余すことなき喜び
クロエ——偽りの愛の感情に迷い込んだ少女。それは金銭への執着と同じほどに虚ろで、偽りに満ちていた。異常なまでの快楽に支配された彼女は、アークに押さえつけられていたサムに必死の思いで飛びかかった。
「ねえ、どうしたの?」彼女の声は優しく、まるで子をあやすように響く。「泣かないでよ。私のパーティーの雰囲気が台無しになっちゃう。もっと良い場所に行こう。そこでちゃんと慰めてあげるから」
彼女の繊細な指先が、不安と恐怖に震えるサムの頬をそっと撫でる。そしてその瞳はアークへと向けられた。彼は怒りに燃える眼差しで彼女を睨みつけていた。
「あなたも放してよ。彼が傷ついてるのが分からないの?」
アークはサムを解放した。しかしそれはクロエの言葉に従ったからではない。あらゆる生ける者を支配しうるあの遺物——牙——を見つけ出したいという焦燥のためだった。
「ユアン、何か見えたか?」彼は立ち上がりながら問いかけた。
「何も見えなかった」ユアンは厳しい表情で首を振った。
アークは再び周囲を見渡した。しかし彼の視界に飛び込むのは、先ほどの騒動をすでに忘却の彼方に追いやったかのような、享楽の宴の光景だけだった。人々は絶え間なく飲み、踊り続けている。もはや誰一人としてサムに注意を払ってはいなかった。彼はクロエによって、密やかに別の場所へと連れ去られようとしていた。
それに気づいたのはレベカだった。彼女はクロエとサムの逃亡の途上で、その行く手を遮った。
「何をしているの、クロエ?まさか彼と寝るつもり?それとも……?」
「あなたに何の関係があるの?私のことに口出ししないで」
クロエは先へ進もうとしたが、レベカは再び彼女の腕を掴んで引き止めた。
「でも彼がやったこと、見たでしょ?自分の部下を戦わせて、私たちに酷い態度を取って、侮辱したのよ」
「だから何?そんなことで彼と一緒にいるのをやめるわけにはいかないわ」
レベカは困惑の表情で妹を見つめた。彼女はまさか自分の妹が、ここまで堕ちるとは思っていなかった。もちろん——感情的な意味において。
「どうしちゃったの、クロエ?私たちをそんな風に酷く扱う男と寝ようなんて、あなたなら絶対にしないはずよ。まるで私たちが彼の所有物みたいじゃない」
クロエはサムをその場に置き、レベカの前に立ちはだかった。
「じゃあ、あなたは何だと思ってるの?私たちが招待したあの貴族たちを見てごらんよ。みんな私たちを利用してる。私たちの努力の果実を享受しながら、私たちを同じ人間として見ようとしない——ただの『人間』としてね。私たちはゴミのような場所から這い上がって、良いアイデアを思い付き、それをこの街のために捧げた——ただそれだけの二人の女の子よ。誰も私たちを尊敬しないし、同じ目で見ようともしない。貴族たちの目には、私たちは何の価値もない。そんな中で、私たちに何ができるっていうの?彼らの玩具として、彼らを喜ばせる以外に?」
レベカは何も言えずに沈黙した。オレンジジュースでほろ酔い気味だったクロエは、再びサムの方へと向き直った。
「この男をどこかの部屋に連れて行くわ。腰が砕けるまで、彼と一緒にいるんだから」
クロエはサムの腕を掴み、その場から引きずり出そうとした。
「彼は貴族じゃないわ」レベカが最後の説得の言葉を絞り出した。
「私たちもそうよ」
レベカは立ち尽くし、妹が冷酷な密輸業者と共に遠ざかっていくのを見送った。
その光景は不気味で、どこか滑稽でもあった。これまで一度も自分にそんな態度を取ったことのない妹が、自分を愛するよう強制した男に対して、異様なまでの防衛を示していた。レベカは呆然とし、傷ついたようにその背中を見つめていた。彼女の周囲では何十人もの人々が踊り、歓喜に浸っている。誰一人として彼女たちの状況に気を留める者はいない——それぞれが己の快楽の世界に没頭していた。
彼女はどうすればいいのか分からなかった。その瞬間、彼女は不意を突かれていた。そして何より、自分自身に吐き気を覚えていた。なぜなら、彼女は二人の男が死を賭けて戦うのを目の当たりにしながら、熱狂的にサムを抱きしめたことを思い出したからだ。
「うわっ……何が起こったのか分からない。どうしてアークのあの可愛い子が死にかけるのを、何もせずに見ていられるんだろう?それに最悪なのは、あのバカが私の腰を掴んでたってことよ」
自身の行動に不安を覚えた彼女は、気をそらすために、穏やかに議論を交わしている二人の驚くほど美しい男たちに目を向けた。狂った頭が自分にさせたことを忘れるために。
疲れ切った表情で、彼女は従順な小羊のように近づいた。
「アーク、ユアン……あなたたちは、何が起きたのか分かったの?」彼女は困惑しながら尋ねた。
二人の男は会話を中断し、彼女の方へと振り返った。
「説明するのは難しいし、それに時間もない」アークが簡潔に言った。
「分かったわ……」
レベカは離れてテーブルに座り、ワインを口にし始めた。
彼女は悲しげで、孤独で、憂鬱に見えた。誰も彼女の隣に座ろうとしなかった。彼女の発する陰鬱な波動は、瞬間を楽しもうとする幸福な貴族たちを遠ざけていた。彼らは、陰気な魂を慰めることが己の愉悦を奪うなら、そんなことをしようとは思わなかったのだ。
