兵庫→京都……
「はぁ……はぁ……羽海ちゃん……」
「だ、駄目だ蘭……あたしとそんな肉体関係もっちゃ……⁉」
「全部……私に預けて……いいの……」
「い、いやぁ……蘭……んっ……ヴァージンだけは……!」
「おわぁ⁉」
……夢、か。胸は⁉ あるよな。別に最近流行りの入れ替わりとかは起きてはいないな。時間はもう日が暮れていて雨が止んでいた。蘭は横で机に漫画本を積み立てて横になっていた。――こういう睡眠の入れ替わりはあった……か。別に本棚に興味のある本は無いし、そろそろ移動する事になるから今から読んだ所で最新刊まで読める気がしない。
蘭を残してVIPルームを出る。――正直、そんなVIPな感じはしないし、あたしの家の近くに七〇〇円でリラクゼーション+お風呂が楽しめる銭湯があるんだがね、でも休憩をするには丁度いい寝所だった。偶には豪勢に使わないとお金も泣くからな。別にあたしはお金を何に使おうが文句を言わない人だし、計画がある人は計画通りに使えばいいんじゃないか?
ロッカールームに入って全部を脱ぎまた湯船に入る。……と、その前にかけ湯をしないとな。
さて、正午の時は雨が降ってて露天風呂には出ていなかったが、今回は雨が止んで扉を開いて外に出る。――流石に裸で外に出るとこれは寒い。早く、露天風呂に入らねば。
「早歩きで――ソイっと。ああああああ――」
肩までまた浸かる二度目のお風呂。女風呂でジジィっぽい声出したっていいじゃない。
――しかし、ここは兵庫県なんだよな。こうして普通に寝泊まりしてしまうと、今何処の県に居るのかも分からなくなってしまう事も発生するのだな。常にランダムイベントは起こるとはいえ、ゲームの乱数以上に不可解。これだから日本というのは止められないんだな。海外よりも狭いっていうのに、魅力が多すぎるんだから。
「羽海ちゃん……」
「あ、起きちゃった? ごめんね、置いていくつもりは無かったんだけど」
「ううん……大丈夫……ここって分かってたから……」
露天風呂に途中参加してくる蘭。勿論、あたしの隣が空いているからここに入ってくる。
「羽海ちゃんと……また高校生活……やり直してみたい……」
「……え?」
「あの時の事……後悔してる……」
「……」
風呂で蘭が流す涙を見て放っておけず頭を撫でる。自分もつい昨日までは冷たい反応しか見せず、蘭の気持ちを察して居なかったから一人にされた時の気持ちが分かっていなかったが、今はなんとなく分かってきたのだ。――あたしはやっぱり誰かに支えられて来た身で、一人で全てを解決出来る程の実力を持っていないとも分かった。今回の千葉へ帰る旅もそうだ、蘭が居なかったらあたしはどうなっていたのやらか。
「……蘭、少しだけやり直してみるか?」
「……どうやって?」
「もうちょい東へ進めば京都があるだろ?」
「……!」
その反応はもう分かっただろう、我ら修学旅行で行った場所と言えばここ「京都府」になる。あたしもハッキリ言ってあんまり良くない印象ばかり付いてしまったので今日楽しい京都にしたい所だった。――楽しい京都とはなんだろうか。
「羽海ちゃんと……色々回ってみたい……」
「ああ、出来る限り高校の時と同じルート再現して、新しい所も行ってみようか」
「うん……ありがとう……」
「はいはい」
さて――
また時間掛けて京都へ行かねば――
しんどくなるのはあたしだけだった。
※ ※ ※ ※
既に時計の長針と短針が上を向いていて十二時を指している。勿論昼の十二とかじゃなくて夜、午前0時を指している。兵庫県から東に迎えば京都府だ。と言ってもここからやや斜め上、大阪府に行くことが無いようにカーナビを設定しなければ。
「また夜間走行するから蘭、寝てていいよ」
「うん……ありがとう……」
シートを倒して眠りに入る。……可哀想だから量販店でも行ってブランケットでも買ってあげないと。いくら車内がエアコンで効いてるといっても何らかの毛布が掛かってないと落ち着かないだろう。……あたしがそうなんだから蘭もそうなはず。――深夜だからやってる所ないかねぇ……。
「さて、出ますか」
暖かい温泉をありがとう。……束の間だったかもしれないけど。
「ポーン、次の道を左です」
「ポーン、この道を真っ直ぐです」
