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名柄川羽海という女の日常  作者: TASH/空野輝
ヨーロッパ、フランス編
32/51

フランス観光…… その1

 ――フランス時間午後1時

 エレベーターで一階に降りてロビーで雨宮さんの元へ帰る。


「準備は出来ましたか?」


 自分はコクコクと頷く、今は日本語を使っては行けないような気がしてしまった。結構ロビーは静かで、声も響く。とりあえず、二日分の料金は前払いでっていう話を雨宮さんにつけて貰ったので宿金の問題は無し。後はどう過ごすかを決めるだけだった。


「では、既にタクシーを待たせてるので行きましょうか」

 

 自分はまた顔だけを縦に動かして外に出た。


 タクシーの中で自分はひたすらフランス語の本をパラパラと捲って頭に叩き込む。高校生の頃に英語力は付けていたが流石にフランス語は範囲外だ。


 しかもイントネーションも英語とは全く違っているから、覚えにくい。これもコツなのだろうけど自分には厳しい難題だった。そもそも、フランス語での発音というのを今まで聞いた事が無いので本で見てどう発音すれば良いのかも分からない。

 の言葉一つを覚えるというのは大変な事だ、どうして神は言語をバラバラにしてしまったのだろうと憎む。一応、フランス語の使える物は覚えた。


「メルスィー……ぼんじゅーる……せぼーん……」

「だいぶ覚えてきましたね」

「あ、聞いてました? 発音すればちょっとは覚えるかなーって思いまして」

「悪くない勉強法ですよね」


 雨宮さんは笑う。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――フランス時間午後一時半


 タクシーが停まって外に出る、ガラスのピラミッドがある場所に出てきた、結構な人集りが出来ていて入るにも数時間は掛かりそうな所だ。


「雨宮さんひょっとして……」

「そうです、ここがかの有名なルーヴル美術館ですよ」


 ということは、今正面にあるのがルーヴル・ピラミッド、ライトアップされてないけど凄い綺麗だ。


「とりあえず、並びますか? 値段は15ユーロですけど」


 ……んー、どうしましょうか。ハッキリ言って並びたくはない。でも、中に入りたい。かなり悩みどころだ。そうこうしてるうちに


「名柄川さん? あのー後悔しない為にも入ったほうが良いと思いますよ?」

「……そうですね! 行きましょう! 行きましょ―」


 後悔という言葉が出たら行くしか無いでしょう。ええ、行きましょう。はいはい。



――フランス時間午後三時半

 結局、時計を見ると一時間は並ぶのに苦労をして、もう一時間は美術館鑑賞でじっくりと見た。


「いやぁー本物のモナリザは……うん、美しかった」


 ハッキリ言うと自分は目が良いからモナリザをじっくり見るとピキピキと割れてて想像以上に、年代物と感じれた。自分は美術は低い方だったからこれが有名! っていうのしか分からないので知ってる人以上には分からない。でもでも、鑑賞できただけでも良かったのかもしれない。


「雨宮さんも一緒に行動してしまってすみませんね」

「いえ、誰かと一緒に回るとまた違う事が分かるので斬新でしたよ」


 雨宮さん……楽しんでるなぁ。仕事が楽しいのか、あたしと居て楽しいのかは分からないけど。


 さて、ご飯はどうしようかと雨宮さんと相談してたら、やっぱりお得意の自社製情報誌を取り出して


「行きましょう」


 とタクシーを呼び止め乗る。楽してパリを楽しむと入った所だ。しかし、こうなると二日目以降が不安になってくる。一人で大丈夫だろうか。


 キッと車が停まって自分達を降ろす。そういえば、考えてみたら夜も昼も食べていなかった。


「少し、軽く食べてから。ディナーに行きましょうか」

「ホテルじゃ何も出ないんでしたっけ?」

「ええ」


 ということは、朝昼晩は全部外食か。色々な店に入らなきゃね。


 お昼といい、パンを食べて貝を食べて……ってこれじゃ朝っぽいけど、あくまでも軽く食べる事が今の食事だからこれぐらいで丁度いい、それよりも中々美味しい。ちょっと硬いのがネックだけどパクパクっと食べる。悪くない悪くない。


 一方雨宮さんはと言うとパソコンで作業中だ。ちょっと覗いてみると


「明日からのスケジュールです。色々立て込んでて……」


 怒りもせずに教えてくれた。グー◯ルカレンダーで予定立ててたのか……。

 流石、検索サイト。自分はコーヒーを啜って完食する。美味しかったです、ありがとうフランス。


「フランスでの初食でしたけど美味しいですよ、雨宮さん」

「ええ……フランスの食は美ですからね……」


 食にも美を求めるとは流石美の国。もしフランス人が日本に来たら感動しっぱなしでは?春夏秋冬、特にフランスは暑いから春か秋ぐらいに京都にきたら素晴らしいと胸を打つのではないのだろうか。ただ、和食は高いからなぁ……。


