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名柄川羽海という女の日常  作者: TASH/空野輝
千葉、案内編
39/51

鴨川トライアスロン?……

 鴨川市! それは輪○のラ○ラン○ェの聖地で――


「作者ァ! マジで言っちゃいけない説明だ! てめぇ、マジで馬鹿! 作品名は――駄目だろ」

「うおっ!? どないしたんや、名柄川はん!」

「いやっ、何でも無いです! ゴメンナサイ!」


 なんだ、何かが聞こえたんだ。別にいかるがさんに対して怒った訳じゃないんだが、言ってはいけない事もある。

 今現在、自分達は伊勢海老が食べられる店を探している。海側で停まって、スマートフォンで探す。鵤も探してる所だが中々見つからない。自分は鴨川特有の料理があったはずなのだが、その言葉が喉先まで来てるのに、出てこない。――何だっただろうか。ちょっと検索方法を変えてみる。「鴨川 伊勢海老 お店」――そうだ、この名前だ。


「鵤さん、このお店」

「おん? 鴨川の市内かいな? カーナビ設定してな」


 自分はカーナビを設定して、早速支持してもらう。鵤さんは「オッケーや、ほな行こか」と、出発する。伊勢海老は近いぞぉ――。自分は美味しい伊勢海老を食べたい、食べたいんだ。


「一つ、聞きたいことがあるんやけど、ええかな?」

「ええ、どうぞ?」

「ワシの事、知ってるんかいな?」


 突然何を言うのだろうか、自分は何処かで会ったことも無い。こんなソース顔のオッサンなんて親戚でもいないよ。


「全く知らないです。逆に聞きますけど、自分……あたしの事知ってるんですか?」

「いや、知らん――ワシの事本当に知らん?」


 自分は顔をブンブンと横に振る。


「――アンタ、日本におらんかったんか?」

「え、確かに数日前はフランスにいましたけど」


 その言葉を聞いて鵤さんはビックリした――何故ビックリしてるのだろうか? そして何故かホッとしているようにも見える。自分はその反応が分からない。鵤さんを知ってるとか知らないとか、そんな質問されても自分はその顔を見たことも無いし、名前自体も聞いたことも無い。もし名前でも聞いたらそのインパクトの強さで自分はずっと覚えているだろう。それから、自分は名前を良く覚えている方だから、やっぱりインパクトが強いと覚えてる方だろう。――それでもって自分は鵤さんの名前を他で聞いた事はない。


「ほんっとうに――」

「聞いた事は無いですってぇ! 誰なんですか! ――あなたはぁ!」

「――おお、すまんの……」

「シツコイですよ! 流石に。それに、仮に自分がそれを言った所であなたは素性を言うんですか? こんな赤の他人に」

「いや、その。無いわな。うん――」


 ちょっと怒ったらショボンとしてしまった。案外強気に出ると皆ビビってしまうな。これは自分の性格だからこその能力かもしれない、高校時代から――授かった能力だ。久々にこの圧力を掛けたから個人的にちょっと恥ずかしい。


「――悪かったの、名柄川はん」

「え? まあ、ええ」


 あまりにも弱すぎる、ひょっとしたら鷹見よりも弱いんじゃないのか? ――最近、鷹見とまた会っていないが、この鵤さんと鷹見があったらどんな化学反応が起きるのだろうか? 機会があったらちょっと会わせてみたい――いや、止めておこう。


 「目的地に――」もういつものカーナビの到着音が車内に響く。自分たちは着いたのだ。伊勢海老といってもやっぱり蒸した物とか食べるよりも鴨川特有の食べ物を食べさせたほうが旅感が出るだろう。


「ここかいな? 名柄川はん」

「そう、ここ。「食べろーぐ」で評価高い所ですから安心を――自分はあんまり信頼してないけど」

「お、おう――しゃあない、食べるで」


 早速中に入ると「お好きな席どうぞ」と声が掛かる。選んだ鵤さんの席は――テーブルと思ったら座布団の敷いてある座敷の方を選んだ、ちょっとテーブルを選ぶ素振りを見せておいてこれだもん。自分は外食した時はテーブルに座りたいんだよね……。でも、そんな事は言えないので仕方なく座敷に座る。


「はい、お水。ご注文は?」

「おらが丼二つお願いします」

「はい、おらが丼ね」


 店員さんは厨房に戻っていった。


「おらが丼? 名柄川はん、おらが丼ってなんや?」

「おらが丼ののぼりをここに行く途中たくさん見ましたよね?」

「せやなぁ、他じゃ聞かない名前やからヘンに思っとったけど、伊勢海老丼の事やったんか?」

「まぁ一回聞くとそう思いますよね。でも、おらが丼は全部違うんですよ」

「なんやて?」

「まず「おらが」っていうのは、方言で「我が家」あるいは「家では」という意味で、各店の皆違う丼を出してアピールしようっていう意味で――」

「待った、そのー「おらが丼」っちゅーのは皆違うんか?」

「ええ、ここでは伊勢海老をつかった「おらが丼」を出しますけど、他には野菜のみの「おらが丼」。肉を使った「おらが丼」。中にはもっと贅沢につかった「おらが丼」もありますよ」

「なんつー凝った事をしてるんや……ちょう待て、「おらが丼」っつーのは分かったんやけど。なんで皆「おらが丼」で一緒なんや?」

「ふふ、「おらが丼」で統一すると鴨川市で揚げてやったんですよ。お揃いののぼりをあげる事で「おらが丼」は鴨川市の名産物って分かりやすいでしょ?」

「普通、料理屋っていがみ合うのが普通なんやけど、皆協力してエラい良い事しとるなぁ。関心やで――これ食べ終わったら次の「おらが丼」食べに行こか?」

「はは、良いですよ」


 大人の事情でお店の名前は出せないが――ここのお店の元祖、伊勢海老天丼と山海とろろ丼、活き粋丼が美味しかった。因みに、ちゃんと「おらが丼」で伝わるので、鴨川市に寄った時は是非――恥ずかしがらずに「おらが丼!」って言いましょう。それから、おらが丼の幟が揚がってる店は多いんで……ちゃんと店の場所を確認してね。



