8月9日 12時39分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城城下 噴水広場の演説台 帝国第三古代結界の跡地~「いつになっても勇者なんだ」
勇者ラルフの発した自爆魔法禁術ギガンテの簡易発動詠唱に反射的に天海衆第三代総大将ラティオは二本の日本刀を使った防御の姿勢に入る。この戦いにおいてこの犬も食わないような諍いにおいて、それはラティオが初めてとった守備的姿勢だった。目の前の暴動的かつ暴発的それでいて爆発寸前の魔力にラティオは自身の体を守るという本能的な防御形態に入った。
それは通常通りの異常のない状態のラティオならば屈辱的なことなのかもしれない。自身を侮蔑するようなことなのかもしれない。しかし、命というのは有限だ、基本的には一つきりしかない。しがなくなんてないものだ。
しかし目の前の勇者は違った。勇者ラルフは生命回復魔法と自爆魔法の同時発動を可能とした地上で唯一の生物。禁忌×禁忌、チート×チートそんなものありなのかと問いたくなるような化け物。
ラルフはラティオの目の前でほほ笑んでいる。ほくそ笑んでいる。ラルフの体がゆったりと赤白く光る。その数秒後音も聞こえないような刹那の選考する間もない先行の閃光がラルフの体から指先へと流れていく。それは清流の水が湖に流れ込むのに似ている。戦い諍いあっている相手だというのにその一滴の雫のような魔力がラティオは少し美しく麗しいと思ってしまった。不覚だった。そんな感情を戦いの中で抱くなんて不憫で不埒だった。でもその言葉はラティオの感性からあふれ出た感想だった。
「綺麗だ、、、」
その言葉を発した、ラティオはその時点で防御態勢を解除していた。解放していた。その指向性を持った爆発の魔力の美しさに見とれていた。どこまでの研鑽と研究と鍛錬を積めば自爆魔法を自爆以外の道筋で使おうという発想に至るのだろうか?それ以上にラティオが感動し盲動したのはその一撃に指向性をもたらすという発想だった。自爆魔法の最大にして最悪の災害は自身という器が壊れるがゆえに自爆魔法による攻撃範囲を自身で設定し決定することができないことにあった。その場にあるすべてを巻き込んでしまうという点だった。しかし彼女はあえて自爆魔法による爆発に指向性を持たせることでおそらく威力が少し下がる代わりにその弱点を補填している。それもこれも自爆魔法を使ってからも生きているからこその発想だ。発展形態だ。ぶっ飛んでいる。ぶっ壊れている。ラティオは言葉にはしなかったがそう思った。
「ネロ君これはあれだね、、、君の国はやっぱりあまり好きではない。そしてラティオ君これもあれだ。要はさ、意外と案外お姉さんはいつまで経ったって勇者なんだよ。これってさなんだか、1239か分からない桜みたいじゃないか?」
ラルフはゆったりと生きるための息継ぎのような息を吸った。そしてピストルのような形を指で作り、その人差し指をラティオに向ける。
「指向性禁忌×禁忌 禁術方程式 自爆しない自爆魔術 ギガンティック・アトランティス」
ラルフの指先から放たれた爆発性の魔力は放射状にその形を変え帝国を切り裂いていく。そして、一筋の光がラティオの目線に入る。それはラティオを貫く。劈く。その閃光は見方によってはまるで花びらのようでもあった。
ラティオが自身の胸元を見つめるとそこに大きな穴が開いているのが分かる。ここに心臓はなかった。最初からそう思ってしまうような一撃だった。ゆったりとラティオの意識はその時途切れる。
◇◇◇
「生命回復魔法 禁術ザーリク 自動発動」
ラルフの体が緑色の光に包まれる。それによって自爆魔法で費やしたラルフの命がゆったりと逆再生でもするみたいに、回復していくのがラルフ自身にもわかった。
その後ラティオが倒れるのを見届けてから、ゆったりと自分自身の体を扱う感覚を久しぶりに感じつつ勇者ラルフの親友であり、親愛する剣士でもある、剣聖ランスロット・アレクシアがいるであろう工魔科学帝国中枢紅魔城へと歩んでいく。
「私は謝らないよ、否誤らないよ、誰にもね、、、」
勇者ラルフはそう独り言ちた。




