表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/35

迷宮の休息と古都の火種


 北の迷宮の第三階層、人狼の群れが潜んでいたとされる大広間の手前で、二人は小休止を取ることにした。


 ヴェリティは周囲に火の精霊による警戒網を張ると、近くの石段に腰を下ろし、ふうと溜息をついた。


 その姿は帝都で見せる妖艶な上位魔女というより、重責に疲れ果てた一人の女性のようだった。


 「……ねえ、そこそこの盗賊さん。あなたは気楽でいいわね」


 ヴェリティは肩掛け(ケープ)を脱ぎ、豊かすぎる胸元を揺らして大きく伸びをした。


 キロは少し離れた場所で、いかにもそこそこの盗賊らしく、周囲の暗闇を怯えたように見張りながら答える。


 「俺はただの案内役だ。古都の偉い魔女様が、そんな顔をしてちゃ、様にならないぜ」


 「トライブの魔導顧問なんて、外から見れば華やかだけど、中はドロドロの権力争いの被害者よ」


 ヴェリティは自嘲気味に笑い、古都の裏事情をぽつりぽつりと漏らし始めた。


 古都の有力トライブ「金色(こんじき)の月光団」の内部では、今、次期総長を巡る派閥争いが激化しているという。


 「今回、私が魔物の群れを追って帝都まで来たのも、実は体裁のいい厄介払いなの。私がトライブ内で発言力を持ちすぎるのを嫌った連中が、失敗しても成功しても角が立つような仕事を押し付けたのよ。


指導管理官なんて聞こえはいいけれど、実態は火中の栗を拾わされているだけ」


 彼女はそう言って、鞄から取り出した小さな焼き菓子を口に運んだ。


 「……甘いものだけが、私の味方。ねえ、この後もし上手く調査が終わったら、休息亭で一番高いお菓子を奢ってくれる?」


 キロは盗賊らしい呆れたような顔をして見せた。


 「お姉さん、俺の報酬がその菓子代で消えちまうだろう?。だがまあ……あんたがそんなに大変なら、無事に地上まで案内するくらいはしてやるよ」


 キロの言葉に、ヴェリティは少しだけ驚いたように目を見開いた。


 この男からは、やはりただの盗賊にはない余裕が感じられる。


 「あら、意外と優しいのね。頼りにしてるわよ、案内役さん」


 ヴェリティは立ち上がり、再び魔女の顔に戻った。


 彼女が知らないだけで、キロは既に数え切れないほどの魔物の気配を、ヴェリティに気づかれることなく処理していたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