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8月9日 12時11分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城城下 噴水広場の演説台前 帝国第三古代結界近辺~「君は人間かい?それとも人形かい?」

 なんでだろうな?

 「なんでだろうな?」

 そのまま思ったことを口にした。

 元魔王軍直下四天王残魂のオルタは本物の噴水と噴水のような血しぶきが吹き荒れる公園にいた。

 オルタは自分自身が何をしているのか何のためにこんなことをしているのかが分からなかった。実はオルタはその程度の事もわからない若手だったのかもしれない。

 「僕はあの日逆上がりを練習し続けることで腕を壊し足を壊し動けなくなる。そのまま治ることはない、一生。その設定が決定されていてそれが徹底されているのが帝国という町なんです。だからあなたがやっていることはこの街では間違いなく間違いです」

 それならば間違いありではないかと突っ込めるほどオルタの心はウルウルと潤ってはいなかった。

 

 オルタは目の前にいる少年に左手をゆったりと添え魔力を硬く丸く早く流す。

 オルタはなぜか帝国に決定された設定を守り続けることを徹底した目の前の性根が新鮮な少年の腕と足を直していた。魔族には禁忌とされている唯一の魔術。勇者ラルフを勇者とした伝説の魔術。魔族と人間の中の因縁と因果で結ばれた回復魔法で、、、


◇◇◇


 氷山龍ラオパオシェンの死体の背中の上でレオン・ライオネルの兄であり兄でしかないカオスとケイオスの中間点ガルダ・ライオネルはオルタに向かって聞いた。


 「勇者ラルフの得意であり特異である魔術ってなんだっけ?」

 答えの知っている答案用紙を回答するように、固体となった氷を解凍するようにガルダは訊ねる。

 「陽の魔術だな」

 「回復魔法って言えよ、、、わかりずれえな魔族っていうのは。否お前は本当は分かりたくないんだな」

 「どういう意味だ?」

 「どういう意味なんだろうな?自分で言っててもよくわかんねえや。まあ確かに魔族からすれば陽の魔術は回復魔法じゃなく立派できっぱりとした攻撃魔法だからな。そういう言いかたをするのもいなし方ない、頷ける。でもよお、お前が回復魔法をそう呼ぶのはそれだけじゃないな。」

 「なんでだと思う?」

 オルタはラオパオシェンの背中から受ける魔力素を感じながら、ゆったりと白銀に包まれた世界を見つめる。

 「お前ってさあ勇者ラルフができたことは大体代替できるのか?」

 「物による、まあ陽の魔術に関しては使用することだけならできるな」

 「お前は勇者ラルフの体を持っているわけじゃん。だったら魔族と違って、俺様の弟の中の弟、ベストオブ弟にやられた右腕を直すことだって別にジャンジャンできるはずだよな、、、なんで右腕をいまだなお直さないんだ?」

 白い息を生きるために、言い切るためにガルダは吐き出しながら言った。

 「回復魔法を使うと私が魔族だったころに使った残魂の加護の接続が一時的に切れてしまうんだ。そうなった場合私にもどのようなことになるか、想像し予想し妄想し創造することができない」

 「なるへそ、、、」

 ガルダはつまらなそうに夕凪色に光る漂流の氷龍草をみつめた。


◇◇◇


 オルタは目の前の性根が新鮮な少年を見つめる。

 「お前を直したら、私は私じゃなくなる」

 なんでこんなことをしているだろうとオルタは考える。オルタの正義はオルタの大義はどこに行ったのか?

 「何を言っているんですか?」

 多分もうどうでもよくなったんだ、レオン・ライオネルの成長した姿を見て安心し慢心し感心してしまったあの時から、、、

 「私は私という因果を捨てたいんだ。お前みたいに決定された設定を徹底して守り抜くような強さはないんだよ、、、この街は良いな、良すぎて良すぎて私でも吐き気がする。」

 オルタには何もわからない。

 オルタは何か明らかなことをあきらめるみたいに言った。

 「そうです、、、この街はいつまでたったってネロ・グリフィスのプロット通りのプロセスしか歩めない」

 そうか、、、という言葉を発する前にオルタの意識はオルタの景色はオルタの知識はゆったりと沈んでいく。


◇◇◇


 勇者ラルフは気が付いたら見知らぬ公演がされていそうな噴水のある公園にいた。血しぶきが吹き荒れるその公園に見覚えはない。最初に勇者ラルフが感じたのは自身に右手がないという事だった。回復魔法を極めたラルフにとってこんなことは生まれてから初めてだった。

 目の前には一人の少年がいる。

 勇者ラルフは目の前の性根が腐ってそうな少年を見つめる。目の前の少年には自分自身の自信を持った回復魔法が施された、魔術残滓が見て取れた。

 「君は人間かい?それとも人形かい?」

 勇者ラルフは一番最初に思ったことをそのまま聞いた。

 「見てわかりませんか?」 

 ああ、見てわかるとも気持ちが悪いほどに、、、と言いたくなったがさすがに言わなかった。その少年の足と腕をラルフは簡単に淡々と淡白に治す。

 「ふざけるな、、、」

 その少年は立ち去ろうとするラルフの背中に向かって、何かを恨むみたいに羨むみたいに恨み言を言った。

 「ふざけるよ、そのために生きてんだから。」

 

 少年はそんな軽口を虫けらみたいに無視した。その無視を無視しながらラルフは失った右腕をサラッと無詠唱の回復魔法で直し、近くに知覚できたおおよそ一面50mの立方体の結界に触れる。


 「なるほど魔術要件は魔力量、元々の発動者はネロ・グリフィスか。さっきの人形の件も含めてきなくせえな、、、」

 「魔力制限」

 そういったラルフは結界に内に足を踏み入れる。



 

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