「ふん。私のものに手を出すと、こうなるのよ」カナリィは満足げにその光景を見つめていた。彼女が世界から隔絶され、自身の殻に閉じこもっている様を。理解するのが非常に困難な光景だった。なぜなら、この女がついさっきまで、あれほど喜んで男の隣にあったというのに。
アークは彼女の孤独を感じ取り、胸に鋭い痛みを覚えた。彼は近づいて、少しでも彼女を慰めたいと思った。
ゆっくりとした歩みで、彼は虚ろな瞳で虚空を見つめるレベカの元へと歩み寄った。
「え?彼女に近づくなんて考えないで。今あなたに言ってるのよ。言うことを聞いて。彼女はただあなたの上に乗りたいだけの女よ。私はそれを許さないから」カナリィは、愛する人がレベカへと近づくにつれて、癇癪を起こし始めた。一目でこの女が彼女の好みではないことが分かった。
アークはカナリィのうるさい態度にうんざりし、鞘を外して椅子の脇に置いた。そしてレベカの背中に手を置くと、彼女は——創造主の息子である騎士の感触を感じて——制御不能に涙を溢れさせた。
これはアークを驚かせた。彼はレベカの突然の慟哭に、困惑した表情を浮かべていた。
「うわああっ!お母さんに約束を破ったわ……ひっく……ひっく……妹を守るって言ったのに、それなのに彼女を迷わせてしまった」レベカは一度大きく息を吸い込み、涙を一時的に落ち着かせた。「彼女を制御できなかった……彼女を正せなかった……私まで彼女と同じになってしまった」
アークは彼女の痛みを感じ取ろうと、そっとその身体を抱きしめた。それを見ていたカナリィは激怒し、武器に炎を灯した。
「大丈夫、君のせいじゃない」アークは低く、優しい声で言った。
「そんなことないわ。私は彼女に自由意志を与え、彼女の決断を制限する屋根も与えなかった。そしてそれを与える代わりに、彼女のすべてのわがままに付き合うことで、彼女を開かれた場所へ連れて行ってしまった」レベカはアークの胸に顔を埋めた。「彼女がここまで堕ちるとは思わなかった。貴族たちと関われば、彼女が愛せる誰かに出会えると思ったのに……でも彼女はただの性的なものしか見ず、結局私たちは誰とでも寝るようになり、それだけじゃない。私たちは少しずつ自分の尊厳を貶め、自分に優しくしてくれる誰のベッドにも転がり込むようになった。どうしてここで終わってしまったのか、どうして妹まで巻き込んでしまったのか、私には理解できない」
ユアンがアークの元へ近づいてきた。その瞳は「行こう。大事なことがあるのは分かっているだろう」と語っていた。アークは「少しだけ待ってくれ」と視線で返した。
「レベカお嬢様、誰でも間違いは犯しますよ」
「でも私は犯すべきじゃなかったのよ……ひっく……ひっく……この社会の地位に到達したとき、もっと断固たる態度を取るべきだった。でも違うの……お嬢様は新しい友達を知りたいと思って、彼らの仲間になりたがった。私たちの陰で笑っていた人たちに認められたかったの。妹の言う通りだった——偉い人たちの目には、私たちは何の価値もない」
「もしそれで気が楽になるなら——あなたは私の目には、素晴らしい女性ですよ」
しかし彼が彼女を気分良くさせようとか、共感しようとして言ったと思わないでほしい。真実はこうだ。レベカが自分の問題を語っている間、彼女はずっとアークの胸に寄りかかっていた。そのため彼女の胸が彼の目の前に露出していたのだ。だからアークは頭に浮かんだ最初の言葉を口にした——彼はレベカの豊かな胸に見惚れていたのだ。親友であるユアンはそのことを知っていて、厳しく叱った。
「もういい加減にしろ、アーク!俺たちにはイチャイチャしてる以外にやることがあるんだ」
「その通りだ」アークは立ち上がり、再びレベカを、彼と共にいたいという願望だけを残して去っていった。「行動の時だ」アークは剣の鞘を手に取った。
「バカ……私に話しかけないで。もう決断したんでしょ。あの雌狼の腕の中に行けばいい」
アークは優しく彼女を見つめ、剣の柄を撫でた。カナリィは怒りながらも、その撫で方に抗えなかった。
「それで、あなたたちがやらなきゃいけないことって、何なの?」レベカは涙を拭い、鬱のエピソードから立ち直っていた。「サムはすぐには家に戻らないわ。クロエが彼をしばらくは忙しくさせてるから。それに、もし良かったら箱は馬車に置いて行って。門番に守らせておくから。ただ……行かないで、パーティーを楽しんでいって」
レベカはアークが自分の隣にいてくれることを切望していた。もう性的な眼差しではなく——彼の鼓動、呼吸、肌、声を感じたいと思っていた。アークは彼女を優しさで包み込んでいた。
「それはできません、お嬢様。パーティーの最中にサムをテーブルから突き落とした者を探さなければなりません。彼は我々のボスに対する侮辱の代償を払わなければなりません」ユアンは決然とした口調で語った——復讐の欲望を装って。
レベカは無力な微笑みを浮かべて彼を見つめた。それは、死の宣告を受けた者が、その運命を嘲笑うかのような微笑みだ。「サムに復讐しようとするのは、良い考えだとは思わないわ。彼にあんなことをした奴は、ちゃんとした道理で考えられるような人間じゃないから」
