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救世主

 リマーナは動かなくなったタブ爺の首から視線を上げてレオンを見た。

「邪魔をしてごめんね。レオン。でも、わかってほしい。君の血は私に永遠の命をもたらしてくれる」


「な、なんで僕の血なの? あなたはこうやって人を殺すことをなんとも思わないの?」


「二つ質問したね。まず一つ目を答えよう。なぜレオンの血なのか? 私は永遠の命を手に入れるためにありとあらゆる文献を読んできた。そこで知った。フォンツ王国の王族の血は特別であることを。私はあなたが生まれてすぐ後にフォンツ王国の王妃を拉致し、今、レオンがいる術式にかけた。そしたら、永遠の命は得られないが部分的に傷を修復することができる力を手に入れることはできた。私はさらに研究を続けた。その結果、術式に改良を重ね、そして、感情をくらう呪いをかける必要があることがわかった。それがあなたにかけた呪いだよ。だから、呪いをかけられたレオンの血が必要なんだ」


 リマーナは指を二本立てる。


「そして、二つ目の質問に答えよう。人を殺すことをなんとも思わないか? だね。思わないね。私はフォンツ王国の王族の血が不死の力を持っていることを知るまでに多くの実験体、人間を使用してきた。当然どれも失敗に終わってしまったよ。失敗作の中には人の形を止めないものもいたね。でも、しょうがない。大いなる力を手にいれるには多少の犠牲はやむを得ない」


「酷い、酷すぎる。母上を殺した上に多くの命を奪った。命はたった一つだ! 実験だからって失われていいものなんかじゃない!」


 リマーナはゆっくりとレオンの元へ近づいてゆく。

「あなたの血が私に永遠の命をもたらしくれる。さあ、見せておくれ。私があなたにかけた呪いはどれだけ大きくなったのか?」


 リマーナはゆっくりとレオンに近づき、左胸に手を添える。何かを掴むような動作になりゆっくりと握る。すると、レオンは呼吸を荒げ、後方から紫色の炎が勢いよく立ち上がる。


「リマーナ…不死の力は…人類が手にしてはいけない禁断の果実だ。人は…いつか終わると知っているから。誰かを守りたいと願う…愛する人と笑いたいと思う。有限だからこそ…大切にしたいって思うんだ」

 レオンは苦しそうに呼吸しながらなんとか言葉を紡いでいく。


 そして、背中の炎がレオンの顔全体を覆い尽くし、骸骨の形を形造り始めた。

「ああそうだね。でも、命にとって大切なことは失わないことだ。永遠に生き続けることが命の究極系なんだよ」


 リマーナは両手を上げてレオンの後方にゆらりと浮かび上がる骸骨に感嘆した。

「素晴らしい。レオンの体は正直だ。レオンは何度でも死のうとした。この呪いはレオンから感情をくらい尽くすことで増幅していく。タブ爺に魔女討伐隊なんて作らせたおかげでレオンは多くのことを学んだ。そして、」

 リマーナはレオンの肩に両手を置いて少し背伸びをした。そして、レオンの唇に自分の唇を重ねた。

「ガハァ、ゴフファ、アガァ」


 レオンは苦しそうに悶え苦しんでいると背中や腕、足に吸着していた物体がレオンの血を吸い始めた。レオンの腕や首の血管が浮き出てくる。大粒の汗が顔に滲み出てくる。そして、地面に書かれている術式に血が流れる。


 リマーナはレオンに重ねた唇を離して、一歩下がる。

「フフフ、イドニラが良く効いているね。おかげで血を効率的に採取できるよ」


 レオンはハッとした。イドニラを最初に手に入れた時を思い出した。

「イ、イドニラ!? ま、まさか、フォンツ王国にからいた…あのお爺さんも…タブ爺が仕組んでいたの?」


 レオンは苦しさを押し殺しながらなんとかぽつりぽつりと言葉を口にする。

 リマーナはタブ爺の死体を一瞥してからレオンに視線を上げた。

「この爺さんは生に対する執着が人一倍強くてね。不死身の力を得るためにはなんでもすると言っていたよ。そうだよレオン、その通り君はフォンツ王国にいた頃から全ての行動はこの時にためにあった」


 リマーナは続けて言った。

「イドニラの効果はもう一つある。心の闇を増幅させる効果があるのさ。どうだったかい? 快楽を得た感想は。その反動で心の闇は増幅していっただろう? その度に私のかけた呪いは負の感情をくらってどんどん大きく育っていった」


 リマーナは血を吸い取られ続けるレオンに近づき頬に手を添えた。レオンの顔は白くなり唇は青くなっていた。

「さあ、もう少しで不死身の力を私にわけて…」

 リマーナがそう言いかけた時だった。


 パンッ!


 発砲音が聞こえた。

 そして、弾丸がリマーナの腕を掠めた。弾丸はそのまま岩の壁にめり込む。

 弾丸を掠めたリマーナの腕は液体ののようにドロっと溶けたが修復して元の腕に戻った。


 リマーナは暗闇の中。円形上の現在の場所へ通じる通路の奥の方を睨みつけた。


 パンパン。


 さらに発砲音が鳴り響いてリマーナの元へ弾丸は飛んできて全てリマーナに当たるが、当たった場所は液体のようになり、やがて修復する。そして、弾丸は体内から押し出されて落ちた。

「ルワンナ!」

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