話し相手が居ないから飽きている。カーナビの女性は決められた言葉しか喋らないから無理に答えようとしても「はいよ」とか「おいーす」とかしか返答が出来ない。……だから他の奴がアニメキャラクターとか声優とかのナビボイスにハマるのもよく分かる。少しでも楽しく運転したいのは誰でもそうだ、あたしだって今の所女性のナビボイスでなんとか会話をして楽しもうとしてるのだが――
「ポーン、200m先左方向です」
「……しか喋らないもんな」
深くため息をつく。助手席を見ても蘭の寝顔が見れるだけだし、車の周りを見ても他の車両さえ走ってない。――あたしどうしたりゃいい。
「一応、コンビニにでも停めてコーヒーでも買うかな……」
「ポーン、直進です」
ナビボイスとあたしの会話はまだまだ続く。
千葉と違って西にいるとはいえ、暖かみはなく外は冷える。コーヒーを飲んだ後に一息吐くと白くなって飛んでいく。コンビニの先は山になっているらしく、丁度停まる場所としていいらしい。……コンビニの店員が言ってた。兵庫と京都の県境は全部山を越えなきゃならないとか千葉県民にとっては少し驚く。何故なら県境に山なんて無いからだ。あるのは川。
「ふぅ……行く、か」
缶をゴミ箱に入れて車へと向かう。
肩回しをして体をほぐす。あたしだってこんな長距離走行なんてしないから流石に疲れた
「蘭お待たせ……行くよ~」
小声で話しかけてからこのコンビニを後にする。この峠を越えなくては京都入りは無し、夜間の峠入りは危険だけどあたしはやり遂げなくてはならなかった。峠を越えるに至って一般人がする事は急勾配が来たらギアを2に入れるかLに入れてスピードを出さない事、ハイビームでゆっくりと進む事。後ろから車が来るとは思わないが、あたしは慣れてないからハザードを点灯させて前に行かせる。これだけで峠攻略は出来る。――何処かみたいにドリフトで曲がったりするのはアウト。そういう事は公道でやらず、レーシング場に行って下さい、大変危険なので。……千葉ではたまに私有地で遊んでる人もいるけど。
さて、急カーブゾーンに入った。なるべくスピードを落として線に沿うように――というかこの車は随分と曲がりが良いから手に力を入れずにスムーズに曲がる。値段が高い車はやっぱり機能も優秀。――今頃あたしのGSR400はどうなってるのかなぁ、冬に入るからシートを被せてそのままにしてるけど帰ったら錆びないように手入れをしてあげなくては。
「……気を使うなー、全く馬鹿由里。中古でマーチとかパッソとかの適当な普通車でいいのに」
渡してきたのはウンゼンマンする高級車。何処か一つでも擦ったらどんな顔をするのやらか、はたまたぶつけた相手も青くなるだろう。――車を乗ってる人だったらベンツやレクサス、クラウンぐらいだったら知ってるだろう。……あたしは車を買う気は無いけど過去の経験から車の簡単な整備から、車種などを教えて貰った事がある。有り難みが滲み出るな。
「……京都!」
青看板が出てきて京都の文字が見えた。
ようやく、兵庫県を突破! 今日は何処かのパチンコ屋でもコンビニの駐車場でいいから適当に停まって寝る。――お金に余裕があるからホテルでもいい。とにかくホテルが上位としてネカフェが中位、下位は駐車場だ。いい感じにホテルがあればいいのだが、京都府の中心に入ればホテルの一つや二つあるだろう。……果たして夜からチェックイン出来るかが分からない所だが。
※ ※ ※ ※
フラフラする蘭の手を持って廊下を歩く。――片手に鍵を持っているという事は分かるだろう、今どういう状況なのか。
「ガチャガチャっと――ベッドォォ!」
蘭の手を離してベッドに飛び込む、最高だ。二日振りのベッドだ。
ゴロゴロと転がれるほど――そう、ゴロゴロと二人分転がれるほどの、ベッドの広さだ……。
「ダブルしか無くてごめんね……蘭」
「大丈夫……」
別に怒る気配も無く、同じくベッドに飛び込む蘭。ギュウッと羽毛布団を握って柔らかさを確かめた後に笑う――意外とその気持ちが分かるから困る。丹精込めてベッドメイクしてくれたこのベッドをあたしがグチャグチャにするのが楽しいが、蘭はこうして布団を握って楽しむのだろう。……完全に深夜テンションだった。
「シャワーも必要ないし、このまま寝るだけだなぁ――」
「本当に……京都……?」
「実感無いかもしれないけど、本当に京都だよ」