アークとユアンは驚いて彼女を見つめた。まさか彼女が誰がやったのか知っているのか?もしそうなら、それは牙を取り戻すための大きな前進だった。
「あなたは見たんですか、レベカお嬢様?」アークが尋ねた。
「お嬢様なんてやめて。これからは『レベカ』って呼んで——あなたのキャラメルって感じで」
「なっ!我がアークがそんなこと言うわけないでしょ。禁止よ!」カナリィが叫んだ。
「えっと……あの……」
「そう呼んでくれたら、誰がやったか教えてあげる」
「……」
「まだ待ってるわよ」
ユアンはアークが自分の役割を果たすのを待って見つめていた。
「そんなこと言ったらダメよ、アーク」カナリィが警告した。
「誰がやったか見たんですか……レベカ……私のキャラメル?」アークは少し気まずそうに言った。
「これが死ぬってことか……」カナリィは最悪の気分で激怒していた。彼女は地上の女に——『自分の』男を制御する戦いで——敗北を喫したのだ。
「そうこなくちゃ。見たわよ——彼を突き飛ばしたのはバルトロさんよ。セサル知事の補佐官」
アークとユアンの魂は肉体から抜け出た。しかしそれは、犯人が分かった喜びではなく、純粋なフラストレーションのためだった。なぜなら、パーティーに出席していた全員の中で、州で最も権力を持つ人物が牙を持ち去ったなど、信じられなかったからだ。二人はレベカに背を向け、小声で話し合い始めた。
「くそっ……知事が持ってやがる」
「こんな早く結論を出すなよ、アーク。牙がまだパーティーのどこかにあって、誰かに蹴られてるかもしれない」
「バカを言うな、ユアン。彼が持ってるってのは理にかなってる。彼は王と直接接触がある人物だ。牙の力について知ってるはずだ。あるいは回収するために送られたのかもしれない」
「お前の言う通りかもしれない。でも結局、何がどうでもいいんだ?王様が持ってればいいじゃないか。今はこの素晴らしい現在を楽しもう。ここにはワインがたくさんあるし、女たちは言うまでもない——見渡す限りモデルみたいな女ばかりだ」
「集中しろ、ユアン。もし王がその牙を手に入れたら、何ができると思う?世界中で絶対的な力を持つことになる。アヘト=ミットは今よりさらに悪化する——誰も彼に逆らえないのだから。取り戻さなければならない」
「もう英雄ごっこはやめろよ。パルニクが何て言ってたか忘れたのか?『もし他の誰かがお前の立場にいたら、お前のために同じことはしない』ってな」
「行こう、ユアン——これを手伝ってくれ」アークは懇願するような口調で言った。ユアンは深いため息をついた。
「分かった。でもこの後、良い報酬を期待してるぞ」
「何か問題でも?」レベカが二人の内緒話に割り込んできた。
アークとユアンは即座に会話を止めた。「何でもない。何をすべきか話し合ってたんだ」
「『人を助ける』って何?誰かのために何かしようとしてるの?」
アークとユアンは互いに顔を見合わせ、再び小声で相談した。
「これをやるには助けが必要だ。サムは牙を失った後、どんな状態になるか分かったものじゃない。彼が役に立つとは思えない」
「その通りだ、アーク。誰か他の人が必要だ。お前も同じことを考えてるだろ?」
「ああ——レベカに助けてもらうんだ」
「何を手伝えばいいの?」レベカが再び割り込んだ。今度は彼女の頭を二人の会話の中に突っ込んで。
二人の男は再び互いに顔を見合わせ、そしてレベカに牙について知っているすべての情報を浴びせかけた。
「いいか、その牙には特別な力があるんだ。俺たちが発見したのは……」
アークとユアンが説明を終えた時、彼らはレベカの顔が——妹が彼女に与えた以上の——困惑で満たされていることに気づいた。
「つまり、あの部屋で見た牙には、人を思い通りに操る能力があるってこと?だから私がサムにあんなにべったりして、あなたたちが喧嘩したのね。つまりそれは大きな力を持っていて、あなたたちはそれを王様に渡さないようにしようとしてるの」レベカは一呼吸置いて、二人の顔を見つめた。「本当にワインを飲みすぎたわね。しばらく休んだ方がいいと思うわ」
「本当なんだ、レベカ。あの牙にはそんなことができるんだ。どうして信じてくれないんだ?」アークは彼女を説得しようとした。
彼女は軽く嘲笑した。「だって——さっきまで飲んでた、知り合ったばかりの二人の人間が、そんなに信用できるわけないでしょ」
「言っただろ、うまくいかないって」ユアンが唸った。
「うまくいくかどうかは議論してないだろ。まあ、うまくいかなかったな。サムのところに行って、どうやって解決するか考えよう。レベカ——クロエとサムがどこにいるか連れて行ってくれるか?必要なら引きずってでも連れ出す」
「それなら手伝えるわ」
レベカは二人を二階へ連れて行き、部屋から部屋へと妹を探した。
「彼らは最初に私たちを見つけたあの部屋にいるはずじゃないか?」アークが意見を述べた。
「違うわ。私たちにはルールがあるの——男の子たちは一緒に過ごした後は休ませることにしてるの。だからサムは別の場所にいるはずよ。今夜私たちが使った部屋はもう分かってるから、見つけるのは簡単なはず」