 最近は和食処か、肉も魚も野菜も高価格化して、サイ◯リアかくら◯司、ビッ◯ボーイくらいでしか食べられないのだろうか。まぁ全部言ったのはレストランだが。


 サラダ食べ放題も今ではステーキのおまけで食べられたのだが、これも別メニューとして有料化してるほどだしね……。あそうだ


「あのー雨宮さん。日本円でそのカントリー社のフランス情報誌売ってもらえませんか?その、古いので良いんで」

「あ、はい。これは空港で売ってるんであなた自身で買ってきて下さい」

「えっ!?いや、それ……ええ!?」

「冗談ですよ、七五〇円です。お釣りは無いようにしてください」


 チラッとフランス情報誌の二冊目を見せてくれた。別にあっても無くても困りはしないと思うけどこの冗談はいくらなんでもちょっとキツい。ここから空港も遠いし、地図読みが下手だから何時間も掛かる可能性があって旅が満喫出来ないからだ。


「もー雨宮さん……」

「ごめんなさい、ちゃんと渡しますよ」


 テーブルに情報誌が置かれる。ちゃんと日本語でフランスのすゝめが書いてあった。

 凱旋門にエッフェル塔、さっき行ったルーブル博物館の美術とかも色々な情報が乗っていた。

 その他にもおすすめのお土産とおすすめの食事、とにかくおすすめだらけだ。


「どうですか? 実際に現地に行って触れてこんな事を書いているんですよ」

「なんか……お疲れ様です」


 大変な情報量だなこれ……。これの他にもアメリカとかの情報も書いているんでしょ?

 うーわー自分はやってられないよ。



 暫く通りを歩いてみる。色んな通り名があって最も有名なのはシャンゼリゼ通り。

 自分達が通っている通りは小さい通り。二日目はシャンゼリゼ通りに行ってみよう。

 しかし、こんな通りでも人が大勢通るもんだ、シャンゼリゼ通りはもっと人が多いのだろうか。


「アーアーシャンゼリゼーアノウーターガヒビークー」

「……?」

「あ、ゴメンナサイ。ちょっとフランスを題材にしたゲームがありまして」

「そういうのお好きなんですか?」

「あ、ええ、まぁよくやってますよ」

「私、疎い者で……よく分かんないんですよね」


 結構雨宮さん歳の筈だからCMとかで聞いたりとかしなかったのかな?


「それから……ここ、シャンゼリゼ通りじゃないですよ?」

「あっ、そうですね。ここ有名な通りじゃないですね……」


 二人共々苦笑。自分の思いつきで突然歌って指摘される。そりゃ苦笑いだ。


「そういえば、シャンゼリゼ通り以外に有名な通りってあるんですか?」


 雨宮さんはジーっと考える


「……ごめんなさい、フランスの通りって沢山あるんですが、有名ってなるとシャンゼリゼ通りだけ――ですかね、通りってそんなに有名にならないもので」

「成程、なんか変な質問しちゃって……」

「いいえ、今後の情報に追加出来るよう努めます」


 早速、重荷を追加したようだ……。自分、反省、いや猛省。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――フランス時間午後七時

 未知の国でひたすら雨宮さんにススメられた所を見て食べる感動する。そして今、ディナーを奢ってもらっている。自分は……ヤバいことにマナーを知らない、精々知ってるのは箸の使い方ぐらい。


 お皿の上に乗っかていた三角形の何かを雨宮さんは膝にパッと掛けたけどこれは自分もやるのか?

 自分も膝に広げて乗っける。これ……これで良いのか?

 難しい、そして訳が分からないぞ……。なんでこんな布を膝に……?

 首元になんかカッコよくそして服が汚れないようにするのは一体何処の国なんだ……。


「名柄川さん」

「は、はい」

「ワインはお飲みになります?」

「あ、あいのみマス」

「赤ワインと白ワイン、お好みは?」

「あ、赤で」

「はい、味の方は?」

「甘めが良いかな……」

「分かりました」


 雨宮さん、いつの間にか注文してた。任せよう、今は身を任せる。委ねるんだ。


 そういえば、昔にコース料理と言えば、麻衣から素晴らしいコース料理を貰って腹を壊した思い出がある。まさか、本場フランスでコース料理を食べれるとは思わなかったなぁ。麻衣のフルコースはユッケがアウトだった。あのユッケは駄目だ。今じゃ貴重品だが。


 ワインが来た。というか注いでくれた。


「???」


 店員さんがどうぞと言わんばかりに何かを言ってくる。の、飲めば良いのかな?自分は飲んでみる……、さっき言った通り甘みが来る。


「うん、おいしい……」


 自分はワイングラスをテーブルに置く。



「……」



「??????」


 えっ、あれ?店員さん何でどっかいかないの?自分なんかマズい事した?何かを待ってる?飲んでよかったのかな?マナー知らないんですよ、自分?


