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名柄川羽海という女の日常  作者: TASH/空野輝
ヨーロッパ、フランス編
29/51

機内……

 ――朝八時半

 成田空港なんて一生使わないと思っていたが、まさか一生で使うとは……。しかも一人旅。航空時間は十二時間。半日が移動とは中々遠いじゃないか。これでも最短距離なのだから仕方が無いのかもね。

 

 とりあえず、バッグにタグ付けして機内持ち込みはこのウエストバッグに大切な物を入れる。水は駄目なのか。「水はなんで駄目なんですか?」と聞いたのだが


「原則として液体物は不可です、でも国手続き後に免税店や自販機で買ったものであれば持ち込めます」

「じゃあ赤ちゃんのミルクとかでも通過不可なんですか?」


 更に微妙な所を突いてみた。


「これは事前に説明をして頂ければ持ち込み可能です」


「……プリンとかこんにゃくとかは?」

「液体物に入ります」


 ああ、入るんだ……半固体なんだけど。飛行機の中で水を飲もうと思ったのだが、どうやらサービスでコーラとかが貰えるらしい。保安検査場――ここのセキュリティゲートを通れれば飛行機に乗れるらしい。

 トレイにウエストバッグを乗せる。この中にはスマートフォンと国際免許等の大事な物を入れている。

 後は機内で役に立ちそうな物を少し入れてるだけだ。

 いざセキュリティゲートを通ると


 ピッ―! ピッ―! ピッ―!


 自分は驚きのあまりに検査員を見てしまったが検査員はムッとした顔でコチラに向かってくる。

 自分は銃とかナイフとか持ってないのに何でなったんだ!? 誰かに仕込まれた!?


「ちょっとよろしいですか」

「は、はい……」


 金属探知機でサッサッと体全体に当てる。すると腰辺りと骨盤の横辺りでピッ―ピッ―と鳴った。


「ベルト、それから財布をトレイに乗せて下さい」

「ハイ……ハイ……」


 後ろには待ってる人が居る。自分はトレイに入れてまた通る。


 ピッ―! ピッ―! ピッ―!


 二度目!? また探知機を持ち出し体に当てる。


「お尻のポケットに何か入ってませんか?」

 

 ――あっ。家の鍵とバイクの鍵……。

「ごめんなさい。これで大丈夫です」


 もう嫌なんだけど……。


「……」


 次は何も鳴らずにしっかりと通れた。ベルトとか財布とか別に危険物じゃないんだから良いじゃない、鍵は使い方で殺傷武器になるけども。

 

 まぁこうした努力でハイジャック事件とかが無くなるから大事なのだろうけども、ここは大人しくポケットの中とか全部空にしといた方がいいでしょう。出ないとあの音が……。


※ ※ ※ ※ ※ ※


 ファースト――ビジネス――前の座席に行くほどランクが高くて豪華らしい。

 自分は少しでも安く収めたいがためにエコノミークラスとやらを選んでみた。

 新幹線みたいな席の詰め方だな、しかも自由席とかじゃないから隣に誰が来ようが文句は言えないわけだ。

 自分だったら隣に荷物を置いて寝たふりをするんだが……残念ながら大きな荷物は持ってきてないし、ウエストバッグを横に置いた所で意味を成さないだろう。因みに自分の席は窓側だ。

 自分はボフッと座って今は開かれていない窓らしき物を見る。


 ――ファーストクラスってどんなんだろう。自分の想像の中では一人につき使用人が居て、ワインとかをグラスに注いで、マッサージとかのサービスが受けられるんだろう。こんなすし詰め状態の席じゃなくて、部屋みたいにベッドとかが付いてるんだろうな。



