8月8日午後8時08分 名もなき宿屋の八号室~メイドさんと混浴した事で∞《夢幻》の世界へ沈んだ、坊ちゃま
僕と僕のマイメイドである、元剣聖ランスロット・アレクシアはめっちゃ美味しい氷菓を食べるために、僕たちの住む館から北に1200km離れた、-30度を下回る極寒の地、パオシェン山脈の、氷山龍ラオパオシェンの死体跡地に、永久凍結石と呼ばれる氷菓に使う氷を取りに来ていた。
もともとはそんなくだらないテーマだったこの旅は、勇者と戦ったりだとか、生き別れの兄弟と再開したりだとか、そんなどこにでもある映画版ドラえもんのような展開に発展していき、なんだかんだあって僕たちは永久凍結石を使ったアイスを食べることに成功した。そう僕たちは本当になんだかんだあったのだ、、、
僕たちの今までの冒険を文章としてまとめようにも、物語の道中はシリアスで儚いわりに終わりがアイスを食べただけというドラえもんのアニメオリジナルのような、管がないし、くだらないし、一応誰もくたばっていない誰得展開になってしまった。なので気になる方はこのエピソードだけでなく、ほかの話もぜひ読んでほしい。この前書きもくだらない宣伝文へと変わっていきそうなので、ここらへんで本編へと飛ぶ事とする。(ちなみに僕はドラえもんのアニメオリジナルは好きだ)
僕たちはパオシェン山脈の麓にある、とある宿に来ていた。
さすがに今日一日で工魔化学帝国の第一王子ネロ・グリフィスと命がけのボードゲームをし、勇者の体を乗っ取った魔王軍直下四天王と戦い、帝国の国宝である永久凍結石をかき氷にするというイカレタ初めてのお使いをこなした、僕たちには休む場所というものが必要だった。
この宿場の名前は何だっただろうか?まあここで思い出せないという事は物語の上でそこまで重要なものではないのかもしれない。
ほんのり雪が積もったトラップドアを僕はゆったりと開ける。きしんだ木の音がこの宿の貫禄を表すようでもあった。
「いらっしゃい」
目の前のカウンターに座った銀縁の眼鏡をかけた老人がゆったりとこちらに話しかける。その声色は優しさがあり、こちらへの温かみにあふれていた。
「こんにちは、一晩宿を貸していただきたいのですがよろしいでしょうか」
「ああ構わないよ、、、こんな年中閑古鳥の宿屋に来てくれる奴なんてラオパオシェンの永久凍結石を狙う冒険者以外ほとんどいないからね、、、4号室以外の部屋は全部空いているから、どこを使ってくれてもいい。でも今日は珍しいなあんたぐらいの年頃の子が二人も来るなんて」
僕はアレクシアと顔を見合わせる。
「僕たち以外のお客さんというのは4号室に居られる方ですか?」
「うん、まあそういうことになるね。」
「なるほど」
「料金とかは、、、」
「ああえっとね、、、」
◇◇◇
僕たちは軽めに宿主との会話を切り上げゆったりと今にも崩れそうな音を上げる廊下を進んでいく。
「どこにする?」
「別にどこでもいいんじゃないですか?」
そういったアレクシアは一番奥の8号室の部屋に入っていった。アレクシアが女性という事もあり部屋は分けたほうがいいかと思ったのだが、旅の出費としては2部屋借りるのは現実的ではなかったため相部屋となった。別にアレクシアと一緒にお泊りしたいなんて言う不純な動機は一切ない。これっぽっちも一ミリも、
「一ミリは嘘でしょ」
アレクシアはひょっこりとドアから顔を出して突っ込んだ。
「僕の思考を切り刻まないでくれプライバシーの侵害だ」
「私は心外だったのでシーン外から侵害したまでです」
「なんだその理論は、、、」
僕もその部屋にゆったりと入っていく。その部屋はそこそこ広く、二人で使うのにも申し分はなさそうだった。
それに露天風呂が部屋のベランダについている。そこからは北の帝国マンスの景色を一望することができる。
「なんかめちゃくちゃいい雰囲気だね」
「そうですねえ!坊ちゃま!」
