隣のほうが()()()()ですから」


 セーラー服のスカートを綺麗に畳んで座る善野さんの隣に、ボクも座ります。


 そしてオレンジジュースを二つ頼んでから、ボクはウィンドウ(メニュー機能)を開きました。


 編成コマンドで、善野さんのアイコンを選んで編成します。


 ちなみに善野さんのアイコンは、前髪パッツン三つ編みおさげで、大きなメガネをかけた女の子になっています。


 善野さんそのままですね!

 可愛い♡


『UR:水竜(すいりゅう)舞姫(まいひめ)・善野 露璃(つゆり)を編成しました!』


「えっ!? ユメヒコ君、それ、何?」


「メニュー画面です!」


 ウィンドウが見えるようになって驚く善野さん。

 メガネを外して目をパチパチさせます。


【あー、そっちかー……】


【悪くはないけどな……】


「これで、善野さんのジョブとかが分かるんですよ。ほら」




・善野 露璃(つゆり) 15歳

職業:水の踊り子・レベル5


資質↓

知力:38

心力:31

技力:41

速力:22

筋力:10

体力:21

指揮官適正:29

幸運度:25


特性↓

・嗅覚鋭敏

・論理思考


ダンジョンステータス↓

HP:61/61

MP:123/123

攻撃力:15

防御力:33

魔法力:77

抵抗力:42

素早さ:39


スキル↓

・臭気記憶

・液体操作

・液温変化




「こ、こんなに……!? え、モグールアプリで見られる分より、たくさん情報が出てるんだけど……」


「そうなんですか?」


「うん……。アプリだと、名前と探索者ランクと、ジョブ名とダンジョンステータスだけだから……、あっ」


 善野さんは、急に慌ててウィンドウに手を伸ばしました。

 しかし、触れずに手が空を切り、わたわたとしています。


「どうしました?」


「いや、たいしたことではないんだけどね……!? その、あんまりマジマジとステータスを見られると、ちょっと恥ずかしいなって……!?」


「そうでしたか! では、代わりにボクのやつを見ますか?」


 ボクのステータスを見せると、善野さんはさらに驚きます。


「え、ユメヒコ君、攻撃力3しかないけど!?」


「はい。ボクはクソザコナメクジなのです」


「その、私も攻撃力が高いほうではないんだけど……?」


「おそろいですね!」


「え、ええー……」


 それからじーっとボクのステータスを見つめたあと、ふぅ、と深い息を吐きました。


「……うん」


「?」


「これは本当に、私がなんとかしないとダメだね」


「そうですか?」


「うん。だってユメヒコ君、このステータスでも、平気で敵に飛び込んだりするでしょ」


「よく分かりますね!」


「ユメヒコ君って、放っておいたら絶対に無茶するもんね」


「えへへ」


「褒めてないからね!? ……だから私が、無茶しないように見守ってあげるから」


「ありがとうございます!」


 そんなこんなと話していたらオレンジジュースが出てきました。


 ストローでちゅーっと飲んでから、お店を出ます。


「ごめんね、ご馳走になっちゃって」


「大丈夫ですよ! 昨日の探索で稼いだお金がありましたので! 今日も稼げるように、頑張りましょう!」


「今から行くところは、稼げるかどうかは分からないけど……。でも、たぶん私たちでも危なくないところだよ」


「どういったダンジョンなのですか?」


「えっと、迷路になってるダンジョン。通称、ラットダンジョン」




 ▶︎▶︎▶︎


 ということで、廃ビルの地下にできているダンジョンに入ってみると、なるほどこれは迷路です。


 高さと幅が2ユメヒコ(約3メートル)四方の通路がくねくねしたり分岐したりしてたくさん伸びているようですね。


 これは、いっぱい歩いたら迷いそうです。


「だからまず、入り口でこれを使うの」


 善野さんが取り出したのは、青とオレンジの2本のスプレー缶でした。

 どうやら両方とも制汗スプレーのようです。


 善野さんは、青いラベルのほうのスプレーをシュッと一押し。

 ほんのり石鹸の香りがします。