「待てよ——彼女は一度男と一緒に過ごした部屋には入らないって言ったよな。つまり、さっき通った時に開けなかったあの部屋は全部、彼女たちが……」アークはレベカの旺盛な性欲に驚きながら考えた。「お嬢様はすごいな」
「さて、彼女はここにいるはずよ——この館で私たち二人だけがアクセスできる最後の部屋よ」
クロエは私を彼女の部屋の一つへと連れて行った。私はあの噂を知っていた——ギュイトラゴ姉妹は、一度別の男と使った部屋では決して男と一緒にならないという噂を。だから、部屋から部屋へと移動するたびに、私は最悪の気分になった。私はまた一人——大勢の中の一人になるのだ。私の選択が、私をこの瞬間へと導いた。私は自ら、全てを失う運命を選んだのだ——妻、娘たち、息子……そしてそれを取り戻す方法を見つけた時、それもまた失った。
私たちはそれほど広くない部屋に入った。どうやら客用の部屋のようだった。ベッドは柔らかく広く、四人が寝転がれるほどの大きさだった。だからその広さの理由が分かった——彼女とその姉、そして彼女たちの相手のためのものだ。クロエに対して、さらに嫌悪感が湧き上がった。
アルコールの効果はもう切れていた——いや、そう思っていただけだ。問題は、もうあの考え込み、反省する状態に達していたことだ。私が抱えていた全ての問題が目の前に現れ、解決策も見えた。それらは簡単で、何も複雑ではなかった。
クロエは私の前でドレスを脱ぎ始め、官能的に踊りながら、私に色目を使った。私は彼女を見ているふりをしたが、視線は別の場所にあった。私の心はもう快楽を感じていなかった。牙を奪われた瞬間から、再び全てを失ったことを悟っていた。愛され、力を持つ可能性、家族を救うこと、失ったものを取り戻すこと——全てを。
クロエはパンティと中途半端に外したブラジャーだけの姿になった。彼女の胸は姉ほど大きくはなかったが、そのウェーブのかかった髪、ほっそりとした体つき、そして強調された曲線は、どんな男でも楽園へと導くことができた。しかし私にはどうでもよかった。私はこの世界にいなかった。迷い込んでしまい、見つかりたくもなかったのだ。彼女は私の表情を読み取り、優雅に私の隣に座り、顔を私の肩に寄せた。
「どうしたの、サム?」彼女は優しく尋ねた。
私は彼女に話したくなかった。アークやユアンに出会った時のように、沈黙を守りたかった。しかし血中のアルコールが私に語らせた。
「全てを失ったんだ、クロエ——家族も、農場も、友達も、息子も」
クロエは優しく自分の顔を撫で始め、右手で私の脚に触れ、徐々に股間へと這い上がらせた。私は何も感じなかった。彼女が始めるのを待ち、私は身を任せるつもりでいた。
「知ってるわ」
それが彼女の唯一の言葉だった。それ以上は何も——愛情も、愛の言葉も、慰めもなかった。しかしそれだけで、私の凍えた心は再び燃え上がった。
「それを取り戻すチャンスがあった時——何も起こらないと思い込んで、全てはもう自分のものだと信じて、流れに身を任せた。最悪の場所で、最悪の瞬間に、警戒を緩めてしまった。ロドリの仇を討つこともできなかった」
一筋の涙が私の頬を伝った。それをクロエの舌が拭い取った——とても官能的な動きで、一瞬で私を覚醒させた。くそっ、この女たちは本当にどんな男の扱い方を知っている。もし彼女たちが心理学者なら、治療のために金を払ってもいいだろう。クロエは毒蛇だった。私に牙を立て、今やその毒が全身に回るのを許さねばならなかった。
彼女はとても活発に動き始めた。私の首を掴み、自分に引き寄せ、私を彼女の上に倒れ込ませた。彼女の顔は満足げで、その身体は私を欲しがっていた。これは彼女が楽しみたい瞬間だった。しかし、私は中断された……
三人が部屋に入った時、彼らはサムがクロエの上にいるのを目撃した。二人はまさに親密になろうとしていた。
サムは怒りの表情ではなく、むしろ欲求不満の表情で彼らを振り返った。一方アークは、怒りの眼差しで彼を見つめた。あんなに貴重なものを失った後で、どうしてサムが快楽の世界に慰めを求められるのか?この男はどうかしている。まだ何かできる可能性があるのに、もう全てが終わったと受け入れるわけにはいかない。
アークは彼の元へ歩み寄り、ベッドから引きずり下ろし、クロエから引き離した——
そして彼の顔に強烈な一撃を加えた。
「どうしたんだ、サム?お前は家族を愛していると言ったんじゃないのか?それなのに何でこの女と寝転がってるんだ?まだ間違いを正す時間はあるぞ」
アークはもう一発殴った。クロエが止めに入ろうとした。
「やめてよ、彼を殴らないで!」
「黙れ、クロエ。彼の言う通りだ」サムが言った。
クロエは従い、愛と憎しみが混ざった複雑な眼差しでサムを見つめた。
「家に帰ろう。お前の家族が待っている」アークが言った。
「待っている者なんていないと思うよ、アーク。もうとっくに見捨てられているはずだ」
「そんなこと言うな。彼女たちはお前を愛している」