  ※  ※  ※  ※



「随分――食べたのぅ名柄川はん」

「ええ――三十二店舗ある「おらが丼」のお店の内、十二店舗を食べて、食い潰れるのは駄目ですって――」

「アカン――美味すぎてな、大阪じゃこんなにどんぶりは食えへん」


 自分たちは――気持ち悪くなっていた。車に帰るまで危うく吐きそうになったのは何回か――あったけど、今は座って安心している。


「エップ――どうします? これから」

「せやな――ウップ、この綺麗な市を一望できる所は無いんか?」

「ああ、ならば。魚見塚展望台――行きましょうよ」

「カーナビ、頼むわ」


 自分はお腹を押さえながらカーナビに魚見塚展望台を入れる。勿論検索結果は一件、鵤さんもちょっと苦しそうだったが車を走らせる。


「名柄川はんは千葉に詳しいんやな」

「それは――地元ですからね」

「地元を嫌いになったことはないんか?」

「そうですねぇ――何回か嫌いになったことはありますけど、結局帰る所がここなんでね、嫌いになるになれないですよ」

「せか、本当に嫌いになったことはあるんか?」

「いや、なったことは――無いですね」

「帰る場所――か」


 どうして、急にネガティブな方向に事を運ばせるんだアンタは。鵤さんは何かを自分に隠している、今まで何処にいたのかとか、大阪の話になったらちょっと苦い顔で言ったりとかまるで自分の評価を気にしているような感じである。自分は鵤さんの事は本当に知らないし、評価としてはタダのナンパオッサンだよ!


「鵤さんは――何なんですか?」

「は?」


「別に自分は鵤さんが何者であろうと同じ人間で限り接し方は一緒ですよ」

「――!」

「まぁ隠している事があったんだったら別に隠してて良いです。前に言った通り赤の他人なんですから」


 その後は鵤さんは何も言わなかった。まぁ――隠してる事はもうバレバレですね。何でも話したくなるのは知ってるよ、関西人に偏見を持つわけではないけど何かと話したくなっちゃうし。隠してる時は凄い動揺するよね。


「目的地にとうちゃ――」

「ほな名柄川はん着くで! えーと、さかなみつかてんぼうだいに!」

「"うおみづか"展望台ですよ……」


 鵤さんの動揺は更に大きくなる、分かりやすい人だ……。




 魚見塚展望台の駐車場に着いて目的地の展望台まで歩く、久々の歩く行為だ。意外と展望台までの階段は短いから麻衣みたいなチンチクリンでも息切れを起こす事は無いから安心。流石の鵤さんでも息切れを起こして――いないな、うん。大丈夫だ。麻衣の場合はやれや十段の階段でも自分の肩を掴んだり、やれや坂道でちょっと走っただけでも息切れ。高校時代でも――


「名柄川はーん! 見えたでー! デッカいオブジェクトがー!」


 先行していた鵤さんは一足先に鴨川の景色を確認出来たようだ。


「着きましたか、ヒィー……。ああ、やっぱり綺麗だなー」


 ここからは鴨川市を一望できる最高の場所――なんだけど、ちょっと駅から遠いのがネックかな。でも、一度千葉に来たのならばここには来るべき、ラグりんファンの方はもっと来るべき、ラグりんラグりん――ダイジョウブかな? 最終話でここは出てきたから同時に聖地巡礼出来るよ。

 確か、ここらへんに――あった、「ラグりんノート」だ。ちゃんと聖地巡礼のファンノートがあるじゃないか。でも来る人が少ないのかあるいは――でも、ちゃんと書いてる人がいるんだからファンはいますよ。――大洗の某戦車アニメのファンノートはもう五冊目位行ってるけど。


「名柄川はん、めっちゃ南京錠が付いとるで、これは何や?」

「これは、誓いの場ですね。恋人同士が誓いをたてて、その証として、その南京錠に鍵をかけていくと「幸せが未来へ続く」と言われて、愛が成就するらしいですよ」

「らしいって――アカンやん」

「いやいや、通天閣のビリケンさんみたいなも――」

「いくら名柄川はんでもビリケンさんを馬鹿にするんはアカンでぇ」


 滅茶苦茶怒ってる!? ビリケンさんのご利益はそんなに強力なのか? それともビリケン信教みたいな何か!? ――今後、ビリケンさんを話題に出すのはやめよう、さっき鵤さんが話してたのを見てちょっと馬鹿にしてたから……


「あの、ごめんなさい」

「ええわ、一回はな! 西の方に向かって謝りぃ」


 自分は西の方に向かって手を合わせて一回お辞儀をする。ビリケンさん、ごめんなさい。――実は、流山市にもビリケンさんがいたりいなかったり。大阪のものでは無いんですよーだ! って馬鹿にしてると怒られそうだからこれは心の奥に仕舞っておこう。


「ええなぁ――ここの景色は」

「千葉県で二番目にお気に入りですよ」

「一番目は?」

「自分の家です」

「そか、ほな。次の場所を案内してくれへん? お腹の方も落ち着いてきたし」


 渾身のギャグはスルーされてしまった。それともガチに感じてしまったのか? まぁ次は三四号に乗って鋸山のこぎりやまかな?


「じゃあ、降りましょうか。鵤さん」

「せやな」

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