8月9日午前4時27分31秒 名もなき宿屋4号室~「あなたを誘拐しに来ました。正々堂々と」とおっしゃる幼馴染
「もう一度言ってもらってもいいかな?」
先ほどまで、僕のマイメイドであるアレクシアの豊満な胸でのぼせていた頭を必死に動かす。否動かない。こんなことを言われてはい、そうですか、となっていたら蘭姉ちゃんや吉田歩美ちゃん以上に僕には誘拐される才能がある。ぼくは米花町に住所変更した覚えはない。
「こんにちは、私はあなたの幼馴染の旧姓をジェニー、今はネロジェーンと申すものです。あなたを誘拐しに来ました。正々堂々と」
彼女は今白色のロングヘアーを窓から流れる風に揺らめかせながら、ゴスロリ風の黒いワンピースの襟を正している。
正々堂々と誘拐しに来たというパワーワードを僕はどういう風に受け取ったらいいかが分からなかった。どうせ幼馴染に誘拐されるくらいならばもっと卑劣に、もっとお下劣に、もっとしたたかに、誘拐らしい誘拐してほしかった。正々堂々威風堂々こんな愉快に誘拐されるなんて体験なかなかできるものではないだろう。
「とりあえず久しぶりだな、、、ジェーンお前が行方不明だって聞いて僕はとても心配したんだぜ、、」
僕は前世で同窓会にてめちゃくちゃ好きだった女の子に舌ピアスが開いていたのを見た時の記憶を思い出していた。しかしまあこの状況は逆だな、、、
なぜかと言えば答えは簡単だった。僕とジェニーは七年間会っていないのだ。にもかかわらずジェニーの見た目は四歳のころから変わっていない。幼女であり童女であり僕の記憶のままであった。あり得ないのだ、四歳のころから全く見た目が変わらないなど、、、
例えば、二十歳の奴と七年会ってなくて二十七歳になった時にまた会いました。何も変わっていません。それならば理解はできる。しかし僕のジェーンと会った最後の記憶は四歳だ。そこから見た目が変わらないなんてことがありえるのだろうか、、、
「ご心配ありがとうございます。誘拐に関してのご返事をいただけると幸いです」
こちらから言えば幸いではない災害だ。誘拐に関してのご返事を催促されるなんて普通の人間からすれば不幸中の不幸だろう、光なんて一切見えない暗闇といってもいい。
「ええと、まあお前の頼みだっていうのなら聞いてやりたいところではあるんだがな、、、僕にも連れがいてさあ、そいつに話してからでもいいか?」
「元剣聖のアレクシア様ですよね?」
「ああそうだけれど」
なんでアレクシアが剣聖だってことを目の前の少女は知っているだろうか?
「それだけは勘弁してください。レオン君。一生のお願いです」
ジェニーは土下座のような姿勢に移ろうとする。僕はそれを必死に止める。ここで四歳の見た目の彼女に土下座なんてさせたら絵面がとんでもないことになる。
「レオン君は私の頼みを聞いてくれないの?」
目をキラキラさせながら、記憶の中からそのまま出てきたような見た目の少女は胸の前で手を合わせる。クソ可愛いじゃないか、幼馴染のその視線はずるいぜ。
「仕方ねえな、先っちょだけだぞ、、、幼馴染のよしみだ。先っちょだけ誘拐されてやる。っていうかアレクシアはどこに行ったんだよ。」
「彼女はレオン君が倒れたのを心配して、マッハ1.5の速度で氷嚢に使う永久凍結石をまたとりに行ったようです。だから今がチャンスだと思い誘拐の告白に参りました」
ジェニーもめちゃくちゃだが、アレクシアもめちゃくちゃな奴だな本当に、僕の周りの人間は頭のねじが外れていってしまうのだろうか?まあいつの時代も勇者なんてものはこんなものなのかもしれないな、
「一応アレクシアに書置きしていっていいか?」
「はい!それに関しては私にお任せください。準備してきました」
「さすがは僕の幼馴染誘拐もピクニックの弁当感覚でこなしやがる。」
ここに置いておきます。一通の手紙を置いた彼女は僕の背中を押す。
「おい押すなって、」
「私はレオン君を一生涯推しますよ」
「字が間違ってないかそれ、、、」
僕たちはゆったりと宿を出た。少し涼しい夜空に光る星空がまぶしい。
「そういえば四号室にいたのっておまえか?」
「はいそうですよ!」
「なるほどな、、、」




