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再度……

――午後五時

 コンビニのバイトをしてから二日が経った。――なのにどうして自分はカウンターの裏に居るんだろう。


 どうしてだ!


「何であたしはここに! 颯花おばさん!」

「ごめんね、羽海ちゃん。もうちょっとだけ続けて」

「佐藤が居るじゃないですか!あたしの用はもう済んだはずでは!?」

「だって羽海ちゃん結構慣れた手つきで色々な事やるから結構有力なのよ」


 うう、雑にやれば良かった……


「だから佐藤君が慣れるまでね」

「はぁ――っていうか今日出勤ですよね?」

「うん、今の時間から4時間だって、平日は全部来るって、時給800円」


 時給八〇〇円、四時間――シハサンジュウニ……三二〇〇円、カケルゴ……一六〇〇〇円、そして四……六四〇〇〇円。まぁ良いと思うな。悪くない。お、早速来たか


「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」

「はいおはようございます。佐藤くん」

「おはようございます!」

「うい、おはよう。」


 中々礼儀正しいな。どうしてあんな奴らと付いてるのかが不思議に思う。


「研修中はこの名柄川羽海ちゃんが教えてくれるからね」


 はぁ……研修は3日間だっけか……面倒だが仕方がない。この話から3話くらいはコンビニの話が続きそうだな。


「んー佐藤、まずは事務所に来い」

「はい、よろしくお願いします!」


 ということで、佐藤を事務所に連れて行く


 「本当はジーパンらしいがまぁ学校帰りだし上の学生服だけ脱いでこの上から着れば良いだろ、どうせ下は見られる事は無いし……とりあえず、来てくれ」


 佐藤は言われた通りに上だけ脱いで脱いで……っておい


「あーシャツは脱ぐなよ。肌着で着るなんて無いぞ。自分だって上は来てる」

「あ、ごめんなさい」


 とシャツを再度着る。


「名柄川……さん? はどんな服を着てるんですか?」

「おい、それ女性に聞く言葉か? 一応こんなのを着てるのだが」


 ガバッとシャツごと掴んで腹を見せる


「うわわわわっ!」


 佐藤は顔を真っ赤にする。ははっ――高校生の反応は面白いなぁ。


「ちょっと刺激が強すぎたか? 悪いな」

「いいえっ――とりあえず、続き良いですか?」

「ああ悪い。えっと……タイムカードは切ったか。よし、表に出よう」


 佐藤を引き連れてレジ近くに行く


 「まずは、その初心者マークが付いた名札にバーコードが付いてるだろ?それをピッとやれ」


 佐藤はピッとやった。レジのモニターには「No007サトウ」と出た。


「お、ラッキーセブンか。良かったな。それで、客居ないから……そうだな」


 例の機能を使ってみるか


「えっと――確かレジには練習する機能が付いてるからそれで練習してみるか」

「はい」

「よし、あたしが適当に持ってくるからそれで練習してみようか」


 一応おつまみとお菓子を適当に持ってくる、佐藤がピッとやるが…


「佐藤、お客さんが来たら『お預かりします』と言わなきゃムッとされるぞ」

「あ、ごめんなさい」

「まぁあたしが伝えてなかったから悪いけどこの掛け声が大切だからな」


 佐藤がピッピッとやって合計が出る


「そしてこの合計が出たらこの額をお客さんに伝える。そしてお客さんがお金を出してくるが……クイズだ、この先あたしはなんて言おうと思ってるでしょう?」

「えーと――お釣りですか?」

「物分りの良い子だ、次は胸を見せてやろうか?」

「いやいやいやいいです! お断りします!」


 いい反応だ。もしくはあたしの胸なんて見る価値無いのか(Bカップ)


「お客さんがお金を出してくるからその出されたお金を入力してお釣りを出す。そして『ありがとうございました。』な」

「分かりました」


 自分は出した商品をパッパッと棚に戻す。そして佐藤の下に戻る。


「まぁ残るは煙草だな」

「タバコ……ですか?」

「基本番号で言われるが、たまに愛称で言われたり、名前で言ったりするから注意な」

「もし言われたらどうすれば良いですか?」

「分かればいいけど、基本的には『番号でお願いします』と言ったほうが良い。物分りの良い人は番号で言う」

「物分りの良い人?」

「そうだ、物分りの良い人は。偶にメンソール!メンソール! とか訳の分からん人が居るがな」


 ※作者体験談:メンソールと叫んでその場から動かなかった人が居ました。


「とりあえず、『番号でお願いします』と言えば良いですね?」

「ま、そういうことだ。物分りが本当にいいな。一発ヤろうか?」

「いやいいです……」


佐藤顔真っ赤


「羽海ちゃん……」


うわ事務所にいた颯花おばさんに見られた。これは恥ずかしい


「おばさん、冗談なんで冗談なんで……」

「年頃の子とエッチしたって羽海ちゃんには何の得も無いわ……。そんなに大きくも無いと思うし……」


 むしろ乗り気だった!? おばさん結構下ネタ好きなのか?