 名柄川羽海ながらかわうかいが考えているファーストクラスの全貌は大体合っている。

 基本的にビジネスクラスからは個室化になるのが多い。しかしファーストクラスはその上

 部屋になっている機内が多い。ホテルのような空間になっている所が多く、超が付くほどの快適さがある。

 しかし料金の方も超が付くほど高く、名柄川羽海ながらかわうかいの様に旅先を楽しむというのなら、ファーストクラスを選ばずに少し欲張ってビジネスクラスを選んだり、我慢してエコノミークラスを選ぶかの二択になるであろう。筆者は選ぶなら断然エコノミークラスだ。

 もしファーストクラスを味わいたいのなら国内線の飛行機がオススメだ。国内線飛行機ならば八〇〇〇円の追加料金を払えば簡単に味わうことが出来る。



 ――自分が居るエコノミークラスは目の前にモニターがあって右の肘掛けに色々な機能が付いてる、飛び立ってから確認する事にしよう、後ネットにはヘッドホンと機内サービスの本があるだけだ。ヒョイっと袋みたいのを取り出してみた。――ゲロ袋ね。


 隣にはスーツを着た男性が会釈をして座ってきた。


「お一人で旅ですか?」


 一言掛けてきたので


「まぁ、余裕が出来たので……」


 流石にパチンコで勝ったから旅に出てみた、なんて言えない。


「楽しい旅になると良いですね」

「ありがとうございます。貴方は何をしに?」

「ああ、私は仕事でフランスの方に」


 海外出張か、随分社会階級が高い人なのかね? 鷹見とか麻衣とかと大きく違うだろうな。


「遠い所まで出張なんてご苦労さまです、結構多いんですか?」

「まぁフランス以外にロシアとかアメリカとか多く……」

「日本から遠い国ばかりで……」

「でも意外とやりがいのある仕事なんで私は好きですよ」


 これがやりがいとは中々骨のある人だな、自分はたまたま海外旅行したかっただけでここに居るがこれから何があるのかも分からんから怖い、そもそも海外での労災って日本で適用されるのか?


「何かの縁ですから、名刺でも――雨宮あめみや 一道かずみちと申します」


 株式会社カントリー、電話番号とか色々書いてある。


「これはご丁寧に――名柄川羽海です」

「ほー……どう書くんですか?」

「ああ、名前の名に絵柄の柄にあの川と書いて、ハネとウミでウカイです」


 自分は持参してきたメモ帳に書いてみせる。


「貴方の名前を聞いて一瞬岐阜県の風物詩を思い出しました」

「それもよく言われまして――」


※ ※ ※ ※ ※ ※


 長い事雑談をしていたらアナウンスが鳴ってそろそろ飛び立つようだ。

 シートベルトのランプがポンと光る。日本という地から飛び立つ。初めての事だ。どうなるのだろう。


「飴、あげますよ」


 雨宮さんから飴を貰った。この人飴を常時持ってるのか鞄の中から色んな飴の種類が入った袋から一個取り出してくれた。その飴を見てみたら"きえちゃうキャンディー"だった。雨宮さん、結構いいの知ってますね。


 飛行機が動き出し加速する。周りを見ると結構しかめっ面で、何かを我慢するような感じだった。

 自分は窓のシャッターを開けてたのでそこを見ていた。ゴーという飛行機のジェットの音が鼓膜に響く。そして浮かび上がった。自分は感動した。何百人と乗ってる中、軽々と浮かび上がるのだから。――自分は違和感を感じた。耳が重い。


「雨宮さん、耳痛くないですか?」


 一言掛けると


「おや、飛行機に乗るのは初めてで?」

「ええ、何か違和感が」

「気圧が高くなるんですよ。ですから先程上げた飴を舐めてみてください。」


 このきえちゃうキャンディーをか……。自分は口に飴を入れる。そしてツバを飲むと


 パキッ


 耳の中で何かが弾けた音がした。いつもの耳の状態に戻った。


「オオウ、元に戻った」


 なんて不思議なアイテム飴ちゃん。雨宮さんが言うにはガムとか鼻をつまんで強く鼻から吹くと良いらしい。帰り道はそれやってみよ。


 シートベルトのランプが消えてベルトを外しても良いようになった。

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