79_マルマとマルロ
ロキ達三人の自主剣術講習の後、ライガは、淡々とダンジョンの中で調査を行い、ギルドへと戻った。
その道すがら、今朝のロキ達の朝練を思い返す。
ロキ達の素振りを確認すると、多少自己流になりかけていたが、思ったよりもキチンと型通りに出来ていた。予想以上に頑張っているらしい。
劇的ではない物の、やはりライガとしても、彼らが成長していくのは、うれしい事だった。
「らくえんをおわれた マルマとマルロは おともであるウシを ひきながら あらたならくえんをめざして たびだちました。」
ギルドに戻ったライガは、バール爺の所へ“研ぎ”を頼みに立ち寄ると、作業場の隅で椅子に座っているイルマは今日も元気に、バール爺に買ってもらった本の音読していた。
「あ!ライガ!」とライガの来訪に気づいたイルマは、ぴょんっと椅子から立ち上がり、ライガの方へとパタパタと走っていく。
「おはよう、イルマ。」
「おはよう、ライガ。ヴェルデもおはよう。」と肩の上に載っているヴェルデにも挨拶をする。そして、「かあいいね~。」と言いながら、やさしくヴェルデの頭を撫でるのだった。
「今日は、イルマは、何の絵本を読んでいるのかな?」
「きょうはね、マルマとマルロのおはなし!」
マルマとマルロの話...
ああ、双子の神が父神を怒らせて、楽園とされる神域から追い出され、新たな楽園を求め旅立つ話か。その後、その二人が辿り着いた新たな地が今のリビルトリア国(ライガの国)の王都であるグランデで、この国の成り立ちを語った神話だ。俺も良く小さな時に読んだっけかな。
「よう!ライ坊!“研ぎ”の依頼かい?」
「ええ、お願いします。」
「よっしゃ、よっしゃ!この爺に任せときな!」
「ところで、バール爺。」
「なんじゃい?」
「聖樹に詳しい方って、誰かご存じですか?」
「聖樹?聖樹かぁ...ラベーロ当たり知ってそうだがな。」
「ああ、確かに植物の専門家ですもんね。いや、聖樹って植物か?いや、植物か。」
「あとは、月下の巫女さんとか、スヴェトラーナ当たり知ってそうだがな」
「スヴェトラーナさん鑑定の魔女ですが、知ってますかね。」
「そうさな、鑑定士になる為に勉強してるんだから、その辺知ってるんじゃないか?それに過去、鑑定してるかもしれないじゃろうて。」
「確かに。ちょっとその辺当たってみます!」
「おうよ。」
その足で、ライガは、残業用のサンドイッチを購入する為に食堂に向かった。
「よう!ライガ!」
「ああ、ジェイクさん。何か残業に気合が入りそうなサンドイッチとかありますか?」
「おまえ、また残業かぁ?体大切にしろよ!」
「ありがとうございます。」
「そうだな、ブルサンドとかどうだ!特性ラニーニョソースで酸味が聞いてうまいぞ!ペーターの試作品なんだけどな、結構うまかったぞ。」
「ほう、それは、楽しみですね。」とちらりと、厨房から顔を見せてたペーターに目線を送ると、「あざーっす!」と声が返ってきた。
「では、それとコーヒーを。」
「了解。後で、リッテに持っていかせるよ。」
「えっ本当ですか!ありがとうございます。ああ、そういえば、燻製の件どんな感じですか?」
「...ああ、あれか。」
「ええ。あれです。」
「それがなぁ、何度やっても消し炭なんだ。何でだろうなぁ...。」と遠い目をするジェイク。
「...ですか。う~ん、何ででしょうかねぇ。ちなみに、今週末も作ってますか?もし良かったら、また顔出しますよ。というか、あれから、ジェイクさんにまかせっきりになっていて申し訳ないのです。」
「今週も試す予定だが、まあ、あんま気にするな。料理に関しちゃ俺の専門だし、お前さんだって、配置換えになっちまったじゃねえか。」
「そう言ってもらえると、助かります。」
そう言って、ライガは、食堂を後にし、その日もせっせと残業に勤しんだのだった。
ちなみに、ペーターの賄い飯は、ジェイクが言っていたように、とてもおいしかった。