「……んん。まぁとりあえずこんな所だ。お客さんが来たらとりあえずやってみよっか。あたし隣に居るから」

「はい、よろしくお願いします」


お、早速来た


「イラッシャッセー」「いらっしゃいませ!」


 二〇代女性位――何処かで見た顔、あれは麻衣?

 雑誌を読んでやがる……そしてコンビニ本……それで商品を見る。お菓子コーナーで何かを取ってジュースを取る。そして晩酌用のビールとかを取ってコチラに来る


(佐藤、出番だ。ちょっとカウンターから出る。ああ、それからビールとか読み取ったら成人の確認が出るからそれをお客さんに押させるんだ。いいな?)

「あ、はい」


こんな姿麻衣に見られたくない。っていうかそもそもなんでアイツがここに居るんだ。そろーっと出る。


「はい、合計で二一八〇円です」


 自分は棚の整理をするフリをして麻衣に顔を見られないようにする。


「あの……ごめんなさい、ここのコンビニに名柄川羽海っていう方来てません?」


 なっ!? 馬鹿な! ――あっ!バイクか! しまったぁ!

 自分は必死に佐藤にバツ印のジェスチャーを伝える


「いえ、知らないです……」


 伝わったな。あぶなーい。


「変な事聞いてごめんなさいね」

「あ、はい。ありがとうございましたー……」


 麻衣は出て行った。


「アイツとは友達なんだ。こんな姿見られたくない……」

「名柄川さんにも弱点はあるんですね……」

「悪いやつでは無いんだけどな」


「……」


「……アイツFカップだぞ」


 佐藤は吹き出した。やっぱり年頃だな。


「そういう関係何ですか?」

「んーそうだな。気になる?」

「気になります」

「風呂で一緒に入ったり。胸を触りあったり、喘ぎ声出したり。キスされたり一緒に寝たり……」


佐藤はかなり過激な妄想をしたのか顔が真っ赤になってフラフラだった。全部事実だけどな。


「まぁ安心しろ。アイツにレズっ気があるだけであたしには無い。」

「はい……はい……」

「とりあえず、鼻血が出てるからティッシュで拭いとけ」


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後七時

 とりあえず、何とか佐藤は慣れてきたようだ。たまにお釣りを間違えたりとかしてるが大した成長だ。 この数時間で慣れようとは。


「随分慣れてきたな。悪くない。いつかその初心者マークも消えるな……まぁ三日間だけだが」

「ええ、悪くないです。名柄川さんってずっとこのバイトやってるんですか?」


 それを聞くか……実は初バイトとは言えない。しかも無職だなんて尚更


「あー、夕方居ないってもんで他の店から助っ人で来てるだけ、お前の研修が終わったらお役御免だ。」

「そうなんですか? ちょっと寂しくなりますね。」

「おいおい、ちょっと出会っただけでもう寂しくなるのか。」

「出会いがあったら別れがあるんですもんね。仕方ないですか。」


 よく言う言葉だが確かにそうだから困る。自分にも何度あったことやらか。


「それより、どうして急にここのコンビニやるって言ったんだ?」

「ああ、実は……名柄川さんのバイク見ててカッコいい!って思って…それでまずは免許取りたいなーって」


 成程、やっぱりバイクって人から人に感染うつるんだな。自分もそうだったから。


「ほう……そういや同じ時間に終わるんだったな。後ろ乗ってみるか?」

「良いんですか!?」

「全然構わない。ヘルメットは事務所にあるやつ適当に使えば良いだろ。」


 ということで佐藤を後ろに乗せる事にした。二度目だな――後ろに乗せるのは。



――午後九時

 一応終わった。佐藤と共にタイムカードを切って事務所になんか置いてあるヘルメットを佐藤に被せる。これ安全なんちゃらのシール無いけど良いか。


「よし、先に乗ってくれ」


 ということで佐藤を後ろに乗せる。次に自分が乗りバイクを安定させスタンドをたたむ。本当は大型バイクとかで男が前に乗ってると見栄えが良いのだが残念ながら自分は女だ。エンジンを掛ける。ある程度吹かしてローに入れる。


「よし出るぞ」


 進む。佐藤は無言だった。

 ブーンと出て暫く走って赤信号になり止まる。


「どうだ佐藤、これがバイク――」


 ミラーで後ろを確認するが佐藤が居ない!? しまった何処かで落っこどした! ヤバい!

