レオンの呪いの力
一方、レオンは会議が終わった後、王宮の中庭に来ていた。会議が終わった後、アーサーに呼ばれたのだった。そして、中庭には石畳の広場にアーサーとレオン、そしてタブ爺の三人がいた。
「レオン王子、まず骸骨! 出してくれ」
唐突にそう言い始めるアーサーにレオンは戸惑う。
「出してくれって言われても、出し方がわからなくて…」
怪訝そうな表情を浮かべたアーサーはタブ爺の方へ視線を移した。
「タブ爺殿、本当に骸骨なんて出たのか?」
「ああ、もちろん出たんじゃ。この目でワシはしっかりと見た」
「タブ爺殿が言うなら、まあ本当なんだろうけどよ…」
アーサーは腕組みして少し考えた。
「こういう時ってこうやってハーって力入れたら自由自在に出てくるものじゃねぇのかな? 普通の魔法を使うやつはみんなそん感じで魔法を使うしよ」
アーサーは胸の前で両手を握りしめて力を込めるポーズをしながらそう言った。
「……」
レオンも試し試し同じようなポーズをとって体全てに力を入れてみたが、紫色の炎がレオンの体を包んだ。
「おお、これはキタか!?」
すると、炎は数秒経ったところで縮んでいってしまった。
「ダメかぁ〜」
天を仰いだアーサー。しかし、また何か思いついた様子で拳を片手にポンと叩いてから言った。
「レオン王子が襲われた時の状況を再現すればその骸骨は出てくるんじゃねぇかな?」
「再現?」とタブ爺が聞き返す。
アーサーは腰の剣を抜いてレオンに切先を向けた。
「レオン王子をもう一度襲う!」
アーサーは勢いよくレオンに向かって走って行った。レオンも腰の剣を抜いてアーサーの攻撃を止めようとする。
すると、
ブワァ!
先ほどとはまるで比べ物にならない勢いで紫色の光がレオンの体を包み込みそして、紫の炎を纏った巨大な骸骨の上半身が出現した。レオンは右腕で攻撃を防御する姿勢を取ると、巨大な骸骨も大きな右腕でアーサーの剣を防御した。そして、レオンはこの骸骨を発動する際に目の下に紫色の痣ができる。
アーサーはレオンが出した骸骨を見上げるような状態になり、骸骨が作った影でアーサーは覆われた。
「うわぁ、すげぇ。…なんだこれ」
アーサーは言葉をこぼすようにぽつりとそう言った。
アーサーは面白がって再びレオンを何度か襲ってみるが、全ての攻撃が大きな骸骨によって防御されていき、レオンには傷一つつかなかった。
「うーむ、襲われた時に発動する呪いか。察するにこの呪いというやつはどちらかというとレオン王子を守っているという見方をするのが正しいのじゃろうな」
「現状はタブ爺殿の見方で間違いないだろうな」
「でもなんで、カスパリーニョとの稽古の時はこの骸骨は出現しなかったんだろう? 僕はカスパリーニョに攻撃を受けているはずだよ」
レオンは骸骨を出しながら二人に向かってそう聞いた。
「きっと、木刀での稽古では命の危機に遭わなかったからじゃろう。この呪いはレオン王子の心の不安に付け込んだ呪い。ワシの推測通りレオン王子の心と通じているせいかもしれんな」
「俺が剣で攻撃を仕掛けたから命の危機を感じて発動したってわけか」
アーサーは何か腑に落ちた様子で自分の手のひらに拳を落とした。
「タブ爺殿はこの呪いの力を今回の魔女討伐の遠征の戦力にしたいって言ったんだろ?」
「ああ、そうじゃ」
アーサーはニヤリと笑みを浮かべる。
「発動条件がわかったら次はコントロールすることだな」
アーサーは「ちょ、そのまま、そのままね、王子」と骸骨に向かって両手を突き出してしばらくどこかに行き、そして戻ってきた。
「よしよし、まだ骸骨消えてないね」
ニコニコとした笑顔でアーサーが戻ってくると、手には一つのリンゴを持っていた。そして、台座を用意してその上にリンゴを置いた。
「これを綺麗に二つに割って欲しい」
レオンは頷いた。
台座の上に置かれたリンゴ目がけてレオンの背後にいる大きな骸骨は右手を伸ばした。レオンも同じように何かを掴むような動作をする。ここまでは完璧だった。
次の瞬間、
バキッ!
リンゴを真っ二つに割るどころかリンゴとリンゴを置いた台座が粉々に砕け散ってしまった。
「軽く! もっとかる〜くでよかったのに!」
アーサーは頭を掻きむしって続けて言った。
「威力は抜群だがコントロールがイマイチだな。よし! 次は…」
アーサーがレオンの方を見た時、レオンは慣れない操作に大粒の汗をかいていた。そして、レオンは膝から地面に崩れ落ちるように座り込んだ。すると、背中にいた大きな骸骨も煙のように姿を消してしまった。
この骸骨が姿を消すとレオンの目の下の痣も姿を消す。
アーサーは再び腕を組んで考えた。
「長時間の使用も難しいのか」
「…なんだかすいません」
申し訳なさそうにレオンが謝るとアーサーは急いで手を顔の前で振って「いえ、いいんです」と発言を撤回した。
すると、今度はタブ爺が口を開いた。
「まだ、発動して二回目じゃ、今後徐々に使いこなせるようになるじゃろう。魔法も同じじゃ、最初はいまくいかん。呪いも魔法の一種じゃしそう簡単にはかんのじゃろう」
「まあ、タブ爺殿のいうことは確かだな。俺も焦り過ぎた。結局今回はレオン王子を守る戦いでもある、何かあったら俺が助けるからレオン王子はゆっくりその骸骨のコントロールできるようになっていってください」
それからアーサーは「といあえず大丈夫っしょ」と呟いた。
「結果はレオニス国王にお伝えしてきますね」
そして、アーサーは中庭から王宮の中へと走っていった。
アーサーの背中がどんどん小さくなりタブ爺とレオンは中庭に取り残された。
「ワシらも戻りましょう」
レオンは小さく頷いた。




