ここは何処だ……
今回から珍しい組み合わせ編です。二宮と羽海の復縁と観光のお話です、いつか作ろうと考えていたら一年が過ぎました。時間を掛けてじっくり長く面白く……作れたらいいな。(笑)それでは宜しくお願いします!
「……ん、ん?」
何か違う、目を閉じながら体の肌触りで察する。まだまだ暑い時期だし、自分は寝る時に何も体に掛けないで寝るのだけど、シーツみたいのが掛かってる。枕もちょっと違う気もするし、やけに今寝ている所もシングルとかじゃなくてツイン位の大きさがあるし、自分のと大いに違うのが、布団じゃねぇ……。
寝返り打つと誰かに当たる。――悪いことしたな、じゃなくて。
「ん~? 何処? ここ何処?」
頭が痛い、未だに状況が理解出来ない。覚えている所と言えば、昨日は卒業したクラスと集まって、鷹見と麻衣と久々に会って――後、宮川も集まって飲んでて、調子に乗って色々飲みや話しをして……その先が思い出せないとかこれはヤバいな。飲み過ぎだ。
それで何処がどうなってこんなホテルに着いたのだろうか? そして裸なんだもん、自分の服は何処にいったんだろうかって――ああここにありましたか? 隣は恐らく麻衣だろう、皆長期の休みに入ってるって言ってたと思うから、全く麻衣も元気だなぁ。
「おい、麻衣――起きろって――はーっ!?」
頭の形が違う、麻衣じゃない!? こいつはっ!?
ええ、ちょっと待って。嘘でしょ? 自分は知らない人をホテルに連れ込んで自分はこのツインの部屋を取ったのか分からないけど――ええ!? 理解が出来ない、昨日は何をしたんだ!? 自分は急いでホテルの案内書を見る。 ――ホテル・リゾート? ここラブホテルか――!
裸って事は、こここ、コイツと性行為をしたって事か? ちょ、ちょっと待って。自分はまだ処女でいたいっ――。いや、別にそうじゃなくて、いや、落ち着いていられない。
どうしてこうなったんだッーー!?
服に着替えて、ゆっくりベッドの下からシーツを剥がしてコイツが誰なのかを見てみよう。そーっとな、そーっと……半分見えたところで自分はシーツを剥がすのを止めた。お前も裸かーい!
でも、頭まで被っていたシーツを体の所まで持っていったから顔が見える。さーてと、見てみるか
……麻衣でも、クラスのやつでもなかった。
――仁宮だった。自分と一緒に寝ていたのは仁宮蘭、一年生の頃に退学処分を受けて女子院に行っていた自分が最も嫌いな相手で会いたくない相手。どうして、お前がここにいるわけなんだ――。というか、元旦以来の再会……仁宮が寝返りうってちょっとビビった。
別に、下に引いてるシーツも濡れてはいないから、意味深な事はしていないだろう。顔はベッタリとしていないから舐められてもチューもしていないだろう。スーッと股も手で触ってみるけど――ただ自分が恥ずかしいだけだった。財布も確認するけど特に盗られてる物も無いし、スマホもちゃんとある。気掛かりなのは、ラブホテルだけだった。
昨日の記憶も無いし、どうして仁宮と一緒にいるのかも分からないし――もう意味が分からないし理解もしたくない。――チェックアウトするのにも多分一緒に出ないと駄目だろうから、渋々仁宮を起こさないといけないのかな。でも、ラブホテルって案外綺麗なんだな。これだけで見るとタダのホテルだな。
「ガサッ……」
あ、仁宮が起き上がった。起こさなくて良かった。
「羽海ちゃん……おはよう……」
「おはようじゃねーよ! なんでお前と一緒に寝てるんだよ!」
「朝から……理不尽……だよ……羽海ちゃん」
「こっちが理不尽だわ!」
「羽海ちゃんが……誘って……ここで寝たじゃない……」
「――っえ?」
自分が、誘った? 仁宮を? そんな、わざわざ嫌いな仁宮をここまで連れ込んで一緒に寝た事を拒みもせずに受け入れたのか? 自分の昨日は一体――
「羽海ちゃん……激し……かった……」
「おお――ちょっと待て! なんだ? その激しかったてのは」
「アソコ……とか?」
もう勘弁してくれ! 記憶に御座いません! っていう訳にもいかないし、仁宮とそんな――うわぁ、無い、無いよそんなのは――。
「とりあえず、おい仁宮。お前が知ってる事を話せ」
「私は……羽海ちゃんに呼ばれて……来て……お酒飲まされて……ごめんなさい……その後はハッキリとは……」
「ハッキリと覚えてないクセに激しかった時のは覚えているのか! とんだ変態野郎だな! ったく、とりあえず帰るからお前も支度しろ」
「うん……」
イライラだらけで頭を掻く自分、呼ばれたって事はスマホの履歴に残ってるんじゃないのか?――本当に残ってた。と言うことは自分が呼んだのか、写真も何枚か撮ってるけどこれも全然覚えてないわ、鷹見はなんつー顔してるんだ。下にスクロールすると、仁宮ともペアの写真も何枚か撮ってある。この酔った羽海様は何をされているのやらか。一生の後悔に近い現状まで持って行った自分を後悔する自分、ダブル後悔。
