8月9日 12時34分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城 禁書庫~「あんたにそれを聞いたからには殺さな《56さ7》くちゃならいな、、、」。人形の帝哭の真実。
「レイドちゃん!」
これを言ったのはオリジナルの轟さんだ。
おそらくフォニイさんが造花の加護スキル【偽造された虚像と想像の創造】を使ってコピーした轟さんを隠すためにあえてレイドさんにちゃん付けをして、フォニイさんに成りすましネログリフィスさんにフェイントとフェイクをかけている。アルカディア・キャンセルを自分に引き付け引き寄せるために、、、
「あーいあい!」
それを聞いたレイドさんは禁書庫に置いてある暗号の答案用紙でもある、返却機に三冊の本を語り騙りながら流し込む。
この禁書庫自体が前に来た時、同様でどうしようもないくらいに暗号になっている。暗号のルールは単純かつ淡白かつ淡々としていて、この本棚にはすべてAからZのアルファベットが割り当てれており、本棚に置いてあるそれぞれの本を三冊まで返却機に流し込むことで、登録された階層まで禁書庫が移動する。つまりとても大きな本で敷き詰められた暗号付きのエレベーターのようなものだと思ってもらえればよい。
ちなみに禁書庫は場所の名前ではなく魔力を探知し立体的に移動する時空間移動用の魔道具の名前らしい。それをどっかの元剣聖野良メイドが誇らし気に言っていた。
「一冊目可愛い兄妹との接し方、著者ヨサノSの育児向けの本棚。二冊目ゴーレムを使った不完全で不出来な死者蘇生の禁術の使い方、著者ガリレイIの四次元魔術、概念魔術の本棚、三冊目反抗期の子供との接し方、著者ジャンヌSの育児向けの本棚。三文字並べるとSIS。 Sisterってか。SISコン王子!あんたが格下に隠したいのはこれだろ!」
レイドさんは満面の笑みでゆったりと、返却機にそれら三冊を流し込む。一旦、一時的にネロさんの動きがレイドさんがしゃべっている間止まる。
「さあ僕たちの戦いはこれからですよ!」
部屋に戻ってきた轟さんが支配の借用を使ってコピーをペーストした僕の口調をまねしながらネロさんを招くように言った。これは自分がアルカディア・キャンセルで狙われないためのブラフだろう。
禁書庫はゆったりとまったりとだが段々と淡々と下に向かって加速していく、其れと対比してネロさんは何かを鑑みるみたいに考えるみたいに動きを止める。
「そうだね、、、ここまで来た君達には帝国の帝哭を見てもらった方がいいかもな、、、」
◇◇◇
1分ほど降りたところで禁書庫の動きが止まる。おそらくもう城の中ではなく地下まで来ているのだろうと僕は思った。すると壁を覆うようになっていた本棚がリリシズムのある俳句みたいにするりとどこかに沈む。僕は周りを見回した。
たどり着いたのは只々だだっ広い軽く見積もっても四方に1kmはある実験場のような場所だった。端の方にはなぜかさっきオリジナルの轟さんが展開した帝国第一古代結界の光の面があった。そこには緑色の液体が敷き詰められた医療用のポッドのようなものが何個もあり、その中には人が入っている。否、人のような何かが入っている。その人のような何かには二つだけ欠けているものがあった。その人のような何かには生殖器がない。そしてその人のような何かには顔がなかった。
「なるほどな。とか言っていいか?、、、」
僕は明らかなことをあきらめるみたいにあきれた。
「もちろん構わないよ、、、幻滅したかな?」
「いや、なんとなくはわかっていたんだ。二つだけあんたに聞いてもいいか?」
「構わないよ、、、」
ネロさんは滔々かつ淡々と答えた。
「一つ目は別に些細で仔細なことなのだけれど?なんでさきほどまで、50mほどの大きさしかなかったはずの帝国第一古代結界が1km四方に延長されているんだ?」
「ああ、帝国の古代結界というものは優秀だからね、結界の対象範囲を広さで認知しているわけじゃないんだ。禁書庫本体を結界の対象と認識している。この四方1kmほどの実験場も魔術の結界論的には禁書庫の一部だからね。簡単に淡々と単純に言い表すのなら洗練されたナビシステムや訓練された盲導犬を想像しもらいたい、道が変わってしまっていたとしても、その変わった道から自身で鑑み考えてほかの経路からでも目的地につなげる。例えるならそんな感覚かな、まあでも外から見れば50m四方のままで変わらないと思う。禁書庫がやっているのは厳密には移動じゃなく時空間操作だから。まあこの話は適当に聞き流してくれて構わない。」
「なるほどな。ならば二つ目これが本題。これがあんたが作っていたものか?帝国のどれだけの人があんたの人形なんだ?どれだけの人がゴーレムなんだ?」
これらの言葉は轟さんをペーストした僕の口から出た言葉だけれど、別に轟さんをまねようとして口が荒くなったわけではない。僕が思ったままに失恋した後に夕焼け小焼けの草原を走るみたいに発した言葉だ。しかし僕は不思議にも不可思議にもこのおどろおどろしい状況に驚いていた。わかっていたはずなのに、、、
「一つだけつまらないつまらない男の話をしてもいいかい?」
「ああ、、、」