「お前はそれが嘘だと分かっているはずだ」彼は叫んだ。「ここ数日、彼女たちが僕のそばにいたのはあの牙のせいだったんだ。マデレーヌはもう、もしまたあんな失敗をしたら家を出て行くって警告していた。それなのに僕はまたお前たちと一緒に同じことをした。今まで何度も同じことを繰り返してきて、そのたびに理性が戻った時には、罪悪感を感じないように自分を正当化してきた。自分自身で作り上げた嘘を、自分で信じ込んできた。見捨てられるのは当然だ」彼の力が身体から抜けていくようだった。「タラシャに戻って、彼女の顔をまともに見ることができないんだ。ここで彼女と一緒にいることを許してくれ」彼はクロエを指さした。「少なくとも彼女はまだ僕を愛している」
「それが真実ではないこと——ただの幻想だって、お前が一番よく分かっているだろう」
「おい、聞こえてるんだぞ、バカ」クロエが怒って答えた。
「彼女が僕を愛さなくなったら、この世界に別れを告げる」
アークは再び彼を殴った。「何を言ってるんだ、サム!お前にはまだ生きる価値がたくさんある。取り戻すべき家族がいるんだ!」
「僕にはもう家族はいない。何もないんだ。いいか——これが僕が君たちに提供できる唯一の善行だ。レベカ——シトリムの収益をアークとユアンに渡してくれ」
会話をずっと聞いていたレベカは、突然自分の名前が呼ばれて驚き、間抜けにうなずいた。
「僕を見失わせてくれ」サムは嘆願した。
「創造主は決して自分の子供たちを見捨てたりしない」
「じゃあお前はその一人なのか……あの迫害で全員死んだと思っていたのに……」サムは微笑んだ。「お前の態度からは、ただのこの王国の普通の男だと思っていたが——お前にはもっと何かがあるようだ」アークは彼の衣服を掴んでいた手を離した。「頼む、離してくれ。私に赦しはない」
何も言わずに、アーク、ユアン、レベカは部屋を後にした。そこには、真実の愛なしに愛し合うことを強いられた二人を残して。
彼らが歩き始めた後、あの部屋から甘い愛の音が聞こえてきた。絶望的で、快楽に満ちた音だった。まるで一瞬一瞬が唯一無二であり、それが終わるという不幸が、彼らにとって世界の終わりであるかのように。レベカはほんの一秒だけ立ち止まり、何かをしようとしたが、再び歩き始めた。その一瞬の間が、彼女が妹に与えた全ての悪を思い出させ、もはや彼女の人生に干渉する権利はないと感じさせた。
「よく分からないんだけど——あなたたちはサムとああやって話し合って、彼がクロエと寝るように仕向けたの?」
アークはため息をつき、レベカを無視するようにユアンと話し始めた。
「どうやらサムは当てにできないな。彼は自分自身を見失っている。彼の助けなしで、牙を取り戻す別の方法を探すしかない」
「でもサムの家に戻っても何もできないだろ」ユアンが意見した。「俺はパーティーに残って、せめて一晩くらいは平穏に過ごしたい」
「まあいいだろう。レベカの箱を事務所に運び終えたら、一階でワインでも飲みながら過ごそう」
数分後、彼らは全ての箱を、最初に姉妹と話したあの部屋に運び終えた。
ユアンは一階に着いた時、幸せそうだった。極上の美女たちが貴族たち(これまたイケメン)と一緒にあらゆる場所で踊っていた。「ようやく誰かと踊れる!リノ・ブリンコでの練習の夜々がついに報われる!」彼は目の前の光景を見てそう思った。彼は何度もパーティーに参加しようと試みたが、ことごとく失敗した。ほとんどの女性はユアンのダンスの誘いを断った——彼の服装が彼女たちの目に好ましくなかったからだ。まるで違法にパーティーに侵入した汚い泥棒のように見えたのだ。
一方アークは壁に寄りかかり、誰とも交流せずにパーティーを観察していた。ちょうど彼の横を、シャツを着ていない筋肉質な召使がアルコール入りのオレンジジュースを運んで通りかかり、彼はそのうちの一杯を取って飲んだ。
「踊りたい?」レベカが突然現れ、彼に手を差し出した。
「ありがとうございますが、結構です。色々と考え事をしていて、自分でもよく分からないんです」
「それなら私に聞いてよ。あなたが知らないことは全部教えてあげる——ベッドの上でのことも教えられるかもしれないけど」レベカは、アークと何とか繋がろうとする試みが失敗した後、そう考えた。
しかしレベカは去る代わりに、彼の隣に留まった。
「私みたいな女の子と踊りたくなくなるほど、何を考えているの?」レベカがいたずらっぽく尋ねた。
「はっ、彼は何も考えていないわ。ただあなたみたいな女の子と関わりたくないだけの言い訳よ」カナリィが傲慢に言った。
アークはそのゲームに乗って答えた。
「人間の目的という絶対的な謎について考えています。自分の存在の裏にある真実について。誰も何かをしようとしない村を荒らす悪について。私の腐敗し荒廃した心の中にしか存在しない平和について」
レベカは優しく、そして少し驚いた様子で彼を見つめた。「あら、哲学者みたいになっちゃって。もしかして——やった後でさらにインスピレーションが湧くのかしら?それとも行為の最中に、今まで一緒にいた文学者たちみたいに?それとももっと良いわ——詩を読む貴族たちみたいに、愛の詩をくれるのかしら?」彼女は唇を噛みながら、アークが甘い言葉を囁きながら彼女と行為に及ぶ場面を想像していた。