 アイツ大丈夫か!?自分はUターンをして佐藤の姿を探す。

 アイツにタンデムのやり方を教えてなかった。どうにもあたしを掴んで無かったし

 バーにでも掴んでるかと思いきや消えてるなんて!

 戻ってみるとコンビニで伸びてる佐藤の姿があった。側まで寄る


「おい佐藤! 大丈夫か!」

「うーん……何で僕は落ちたのですか?」

「あ、あたしが悪かった!乗った時は後ろのバーを掴むかあたしを掴んでてくれ。それを説明してなかった! 本当にゴメン!」


 ということで再度。


「掴んでるな! 大丈夫だな!?」


 掴んでる事を重要視する。


「はい! お願いします!」

「よし、出るからな。」


 再度進む。ちゃんと返事もあるな。

 又ブーンと出て暫く走って赤信号になり止まる。


「どうだ佐藤、これがバイクだ」


 ミラーで後ろを確認すると佐藤がちゃんといた。


「は――はははい! す、凄いですねぇ!」


 最初はこの速さビビるよな。だけど自分で運転してると分からないもんだ。


「そういや家は何処だ?」

「駅の近くです!」

「んじゃ、あたしの家の近くだな。そこまで連れて行ってやる」

「ありがとうございます!」


 青信号になり発進する。佐藤は驚きぱなしだった。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後九時半

 佐藤の家に着いた。一軒家のちょっと大きい今風のデザインした家だ。今の時代土地も限られて来るからこういうスペースを無駄にしないデザインが多くなるのだろうな。

一方佐藤は、ぽかーんと口が開いてた

「佐藤お前の家だけど……」

「あっ――はい、凄いッスね、バイクって……」

「速いだろ、家に着くのも早いし」

「はい……」


 自分は佐藤を下ろして


「それじゃ、また明日か」

「あ、待って下さい。お茶でも」

「お、いいね。貰うかな」


 ということでGSR400を佐藤家のガレージに置いて家に上がった。


 玄関で待っててくれと言われ数分。親からオッケーが出たらしく「どうぞ」ということで玄関に上がる。佐藤がリビングへの扉を開けて「入って下さい」と言われ入る。


「お邪魔します」


 そこには佐藤のお母さんとお父さんが居た。

 そして椅子に誘導させられる。


「あ、どうもどうも。すみませんね夜分遅く」

「いいえ。お茶に誘われた者で――失礼します」


 椅子に座りお菓子とお茶を出される。中々佐藤の家はでかいな。自分の家より大きい。ちょっと羨ましい。佐藤は二階に上がって着替えてるようだな。


「ウチの子のアルバイト先の先輩ですってね? すみませんね、送って貰った様で」

「いえいえ、自分が誘っただけで――お茶まで出して貰って」


 流石に友人以外でも知り合いの親っさんでも緊張するものだな。

 言葉がつっかえて出て来ない。ここで佐藤が出てきた。


「名柄川さんごめんなさい、お待たせしました」


 佐藤が横に座る


「こらっ、お客さんの横に座っちゃ駄目でしょ、こっちいらっしゃい。」


 佐藤はあたしから対角線状の椅子に座る。


「どうですか? ウチの子は? 働いてますか?」

「まぁ大丈夫だと思いますよ。まだまだ慣れない所多いですけど続ければアルバイトってどれも慣れますから」


 まるで自分は高校とかの面接官みたいになってるぞ。お茶を啜る。佐藤はあたしの手の動きを見ている


「なんであたしの手の動きを見てるんだ?」

「あ、いえ。名柄川さんって右手でお茶持ったり左手でお茶持ったりでなんか忙しそうだなーって」

「随分細かい事気にするな……」

「ごめんなさいね? 名柄川さんウチの子、手の動きをよく見るみたいで」


 佐藤の頭を手でグリグリしながら言う。成程、佐藤のちょっとした記憶力の良さはそこから来てるのかもしれない。面白い奴だ。さてと、お茶も飲み終わったし


「そろそろ帰ります。お茶ありがとうございました」

「外まで送ります」


 佐藤の母が付いてくる。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後十時

 外まで来て佐藤の母がキョロキョロと見る


「あのー……名柄川さん。お車は?」

「え? いやこれなんですけど」


 GSR400を指差す。佐藤の母はびっくりして


「まぁ! バイク? 危ないじゃない! 乗るのを止めたらどうですか! しかもウチの子まで乗せて!」


 急にどうした?随分口調が荒っぽい。


「いやあたし七年目ですしそれなりに運転も気使ってますよ」

「でもバイク事故って多いじゃないですか?見てて危なしくって」

「ああ、お母さん。これはバイク乗ってる人にしか分からないんですけどその大半って原付自転車――つまりスクーターなんですよ。その原付って呼ばれるものってどの免許持ったって付いてきますよね?」

