↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/39

逆転

 術式が書かれた円形上の部屋へ通じる通路の影から一人の人物が歩いていた。レオンの視線の先には鉄砲を持ったルワンナの姿があった。


「レオン王子! 助けに来たわ!」


 リマーナは人差し指と親指を立てて鉄砲のような形を作った。すると、指先がぶくぶくと音を立てて振動し始めて、空気砲のように衝撃波が指先からルワンナに向けて放たれた。


 ルワンナは首を横に少し曲げる。

 リマーナが放った空気砲はルワンナの頬を掠めてルワンナの頬からは血が滴り落ちる。


 それでもルワンナはレオンの元へ進める足を止めない。


 もう一度、リマーナは指から空気砲を放つ。その攻撃をルワンナは肩に受けた。衝撃で肩が後ろに持っていかれたが、それでも進める足を止めない。


「あなたの攻撃なんか怖くないわ」


 ルワンナはリマーナのすぐそばまで歩を進めていた。その向こうには壁にはめられたレオンの姿がある。


「なぜここがわかった?」

「蜘蛛の魔獣に乗せられてる間に翼竜がレオン王子をこの建物に運んでいるところを見たの。銃と剣は後で助けに来てくれた魔女討伐隊の兵士から貰ってきたわ」


「くっ、生かしておくべきではなかったか。兵士どもも皆殺しにしておくべきだったな」

「そうやって簡単に命を奪うことしか考えられないのね。魔女ってもっと頭のいい人かと思ってたけど随分短絡的な発想をするのね」


「貴様、誰に向かって口を聞いている」

 ルワンナはタブ爺の死体に視線をやった。次に囚われているレオンに視線をやった。


「ルワンナ、タブ爺は…タブ爺は…裏切った」

 レオンは声を詰まらせながらそう言った。

「おおかた状況は理解できたわ」


「なら尚更、私に勝てると思ってここに来たのか?」

「当たり前よ! 大体命を粗末にする人はその報いを受けて然るべきだわ」

「フフフ、小娘に何ができる?」


 ルワンナは持っている拳銃で一発リマーナに向けて弾丸を放った。銃声は小さい円形の部屋の中ではとても響いて聞こえた。

 弾丸はリマーナの胸に当たった。しかし、弾丸が当たった箇所がボコボコと何か蠢いてから吐き出すように弾丸が体内から放出された。


「やっぱり、不死の力を手に入れているのね」

「まだ不完全だがね。これから完成するところだよ。貴様が邪魔さえしなければな!」


 リマーナが腕をカッターのように鋭利な形状に変化させた。両手は鎌のような状態になっている。


 リマーナはルワンナに両手を振り下ろした。ルワンナはぎこちないがなんとかかわしたり、少し攻撃をかすめたりしていた。


「あんたには絶対負けないんだから! レオン王子は私が守るもの!」

「いいや! レオンは私のものだ!」


 ルワンナは鞘から剣を抜いた。そして、魔女に対して構える。

「レオン王子待ってて。絶対死なせはしないんだから。レオン王子はさっき命を張って私たちのために戦ってくれた! だから、今度は私が助ける番よ!」


 ルワンナはリマーナに剣で攻撃すると見せかけて銃を取り出してレオンめがけて撃った。


 リマーナは虚を衝つかれたが、急いで銃弾を自ら背中で受けにいく。ルワンナはその隙をついた。リマーナの足を剣で切り裂いた。

 そして、リマーナは足を切断されて転倒した。切り落とされた足は元あった場所に戻るかのようにリマーナの元へ移動を始めている。


「剣でも銃でもあなたには敵わないけど、あなたの狙いはレオン王子。死なれたら困るんでしょ? だから、必ず自ら弾丸を受けにいくと確信してたわ」


 ルワンナはリマーナが足を修復しているほんの数秒間の間にレオンの元へ行き、そして、強引に引っ張る。すると、レオンの背中や腕や足に吸着していた物体はバリバリバリと音を立てて剥がれ落ちて術式の刻まれた地面からレオンを救出することができた。