「これ、善野さんがよく使ってるスプレーですよね」


「えっ!? あ、うん。そうだよ」


「体育のあとの善野さんと同じ香りがします」


「そ、そうかもね……!?」


 善野さん、なんだか顔が赤いですね。

 照れているようです。


「そ、それでね。この匂いって、私がよく覚えてる匂いだから。他と区別がしやすいの」


「ほほう? つまり?」


「つまりその、もし迷路で迷っても、この匂いを頼りに入り口に戻れるってこと」


【でた。ツユリちゃんのくんくんムーブ】


「へー! すごいですね! ワンプッシュでそんなに分かるんですね!」


「う、うん。普段から使う匂いは、よく覚えてるから」


「じゃあ、ボクの匂いも覚えたら、もし途中ではぐれても大丈夫ってことですか?」


「へっ!? あ、うん、そうだね」


「じゃあ、ボクのことも覚えておいてください。ほら」


 ボクが両手を差し出すと、善野さんがカチンと固まりました。


 そして、おずおずと手を伸ばしてくるとボクの両手を取って、顔に寄せます。


「これは、安全のため……。安全のため……!」


 善野さんが、小さなお鼻をボクの手に近づけて、くんくん匂いを嗅いでいます。


「くんくん、くんくんくん……」


 しっかり覚えてくれるみたいです!

 嬉しい!


 しばらく真剣な表情で嗅いでいましたが、やがてスンッとした表情になって、顔をあげました。


「私、もう一生忘れないと思う」


「良かったです!」


 これでボクが迷子になっても、善野さんが探してくれますね!


「それなら、行きますか」


「うん、行こう」


 ということで、ボクはいつものヘルメットとバット装備。


 善野さんにも、余ってるヘルメットを被らせてあげて、さらに善野さんは、自販機で買った天然水のペットボトルを取り出しました。


 キャップを開けると、中の水がうにょーんと動いて空中に出てきます。


「これが私のスキル、液体操作だよ」


 善野さんの顔のあたりで、水の塊がふよふよと浮いています。


 そしてぐにょーんと伸ばしたり、丸バツ三角を作ってみたり、精緻な小鳥の形にして羽ばたかせてみたりと、踊るように自在に動かしてみせます。


「すごいです! なんでも作れるんですね!」


「慣れてる形なら、だけどね。ダンジョンには潜らなかったけど、お風呂とかで色々動かしてみたりはしてたの」


 善野さんは、さらにもう1本のペットボトルを開けて、合わせて1リットルの水を自分の周りに浮かせました。


「たくさんの水はたいへんだけど、これぐらいならスルスル動かせるし、MPが切れるまでは浮かせていられるよ」


「なるほどー」


 さて、お喋りしながら適当に道を選んで歩いていると、壁の穴からピョンと、1匹のネズミが現れました。


 体長は20センチほどあって、子猫ぐらいはあるネズミですね。


「ダンジョンラットだね。チョロチョロ素早いけど、力は弱いし噛みつき以外はしてこないんだって」


「なるほど!」


「それで、私も以前ここに潜ってから色々考えたんだけど……」


 善野さんの操る水球が、バスタオルみたいに平たく伸びてネズミの足元に潜り込みました。


 そして、ネズミの四足とお腹のあたりを水で掴むと、ひょいっと持ち上げます。


「ヂューー!?」


 ネズミが慌てて脚をジタバタさせますが、空中に浮かんでいるのでどうにもならなくなってますね。


「……よし、できた」


 そして、そのまますいっと動いて、囚われのネズミがボクの目の前に。


「はい、どうぞ」


「なんと」


「私が抑えておくから、ボカッとしてあげて」


 ボクは、普通にバットを何度か振り下ろして、ネズミをマナ石に変えました。


 そして、水の中に浮かぶマナ石をつまみ取って一言。


「……すごい!! とっても倒しやすいです!!」


「えへへ、良かった。これなら私でも、役に立てそうだね」


「この調子で、ガンガン行きましょう!」


 これなら、ネズミが何匹出てきてもヘッチャラですね!!

 いぇい!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