「それが何か?」

「バイク事故の主な種類が原付――そう、スクーターなんですよ。まぁ普通大型乗ってても事故はありますけど少ないです」


 佐藤の母はまた強い口調で


「じゃあその……原付と普通大型でどうしてそんな違いが出るんですか。」


 それは勿論――


「知識と経験の違いです。原付は筆記と軽い教習で一日で終わります。しかも普通二輪でやるクランクもS字もやりません。車を取った場合は更に原付講習さえもやらず乗り方も知らずに終わります。ここに経験の差が出ます」


「そして、普通二輪との大違いは意識の差でしょう。『角からは何も来ない』や『バイクは優先度が高い』と思ってるからでしょうね。つまり、ながら運転が多くは出来ない訳です。小さいからと言って車の横をすり抜けたり、トラックの死角に入ったりとかするから事故率が高い訳です」


 佐藤の母もうーんと何も言えないようだ。ちょっと勝った気がした。だが――


「でもいつか事故するでしょ」


 チッ、開き直った。母を攻略しないと佐藤のバイク乗る未来が無くなってしまう。絶対に反対するだろう。


「それは……運が悪かったら事故は起きるでしょうね」


 ふん、と佐藤の母はふんぞり返った。


「それは全部の乗り物に乗ってれば事故は起きますよ。全ては運任せです。車でも不運だったら死にますし、トラックでも死亡者はいます。無茶な運転、睡眠不足、余所見をすれば誰だって事故は起きます。これはどうにもなりません」

「じゃあその中でバイクを選んでどうして乗ってるのかしら」

「それは……仲間が出来るからです」


 そう、バイクによって仲間が出来る。知らない人でも寄ってきて話をしたり道路でも注目されたりする。これがまだバイクに乗る理由。


「貴女、危なっかしい運転してるんでしょう。このバイクにも傷は色々付いてるし、事故とか起こしたりとかしたんでしょう? 経験したからそんな事言えるんでしょう?」


 話を逸らして佐藤の母は言う。切り替えてきたか――危なっかしい運転ねぇ


「そう――言いますか。あたし、七年乗ってるって言いましたよね?」

「それが何か?」


 そう、五年間無違反無事故で獲得出来る証拠がある。それを佐藤の母に見せた。


「免許証?普通……普二輪――それが何か?」

「分からないんですか? 免許の見方」


「ゴールド免許」


 佐藤の父が出て来た。奥で新聞を読んでいたが恐らく母が中々戻って来ないから出て来たのであろう。


「……5年間の間、ずっとバイクか?」

「ええ、ただ代行で車を運転したりもしましたが、何も違反もしてません。それがゴールド免許の理由です。バイクで危ない運転したら必ず事故は起きます。でもしてない理由がそこにあります」

「……そうか、母さんお前に黙ってた事を言おう」

「何?」

「子供も時期だ。普通二輪という奴から乗せてあげよう。運転の知識をこの頃から付けないと駄目だ。」


「この名柄川さんというのは優秀なお人さんだ。何もかも任せていい気がするんだ。」


「……」


「……俺は駄目だったんでな」


 と、財布から免許証を取り出す。色は――青だ。


「前にな、ちょっと停止線から前に出た時に横からスクーターが来てな。スクーターが止まらなかったんだ」

「……残念ですね」

「だけど名柄川さんの話を聞いて分かった。原付免許は直ぐに使えて学べると考えていたが逆とはな」

「やはり、時間を掛けて学ぶのが一番だと思います。」

「母さん、もう名柄川さんには勝てないぞ、この人は俺達よりも上の経験をしている。」


 佐藤の母はため息を付いて


「口では負けた事ないのにね。負けたわ名柄川さん。ごめんなさい。」


 こうして佐藤の未来は守られたものだ。


「それじゃ、長々とすみません。明日も佐藤の面倒見ますんで」


 バイクのエンジンをスタートする。


「――それじゃ、気をつけてな。名柄川さん」

「ええ、ゴールド目指して下さいね。お父さん」


 自分は発進する。また明日な佐藤。



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