「えっと……good」

「okay?」

「の、no problem」


 ワインボトルをテーブルに置いてくれた。なんだったんだ……。お試し?

 皿から左を見るとなんでフォークが三つもあるんだろう。これは使い分けするのかな?と思ったら皿の上にもフォークとスプーンが。フォーク多すぎなのでは?よくわからない。


「名柄川さん、ワイン飲まないんですか?」

「えっ?ああ、はいのみマスのみマス」


 料理が来るまでにワインを楽しんでおけって事か。飲むヨ―今日は飲むヨ―。

 チラチラとテーブルを見てると


「名柄川さん……」

「はい?」

「もしかして……」


 そう、聞き辛かった事を自分は問いたかった、その時が来たのか!


「ワイン初めてで?」

「えっ、いやー実は数回位しか飲んだことがなくて」

「そうですか、いやさっきテイスティングで悩んでたっぽくて」

「ええまぁ……そうですね。悩んでましたね」


 結局聞きそびれる。なんでかねー、マナーって聞きづらい。


 さてと、前菜が来た。サラダ。何の変哲も無いサラダが来た。

 ただ一つ言えば、ちょっと大きいかな?雨宮さんの行動を見て自分も動きを合わせる。

 フォークの使い方から何まで。――良かった、フォークの使い方は普通に使って良いんだ。って何安心してるんだろう。これぐらい世界共通でしょ。


 サラダは食べてて美味しいねっ。航空機で食べたサラダより全然マシだった。そりゃそうか。


「名柄川さん」

「はいっ!? あっ……」


 フォークをカタッと床に落としてしまった。


「い、いやー恥ずかしいです」


 自分が拾おうとすると


「名柄川さん、大丈夫ですよ。そのままで」

「え……?」

「今、店員さんが換えに来ますから」


 そうなの? 拾ってしまってはいけないのかな?

 ササッと店員が来てフォークを換えてくれた。


「はぁ……それで雨宮さん、何かお話が?」

「マナーお教えしますから」

「――えっ?」


 自分は何も言えなくなってしまった。


「えーと……バレてました?」

「ええ、座ってからナプキン取るまで」


 自分顔真っ赤、何から何まで手に取るように――


「雨宮さん……人が悪いです……」

「オロオロするのが面白かったもんで」

「……自分は聞きたかったんですけど、マナーって中々聞けないもので……」

「よくありますよね、常識だからこそ聞けない事って」

「自分もその一人です……」


 フランスに来てからの自分、段々恥ずかしくなってくる……。



――フランス時間午後八時

 様々な食べ方を指南してもらった、食べ方と言うよりマナーであろうか。ようやく食事も終わって外に出た所だ。その後の自分は何事も無く終えれたので、問題は無かった。

 でもあまりにも気を使いすぎてお腹の方はそんなに満たしてはいなかった。

 そう苛立ってると雨宮さんが出てきた。


「お会計、終わりましたよ」

「あ、ご馳走様です」

「どうですか? フランス料理は?」


 ここはハッキリと言ったほうが良いのだろうか?それとも食レポのように答えてみようかな?


「正に洋って感じがしましたね。日本では到底味わえない料理でした」

「そうですか……洋なんですけどね」

「あっ……」


 自分は食レポには向いていないようだ。この人痛いところばっかり付いてくる。


「それでは、いよいよお別れですね」

「ああ、ええ、そうですね……」

「今日一日で色々行きましたけど、どうでした?このフランスという国は」

「まだまだ行き足りてないですけど、やっぱり楽しいです。自分の知らないことが沢山あって」

「フフ、行ける所まだ沢山ありますからね。この後も楽しんでいって下さい」

「雨宮さん、楽しかったです」

「ええ、私もです」


 雨宮さんがタクシーを止めて


「名柄川さん、もう行き先言ったので乗れば帰れますよ」

「最後までありがとうございます……さようなら」

「さようなら」


 タクシーの中で泣きそうになる自分、一人じゃ何にも出来ないのかな……。

 不安にまた煽られる。


 自分、どうなるのだろう……。

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