ジョー
MCダルマは横たわりガルディに腹を蹴られながら腕を高く上げた。そして、人差し指を一本立てた。
「One 一点突破」
そして、人差し指と中指を立てる。
「Two 限界突破」
そして、人差し指と中指、薬指を立てる。
「Three 俺の魂が発破」
一撃、二撃、三撃と鋭利な形をした音のシャボン玉はガルディを襲った。
ガルディはよろける。攻撃はガルディの硬い装甲を破壊し、肌が見えていた。
「終劇といこう」
「ハハハ、どうしたんだ急にまだ俺の方が断然有利だぞ」
ガルディの修復能力はまだ修復しきれていない。
「いいや、今スタートラインに立ったってところかな。な? アーサー」
夜の暗闇の戦いから朝が近づいてきた。闇夜は終わりを迎え、光が世界包み始めた。
アーサーはMCダルマの元へ歩を進める。
「ああ、そろそろ終わりにしよう」
「ってか、随分やられてんじゃねか。片腕どこいったんだよ」
「へっ、お前もなダルマ」
「リマーナ様の血の効果が切れてきた。だから、勝ち目があると思ってるのかぁ」
ジョーはそう言った。
「ああ、そうだよ」
「お前さんよう、見立てが甘いんじゃないのかぁ?」
ジョーは剣を天高く上げた。剣は天からエネルギーを吸収するように炎が剣にまとわりつくような状態になる。
「片腕一本無くなってもここまで戦ったことは褒めてやるぅ。うちの今時の若ぇもんに比べたらうちに欲しいくらいの人材だぁ」
ジョーは「が、しかし俺が敵だったことが運の尽きだぜぇ」と呟いて剣を振り下げる。剣にまとわりついていた炎は鳥の形を作った。
「奥義・不死鳥」
全長十メートル近い炎の鳥がアーサーめがけて飛んでゆく。炎の鳥が飛んでいった跡は地面が割れているほど通過するだけでも破壊力の高さを感じさせた。しかし、アーサーは冷静だった。
剣を鞘に納め呼吸をゆっくりとそして深く集中する。前傾姿勢になり、目を瞑る。一点に、研ぎ澄まされた一点にのみ集中して、
「雷電一線!」
アーサーの剣には光が弾ける。
瞬く間に、不死鳥の正面まで来て雷を纏ったアーサーと不死鳥がぶつかる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
片腕だけで、残された腕だけで。アーサーは全長十メートル近い不死鳥を切り進んでいく。
不死鳥は上下真っ二つに裂け、その勢いのままジョーの元へアーサーは飛んでいった。
「くたばれぇえええええ!」
アーサーは剣をジョーの心臓に刺した。ジョーはその勢いに押されて地面に体を打ちつける。アーサーの剣はジョーの心臓を貫通し、地面に突き刺さった。
ジョーの傷口は塞がらない。アーサーの剣はまだ勢いよく雷を纏って弾けるような音を立てている。
ジョーはヒュー、ヒューと弱い息をしている。
「見立てが甘いのはお前の方だ。不死身の力に頼るあまりお前は武に対して鍛錬を怠った。だから避けれなかった」
ジョーはアーサーの方へ視線を移した。
「なぁ、アーサー」
アーサーは地面に倒れるジョーを見下す。
「初めて名前で呼んだなジョー」
「お前さんに興味を持ってるってことだぁ」
ジョーはヒュー、ヒュー、ヒューと三回呼吸してから続けた。
「俺は不器用だからよくわからねぇがぁ…」
ジョーはヒュー、ヒューと二回呼吸してから続けた。
「本物の武人になれたかなぁ?」
「いや、永遠の命に頼ろうとした時点で本物にはなれねえよ。男なら死に様で武を語れ」
ジョーはヒューと一回呼吸してから続けた。
「リマーナ様ぁ…」
俺はとある国で部隊の隊長をしていた頃だぁ。
「ジョー、部下に対して厳しすぎないか?」
部下に稽古をつけている時、副隊長がそう言ったぁ。
「どこがだぁ。これくらいことができなければ戦場では簡単に命を落とすぅ」
「でも、人それぞれに適切なレベルってもんがあるだろ?」
「いいや関係ないねぇ。その適切なレベルってやつを超えた向こう側に本物の武があるってもんよぉ」
俺の意志は正しい。教育方針に間違いはない。各々が本物の武を手に入れたい、そう願っていると思っていたぁ。
ある戦場でだぁ、俺が育ててきた部下たちが簡単にやられ命を落としていったぁ。その中には俺の指導に傾倒し、教えを乞うものもいたぁ。しかし、死んでしまったぁ。
死んだら何もかも終わりだぁ。自ら築き上げてきた武は形を残さない。
俺はその日から死を拒絶し始めたぁ。そんな時だったぁ。
戦場にいた時の夜だった。いきなり一人の魔女が俺の元を訪ねてきたぁ。リマーナ様だったぁ。
リマーナ様を一言で言えば「美しい」だぁ。白く透き通った肌に細くてしなやかな指。こんなやつは初めて見たぁ。生きる芸術とはこの人のためにあると思ったぁ。
戦場にいるのにも関わらず悠然としているぅ。リマーナ様は俺の手を取って言ったぁ。
「あなたは誰よりも鍛錬を積んでいるようね。この傷が何よりの証拠だわ」
「やめときなぁあんたぁ。戦士の手に勝手に触れるもんじゃないぜぇ。剣を振るってあんたの細い腕を切り落としちまうかもしれない」
「あなたは怯えているわ」
「な、何を言ってるんだい、いきなり」
その魔女は俺の耳元でボソッと呟いたぁ。
「死を克服できるとしたらあなたは何がしたい?」
弾むような声だったぁ。
「そんなもんできるわけねぇだろぉ!」
俺は怒ったぁ。むやみやたらにでたらめなことを言うもんじゃねぇ。
しかし、その魔女は俺の腰から剣を勝手に抜いたぁ。そして、黒いローブから白く細長い腕を出して、俺の剣を使って自らの手で腕に傷をつけたぁ。
次の瞬間、俺は目を疑ったぁ。
傷をつけられた箇所はどういう原理か知らないがみるみるうちに治っていきやがるぅ。
本物だったぁ。嘘をついちゃいねぇ。
「あなたが死を克服したら叶えたいことは何?」
疑り深い俺だがぁ。信じても良いと思ったぁ。
「俺は生涯、武の探究者でありたい。圧倒的かつ本物の武を手に入れたい」
「素晴らしいことね。私と一緒にきたらその夢を叶えてあげられるわ」
それ以来、俺は生まれた国を抜けてヴェルヘイム王国でリマーナ様の元で戦士になると誓った。そして、気づけば隊長まで上り詰めていたぁ。
見ていてくれましたかぁ? リマーナ様ぁ。俺の死に様ぁ。
あっけなかったでしょう。でも…でも、リマーナ様ぁ。俺はぁ、本物の武を目にすることができてよかったですぅ。
「リマーナ様の夢を叶える瞬間に立ち会えなかったぁ。…すみません」
ジョーは弱くなった息を振り絞って最後にアーサーに言った。
「アーサー、ありがとう。お前が本物の武だぁ。最後の相手がお前さんでよかったぁ」
アーサーは剣をジョーから抜いた。ジョーは眠るようにして息を引き取った。
「今まで戦った中で一番強かったよ。お前の武は圧倒的だった」
アーサーもその場で体力が尽きて、膝から倒れた。




