8月9日 12時53分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城 禁書庫 人形の実験場~密室異能バトルミステリーの解決編
「ネロ三世さんには不必要ねえかもしれねえが、一応最初にミステリー要素があると銘打ったからには解決篇がねえってのは不十分だよな。いったん戦闘を中断してその行為に移ってもいいか?」
この場にいる89人の内一人しかいないオリジナルの轟さんが言った。
「まあそうだろね、、、めったメタなメタになってしまうのは残念で少し無念なのだけれど、それは必須かつ必要なことなのだろうね、、、」
ネロさんは別段驚きもせず轟さんの煽りに対して応答し、展開した結界をかるく霧や露を払うようにして消去した。
「まず何から聞きたいんだ?レオン」
轟さんは僕に向かって質問をした。それは優しさからというよりも僕に対する精いっぱいの誠意のような感情のほうがブレンドとしては割合が大きい気がする。
「そのままの質問になってしまい申し訳ないのですが、この場にフォニイさんがいないというのはどういうことですか?だったら最初に僕と一緒にいたのは誰だったんですか?」
「そうだな、まずそこから答えていくか、、、確かにその質問は真っ当にして正当だ。最初の最初に関してはお前とフォニイが一緒に禁書庫に入ってきたから俺とフォニイそしてお前の三人だってことはわかるよな、そこに何らかの叙述的トリックやほかの変装などのギミックも介在しない。」
「はいそれはなんとなくはわかります。先ほど轟さんがこの戦いを密室異能バトルミステリーだと言っていた部分からもアンフェアすぎるトリックではない気がします。」
「そうだな、そうなるともう一つの疑問が生まれるよな」
轟さんは次の僕の質問を分かり切ったように口火を切った。
「はい、どのタイミングでフォニイさんが消えたのか?そしてなぜフォニイさんがこの禁書庫にいると錯覚し錯視してしまったのかですね。」
「その通りだ。まずどのタイミングでフォニイが消えたのかという部分から回答していくと、これは単純明快で曖昧模糊なところなど一つもない。俺と俺を造花の加護によってコピーしたフォニイが部屋から出て行くタイミングが合っただろう。それを覚えているか?」
「えっと、一応覚えています。たしか、城の外から爆発音のような音が響いて、それを確認しに二人が外に出たタイミングですよね。でもあれは二人とも戻ってきたじゃないですか?」
轟はゆったりとそれに対して頷きながらそれでいて秋空を見て夏をあきらめるみたいに口を開いた。
「お前この戦闘中に大きな違和感がなかったか?もっとヒントを言うのなら、スキル【アルカディアキャンセル】を受けたタイミングと言い換えてもいい」
僕はネロさんとの戦いを諍いをゆったりと脳内でNOがないように思い出した。そしてそこに違和感はあった。当たり前すぎて見落としていた、見外していた違和感が。そこにいつもあった大きな岩が少し削れていても違和感覚えないように僕はそれを忘却していた。
「まず違和感というかこの戦いで明らかにおかしいところを言うのならば、ネロさんがアルカディアキャンセルを発動したタイミングで消した加護がオリジナルの轟さんの分身のはずなのに2の6乗つまり64を大きく超える数である90体の轟さんが消えたという部分です。そしてそこから紐解いていくと見えてくる違和感が二つある。なぜか轟さんとフォニイさんの二人ともが分身の数を一回分だけ戦闘中頑なに温存していたという事。でも、これは違うんですよね。」
僕は頭の中で言葉と言の葉で森をつくるイマジンで会話に使える文章を組み立てていた。
「ああ、違うな」
その森の土壌を潤す雨のように轟さんは合の手を入れる。
「もう一つの違和感から行きましょう、正解のみを求め自身に正解の世界という孤独を課した間違いがないからこそ間違いしかないネロさんが256体のうちのおおよそ4分の1を占めるフォニイさんを全部合わせて10分近く戦い諍いあっていたというのに当てられていないという事です。」
そうだ、簡単に淡々とかつ単純にそれでいて淡白に鑑み考えればネロさんがこんな浅はかで浅慮なクイズを当てられないはずがないのだ。当てられていないという事がおかしい。当てて然るべき以外の言葉がない。必然を外し続けるというのは一回ならば偶然だが、何度も起きるのなら何かがおかしいと思わなければならない。それをもっと早くから疑っていれば良かった。
「そうだな、、、」
「そしてこの二つから導き出される答えは、僕が轟さんをコピーしたフォニイさんだと思っていた人物は分身した轟さんだったんだ。あの時禁書庫に戻ってきた轟さんは一人がオリジナルでもう一人は分身。つまりネロさんとの戦いが始まる前から、轟さんは分身を使っていた。だから分身の回数の限界を残しておいたのではなく、もう使い切っていたという事ですね。フォニイさんはあの爆発を見に行くときにネロさんの聖者の加護スキル【アルカディア・キャンセル】を鑑み考えて別行動にしたって感じですか?」
「正解だ。レオン意外と案外お前見どころあるな、これだけのヒントで当てられたのは悪くないよ。まあ質問に真っ当かつ正当に答えるのならば、ネロ三世さんの聖者の加護を警戒したっていうのもある。だけど理由はもう一つある。ネロ三世さんよおあんたが死ぬのは、密室殺人事件じゃなくて、普通の殺人事件だ」
そういった轟さんは手の中にある帝国第一古代結界の触媒である十字架を取り出し、思いっきり振りかぶる。
「あんたを殺すのは最強じゃねえ、二人の伝説だ」
そういった轟さんは十字架を地面に叩きつけ、ぶち壊す。
その瞬間禁書庫を囲んでいた結界はぶち割れる。天まで伸びた光の円柱が叩き割れガラスの雨のようなものが禁書庫の実験場の中に吹き荒れる。
その刹那、言葉の通り、見えなくなるほど高くなった天井から降り立った、二人の伝説が。
元剣聖であり僕のメイドであるランスロット・アレクシアと元剣聖であり僕のメイドであるランスロット・アレクシアが?
「え?」
思わず僕は目の前の光景に耳も目も鼻も口も皮膚感覚すらも疑った。




