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モンタディル王国 動乱 その2

ロットの機能が発揮されます。

「何をまた。本来ならあり得ない事態だろ、この人がいる時点で。なら答えはひとつだ。お前……分かってて招き入れたな?」


『マスター、何を根拠に』

「悪あがきは無しな。さっさと吐け」

『…それは悪役のセリフですが?』

「どう言おうと同じだろ。こんなテンプレなお約束、どっから湧いてきたんだ」


「すまない、さっきから言っていることの意味が分からないのだが。てんぷれ?とは何だ?」

「あんたのことだよ」

「え?」

混乱したまま見やると、奇妙な格好の彼…やや不機嫌そうだが…が話し出す。


「あんな見た目アサシンの集団が血眼になって探している段階で、標的とされてる人間が普通じゃないことは明らかじゃないか。あてはまるのはお家騒動もしくは覇権争いくらいだろ?相当な高位貴族……ひょっとすると王族クラス」

「!!」

的確な指摘に息が詰まった。これだけの情報で正解に辿り着けるとは、一体…?


「当たり、かぁ。どうすっかな、これ」

『マスター、はっきり言いすぎです。本人かなりダメージ受けてますよ』

「曖昧にしておく方がまずいぞ、これは。おまけにお付きの人がいないと来た」

「そ、そういえば、クラウスがっ!つぅっ!」


訳の分からぬ会話に気を取られていたが、側近の安否が不明なことに気が付いて立ち上がりかけ…結果、うずくまることとなった。


「お?どっか痛めてるっぽいが大丈夫か?見せてみろ」

再度椅子に座って足を投げ出す。あちこち触った後、

「う~ん、素人判断だけど、ひねっただけで骨には異状ないようだな。かといってそのままにしとくと重症化しそうだし…」

その場でちょっと思い悩む様子を見せたのち、カウンターの奥へ移動していく。棚の中をガタガタと動かしていたが、やがて木の箱を手に戻ってきた。


緑色の十字が描かれたその箱を開けて、何やら取り出す。

「ま、できるのは湿布くらいだよな」

「しっぷ?治癒魔法ではないのか?」

「魔法なんて使えないよ。今やれるのは応急手当だけだ」

そういいながら出してきたものを足首に貼り付け包帯を巻く。スッと清涼感のある香りが鼻を抜け、熱を持った患部がひんやりとしてきた。


「さて、これでやれることはやったかな。ああ、あの連中もようやっとあきらめたみたいだ」

見上げると、男たちが集まっている。


『目標が見当たらない、だと?』『このあたり一帯を探したが見つからない。であれば逃げたというべきだろう』『ちっ。しくじったか』『いやまだだ。ここから戻る道筋を狙おう。まずはシーランの入り口付近で、それと高級宿を重点的に当たれ』『了解した』


「やれやれ、相当しつこいね彼らは。どうするロット?」

『シーランは無しですね。あの連中と鉢合わせしますし。いっそのこと別方向に飛びますか』

「そう言ってもなぁ、どこがいいんだか」


『いっそのこと王都にしますか。ジェイ…』

「あのザル亀爺さんか?確かに治癒術師で影響力はあるけどな~」

『マスターは苦手ですよね、あの方』

「じいちゃんと同じ人種なんだよ、あの人。無茶ぶりしてくるし。でもまあ、今回は適任かな」


『了解です。ついでと言っては何ですが、近くの川に浮かんでいる人も回収していきましょうか』

「ん?それって、この人関連?」

「!!クラウスだ!た、頼むっ、助けてやってくれ!」


「だとさ。ロット、行けるか?」

『はい、マスターのご命令ならば。……回収完了。玄関の外にあります』

「もう見つけたのか!?」

あまりの急展開に驚く。ここは、この人たちは何なのか?

 

    カランコロン    カラカラカラカラ・・・・・・


言葉通り、その扉のすぐ近くにずぶ濡れのまま、転がっていた。


「この人で間違いないかい?確認をしてくれ」

足を引きずってそばに行き、顔を確かめる。怪我をしてあちこちに血がにじんでいるし顔色もよくないが、いつも見慣れていた側近だった。

「ああ、クラウスだ。中へ入れていいか?」

「あんたは足を痛めてるから先に入ってくれ。オレが連れていく」

「よろしく頼む」


頭を下げて元の椅子に座る。続いて入ってきた彼が扉を閉め、地面に横たえたクラウスの様子を見ている。素人だとは言っていたが、胸に耳を当てたり手首を握ったりと生存確認をしている様子はなかなか堂に入っている。


『濡れたままだと体によくありません。タオルと着替えを出しましたから着替えさせた方がいいと思います』

「あ、私も手伝おう」

「あんたは座っててくれ。こいつが気づいた時の反応が怖すぎる」

「……」

『さっきから言葉がキツいですよ。溜まってますか?』

「ちゃうわいっ!王族に手伝わせるなんて不敬罪一直線だろうがっ!」

『あら、結構考えてるんですね。見直しました』

「ったくもう…この腹黒AIが……」


ぽんぽんと言葉の応酬をしながらも、濡れた身体を拭いて着替えさせている。手伝いを申し出たものの、私にできることはない。自分のふがいなさに内心で悔やんでいると。


   ぐぐうぅぅ~~


「おお、なかなか豪快な音だな」

「す、すまんっ!」

腹を抑えてうつむく。実際、夕食抜きで逃げ回っていたのだ。そろそろ限界でもあった。


「隠れていた時、いい匂いがして…思わず近づいたらここに来ていたんだ。申し訳ない」

『やっぱりマスターの料理に釣られたんですよ。そういったでしょう?』

「それはない。ロットの陰謀だ」


きっぱりはっきり言いきって立ち上がる。足元には着替え終わって毛布にくるまったクラウスが寝ている。

「だがまあ、オレも腹が減ってるし、ひもじいのはつらいからな。簡単だけど飯を作るから待っててくれ」

そう言ってカウンターからさらに、その奥の部屋に移動する。


その間に、私は跪いてクラウスに触れた。まだ目覚めはしないが呼吸は安定しており、顔色も戻ってきている。

「良かった…」

大事な友を亡くしたかと恐怖した。それが回避されただけで今日の幸運を女神に祈りたい気分だった。






腹黒AIの真価が出てきます。

……まだ序の口ですが。

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