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平日……

 ――午前7時


 どうして第一人称が自分なのか、どうして男勝りに喋るの?どうしてそうなったのか……忘れたの、名柄川羽海。もう敵は居ない、何も頼らなくても良い。まずは第一人称から変えて見るのはどう? 少しずつでも女に戻ってみたらどう? 考えてみて……


 「んー……」変な夢を見た。重たい話を聞かされたような気がする。自分高校時代からのトラウマから第一人称も言葉も荒っぽくなった。全てを変えた。偽ってみた、そして溶け込んで慣れていく。――第一人称から変えてみようかね、以前使っていた『あたし』に戻してみるか。夢の中で助言を貰ったコイツは――元の自分なのかな。そんな厨二病チックな事を考えてみる。


 ……何かいい匂いがするな。肌触りも良い、そして柔らかい……重いな、重い――はっ! 

 布団の中を確認してみる。


「んー……んー……」


 お前何であたしの布団の中に居るんだよ! そして重い!


「ちょっと、麻衣、麻衣!」


 頭をトントンする。それから何故かなでなでした。


「朝ですか? 羽海ちゃん、朝なんですか?」


 腹にヨダレ垂らしやがって、コイツは……! 全く


「朝だけど何でお前がこっちの布団に居る理由を教えてほしい」

「だって羽海ちゃんが女の子だもん」

「全く理由になってない!」


 百合百合しい! てかなんだ百合百合しいって。まぁとにかく上に乗っかっている麻衣をどかして支度をする。


「麻衣、仕事なんだろ?あたしもう行くから」

「えーもうちょっとゆっくりしてても」

「いいや仕事にとっとと行け! 帰るから」

「うー、じゃあまたね。」


 ということで壮絶な麻衣との戦いは終わった。今思い返してみれば4日間も戦い続けたな。

 主に寝てる時が恐ろしい。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午前八時

 ということで久々に家に帰ってきた。平日だからか道路も混んでおらずスムーズに帰れた。やっぱり誰かの家よりも自分の家が一番ラクに過ごせる。

 うーん、四日間も離れてると通販のオススメグッズのメールとかが貯まる。スマートフォンでも確認出来るけど、どうも見難くて億劫おっくうになってしまう。

 ――しかし暇だな。皆は仕事だろうし四日間のツーリングで次のお小遣いまで金が無い。

 かと言って家に閉じこもるのも――アリかー。たまには電話番号の整理とかSNSで何処からか登録した馬鹿とトークしてみたりとかしてみるか。


 ――色々としてる間に自分は寝てしまった。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後二時-三時


「……」


 何も言えない。午前中にしたかった事が全部出来なかった。途中で寝るとこういう後悔が出る。

 はぁーこれがあるから昼寝というのはぐっすり眠ってしまう。昼寝と言うよりガチ寝だよ。


「――どうしよっかな」


土日以外は友人方も休みではない。日本の現状だな。だからと言って平日も休みの会社は給料が安い。安くない所は少ない。


「コンコン」


自分の部屋のドアを叩く音がする。


「羽海ー? 居る?」

「うん、入っていいよ」


 母だった。こうして入るのは結構珍しい。なんだろうか?


「今ね、おばさんから電話があって、コンビニの深夜のアルバイトが少ないって言っててね」


 自分にとって不利益な事で嫌な予感がする。


「それでね、羽海やってみない?」

「断ったら?」

「お小遣い無しー」


 あたしのライフライン、お小遣いを人質……質権を取られた。月10万を失うのはでかい――


「なんであたしなんだ?」

「うん? 平日も何もやってないから、アルバイトが入ったら辞めても良いって」

「うーむ、仕方がない。とりあえずでやっていい?」

「バイクも止められる場所もあるからそれで向かっていいって、あー後履歴書も要らずにとっとと向かっちゃって」

「あれ? ――今から?」

「はい、行っちゃって」


 深夜って言ったよな? あれ? 騙されてない?


「さっき深夜って……」

「こうでも言わないと動かないでしょ」

「うーわーズルい」


 ということで……GSR400に乗ってバイト先に向かう――憂鬱だなおい。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後三時


「おー来たね? 羽海ちゃん」

「久々です、颯花そうかおばさん」


 この人は鳥山颯花とりやまそうかさん、自分が小さい頃は良く遊びに来たけどおばさんと聞いて誰かときたら颯花おばさんだったか。


「話は聞いてると思うけど今この時間から九時に向けて募集掛けてるんだけど人が来ないのよねー。だから

羽海ちゃんに頼んでみたけど来てくれてよかったわぁ」


 まぁ、深夜と騙されて来たんだけどな。仕方がない、救出のためだ。


「とりあえず、事務所来て」

「はい」


 事務所と言うのは殺伐としてて監視カメラの映像を確認するパソコンとタイムカードか。それからもう服準備されてるのか。来ることを想定した準備だ。


「これに着替えて早速レジ打ちしてみようか」


 下はジーパンで上から服を着る。これは中々ダサい、だけどそんな事言えないのが惜しい。うーヤダヤダ。


 言うがままにカウンターの裏に入る。レジの下に袋、と箸とかが入ってるのか。


「まずは、名札のバーコードを読み取って」

「はい」


 ピッとやると「No006ウカイ」と出てきた。こういうのって上の名前じゃないのか?