「おま……たせ」
「お前の服装はそれは童貞を殺す服だ、どうしてあの場でその服を着ろうとしたんだよ」
「羽海ちゃん……かわいいって……喜んでた……のに……」
「あの時とは正反対だよ、完全に正反対! 酔ってたから」
自分より仁宮は胸がある方だからその服を着ると少しはみ出てるように感じる。――というよりも、案外似合うもんだなー着ると――ってあ、評価しちまった。
「金は大丈夫か? お前が帰れないってなると自分も困るんだから、それぐらいは出してやる」
「大丈夫……」
「おう、じゃあホテル出るぞ」
渋々仁宮と帰る事になったこの日――だが、この日が何日も続くとは思っていなかった、この今日である。
精算を終えて外に出るけど、何処だここ……。自分達が開いたクラス会は東京だったから東京都内のハズなんだけど、都会らしさは無く街並み綺麗、仁宮にも質問を投げかけて見るけど「知らない」の一点張り。とりあえず、左。左に歩いてみる。
お、ろめんでんしゃ――路面電車!? ――都電荒川線か? 視界がまだボヤケててよく分からない。路面電車とか初めて見た。ガタンゴトンとか電車特有の音は鳴らないんだな、路面って。自分の目の前はツーッと通り過ぎていった。
「凄い……ね……」
「あっ、おぅ――」
仁宮はちょっと興味あったのか? まじまじと路面電車をずっと見ていた、視界に消えるまで。でも都内と分かれば後は歩くだけで済む。まだふらついてるけど駅まで歩けば大丈夫だろ。自分はとっとと帰って寝たい。朝に起きるのはツラい、昼ぐらいに起きたいものだ。
フラフラと仁宮と一緒に歩く。仁宮も昨日はかなり飲んだのか、やっぱり少しふらついている。アイツは一番に酒に弱そうだしな。というか、体弱く無かったか? 心配するまでも無いけど途中で倒れたら困るの自分だからとっとと駅まで送りたい所だ。
駐車場みたいな所で仁宮は「休みたい」というから渋々休んでやった、気分を変えたいからエナジードリンクぐらい飲みたいな……停まっている車見ると「広島」ナンバーねぇ。お、隣も「広島」だ。また隣も「広島」か――あっ?
「広島」「広島」「広島」「福山」「広島」「広島」「鳥取」 ……は? 関東のナンバーが一個も無い。広島のナンバーが多く停まってるなここは、福山とか何処だよ。
中国地方で外回りしている会社? っていう訳にも行かないしなぁ。だって車種全部バラバラ、明らかに月極駐車場で借りてる人達だろ。――だんだん、理解が出来てきた。自分はすぐさまにスマホを取り出してマップアプリを起動する、日本なのは間違いないんだからGPSは通じるだろう――ってそんな心配より居場所だ居場所。
大体検討は付いていたけど、間違いなかった。広島だ……。どうしてこんな所まで来たのか分からないし自分が引き起こした事だと思われるからコレ以上の理解は深めない方がいいのかもしれない。
――ここに来るまで何があったんだ。
※ ※ ※ ※
――前日
今日は久々に常日高校のA組と集まる、四年振り以来の集合になるな。自分は何故か幹事からの直接のメールが来なかったが、麻衣と鷹見からメールが回ってきて参加の意を示した。千葉県なのかなぁと思っていたが、何故か東京の居酒屋が集合場所となっていた。それで誰よりも早く来た訳なのだが、残念ながら早く来すぎて誰もいなかった。こういう時って本当にここで集合なのかって不安になるよね。
携帯がバイブレーションで振動する。誰かな?
「場所どこだっけ? 東京に着いた」
SNSで送ってきたのは麻衣だった、相変わらず麻衣らしい行動である。分からなければ直ぐに自分に聞いてくるこの威勢が嫌いになれない。自分は
「ウオタミ、ここ集合」
って送る、「ありがと」だってさ。「う」を付けなさいこのデコ助野郎。駅からそんなに離れてないから直ぐに来れると思うんだけど――いたいた。
「ごめんー結構近くだった」
「いいよ、数ヶ月ちょい振りだな。麻衣」
以前に旅をして以来会っていない、まぁコンビニバイトしていた時に麻衣を見つけたが自分はこの姿を見られたくないと思って隠れてしまったからな、その時にGSRをコンビニの前に置きっぱなしでちょっと焦ったけど。あくまで自分は無職を貫き通す。
「今日の為に有給を全部使ってきたよー、これから五日間ぐらい休むよ」
「なんでそんなに休むんだよ……勿体無い」
「別にいいじゃない、ガッツリ休んでまたガッツリ働くの」
この麻衣理論は全く理解が出来ないな。でもこの麻衣のペースが面白い所であり、皆が惹かれる部分でもある。――しかし、よくも七年も付き合ってきたな自分は。並の人だったら愛想尽かされて終わるぞ。彼氏の龍太郎さんも良き理解者なのだろうな。人に合わせるペース大事。
次に見えたのは――宮川! 産婦人科の宮川じゃないか!