「その平和の中に、私もあなたと二人きりでいていいかしら?」
「そんなの絶対にダメよ。あの平和の中にいるのは私だけよ。私のアークを撫でて守るのは私だけ」カナリィは我慢の限界でアークを睨みつけた。創造主の紋章さえも炎を上げた。
レベカの顔は愛に満ちた感情であふれた。彼女の頬は少し赤くなっていた。彼女は彼から視線を逸らし、髪を弄って感情を隠そうとした。
「えっと……それじゃあ、踊らないの?」
「いいえ、お嬢様」
「そう……」
断られたにもかかわらず、彼女は彼の隣に留まった。アークは彼女が自分に付き添っているのを見て、自分が飲んでいたオレンジジュースの入ったグラスを彼女に差し出した。レベカはそれを受け取り、一気に飲んだ。
「ゆっくりお飲みください、お嬢様。そんなに早く飲むと、すぐに効きますよ」
「そんなこと分かってるわ。ただ味が好きで、我慢できなかっただけ」レベカは再び髪を弄り続けた。
夜明け頃、パーティーは徐々に静まり始めた。人々は去っていくか、エタノールで血中の酔いに敗れて眠りに落ちていた。ユアンはついに誰とも踊ることができなかった。彼の表情は悲しげで、絶望的だった。レベカは半ば酔っ払っていたので、足を引きずって戻ってきたユアンを踊りに誘った。彼は喜んで受け入れた。二人はダンスフロアへ向かった。そこはもう半分空いていて、床で寝ている人々と、めちゃくちゃに踊っている貴族のカップルが一組いるだけだった。
ユアンはリノ・ブランコで枝を持ってかなり練習していたが、枝と、ちゃんと動ける女性は同じではないことに気づいた。時々彼女の足を踏んでしまうのだった。レベカは彼を叱り、フロアの中央で彼を導いた。
アークは遠くから彼らを見つめ、顔に微笑みを浮かべた。彼にとって、ユアンがあんな風に幸せそうなのを見るのは美しかった——めったにそういう姿を見られないからだ。友人が不器用に踊るその小さな瞬間を見て、彼の右目から涙が一筋こぼれ落ち、すぐに拭い去った。
「素敵な顔してるわよ、知ってる?」カナリィは剣の力で彼の背中を温め、その手で後ろから彼を抱きしめていた。
「人生は私たちに楽しむ瞬間をほとんど与えてくれなかった。それに一番近いのは、リノ・ブランコを通過する時に、誰が一番早く平静を失うか賭けていたことだ。彼らが手首を切るのを見たり、木に首を吊るのを見たり、不倫を告白したり、火の周りで乱交パーティーをしたりするのを見ていた。ある意味——あの森を通過するというただそれだけで、人間として堕落していく彼らを見るのは面白かった」
「なっ!それはひどすぎるわ!あなたは彼らを助けるべきだった。あなたはこの地のために創造主が選んだ英雄なんだから、英雄らしく振る舞いなさい」カナリィは非難の目で彼を見た。
しばらくして、クロエとサムが彼らのところにやって来た。クロエはサムの腕をしっかりと掴み、彼は虚ろな目で歩いていた。
「楽しんでるみたいじゃない、レベカ?」クロエは少し楽しそうに言った。まるで一時間前に妹に言った言葉が存在しなかったかのように。
「ユアンにダンスを教えているのよ」レベカが言った。「言ったでしょ——二歩短く、一歩長く、そしてビートを保ってリズムを崩さないようにって」
「腰をもっと動かすように言わなきゃ。そうすれば一緒に踊る女の子たちをもっと惹きつけられるわよ」
「そんなこと教えないわよ。まだリズムを崩してるんだから。あの動きをダンスの途中に入れる前に、もっと練習が必要よ」
「あなたはひどい先生ね。私ならもっと上手に教えられるけど、今は無理よ——サムにされたことで腰が痛いんだから」
「あなたは何にも耐えられないバカね」レベカが言った。
「あなたが寝たがってた男の子はどこ?」
レベカは妹の言葉に少し顔を赤らめた。「あそこに壁に寄りかかってるわ」彼女はアークの位置を指さした。
「はっ、あなたと一緒にいたくなかったんだ。何て言ったの?彼があなたを追いかけないように」クロエは一瞬間を置いた。邸宅にはもうほとんど人がいないことに気づいて。「どうやらほとんど帰ったみたいね。さて、家に帰る時間よ。オルフィーナ!」彼女は拍手をしながら叫んだ。
黒い髪の美しい召使が彼らの前に現れた。
「はい、ご主人様。何かご用ですか?」
「残った酔っぱらいたちを世話して、具合が良くなったら丁寧に邸宅から出してちょうだい。他の召使たちに、ここをきれいに片付けるように言って。ここでパーティーがあった痕跡は一切見たくないわ。消費されたものも補充して、それから私の馬車を用意して——家に帰るから」
「かしこまりました」
少女は頭を下げ、その場を去った。
「さあ、外で待ちましょう」
しばらくして、美しい赤い馬車が彼らを迎えに来た。三頭の黒い馬が牽いていた。その馬たちは大きく、体つきも洗練されていた。筋肉質で力強そうというよりは、むしろ上品で、その足並みも非常に調和が取れていて、気品があった。美しい若者が彼らに挨拶し、乗車を促した。
アーク、ユアン、サムは姉妹の隣に立っていた。彼らには乗る気はまったくなかった——気が引けていたのだ。