「その男には妹がいた。その男は国において最も王に近い存在であり、存外自分自身が正しく生き続ければ国は正しくなり。正しく国を導けるのではないかなんて考えてしまう愚か者だった。その男には世継ぎ争いをする弟リベオンと妹のジェーンという兄弟がいた。その男は愚かにも本当に愚かにも二人の事を信じ愛し未来永劫生き続ければいいなと根っから願っていた。しかしそんなに現実は甘くない。リベオンはその男を裏切り食事に毒を持らせたジェーンを使ってね。そんなのよくある話じゃないかって?まあ聞いていけよ。そのジェーンはなにを思ったのかこれまた愚かなことにそれが毒だと知っていながらその皿の食事を自分で食べた。なんでだろうね正直者だったのか?正々堂々威風堂々とした子だったことは覚えているんだ。その男はふと考えたのさ、人間はどうしてこれまで愚かで間違えてしまうのだろうと、それがゴーレムだったら人形だったのならそんな風な場違いで埒外な間違いは起きなかったんじゃないだろうかってね。愚かだなあ。本当に我ながら愚かだなあとか言ってみる。だけどそんな愚かな男もそこで国民の全員をゴーレムに変えてしまおうなんてことは思わないさ。後日、ジェーンの葬式が開かれた、その時集まった王族たちはみんな啼きながら、ジェーンの死を悲しんだよ。まあそれがイニシアチブが取れるイニシエーションだからそれについてはその男は白々しいなとは思ったのだけれど別に良かった。でもね、その男がその会場から抜け出そうとすると帝国の門番の人たちが立ちふさがってね、その男を出してくれないんだ。振り返るとさっきまで泣いていたはずの人たちが笑いながら拍手しているんだ。笑っちゃうだろ。なんでだろうね?まあ簡単で単純な真実を話すと、そこに集まった王族たちが中途半端な坊やであるその男を殺そうとしていたからなのだけれどね、その男はジェーンが死んでからはめったに禁書庫から出ない引きこもりだったから殺せるときが正直に言えば葬式くらいしかなかったんだって、、、その男はそこにいた王族も兵士も妹の死体を見て笑みを浮かべながら拍手をしていたリベオンも全員殺した。全員殺してからその引きこもりの男は外に出てみたんだ。するとそこにはちょうど轟が持ってような形をしたその男の背丈くらいの木製の大きな十字架があってさ、、、で城から出てきたその男を見つめる民衆たちは驚愕してた。その男が民衆を脅して聞いてみると今日がその男の処刑日だったんだって、、、引きこもりのその男はそんなことも知らなかったんだ。自分が愛する民に殺される日すらも知らない愚か者だったんだ。この話で何がむかつくってその男の鈍感と鈍重さと鈍間さだよな。そこからその男はその国の国民を少しづつ意思を持ったゴーレム人形に変えていくことにした。そんなの無理だろうって思うかい?でもそれは別段難しい事じゃないんだ。意外に案外簡単にできる。最初はその男の命を狙った王族たちを人形に変えた。方法はシンプルその対象となる人物を殺して、その魂を疑似生命体型ゴーレム人形の中に入れていく。まあ賢者ガリレイの導きの通りにって感じかな。一人一人夜な夜な丁寧に丁重にやっていったら結構いけるもんだよ。でも魂を扱う禁術ソーリクはかの魔王軍直下四天王残魂のオルタの残魂の加護のように完璧で鉄壁なわけではないからね、少し対象を人間としては不完全にしてしまう。これはこの男の力量不足もあるのだろうけれどね、まあ仕方がない。でもその不完全さこそがその男が設定し決定し徹底した運命すなわち正解しか信じないこの男の国の不器用で完璧すぎる国民たちを生んだのさ。あと一つ問題を上げるのならその人形たちは老いることがない。正確に言えば不老というより不朽という感じだ。まあこれについては永遠の美を求めるこの男の美意識的にはむしろありがたかったのだけれどね。彼らは正しさという宗教を信じているからね、、、本当に、、、でも、この男の欲望はそれでは終わらなかった。愚かにも自分のために死んだジェーンだけは完璧な死者蘇生を使ってよみがえらせたいと考えたのさ。だからオルタを呼ぶために君を読んだんだねこの男は」
息継ぎもなしに語り終えるとネロさんは自分を指さしながら生きるための大きく息を吸った。
「君にはわかっているんじゃないかな?最初から分かっていたんじゃないかな?」
ネロさんは悪びれることもなく笑顔を崩さず崩れた僕に語り掛ける。多分ネロさんは僕がレオン・ライオネルであることが分かっている。でもそんなことはどうでもいい、、、
「別にあなたは正しいんだろうけれど、こんな疑わしさなんてものも飾りにすぎないんだろうけれど、あんたは舐めている。他人も自分もあんたが愛する者すらも、、、」
僕は衝動的に暴動的に行動的に挑発的にネロさんの端正で淡白な顔に腹が立ちながら言った。
「さっきの質問に答えようか、多分君は本当のところ帝国の国民の中だったら一人にしか興味がないのだろうけれど、そのくらい一途な位置に心があるのだろうけれど、純粋無垢かつ曖昧模糊で淡白かつ甘酸っぱい人物それがレオンライオネルという人物なのだろうけれど、、、ここで何も言わなければ、致し方がないし立つ瀬もないから、この国の支配者否、生産者として応えよう。答えよう。この国にいるすべての民は人間ではない。正しく真面目かつ勤勉な人形さ、、、」
ネロさんはまるで絶望を歌う人形のようにまるで絶望を嫌う人間のように少し落ち込みながら言った。こういう時に落ち込めるからこの人は正解で正しく正しいのだなと僕は感じた。
「あんたにそれを聞いたからには殺さなくちゃならいな、、、」
僕はイニシエーションみたいにイマジネーションのない言葉を吐いた。この言葉には、イニシアチブすらもないのだろう、、、
レイドさんはその一連の流れを眺めて少しにやりとした。この人はこの人で何を考え鑑みているのか、この光景を見て何を感じているのかがわからない。人形を見て驚いている様子はなかったのでおそらく大帝の事情を知っていたのだろう。否、大抵の事情を知っていたのだろう。