「久しぶりだな、名柄川。聖山も」
「よう宮川。大学の方はどうだ?」
「今も医学部に長居してるよ。医師免許を取るには卒業するのが必須だから面倒だ」
「卒業して何処かのヤブ医者みたいになるのは勘弁な」
「心に留めておくよ名柄川」
宮川大記、高校卒業後は親っさんの背中を追いかけて医者を目指してる。実家は宮川クリニックというクリニックをやってて、産婦人科らしい。将来継ぐのは間違いないとは思うけど、医学の覇者を目指してるらしく。世界に羽ばたく――予定みたいだ。
多分、お世話になるであろう人物の一人ではなかろうか。自分は結婚の予定は無いけど麻衣は現状で行くとゴールインしそうだしな。
「羽海ちゃん……ホームレスがいるよ」
「本当? でもあんまり見てやるなって、あの人にはあの人なりの――こっち来てんなー、ってアレ間違いないなー」
自分達は見覚えがある人物だった、今も昭和を生きる平成人――桧川寿一だ。住居は千葉の山の中。千葉のスーパー田舎に住んでいる人だ。今日はわざわざ東京までありがとうございます。でも、服はボロボロだし動物の血と思われるものが付いてるし――ってお前職質されるぞ、マジで。
「よう桧川、今日も狩ってきたのか?」
「ああ、キョンを狩って今も生活している。北海道からも熊肉も届くし冬は越えられそうだ」
「相変わらずサバイバル生活してるな」
「生きるためには命を狩らねばならない」
といった、マジの人だ。最近はキョンが滅茶苦茶いるから生活には困らないだろう。勝浦市の動物園からキョンが逃げ出して良かったな桧川。食べるという意思を持つのはお前くらいだろう。自分は――食べる気が起こらない。でも以前に食べた熊肉とか鹿肉といった動物の肉は美味しかった。料理人麻衣も絶賛の食べ物だったな。どんどんキョンを狩ってキョンの食害を止めてくれ桧川。
次々と集まる中、時間になっても遅れてくるやつもいた、そう鷹見だ。高校入学初期は真面目だと思っていたのに卒業に近づくにつれただのポンコツと化してきた一人。自分の周りには特殊な人が多いなぁおい。
「ごめん! 遅れた! ――まだ入る前だったか。良かったぁ」
「良かったぁ。じゃないよ、マイペース過ぎるんだよお前。続々と集まってる中で時間も守れないのは社会人としてどうなのよ」
「悪い悪い。土曜日の夕方って電車込むからさ」
「言い訳すんな!」
久々の掛け合いで笑うクラスの皆。こんなに仲が良かったっけなぁ、四年も経つと結構忘れる事も多い。でも、中でも鷹見とか麻衣とは高校時代もかなり遊んだ友達だから色々な事を覚えている。――持つべきものは友というのは正しい言葉なのかもしれない。でも、矯正してほしい性格もあるのは事実なんでもっとしっかりしてください。特に鷹見な。
寒い時期だから待ちきれないということで数人を残して中に入る、自分みたいな常に暇な人は直ぐにこれるが予定が悪い人はこう遅くなることもあるだろうな。でも、次に暇そうな上泉とはともかく、懐かしの由里様は来ないのはどうなのだろう? 令嬢様は庶民達が使う居酒屋がお嫌いなのかね? 高校時代の時はなんとか皆に合わせようとして頑張ってたのにここには来れないのかな? 後で幹事に聞いてみよう。
「今日は集まってくれてありがとう! ちょっと遅れて来る人もいるらしいので、まだ皆とは言えないけど――乾杯!」
「カンパーイ!」
いよッ! 幹事の鑑! 企画してくれたのはありがたいけど、やっぱりこのテーブルは高校時代の名柄川一班と同じメンバーなんだよな。他の人はこのメンバーの集まりを「チームアブノーマル」とか呼んでたそうな。カタカナだらけで厨二病全開の人はカッコいいと思うけど、実際に呼ばれたらこれはただ単に恥ずかしいだけなんだけど――自分達はこの呼名は非公認なんでそこの所宜しくお願いします。
「そういえば、羽海ちゃん! フランス行ってきたんだよね!? どうだった?」
「えー! そうなの!? 名柄川さん!」
隣のテーブルの子も聞いてきてちょっとざわつく。「羽海が……?」「金あんのかよ……」とかちょっと失礼じゃないですかねー。