アレクシアは笑顔で手をたこさんのようにうねらせている。
「なんで君はそんな嬉しそうなんだ」
「それは、、、」
そういったアレクシアは悪代官がごとき手慣れた手つきで僕のコートをひらりとはがす。
「アーレーーー」
くるくると目を回す僕、それをチャンスととらえた悪代官もとい、僕のメイド【元剣聖】は僕の服を一枚二枚と素早く脱がしていく。
「良いではないかー!良いではないかー!」
あっという間に裸になった僕は肉食獣に狙われる草食動物のように、股のあたりを隠しおびえている。
「変ー身ッ!」
そう言ったアレクシアは胸のあたりに巻いた大き目のバスタオル一枚のだけのお姿になっている。
そのままアレクシアにお姫様抱っこで抱えられた僕はさながらスプラッシュマウンテンがごとき速度で露天風呂へと放り込まれる。こんな二つの意味で胸躍る、アトラクションはDのつく夢の国にも絶対に置いていない。僕がアレクシアの胸の厚さゲフンゲフン胸の熱さを感じられたというのは役得というものだろう。
「ざっぶーん」
湯舟とアレクシアがゆったりと鳴いた。
「いきなりだなアレクシア」
「ええ、いきなり私のようなかわいいメイドにいたずらされるの好きじゃないんですか。それでも男ですか!」
いきなり男かどうかを聞かれたので、僕はとっさに世界の命よりも自分の命よりも弟の命を優先する兄の顔が浮かんだ。この二人はなんだか似ている気がする。意味の分からないところとか。彼もこういう状況でそういうことを言いそうだ。
「嫌いだ」
「嘘つき。好きでしょ」
「嫌い寄りの好きだ」
「本当は、、、」
好き寄りの好きだ、でもそんなことは心の中でしか言えない。
「好き寄りの好きだ、でもそんなことは心の中でしか言えない。」
アレクシアは僕の真似をしながら言った。僕は恥ずかしくなり顔を赤らめながら湯舟に顔をうずめる。
「思考を切り刻むなよ」
「ふふん、謝ってあげます、ごめんなさい。」
「そんな高飛車な謝り方があるか!」
軽く彼女にチョップを入れる。チョップを受けた彼女はテヘペロ!という顔をしていた。
「じゃあ坊ちゃまは私が今何を考えているか分かりますか?」
急にシリアスな声色で彼女は僕にプロポーズをするみたいに問いかける。
「わかんないよ、君みたいに自由自在に他人の思考を切り刻めるわけじゃないんだ」
彼女は大きく息を吸った。
「じゃあ教えてあげます、私失恋しちゃったんです。だから笑ってるんです。涙が出そうだから笑っているんですよ坊ちゃま。」
「え!」
僕にはなぜそのような話につながってくるのかが分からなかった。
「私好きな人がいたんです、見るだけで心の奥底がポカポカ暖かくなって、ドキドキしてしまう。そんな愛する人がいたんです。もう会えないと思っていたんです。でも今日少しの間だけ彼女に会えて、彼女はプロポーズをするみたいに私に自分を殺せと言いました。そんなフリ方ってあります?まじでひどい人です。彼女は、、、」
そうか、ハアルプ姉さまと勇者ラルフそして魔王軍直下四天王残魂のオルタこれらの繋がりによって心が傷ついたのは僕だけではない。というか、ここまでのビックネームがそろった影響が僕だけでおさまるはずがない。
「そっか、、、」
そういってアレクシアの頭をゆったりと僕は撫でた。彼女のうつむく先である露天風呂の水面に小さな波紋ができる。
「坊ちゃまも泣いてください、、、」
何かを噛みしめるように彼女は言った。
「なんでだよ、、ここで泣いたらお前を誰が慰めるんだ、、、」
そういった彼女はゆったりと僕のことを抱きしめる。彼女の柔らかな胸が押し付けられる。
「目の前の泣き虫な女の子が抱きしめてあげます。失恋中の女の子にこんな事させるなんて、私のご主人様は最低です」
僕はゆったりと眠るみたいに彼女胸元で目を閉じた。なんだかその時僕は夢を見ているような感覚になった。否夢の世界に入っていくような感じだ。∞の世界へこの時僕は沈んだ。




