8月9日 12時47分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城 禁書庫 人形の実験場~「ミステリーで犯人が犯人あての時にいない密室殺人事件ってなんだよ?」
ネロさんの結界術の技術は卓越し卓抜している。今回の戦闘においても、256人近かった轟さんの突進を結界術を二枚の面として壁のように展開することで、自身に通じる道を狭め硬く丸く早く捌く。そして、その戦闘におけるわずかなわずらわしさのようなほんの数瞬の隙のようなものを感じ取り、一瞬だけ攻めに回ることで、効率的に轟さんを轟くような音を立てて破壊する。
轟さんだって、最強だ。
例え18歳で帝国の上層部と帝国三神とよばれた死刑のアルキド純愛のシェーマ工魔科学的熱力学方程式の生みの親リベオンを一夜にして虐殺した神童ネログリフィスであっても、轟さんの火力を簡易結界だけでしのぎ切るのは不可能だ。
しかし轟さんによって結界が破壊されれば、前述した隙ともいえないような透き通った隙の部分を防御に回し完全に完璧な合気道のような、いなす戦い方に体術形態を変更する。
そしていなしていった先で一瞬でも僕たち轟軍団の連携がほつれればその糸をたどるように簡易結界を展開する。簡易結界は詠唱を省き自身の魔力からそのまま展開しているためおそらくかなりの魔力は使わせたはずだが、ネロさんからすればそれも計算され、計画されたものなのだろう。
このチェスのような戦いはすでに5分近く経過している。轟さんの残り残数はおおよそ178体。結果と結論を同時に述べるのなら押されている。それもかなり、しかし不幸中の僥倖が二つだけあった。
それはいまだに聖者の加護スキル【アルカディア・キャンセル】は発動されてはいないことだ。フォニイさんがどの轟さんなのかいまだにばれていないのはこちらにとっての唯一のアドバンテージでありあと数センチもといえる首の皮の一部だ。
僕が分身の加護を六回すべて使いきっていて、最初に128体に分身しており、フォニイさんとオリジナルの轟さんが最初に分身した数は64体ずつなので、この場にいるおおよそ4分の1がフォニイさんという事になる。それがばれていないのは奇跡といってもいいだろう。
あともう一つは前述した通りこの場にいるはずの轟さんとフォニイさんには、まだ分身の使用限度が一回だけ残っているという事だ。
この中にいる僕ではない轟さんがゆったりとネロさんに語り掛ける。
「あんたは」違うところからも轟さんの声がする。「何が欲しい?」また違う轟さんからも声がする。「愛がほしいのか?」また違う轟さんに話し手が変わる。「はたまた完璧が欲しいのか」「正解は何なんだよ」「そこまで教えてくれよ」「俺たちは何のために」「生まれてきたんだ?」「どんなはずだったんだよ」
「なって」「こんなはずじゃなかったよ」「なんて思えば思うほど、、、」「あんたは偽物なのか?」
その瞬間ネロさんの動きが一瞬止まる。ネロさんは先ほど頬から血が出た以外にダメージを負う事はなかったのだが、ここにきて初めて、轟さんの拳を腹で受ける。
その衝撃によって、ネロさんは帝国第一結界のへりまで吹き飛ばされる。口から血が噴き出る。しかしネロさんはにやりと笑った。
「チェックメイトだ、、、」
【あんたは偽物なのか?】といった轟さんの近くまでゆったりとしかし少しだけまったりとした顔でネロさんは近づいていく。その間に襲い掛かってくる轟さんの軍勢を軽くいなしながらまるで踊るみたいに緩やかで滑らかにそれでいて、優雅に、、、
「君がフォニイだね?」
目の前に来たネロさんに問われた、轟さんは少し俯いた。
「なんでそう思ったの?」
「僕が偽物だと知っているのはこの国で君だけだ。その情報を轟達にも伝えている可能性もあるんだけれどね、、、まあ恰好をつけるのはやめようか。しいて言うなら君たちのお父さんだからね僕は大体子供たちの言いたいことってのはわかるもんさ。なんだかなあ、多分君な気がする直感だな。」
「君がフォニイだ。聖者の加護スキル【アルカディア・キャンセル】」
そういった轟さんに触れようとしたネロさんの右手がゆったりと神々しくそれでいてマバユク光り始める。
触れられた、轟さんの加護が解除される。解放される。答えは、、、
「アルカディア・キャンセル解除【分身の加護】」
聖者の加護のアナウンスが入る。
そのアナウンスで轟いた事実。解除されたのは、フォニイ・フォニイさんの造花の加護ではなく轟さんの分身の加護。つまり、ネロさんはこの場にいるはずのフォニイさんを特定することができなかった。これではこの場にいる轟さんの数は轟さんが展開した分身分しか減らない。
もしもネロさんがフォニイさんの造花の加護を消すことができたなら、其れと連動している僕の加護も消えるのでこの場にいる轟さんはおおよそ3分の1になりネロさんの勝利がほぼほぼ確定する。
つまりネロさんが外した。ネロさんが不正解だった。ネロさんの答えは不適格だった。不適切だった。ゆったりと轟さんの分身分だけ数が減っていく。
しかし一つだけおかしなことがある、解除されたのは解放されたのは轟さんの分身分だけのはずなのに、、、178体のうちの90体。おおよそ半分以上の個体が消えている。
これは異様だ。なぜなら轟さんとフォニイさんはまだ分身の発動回数を一回分残しているはずだから、少なくともレオンライオネルという僕の視点からは、絶対にして絶解に轟さんの分身の数が2の6乗である64を超えるはずがないのだ。
「どういうことだ?」
僕は訳も分からずに行った。
「なるほどね、、、あの子はそっちを選んだか?これがミステリー小説だとしたらアンフェアが過ぎるな、、、犯人が犯人あての時にいない密室殺人事件ってなんだよ?」
ネロさんはゆったりと明らかであきらめるべきことに呆れるみたいに言った。
「現実なんてそんなものだってあんたは知ってんだろ?」
と、とある轟さんがふざけるみたいに言った。
「まあね」
「反抗期の娘はあんたが思っているよりも虎視眈々とした魂胆を振りかざしたようだな。」
「乙女心には秋がないな。」
「そんなもんだろ、いまだにそんな感情を懐かしんでいるんだったら。浮遊霊のように春風で吹き飛ぶぜ。」
「まあそうか、、、」
一人の轟さんが僕に振り返って言った。
「レオンごめんな、、、ここには最初から最強にして最恐にして最狂の三魔卿がひとりフォニイ・フォニイはいなかったんだ。この密室殺人事件で殺人など最初から起こりえなかったのさ。殺人は密室が解かれてから起こる。」
「え?どういう?」
浅慮で浅はかな僕にはそれしか言えなかった。