太陽はすでに昇り、美しい都市ティミトリを優しく照らしていた。時刻は朝の六時頃だった。
「さあ、サム——あなたは今、私の彼氏でしょ?私と寝たら、私を愛さなきゃって言ったよね?だからそうするわ」
クロエの言葉は甘く、そして誠実だった。そのためレベカと若者は驚いた表情で彼女を見つめた。
「なっ!」二人は同時に声を上げた。「あなた、彼の彼女になるなんてありえないわ」レベカは怒って言った。「彼は下級貴族ですらないのよ。彼は妻子のある密輸業者よ」
「だから何?愛に制限なんてないわ。それに、彼がそう言い出したんだから。ふん」クロエは顔を右に勢いよくそらした。そのため髪の毛の一部が彼女の左目と鼻の一部を覆った。彼女は息を吹きかけて髪を払いのけた。
「理解できないわ。母は私たちをそんな風に育てなかった」
「でもあなたはそうしたじゃない。私が好きな相手と経験するのを許したのはあなたよ」
「貴族だけにしろって言ったわ」
「でも貴族だけが素敵なわけじゃないもの」
アーク、サム、ユアンはその会話を興味深そうに聞いていた——新鮮で最高品質のゴシップだった。若くて美しい二人の女性が、自分の私事について議論しているのを見るのは、確かに面白かった。
「とにかく彼は私と一緒に行くの。あなたが気に入ろうが気に入るまいがね。私たちの家に誰を連れて行けるか、あなたに決められる筋合いはないわ。私たちが持っているものの半分は私のものだってことを忘れないで」
レベカは彼女に怒っていた。「そういうことなら、私もアークとその友達を家に連れて行くわ」彼女はアークを掴んで自分に引き寄せた。
「別に構わないわよ」クロエは冷静に言った。
「お嬢さんたち、落ち着いてください」アークが言った。「私たちはあなたたちと一緒には行けません。自分たちの馬車を戻さなければならないんです」
アークは手を振って断り、謙虚な表情を見せた。
「心配しないで。私たちの家には何台でも馬車を停められるスペースがあるわ。馬車を運転しながら私たちについて来てくれればいいのよ」レベカは怒った口調で言った。
「ただ一つ問題があって——ユアンも私も、馬車の運転ができないんです」
「馬車の運転もできないの?あなたたちは一体、どんな男なの?」彼女は腕を組み、頭を下げて歯を食いしばった。「じゃあ私たちと一緒に来なさい。ブラドミン、私たちを家に送って、それからあそこにある馬車を会社に持って行く誰かを探して」
ブラドミンは運転手だったが、彼の視線はサムを掴んでいるクロエに釘付けだった。
「聞いてるの?」彼女が尋ねた。
「はい、お嬢様」彼は恨めしそうに言った。
「あなたが彼女と寝て、素晴らしいことを約束されたのは知ってるわ。でも夢を見ないことね——彼女はあなたみたいな男とは絶対に一緒にならないから」
ブラドミンは彼女から視線を外し、前方を見つめた。彼の怒りは見なくても分かった。レベカは満足げに微笑み、再び客たちの方を見た。
「行きましょう」彼女は少し怒った口調で言った。
最初に乗ったのはサムとクロエ、次にユアン、そして最後にアークが乗った。彼はレベカが乗るために手を差し伸べた。
「ありがとう」彼女は少し顔を赤らめて答えたが、まだ怒っていた。
彼女は知らなかった——最初に見た時はただその夜の性的な玩具としてしか想像していなかった誰かに、彼女が少しずつ恋をしていることを。
馬車の中は、最も洗練された貴族にふさわしい素晴らしさだった。クッションは柔らかく、空間は広々としていた。天井にはミニチュアのシャンデリアが取り付けられ、車内を照らしていた。窓には天使の装飾が施されていた。クロエとサムは前方でいちゃついていた。ユアンは窓の外を眺めていた。一方レベカはアークの胸に頭を預け、顔を真っ赤にしながら妹を見ていた。
アークは少し居心地が悪かった——前方ではカップルが触れ合っていて、隣には同じことをしたいと思っている美しい少女がいたのだから。
今までアークの隣にいるときに、こんな感情を感じたことはなかった。私はいつも男を——女の力に屈する弱い存在としか見ていなかった。誰一人として例外はいなかった。挑発的な表情で見つめ、優しく撫で続ければ、彼らは必ず屈した。しかしアークは違った。彼は私を欲望の目で見なかった。私と一緒にいたがらなかった。私を尊重し、人間として扱ってくれた。ティミトリの貴族たちのように、私を欲望の目で見なかった。私の権力や金のために近づこうとは思わなかった。それどころか、むしろ私から離れたいとさえ思っているようだった。
私は足を組み、手で太ももをもう少し露出させた。本当に彼に見てほしかった。彼のことをもっと話してほしかった。私が自分を見せたのと同じように、彼も自分を見せてほしかった。でも彼の注意を引くことはできなかった。
優雅に彼の手を取り、握りしめた。そしてそっと優しく撫で始めた。その間、前方を見ると、サムは虚ろな目で窓の外を見ていた。私の妹クロエも必死に彼の注意を引こうとしていた。
私は愛しい人の友人を見た。彼もサムと同じように窓の外に虚ろな視線を向けていた。可哀そうに——誰も彼と一緒にいたがらない。きっと孤独を感じているんだろう。