「それで後はお客さんが持ってきた商品をピッとやって表示された値段を言ってお金が出されるからテンキー押して差し引きされてそのお釣りを出す。最後にありがとうございましたー……ってね。」


面倒くさいな、おい。――あー早速お客さんが来た。


「イラッシャッセー」


ピッ、ピッ、ピッ……ポテチにおつまみに酒、会社帰りか。


「合計一一二〇円ですー」


一二〇〇円出された…お釣りは八〇円か。一二〇〇円と入力して…年齢を入力するのか…三十代の男だな。

「八十円のお返しです。ありがとうございましたー」


やってみると案外面白い。だけど……


「セッタ頂戴」

「……は?」


あ、しまった。「はい?」と続けて言う。いつもの癖が出て焦るわー。セッタ……セッタ……


「えーと、18番下さい」


 あー煙草ね。自分はパチ屋に入るが煙草は吸わない。煙草なんて麻薬に近い中毒性があるから吸わない。自分は何かに依存するのは好きじゃない。


「すみません、おまたせしました。……ありがとうございました」


 煙草って高いな、これから高くなるって聞くしこんなものに五〇〇円玉出すのもおかしい。牛丼一杯食べれるぞ。――価値観が違うんだろうなぁ。


※ ※ ※ ※ ※ ※


――午後6時


「…………」


急に暇になったな。確かにここは人通り少ないし駐車場もあるわりには車も停まっていない。自分も今レジで立ってるだけだ。たまに肘を付いて外を見たり、ストレッチをしたり、自分のバイクを見たり、外が暗くなるのを見たり、掃除したり――それでもまだ9時にならんと言うのか。


 でもこんなに暇だったら誰か一人くらい募集に引っかかっても良いんじゃないのか? 文句を思ってると自動ドアが開く


「いらっしゃいませ……」


誰か来るんだよな。今度は十代の男子高校生か。

ジュースを眺めてコチラに持ってきた。


「お預かりします、一四二円です」


 ジャラと出されたのは一五〇円――えーと八円か。


「八円のお返しです、あり――」


 手を掴まれた。あー?


「あの、携帯番号を交換してもらえませんか?」


 コイツ何言ってんだ?


「すみません、面倒くさいんでお断りします」


 その男子高校生が外をキョロキョロして小さい声で話す


(ごめんなさい、罰ゲームで貴方の電話番号を聞いて下さいって言われてるんです)

(今そんな事が流行ってんのか?ガキィ…それで、自分が断り続けたらどうなるんだ?)

(殺されてしまいます!)

(そんな事言われてもな……プライバシーってものがあるだろ)

(お願いします! お願いします!)


 ――暇潰しがてら、良い事を思いつく。


(お前の友達の所までちょっと良いか?)

(え? あ、はい)


 ということで三時間振りの外「ちょっと店から離れます」と颯花おばさんに言って

 男子高校生の友達の所まで連れて行ってもらう。――三人か。


「おー佐藤。どうだ――!?」「なっ――!?」


 こいつは佐藤と言うのか


「ようお前ら。何かあたしに用があるんだってな?どうした?」

「えっ! いや、そのーえへへ……さ、佐藤――番号で良いって言ったろ?」

「なに? お前ら電話番号がほしいの?」

「えっ!? いやお姉さん、欲しいと言ったのはコイツでしてね」

「そんで半ば強制にあたしの電話番号を教えに行かせたの?」

「そんな事ないッスよ! ……それよりお姉さん……彼氏居るの?」


 コイツら……自分はガキに興味は無い。適当いいはぐらかして追っ払ってしまおう。


「ああ、彼氏居るよ」

「本当に?彼氏居るの?」

「今も近くに居るわ。そんなに疑うなら会ってみっか?」

「本当に? 嘘だぁ……」


 自分は近くにいる"彼氏"を叩く。ガキ達はぽかーんとしている


「名前はGSR400! SUZUKIの名車だ!」


「……」


 無言かいな。


「さてと、自分もバイトあるからまだ用あるんだったらこの"彼氏"で轢くぞ」


 エンジンを吹かしてローに入れて高校生の前でブレーキを掛ける


「ヒー!」 「やめて!」 「怖い怖い怖い!」


 男子高校生三人は逃げていった。


「ほい、んじゃあたしバイトあっから」

「待ってください!――バイクっていくらぐらいするんですか?」

「ん? 三〇万から五〇万くらい?」

「あのっ! ここってアルバイト募集してますか!」

「おう、募集しとるよ。中入っといで」


 ということで中に案内して


「颯花おばさーん、バイト見つかったよー」

「あら本当?」

「うん、本当。コイツ」


 佐藤を差し出す。下の名前は分からんがまぁ良いだろう。


「あっ……どうも、よろしくお願いします!」

「元気のある子ね、明日ここ通る? 明日履歴書持ってきて」

「本当ですか? では明日持ってきます!」


 一礼して佐藤は外に出た。


「良かったね、颯花おばさん」

「うん」


 笑顔。良かったな。



――午後9時

 何度か客を捌いて終業時間を迎えた。そして深夜に働く人が入ってくる。


「君か、助っ人で来た人は」

「ええまぁ……ただ昼間に働く子決まったんで今日で最後だと思いますけどね。お疲れ様でした。」


 服を事務所に置いてバイクに跨る。あー色んな事ありすぎて疲れた。

 ――一番の彼氏か。まぁ誰かと付き合うつもりも無いからどうでも良い事だ。


 一応、一日が終わった……のか?

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