8月9日午前9時50分 工魔科学帝国マンス中枢紅魔城 禁書庫前~メイドの土産が冥土の土産
僕と僕の幼馴染であるジェーンは工魔科学帝国マンスの中枢紅魔城の中に入りジェーンの兄であるネロ・グリフィスの住む禁書庫の部屋の前まで来ていた。
「この度は私の愉快な誘拐に付き合ってくださり本当にありがとうございました。」
「本当に愉快な話だぜ、メイドの土産に持って帰りたいくらいだ」
「冥土の土産にならないといいですね」
「不吉なこと言うなよな」
そういいながら彼女は、ゆったりと禁書庫の扉を開ける。
その扉の奥には彼女の兄である、ネログリフィスと会ったことのない機械に身を包んだサイボーグのような謎の人物とこれまた会ったことのない仮面ライダーのようなスーツを着た二人がいた。否二人が人物なのかどうかもわからない。
一つのオレンジ色のサイボーグはロケットのようにその場で宙に浮いている。もう一人の赤色の仮面ライダーのようなスーツを着ている人はこちらを一瞥すると少しにやりと笑った。
「ひさしぶり!レオン君僕の妹が世話になったね、、、」
ネロさんが特に変わった様子もなくゆったりと話しかけてくる。彼という人物に対して僕はいまいちわかっていない。というか彼という人物についてはわかっている人物などいないのではないかと思うほど底が知れない。もし彼のことが分かっているという人がいるのならば、日本の有罪率と同じくらいの確率でわかった気になっているだけだろう。
「はあ?ほかの二人?といっていいかはわからないのですが、その方々は何者なのです?」
「一人は帝国の最高戦力の一つで三魔卿と呼ばれる、組織のリーダー最強担当轟」
仮面ライダースーツのほうの人物を指さしながらネロさんは言った。三魔卿といえば帝国では六魔女と並んで最強にして最恐にして最狂と言われている戦力だ。片田舎の辺境貴族である僕であっても知っている。
「ふん、、、」
轟は特に気にした様子もなく、こちらを品定めでもするみたいに見つめている。
「もう一人は今回のパーティーのゲスト、天空の流通を強大な飛空艇によって一挙に担う天海衆の第一師団団長。期待のというか機体のというか難しいところではあるのだけれど、まあここは奇体の勇者と呼ばせてもらおうか、超新星勇者レイドくんです」
「よろしくっスー、レオン君!」
軽い感じで紹介されたサイボーグはこちらに向かってぴょんぴょんしながら機械音声を向けた。意外と接しやすい感じのサイボーグで安心した。
「よろしくお願いいたします」
僕は少し硬い感じで頭を下げながらあいさつをした。
「それで単刀直入で申し訳ないのですが、、、」
「何かな?」
ネロさんは少し驚いたようなふりをしながらこちらに語り掛ける。
「なんで僕のことを誘拐しに来たんですか?」
「ああその話か、、、」
ネロさんはゆったり吐息を吸い込みながら言った。
「戦争を起こそうと思ったんだ。」
ぼくはその言葉を聞いた瞬間理解が追い付かなかった、あの絶対にして絶大にして絶強の帝国の第一王子が言っていい冗談ではないからだ、僕はその言葉を聞いた瞬間ネロさんの事がもっと理解できなくなった。
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味、戦い争う、武力をもって、そこには裏も表もない。簡単に言えば対象に対しての裏表無しのおもてなしってところだね」
ここまでおもてなしという言葉が耳に響いたのは滝川クリステル以来だ。小泉進次郎もこんな気持ちで滝川の話を聞いているのだろうか?
「なんでそのために僕が必要なんですか?」
結局はそこに至る、帝国が戦争を起こそうという火種としては片田舎の辺境貴族である僕はどう考えたって役不足だろう。大根役者どころかレンコン役者といってもいい。
「戦争を起こしたい相手が、君を欲しているからさ。この戦争に必要なのは、二人いる。その二人を呼び込む起爆剤として君が適任なんだ。」
「それは誰ですか?」
「元剣聖ランスロットアレクシアと勇者の中の勇者彼女が勇者といえばそのすべてが勇者となると言われた女勇者ラルフ。今は魔王軍直下四天王残魂のオルタといったほうが適正かな」
その二人の人物が出てきたのは、僕にとっては死刑宣告のようでもあり、夢のようでもある不思議な感覚だった。




