06
調理場はカウンター席の向かいの裏側にある。そこは家族のキッチンをも兼ねている。
私はそこを抜けて家に上がる。
少し不思議な構造だけれど、キッチンで靴を脱ぐ。端に下駄箱もちゃんと用意されていて、半分は家専用の台所スペースになっている。そこでは当然土足禁止になっている。
勿論、店を通らない玄関もちゃんとある。
二階の自室で着替えを済ませ、すぐに店に後戻り。忙しくなる時間に備え、父がロールキャベツとご飯を用意してくれて待っている。
夕食時は忙しく、二人で回すのは無理がある。土日は昼夜共に同様だ。アルバイトを雇えばいいのにとの問いには意味がない。
そうかもねぇと、揃って笑顔を見せる。
俺も今のままがいいと思うで。
口を挟む中川さんを睨みつける。
私が手伝ってるからでしょ!
語気が強まるのも無理はない。
まぁ、今は助かってるけどなぁ・・・・ 以前だってのんびりしっかり稼いでいたんだぞ?
父がのんびりそう言う。
売り上げだってあなたのバイト代を差し引けばそれ程違わないのよ。
母の言葉には反射神経が働く。
バイト代なんて貰った事ありませんけど!
私の言葉に何故か中川さんが大笑いする。
再び睨みつけると、関西人らしい顔芸をジェスチャー付きで見せる。
学費もお小遣いも払ってるじゃないのよ! 大学の為の貯金も結婚資金も貯めてるのよ?
最後のハテナマークは意味不明だけれど、言う通りでしかない。
何も聞かなかった事にして口笛吹いてお客さんを迎える。
そろそろお帰りでしょ!
中川さんに悪態を吐くのが精一杯の抵抗だ。
マスター! こっちにもロールキャベツね! お土産用で頼むよ!
中川さんを追い出すと、夜の為の準備が始まる。昼間は二人掛けにしているテーブルをくっつける。