私は目を閉じた。彼の心臓の鼓動を聞いていると、とても安心して、ほとんど眠りに落ちそうだった。もう怒りは収まっていた。アークは女性の感情を落ち着かせる方法を知っているようだ。
もし私たちの家が邸からそれほど近くなかったら、アークの隣で眠ってしまっていたと、完全に確信している。
「着きましたよ」ブラドミンが家の前で馬車を止めて言った。
私と妹の家は、間違いなくこの地域で最も美しく、最も装飾された家だった。しかしそれはそれほど名声にはならなかった。この辺りの家々は、貴族の血を引かない金持ちの住まいで——つまり中流階級以上、本当の意味で重要な人物ではない人々が住む場所だった。
全員が馬車から降りた。私はブラドミンに感謝しなかった——彼にはその価値がない。それどころか、来週には解雇してやろう。彼のような使用人が、自分の上司の一人と寝ているなんて馬鹿げている。
「ねえ、ブラドミン——邸の馬車を会社に置いてきたら、経理に寄って退職金を受け取ってちょうだい。あなたを解雇するわ」
ブラドミンは私を怒りに満ちた目で見つめた。それは私を幸福で満たし、力を与えてくれた。私は愛しい人の方を見た。彼は私の家に驚いていた。どうやら彼は貧乏で、こんなものを見たことがないらしい。
私たちは家に入った。すべてが整頓され、花の香りがした——まさに私らしく。
「タニア!」私は叫んだ。「着いたわよ」
タニア——リンブリンで雇った美しい使用人——がメイド服を着て現れた。彼女の顔を見て、一晩中まったく眠っていないことがすぐに分かった。
「おはようございます、お嬢様方。良い夜をお過ごしになられたでしょうか」
彼女は頭を下げた。
「お客様用の部屋を用意してちょうだい」
「喜んで、お嬢様」
その後、彼女は二階へと向かった。サムとクロエは一緒に部屋へ行った。私はアークとユアンと二人きりになった。
「メイドたちが部屋を整えるまで待っていてね。でも心配しないで——すぐに終わるわ。それまでは応接間で待ちましょう」
二人は私に付き添って応接間へ行った。ユアンはアークとは離れたソファに座った。私は彼の隣に座り、その肩に寄りかかった。
彼の肩に寄りかかって休むのは、なんと心地よく、甘美なことだろう。彼の筋肉は柔らかくて滑らかだ。こんな体つきの男は滅多にいない。何が起こっているのか分からないけど、彼がいつも背負っているあの剣は、私がアークに近づくたびに光っているように見える。おそらく何らかの聖なる武器で、持ち主の感情に反応するのだろう。
しばらくして、タニアがすべて準備が整ったと知らせに来た。
客室へ向かう途中、タニアは彼らが部屋で何を見つけるか説明しながら話した。
「お嬢様のお客様方、ギュイトラゴ姉妹のこの家の客室には、広くて柔らかいベッド、お荷物をしまえるクローゼット、専用の浴室、そして通りが見える窓がございます。また、お荷物をお持ちでないようでしたので、男性用の寝間着をお用意いたしました。この家での滞在をお楽しみいただければ幸いです」
タニアの口調はかなり高圧的だった。どうやら彼女はこの二人の男の存在を快く思っていないようだったが、私の客だからという理由でひどく扱ってはいなかった。
ユアンはすぐに部屋に入った。彼は「眠い」とだけ言い、ドアを閉めて中に入った。きっととても疲れているのだろう——一晩中起きて飲んで、私と踊っていたのだから。一方アークはドアを開け、部屋を喜びながら見渡した。彼はとても美しく見えた。
「素敵でしょ?私の好みに合わせて作らせたのよ」
「すごいです。こんな場所で寝たことがありません。本当にいいんですか?」
「もちろん——好きなだけここで休んでいいわよ」
「ありがとうございます、お嬢様」
「この部屋がもっとよく見える方法を知ってる?私がベッドに寝転がってることよ」私は髪を弄りながら、もっと可愛く、もろく見えるように言った。
でも効かなかったようだ。彼はただ微笑み、丁寧に言った。「とても疲れています。お誘いありがとうございますが、お断りしなければなりません。私のような者が、あなたのような親切な方のご陪伴を楽しむのは正しくありません」アークは私の手を取り、それにキスをしながら言った。「この恩情は決して忘れません」
実は私の方こそ彼の魅力に落ちていたのだ。ほとんど言葉を失いながら、私は答えた。「そう……」顔を赤らめながら。そしてそこで理解した——あの男は、他の男たちのように攻略できる相手ではないと。
よたよたとした足取りで彼の部屋を出て、私は歩き始めた。少し離れたところでドアが閉まる音が聞こえ、私は言った。「アークが友達の彼氏じゃないといいんだけど」悲しみを込めて。「私と寝るのを断るなんて——ゲイにしかできないわ」
作者の余談
こうして我がアークとその友ユアンは、三晩目をレベカの家で過ごしたのであった。
「おい、それは私のセリフよ!誰がお前にそれを言う権利をやったの?」
「黙れ、作者。私が何を言うか決めるの。私がそれを言いたいなら言うわ。以上。」
「分かったよ。でも最後にしてくれよ——なんて頑固なんだ」
「ふん!」




