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華麗なる邂逅


 「金色の月光団」の三者が密談を交わす寝椅子(ソファー)席。


 古都の権力闘争という重苦しい空気が漂うその場所へ、まるで夜の闇を払う光のように、二人の女性が近づいてきた。


 ヴェリティは、馴染みの気配を感じて顔を上げると、蓮っ葉ながらもどこか気品のある笑みを浮かべた。


 「あら、ちょうどいいところに来てくれたわ。ヨハン、ウェンディ。私を心配して帝都まで来てくれたお礼に、この街で得た最高に素晴らしい『友人』を紹介するわね」


 ヴェリティの言葉に、ヨハンとウェンディが姿勢を正す。


 彼女がわざわざ「最高に素晴らしい」と称する人物が、並の冒険者であるはずがないからだ。


 至高の聖女と魔剣の天使。


 「――ご紹介しますわ。帝都大聖堂の慈善司教、『至高の聖女』ビディ様です」


 ヴェリティに促され、一歩前に出たのはビディだった。


 その瞬間、酒場中の喧騒が完全に止まった。


 帝国一の絶世の美女と讃えられる彼女の美貌は、もはや暴力的なまでの神々しさを放っている。


 有力トライブの上級幹部といえど、帝国全土はおろか近隣諸国にまで影響を持つ大聖堂の「至高の聖女」慈善司教ビディの地位は、遥か雲の上の存在だ。


 「古都の皆様、ようこそ帝都へ。ヴェリティ様にはいつも慈しみ深いお心遣いをいただいております。慈善司教として、皆様の旅路に神の御加護があらんことを」


 ビディの澄み切った美しい声と穏やかな微笑みに、さしものヨハンも圧倒されたように目を見開き、慌てて腰を浮かせて深々と礼を尽くした。


 「……お目にかかれて光栄です、司教様。金色の月光団、第九統率長のヨハンと申します。まさか、ヴェリティが司教様と、これほど親しくさせていただいているとは」


 ウェンディに至っては、あまりの美しさと気高さに気圧され、言葉を失って直立不動になっている。


 「そして、もう一人。『帝国最強の前衛』、『魔剣の天使』として名高い、ルーシー卿よ」


 ビディの隣で、不敵な笑みを浮かべて立つのはルーシーだ。


 有力諸侯の令嬢でありながら、帝国で三本の指に入る剣の使い手として名を馳せる彼女は、その美貌に違わぬ鋭い闘気を纏っている。


 社会的地位においても、有力トライブの上級幹部以上の重みを備えていた。


 「あたしはルーシーだ。あんたたちがヴェリティの仲間かい。古都の統率長殿、うちの『友人』が世話になってるみたいだね」


 ルーシーは気取らぬ口調ながらも、ヨハンと対等以上の存在感を放ち、その手は腰の剣に自然と置かれている。


 ヨハンは彼女の立ち居振る舞いを一目見ただけで、その実力が本物であることを察し、武人としての敬意を込めて頷いた。


 「これは……驚きました。ヴェリティ、君の調査とは、これほどの方々と親交を深めることだったのか」


 ヨハンの言葉には、隠しきれない困惑と感嘆が混じっていた。


 酒場の遠巻きで見ていた「光の右手」のパウルや「閃光の槌」のエイモスらは、さらに腰を抜かさんばかりに驚愕している。


 「おい、見ろよ……。月光の大幹部たちが、ビディ様とルーシー卿に頭を下げてるぜ……」


 「トライブの大幹部だって凄いと思ってたけど、やっぱり御二人は次元が違うんだな」


 有力トライブへの加入を目標と考えていた若手冒険者たちにとって、ビディやルーシーという本物の高みにある存在と、対等に言葉を交わすヴェリティの姿は、彼らの常識を根底から覆すものだった。


 「ふふ、驚いたかしら? この帝都も、捨てたものではないでしょう?」


 ヴェリティは、ヨハンとウェンディの驚きを愉しむように、高価な古都の葡萄酒の硝子盃(ガラス)を揺らした。


 古都の陰謀、聖女の慈愛、天使の闘志。


 「彷徨える勇者の休息亭」の最奥に、これほどまでの地位と実力を持つ者たちが集う光景は、帝都の歴史においても類を見ない、華麗で奇跡的な一夜を象徴していた。



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