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『爆炎の上位魔女』ヴェリティ登場


 帝都の西、赤金横丁。気怠げな午後の陽光を浴びて、一人の女性が悠然と歩を進めていた。


 『爆炎の上位魔女』ヴェリティ。


 古都を拠点とする有力トライブ「金色の月光団」の上級幹部であり、火炎魔法の使い手として名を馳せる上位の魔女である。


 肩にかからない程度に切り揃えられた鮮やかな赤い髪が、彼女が歩くたびに軽やかに揺れる。


 その装いは帝都の住民の目を釘付けにした。


 光沢のある緑の生地に金糸が誂えられた連体着衣(ボディスーツ)は、股間から腰まで深く切れ込み、豊満な臀部や緑色の網長靴下(あみタイツ)を履いた長く美しい脚を、惜しげもなく露出させている。


 透けるような黄緑色の絹の肩掛け(ケープ)を纏い、緑の高踵靴(ピンヒール)で闊歩する姿は、肉感的で妖艶な美しさに満ち満ちていた。


 彼女が帝都を訪れた目的は、月光団が追っていた人狼の群れが帝都近郊の地下迷宮で一掃された騒動の調査と確認であった。


 ヴェリティが辿り着いたのは、赤金横丁に在る冒険者たちが集う酒場「彷徨える勇者の休息亭」だった。


 調査の拠点として近くに宿を取った彼女は、まずは情報の集まるこの場所を訪れたのである。


 「あら、ここが噂の……」


 店内に足を踏み入れると、荒くれ者たちの視線が一斉にヴェリティの曲線美に注がれた。


 しかし、彼女は古都の名家出身らしい優雅な微笑みの中に、鋭い眼光を浮かべ、気負うことなく奥へと進む。


 最初に彼女の目が止まったのは、最奥の寝椅子でだらしなく居眠りをしている一人の男、キロだった。


 「(……彼かしら?)」


 「そこそこ腕の立つの盗賊」がいるとは聞いているが、漂う空気はどこか掴みどころがない。


 ヴェリティは、その眠り猫のような男に言い知れぬ興味を抱いた。


 「ようこそ、帝都へ。金色の月光団の魔導顧問様」


 露台(バルコニー)へと続く階段の下で、ヴェリティは凛とした声に呼び止められた。


 そこに立っていたのは、純白の司教服を纏った絶世の美女、ビディであった。


 「まあ……あなたが『至高の聖女』ビディ様ね。古都にまで御名前は届いているわ」


 ヴェリティは淑やかな気品を見せつつも、どこか蓮っ葉で茶目っ気のある笑みを返した。


 二人の美女が並び立つ光景は、酒場中の冒険者たちの息を呑ませるほどに眩いものだった。


 「人狼の件であれば、調査には全面的に協力しましょう。ですがその前に、旅の疲れを癒してはいかがですか?露台(バルコニー)でお茶でも?」


 ビディの誘いに、ヴェリティは目を輝かせた。


 「あら、嬉しいわ。」


 二階の露台。心地よい風が吹き抜けるなか、ヴェリティは運ばれてき菓子(ケーキ)を一口頬張り、幸せそうに頬を緩めた。


 「最高だわ! 帝都の甘味も捨てたものじゃないわね。実は私、お菓子(ケーキ)に目がなくて。」


 さっきまでの上級幹部としての鋭い視線はどこへやら、今の彼女はただの甘味好きな女性に見えた。


 しかし、話題が人狼の群れの話に及ぶと、その瞳に知的な光が戻る。


 「例の群れ、新人たちが倒したと聞いたけれど……私の指導管理下にあった『千年の暁』でも苦戦する相手よ。一体どのような経緯だったのかしら?」


 ビディは落ち着いた動作で紅茶を注ぎ、淡々と事実を述べた。


 「魔法剣士のルーシー、そして『銀の針』のカイルたちが、新人たちを守りながら見事に立ち回ったのです。最後は私の神聖魔術で浄化しましたが、彼らの奮闘がなければ被害はもっと大きかったでしょう」


 「魔法剣士のルーシー?あの有名な『魔剣の天使』のルーシー!?。『銀の針』は知らないけど……なるほど、帝都の実力者たちが揃っていたのね」


 ヴェリティは納得したように頷きながらも、階下でまだ眠り続けている丸腰の男に視線を落とした。


 「ところで……あの寝椅子にいる男。彼もその場にいたそうね?」


 「ええ。ですが、彼は鍵開けと罠の探知と解除の役目で同行していたと聞いています。戦闘には参加していませんでしたわ」


 「ふうん……。でも、あの何とも言えない存在感……気になるわ。ビディ様、彼とはどういうご関係?」


 ビディは一瞬の迷いも見せず、完璧な淑女の微笑みを浮かべて答えた。


 「関係……ですか?、私にとっては、ただの知人の一人ですわ」


 ヴェリティはビディの瞳の奥を覗き込もうとしたが、そこには揺るぎない平穏があるだけだった。


 「あら、そう。なら私が少し、遊んでもらっても構わないかしらね」


 赤い髪の魔女は、面白そうに喉を鳴らした。


 まだ何も知らずに微睡んでいるそこそこの盗賊に、その視線は注がれていた。


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