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名柄川羽海という女の日常  作者: TASH/空野輝
ヨーロッパ、フランス編
36/51

帰国、そしてさようなら……

「――がッ!?」


 自分は勢い良くベッドから落ちた、これは痛い。

 風呂も入らず、テレビも付けずにただ部屋に戻って寝ただけだった。自分の姿も昨日のまま横になっていたようだ。


 流石に昨日お風呂に入らなかったのはマズいのでシャワーだけは浴びよう。疲れが取れてないし、汗でべたついてる体と、ついでに服も着替えなきゃいけないからだ。 フランスは暑い。


 自分は服を脱いで、冷水を浴びる。――水でも少し肌が痛い、やっぱり焼けたのだろうか。体全体を見ても焼けた気配は見当たらないのだが、腕から指先に掛けてピリピリと痛みが生じる。

 もしかして、全体が焼けてる? 何れにせよ、この痛みは焼けてる――はず。


※ ※ ※ ※ ※ ※


 一応スッキリ、室内はクーラーで涼しいから落ち着く。

 窓から、景色を見渡してみる。――今日でここのチェックアウト。今日でフランスは終わり。ちょっと大変な目にもあったけど、なんだかんだ楽しめたから良しとします。一応成功?


 さて、荷物をまとめよう。――この大きな荷物の大半は使わなかったな……。この用意周到は意味を成さなかった。本当のお荷物さんに……。


「コンコン」


 ドアを叩く音。まだチェックアウトまでは1時間ちょっとあるが、何か問題でもあったのだろうか?


「はい」


 自分をドアを開ける。


「どうしました? オオハラさ――」

「名柄川さん」


 オオハラさんでは無く、驚きの人物だった。


「――雨宮さん!?」

「二日振りですね」

「そ、そんな? どうして? 仕事の途中でしょう?」

「今日帰国予定なんですよね? ですから、色々と」


 久々に会って、なんだか気持ちが高ぶってしまって涙が出てしまった。あれ? 普段泣かないのにどうしてだろう……。


「う、うわぁぁぁ!雨宮さああん」


 自分はついに泣き出してしまった。


「ど、どうしたのですか?」

「雨宮さんは優しすぎなんです――人の為になり過ぎなんです! 雨宮さんは余りにも優しすぎて自分は昨日どうして良いかも分からなくて不安でいっぱいで右も左も分からなくて――酷い、酷いですよ雨宮さんは……!」

「あ、いえ――あの」

「どうして、そんなにあたしの事心配するのですか――こんな、ただの一般人で飛行機で偶々会った人に優しくするんですか……」

「……日本男性人として、困ってる人を助けない訳にはいかないじゃないですか」


 自分は言いたい事をぶち撒けていた。自分は一生この人の事を忘れないだろう。


「さあ、名柄川さん。立って」

「――はい」


 手を貸してもらって立ち上がる。


「ありがとうございます。 いつか、御恩は」

「そんなのいらないですから、その言葉を貰うだけで嬉しいです」


 ――やっぱり優しいよ、この人は。


※ ※ ※ ※ ※ ※


 空港に着く、とりあえず雨宮さんも行ける所ギリギリまで付いて行くとの事。

 空港の手続きも色々と大変だ。


「荷物は預けましたね? 確認しましょう」

「チケットも全部あります。大丈夫です」

「後は何番に発着かも?」

「それも大丈夫です」

「――よし、問題無いですね。 私はここまでです」

「ああ、ここまでですか」


 ロビーで確認し合い、日本へ帰る準備は済ませた。――心許ないのは雨宮さん、やっぱりあなたが居ない事だけなんですよね。


「それでは、いってらっしゃい」

「あ、まって雨宮さん」


 自分は雨宮さんを止めて一枚メモ帳をビリっと破って電話番号を書く。


「厚かましいと思うんですけど……これ」

「電話番号ですか。分かりました、受け取っておきます」

「日本にでも帰ってきたら電話でもしてください」


 電話番号が書かれた紙を手渡した。別に大した事のない物だけど、いつか――御恩を返しに。


 今一度振り返ってみると、雨宮さんは手を振っていた。自分も手を振り返す。


「――さようなら」


※ ※ ※ ※ ※ ※


 日本行きの飛行機――なんだけど、人が少ない。平日でも東京とか五大都市は外国人でありふれてるのにいざこうして日本行飛行機に乗るとガラッとしてる。日本人の姿も少しは見えるけど、スーツ姿の人ばかりだ。自分が如何に暇人なのかが分かる。皆さんごめんなさいね。


 自分はまた窓の横の席だ。日が照って眩しい。いつまでもフランスは暑いな。日本の方がまだまだ涼しいと思う。

 設備も確認すると、行きと同じく、ヘッドホンとかお馴染みの道具が――ゲロ袋も完備だ。

 もうそろそろ出発するが、今回は私の隣二つ隣も誰も居ない。完全に自由席。――帰りは出会いも何もナシなのね。


「間もなく当飛行機は――」


 いよいよフランスを飛び出す、三日間だけだったけど長く感じた。宮殿も見たしエッフェル塔も見たし、カフェも色んなのがあって選ぶのに迷っちゃうし、日本と色々違くて楽しかった。――まぁ不安もあったけど。


 思い返してみると、殆ど滅茶苦茶だな。うん。でも、それがいい。


 飛行機が加速して飛びだつ、この感覚忘れられないなぁ、えーとアメちゃんを口に含んでと。

 ふわっと浮く、フランスはもう終わり――か。


 パリよ、雨宮さんよ、また会う日まで。

 さようなら、フランスよ。

フランス編終了です、次回をお楽しみに。

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