「ええい、小娘! よくもやりやがったな。一撃を入れたくらいで勝った気になるなよ」


 ルワンナはレオンに剣を渡した。レオンはふらつく足をなんとかバランスを整えて立った。しかし、

「ゴフッ!」

 吐血した。


「大丈夫? レオン王子」

 ルワンナはレオンの肩を支えた。レオンは頷いた。


「レオン王子、あの骸骨の力は使えないの?」

 レオンは体に力を入れる動作をしてみるが、骸骨らしきものは出てこなかった。

「ダメだ、もう出ないみたい」


「大量に血を抜いたからね。私の呪いは血の量が一定以上ないと発動しないよ」

 リマーナは起き上がりながらそう言った。


「なら…」

 レオンは剣を構える。

「リマーナ、ここで勝負だ」


 すると、レオンが体を拘束されていた術式から煙が上がり始めた。

「血が蒸発してる! ああ、術式が壊れ始めている」

 リマーナはルワンナを睨みつけた。


「ああ、ここで戦っては術式が壊れてしまう! 貴様が余計なことをするからだ!」

 リマーナはルワンナに飛びついた。首を掴んで通路を抜けて外へ出る。レオンもリマーナの後ろを追いかけて通路を走り外へ出た。


 強い風がレオンの頬を撫でた。

 レオンの視界にはまず青空が広がっていた。そして、眼下に広がるのは青々とした海だった。


 レオンたちが今いる場所は城の屋上だった。石造りの床が地面には広がっており先のとんがった屋根や今いる場所から少し飛び越えればもう少し背の低い石造りの建物に飛び乗れそうな場所にいた。


 リマーナはルワンナの首に腕を回して首を絞める。ルワンナは腕を解こうとしてもがくがリマーナの腕力の方が勝る。


 レオンは剣を構えてリマーナに近づく。

「それ以上近づいてみな、こいつの首を絞めて殺してやる」

「ルワンナを解放しろ」

「解放する代わりに私の術式に戻れ。貴様の血が必要だレオン」

「ダメよレオン王子! そんなことしたらここまできた意味がなくなってしまう!」

 リマーナはルワンナのみぞおちにパンチした。

「ゴホッゴホッ」


「黙っていろ小娘。私とレオンが話している」

 リマーナたちとレオンの間で一度静寂が訪れて、そしてその静寂をレオン破った。

「ルワンナも助ける。それでお前も倒す!」

「何を小癪な!」

 レオンは剣を両手で持ち低い位置に構え、リマーナへ走り始めた。そして、レオンは振りかぶった。剣を振り下ろす。リマーナは鎌のような腕で剣を止める。


「レオン、貴様の剣術では私に勝てることはできない。呪いの力で貴様の剣術、魔力に知力、体力も秀でる能力はなかったはずだ」


 勝負の展開はリマーナの言う通りだった。剣で立ち向かっても腕力で押し切ることができない。レオンは魔法が使えないから遠距離から攻撃することもできない。唯一期待できる呪いの力も今は使えない。


 リマーナが人差し指を親指を立ててピストルのような形を作る。そして、指先がボコボコと揺れると空気砲のように衝撃波がレオンに向けて放たれる。レオンはそれを剣で防いだ。


 戦いは防戦一方でレオンは体力も消耗している。術式に体を張り付けられて背中や腕や足に吸着していた部分からの出血、それに加えて何度も吐血を繰り返していた。


「さあレオン、降参しなさい」


 またリマーナは手をピストルのような形にした。そして、レオンに向けて一撃を放った。レオンは避けきれず肩に攻撃をくらう。

 次は肩から流血した。

 出血多量でレオンは倒れた。顔は真っ白で唇は真っ青になっていた。


「ヒヒヒ、無様な」


 リマーナはルワンナを腕に抱えたままレオンに近づいていった。ルワンナは必死にもがくがリマーナの細い腕では考えられないほどの腕力でルワンナを押さえつける。そして、リマーナはレオンの服を掴み引っ張り引きずりながら術式が書かれた部屋に向けてゆっくりと歩を進め始めた。レオンが引っ張られた後には血の跡が残されているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。