80_リリアナ_前
カラン カラン
「いらっしゃい!」
「こんにちは。」
「あら、ライガさん。ヴェルデちゃんもいらっしゃい!」
「ぴー!」
「今日は、どういうご用件かしら?」
「ええ。聖樹について何かご存じだったらと思いまして。」
「聖樹?なんだか最近良く聞くわね。」
??この前トレント倒したからかな。
「聖樹...それは、聖なる木。聖域に住まうと言われている木ね。聖域のありかがお伽噺だから、聖樹自体もお伽話。それこそめったにその欠片は市場に出てこないわ。まあでも、殆どないとはいえ、市場に出てくるという事は、聖域がどこかにあるっていう信憑性は、とても高いけどね。」
「出てきた聖樹が偽物ってことは?」
「ん~まあ、そうね。ゼロではないけど、市場に出る前に、程度に差があるとはいえ、ちゃんと鑑定は掛けられるからね。」
「まあそうですね。魔物...とは違うのですか?」
「ええ。魔獣と聖獣がいるように、木にもトレントと聖樹があるわ。」
「なるほど。ちなみに、聖樹からトレントに代わるってことありますか?」
「聖樹からトレントに?」とスヴェトラーナは眉間に皺を寄せ考える。
「聞いた事ないけど...でも」
「でも?」
「聖獣は生まれた時から聖獣で、魔獣も生まれた時から魔獣。でも、元の生き物が魔素の過剰摂取によって、魔獣になるとも言われているから、もしそれが本当なら、聖樹が何等かの影響によって、変わる可能性はあるかもね。推測に過ぎないけど。」
「なるほど。」
「ライガ君は、今日はお休み?」
「ええ。まあ、この後、ギルドに寄るんですけどね。」
「あら、休日に何でまた。」
「今度ギルドのメニューで燻製を出そうと思っていて、ほら、うちって“売るほど”魔獣肉ありますし。それで、うちのシェフが試行錯誤中なんで、陣中見舞いも兼ねて様子を見に行こうと思いまして。」
「えっ!そうなの!燻製良いわね!食べたいわっ!私も付いていっても良いかしら?」
「え?スヴェトラーナさん、お店は?」
「ああ、もうそんなの店じまいに決まってるじゃない!燻製良いわね~。お酒何持って行こうかしら♪」とルンルンなスヴェトラーナ。カウンターの横についてあるカーテンをシャッっと開けるとそこには、多種多様の酒瓶が...。そして、どれを持っていくのかウキウキと彼女は吟味し始めた。
なぜ、こんな所に大量の酒瓶が。
だが、はしゃいでいるスヴェトラーナに、これだけは言わねばと思うライガ。
「あ、あのですね?」
「ん?」
「その、今まで成功していないのですよ。」
「え?どういう事?」
「今まで何度も試作してるんですけど、なぜか毎度消し炭になってしまうらしく。」
「消し炭...。」と少し考えこんでしまっている。
まあ、消し炭は、さすがにお酒のおつまみには厳しいわな。
「ん~でも、一緒に行くわ!準備するからちょっと待ってて。」と言って、扉に『本日閉店』と案内板を出し、奥へとさっさと下がっていった。
「お待たせ。ねえ、ギルド行く前に、一件寄っていっても良いかしら?すぐ済むから。」
「ええ、構いませんよ。時間で約束しているわけではないので。」
「ありがとう。」
「で、どちらに?」
「リリアナちゃんのお店。」
「ああ。」と言いながら、ライガは、店主の顔を思い出し、顔が若干引きつったのは、たぶん気のせい。




