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君は覚えていないかもだけど、小中同じ学校なんだよね。三学年違うと交流は少ないから、覚えていなくても無理はないよ。まぁ、同じ登校班だったのは忘れておく。
その顔をじっと見ても記憶は蘇らない。
父も母も顔を見合わせて遠くに視線を向けては首を捻る。
まぁいいんですけど、この前学校に来てたでしょ? あれって教授に会いに行ってたんじゃないんだ? 見学に来る子はたまにいるけど、女の子は珍しんだよね。まぁ、久富教授のゼミには毎年一人は女子が迷い込んでくるんだ。まさか教授に毒されたの?
若い客は心配そうに私を見つめ、その後常連客を睨みつけた。
私はまるで知らなかった。常連客が大学の教授で、しかも私には到底入れないこの国一番の大学に勤めているなんて。更には私が目指す学部の教授だったなんて。
どうして教えてくれなかったんですか?
私がそう言うと、教授は笑う。
聞かれてもいないですしね。本気で目指すならいつかは知ることになりますから、特別な詮索はしないのがいいんですよ。
私がはぁそですかとため息混じりに言うと、若い客が声を上げる。
久富教授の名前は当然知っていた。本気で目指さなくても宇宙に興味があれば出てくる名前だ。けれどまさか、常連客のこの人がとは思いもしなかった。映像や画像では見た事があるけれど、本物とはまるで違う。その顔つきが別人だった。
僕が勉強を教えますよ。一浪して受かっていますから、それなりのベテランですよ。まだ退いてからの日も浅いですし。
それはいいですねと、教授が言う。彼は優秀ですし、お金もかかりませんから。場所だってここでならお金の心配だけでなく、親御さんの目も届いて安心ですよ。
その言葉を受けて何故か私はよろしくお願いしますと頭を下げた。
こちらこそと若い客が言うと、父と母も頭を下げて言葉を繰り返す。
何故か父と母は名を名乗り、私も後を次ぐ。そして若い客もまた名をフルで名乗った。生年月日付きで。
奥野隆司。名前は堅苦しく感じたけれど、見た目はまるで学生っぽくはなかった。緑色に染まった髪の毛と彫りの深いヨーロッパ顔。それでいて記憶には残らない薄い存在感。
不思議だけれど、この人なら間違いないと感じた。私は受かる。来年からは大学生。本気でそう感じた。




