02
父のレコード集めは学生時代から始まっていて、当時で既に三千枚は所有していた。古い物から新しい物まで、人気があってもなくても関係なく、ロックでもアイドルでも演歌でも、気に入ればなんでも構わない。それは音だけの問題ではなく、ジャケットが好きだったり、名前に惹かれたり、単純に安かったからだったりと様々な理由で手にしている。今では三倍を超えていて、一万枚を超えるのもすぐだと思う。
結婚を機に製造業の会社員になった父だけれど、それ以前はレコード屋とバーで掛け持ちアルバイトをしながら小説家を目指していた。
母は外国人で、日本料理のお店で働きながら日本語学校で勉強をしていた。
何故なのかの理由は謎だけれど、父は突然日本語教師を目指してヴェトナムに渡った。
そこで二人は出会ったのだけれど、詳細はあまり語ってくれない。運命ですと言う日もあれば、あれは失敗だったとか、夢の途中だったのよとかの訳の分からない言葉で煙に巻く。
結婚後の七年間、二人は楽しい時間を過ごしていた。今でもよくその頃の話をしては二人いちゃついている。
貧乏だったけれど、毎日が楽しかった。あれ程の自由はもう味わえない。
お金がないのは苦しいけれど、それ以上の楽しみがあるのよ。今とは違う幸せが、そこにはあったの。
幸せそうな二人の笑顔に、私ははにかみ目を逸らす。