「そうだよ、あの送った写真とかも全部現地だ。色々見てきたよ」
「他にも見せてー」
麻衣にスマホを渡す。サッサと指で写真をスライドして鑑賞するなか、雨宮さんの単独の写真とかも出てきて麻衣は勿論質問する。
「この人は――あれ? 何処かで見たような」
「見たことある? 勘違いじゃない? この人は雑誌の関係者でね。フランスの歩き方を色々教えてもらったんだ」
「ふーん、そう。もっと色んな関係があるんじゃないの?」
「馬鹿、それ以上でもそれ以下でもない」
更に麻衣はスライドしていくとちょっとマズい写真が出てきた。次は千葉を一緒に回った鵤さんの写真が偶然にも出てきてしまった。
「――嘘。この人テレビのニュースで見たことある……」
「あー、勘違いじゃない?」
「いやいや、そんな勘違いとかじゃないよ。どうしてこの人がこっちに来てるの?」
「あー、実はな……」
鵤さんとなると話が面倒になる。自分だけが知っている真実を皆に話す。信じて貰えるかどうか分からないけど、この信頼のある名柄川一班は真面目に聞いていた。全部週刊誌のでっち上げ、今も続いてる事も話す。
「そんな事が――なんて、酷い」
「まぁ、今も元気だから問題は無いけどな」
そして、お酒を飲むと劇的に感情が変わる鷹見は泣いていた。酒飲んでまだ二十分くらいしか経ってないだろ!
「マツシタの社長さん――あんた、凄い人だよ! あああああ――」
「泣くな泣くな! とりあえず、お前の好きなモツ鍋でも頼もうな! ねっ?」
「お、モツ鍋かぁ……美味いんだよぉねぇ、これねぇ」
急に泣くのを止めて次は嬉しがっている。昔のゲームの「がんばれ森○君二号」並に感情の変化が激しいな。そういえば、鷹見の元々住んでいた都道府県って福岡らしいな、でもモツ鍋で喜ぶのはその地元の感覚が残っているのだろうか? 一度は福岡に行ってみたいものだ。でも、博多行き深夜バスは勘弁な。
――だいぶ、飲んだぁ? 良く分からない。
「羽海ちゃん好き好きィ! チューするチュー」
「止めろってぇ……自分はぁ……」
「大丈夫、私バイだからどっちも行けるぅ……」
「止めろってぇ――」
何人かは帰ったらしいけど、まだ鷹見と宮川、麻衣が残っていた。桧川はもう帰ったって? しーらない。
「鷹見ィ、どうして――倒れてるんだよぉ! しっかりしろよぉ!」
「鷹見くんだって、寝たいんだよぉ、寝かしてあげて」
「おっ、そっかぁ――じゃあ、誰か呼ぶか!」
自分はおもむろにスマホを取り出してふらつく手で電話を掛ける。
「もっしもしぃ! 東京のウオタミに来てぇ! おわりー!」
「ちょっとぉ、誰に電話掛けたの?」
「しーらない、でも絶対に来るから」
「そう、誰でもいいやぁ」
ほら直ぐに来た。来たのはァ、仁宮ぁ! 仁宮じゃないかぁ!
「よぉ仁宮ぁ! 昔の仲だ、ゆっくりしてくれぇ!」
「あ……ありが……とう」
「その服も可愛いなァ!」
「うん……今日羽海ちゃんの為に……用意したの……」
「う~ん、用意のいい奴だぁ! 撫でてあげる」
「ありがとう……」
「さて、まだまだ行くぞぉ!」
もう、時間も分からない――なんだ、皆がボヤケて見える……。
「ねぇ、ねぇ、今日は羽海ちゃんどっちと帰るのぉ?」
「どっちって……誰と?」
「蘭ちゃんか、私か」
「えー、皆で帰る……」
「だーめっ! 蘭ちゃんジャンケンしよ」
「私の……勝ち……」
「じゃあ、今日は私一人で帰るね、ばいばーい」
「麻衣帰っちゃうのかぁ……」
「うん……帰っ……ちゃうね……」
「みんな酔いつぶれてるし――ほっといてどっか行くかぁ」
「いい……の……?」
「いいとも! まずは駅行こう」
「こっちだっけ?」
「うん……こっち……」
「おーおー、そうだ。まだやってんじゃーん」
「よく分からない……けど、あってる……と思う」
「ほぇー、白くて早そうな電車だなぁ、これに乗って地元まで行くぞぉー」
「羽海ちゃんの所に行くの……久しぶり……」
「今日は一緒に遊ぼうな――」




