8月9日午前11時59分30秒 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城城下 噴水広場の演説台~「こんにちは、、、暴力さん。君のせいで僕の115930《イイ国民》達が台無しだ」
肉塊となって血しぶきを上げる帝国国民を見て、工魔科学帝国第一王子ネログリフィスは首を傾げ考えていた、鑑みていた。目の前にいる鎖を持った憎しみの竜巻は何者なのだろうと、、、
「こんにちは、、、暴力さん。君のせいで僕の115930達が台無しだ」
殺意を持って直に近づいてくる相手をあえて挑発するような態度でタイトに語りかけるネロ。
「おい、おまえを殺したら俺の弟が殺されることはないのか?」
目の前にいる暴力の瞳を一目見る。それは衝動的かつ行動的しかし妄想的で盲動的、弟という存在以外はもうどうでもいいとでも言いたげな純粋で透明で純透明な瞳だった。
「うん、まあ僕が殺されれば。彼を処刑する必要はなくなる。彼の時計の針はまた動き出す。タイムリミットはさっき言った通り8月9日午後1時、、」
その言葉を言いきる前に目の前の暴力から鎖が飛んでくる。
おそらくその鎖には何らかの加工、もしくは加護が施されていることがたいして戦闘経験豊富ではないネロにもわかった。その楔のような鎖を軽く早く硬く躱す。ネロが躱した鎖がそれまでいた演説台を木っ端みじんに破壊する。怪物だ。見ればわかる。
「最後まで一気呵成に言い切らせてくれよ、イキらせてくれよ、大事な場面だろ。」
ネロは目の前のサイコで最高でタイトで対等な化け物を煽る。その言の葉に特に理由はない。
「俺の大事な場面には弟がいる。弟がいない場面は大事じゃない。お前がどっかの国の大臣だろうが人参だろうが人間だろうが関係ない。それは絶対で断じて接待ではなくてそこに別解はない。」
「ああ君が、レオン君の兄上様なんだね。自己紹介してくれて助かるよ、、、僕も別解は嫌いだし接待も嫌いだ。ちなみに君みたいな怪物も好きじゃない。だから、絶対的な結界を張らせてくれ。」
そう言い切ったネロに鎖が飛んでくる。
ネロの演説を明滅的に完結まで簡潔に聞いていた、一人の国民が演説台の少し前まで出てくる。その国民はガルダの鎖に向かって2mほどもある鎌を使って、演説台の前にいたレオンライオネルの有罪を主張していたリオネスの頭をゴルフボールのように弾く。リオネスの首の根元から血が遅れて飛び散る。頭がロケット花火のように飛んでいく。
「グシャり」
鎖とリオネスの顔面が衝突し目をそむけたくなる音が鳴り響く。鎖はその衝撃で方向がネロからそれる。あたりに死の芳香が漂う。
「レオン・ライオネルの兄ガルダ・ライオネル様こんにちは、、、」
その一人の国民はゆったりと跪きながら言った。
ガルダは爆発的な怒りを覚えていた。ガルダにとって目の前で起こること全てが気持ち悪かったからだ。ガルダの本能的にガルダの構造的にガルダの暴走的に目の前の弟以外のすべてを破壊したいという衝動に駆られていたそのすべを探していた。
「帝国軍直下組織 六魔女が一人魔女長のジャンヌと申します。今からあなたを殺します。よろしいですか?」
その一人の国民は魔女というよりかは魔法少女のような見た目をしていた。髪の毛は黒色で少しウェーブがかかった長い髪の毛を覆い隠すようにピクシーハットが乗っけられている。そのピクシーハットと黒い色のドレスが唯一彼女を魔女たらしめる、外見的要素かもしれない。
「黙れ女子穴。口を動かすんじゃなく、口でしろ。クソ穴が!」
ガルダの怒りは滾りは限りなく限界点迄上っていた。
そんなガルダをあざ笑うかのように同じくピクシーハットをつけた髪の毛の色と髪型が違う五人の少女が群衆の中からガルダを止めるように露わに現れる。
一人は金髪のポニーテール、一人は紫色のベリーショート、一人は緑色のショートボブ、一人は青色のベリーショート、一人は赤色の坊主頭あともう一色あれば虹が作れそうだと、ガルダは思った。
「光の導きは我に、結界の成り立ちは魂を素とし、ここに明滅する命滅契約とする。帝国第三古代結界施行」
ネロが10㎝ほどの小さな十字架を掲げながら、そういうと光の円柱のような何かが天まで昇っていく。それは点ではない。線でもない。円柱型の面として領域をかたどっていく。
ちょうどネロが内側の縁ジャンヌが外側の縁となる形でその古代結界は形成されていた。
帝国の古代結界。それは20年ほど前、工魔科学帝国マンスが魔族の領土だったころから使われていた人魔大戦時代に魔族が生み出した最終防衛宝具。これは戦争なのだから、前奏など無しで使えるものは全部使う。例えそれが元々人のもので無かろうと、たとえそれが人でなかろうと、たとえ自分が人でなしになろうと、、、
予定ではこの第三結界は魔王軍直下四天王残魂のオルタを捕まえるのに発動するはずだったため、結界の固有条件はオルタの出入りを禁止するというものだった。しかし目の前に破壊的かつ怪物的な怪童が現れたため、今回の第三結界の固有条件が一定以上の魔力を持つものの出入りを禁止するという少し曖昧で明快ではないもの変わってしまった。
明快でない物はネロの好みではない、彼は数学と理科は好きだが国語がどうもだめで嫌いなタイプなのだ。しかしこれについて予定は未定であり不定なものだという事をネロは知っていた。予定外にもかかわらず意外に案外その時のネロの気分は悪いものではなかった。
ネロが演説をしていた。演説台はちょうど帝国第三結界の境目となっている。結界の外に音は届かないのでジャンヌに対して軽く応援の意味を込めたハンドジェスチャーをした。ジャンヌはそれに対して、軽く早く丸く浅く笑顔を見せるだけだった。ネロはそんなサイコで最高な彼女の事が嫌いではなかった。
彼女の後ろでは、ガルダ・ライオネル基暴力の竜巻がこちらに何かを叫んでいる。怒りや叱りや騙りや語りなど色々なことを彼はネロに言いたいのだろう、しかしネロは心底そんなことはどうでも良かった。
彼女にネロが手に持っていた十字架を投げ渡す。その十字架にはこの結界をぎりぎりすり抜けられるくらいの魔力を込めた。その十字架は結界の光をすり抜けていく。それを彼女はキャッチする。どうやら結界のアドリブでの条件変更は成功したらしい。
ゆったりと紅魔城に向かって伸びる階段をネロは歩いていく。その足取りは少しぐったりとしていた。
「少し疲れたな、流石に結界の固有条件の高速変更は神経をすり減らすな。もしかして、ちょっと引きこもりすぎたかな?」
紅魔城のほうを見ると、その赤黒い強面な見た目がまるで自分自身を魔王を倒しに行く勇者だと錯覚させる錯視のように感じた。
「いいや、その場合私が魔王だな、、、」
ネロが唯一知っている、一人の勇者の顔を思い出しながら、そう独り言ちた。