「京都……」
京都の駐車場付きホテル。二人で一万二千円、お安い値段で京都のほぼ真ん中で寝ている。
……別に何処で寝たって、数十分で真ん中には行ける訳だが。
「……高校の時は……どういうルートで行ったの……」
「そうだなー」
立ち上がって机のメモ帳を一枚破り取り、ペンを持って筆を進めようとするが……やっぱりペンが止まる。五年前の記憶を一つずつ思い出しペンを動かす。
キュゥゥゥゥ――
「十円玉ってなんだったかな……」
「平等院……」
「それだ、それから――」
スッスッスッ――
「三十三間堂に行って」
「うん……」
サッス――
「銀閣寺と」
「と?」
スィー、スッ、ピッ――
「金閣寺」
「定番……」
そしてボールペンが止まった。
五年前でかつそんなにいい思い出が少ない修学旅行、ペンだって止まる事が多い。
「恋愛の石とか、三年坂とか色々順番が複雑」
その言葉に蘭が手を重ねてきて顔を横に振る。
「羽海ちゃん……何も縛られてない……学校も……仕事も……関係ない……」
「……そっか、自由に行けるんだもんな」
蘭の言葉に救われて書く事を止めた。特に順番も決める事無しに行きたい所だけ決めて行けばいい。……じゃあ決まった、決まっていた。
「あたしが今行きたいと思った所にあたしが行く。蘭はそれに付いて行く! ……問題ない?」
「うん……!」
さて、明日の予定が決まった所で寝に入りますかー。
京都でバスローブ姿、別にシャワーとかこのホテルの施設を使った訳じゃない、けども私服で寝るのが好きじゃないあたしはこれに着替える。次に蘭もこの姿に着替えていまして、こうなったら何かが起こらない訳が無い。
パクッ――
「…………」
あたしが蘭に対して背中を向いている中で、突然左耳の上、三分の一が湿る。あたしはそれに気付いたが、あえて何をするのかが気になり寝たふりを続ける。
「ネカフェの時は……人が通るから……ダメだったけど……今はいいよね……」
「…………」
あたし本人不同意なのだが、蘭の悪い所が出ていた。
耳は普段から綿棒で綺麗にしてるとはいえ、こういう場面が来るとは思わなかった。フッと息を吹きかけたり舐められたりしてゾクゾクくる。――それでも寝たふりを続けている。
「……本当に寝てる……?」
「…………」
体が反応しそうだったが、我慢をする。
絶対に反応してはいけない、まだまだ蘭の行動を見たかったからだ。
肩を掴まれて仰向けの状態になる、細目で見てみると明らかに女性なら隠さなきゃ駄目な場所が二つもはだけていた……少し頭が蒸れる。
蘭の手であたしの手が開かれて強制的に恋人繋ぎになる、これがどういう状況になるのかと言うと蘭が上に乗っかってくる状態になる。
「羽海ちゃんの……胸……可愛い……」
「……!」
遂に始まるか、あたしの誰にも触れられていない乳首を蘭は咥えた。……こう敏感な部分を咥えられるとくすぐったい、というよりかなり微妙な感覚。確かに先を舐められると性的な反応が出たり、逆にそれ以上もっとイジメて欲しいという滅茶苦茶な感情が出てくる。
目を開いて、首を少し上げて蘭の見る。どうしてそんな真面目に乳首を吸っているのかがあたしには謎なのだが、蘭はまだあたしの目線に気付かず吸い続けている。――そんな状態麻衣にも無かったけど、そんなに吸われるとあたしもどぎまぎした気持ちになる。
「んっ……ぱっ……あっ――」
「ぅぅぅぅぅ……」
あたしだってそんな吸われて顔が真っ赤にならない訳が無い。
「その……羽海ちゃん……」
「寝てる時に襲い掛かるなんて悪い子だねぇ、蘭ちゃんはぁ……」
「ごめんね……」
「主導権を握るのはあたしだから……」
「えっ……」
蘭と立場を反対にし、俗に言う「ゆうべはお楽しみでしたね」とか「この後メチャクチャセッ○スした」とかの言葉が当てはまる状態に……あたしの強烈な初性交は脳裏にも焼き付き、一つの思い出になった。別に女性同士で道具も無しに出来る事なんて少なく、ただの舌と指遊びでシーツを大いに濡らして「どうしてヤッたんだろう」と後悔した位。性的行為をこの旅中にしなかったから体が喜んで反応し、腰が反り、その姿にまた体が反応する、これが一時間半も続いた。……昼寝に見た夢はこれを示唆していたのだろうか、とてつもない一日にまたなりそうだった。




