雷電一線!
「師匠、こっそりと魔法? の特訓してたんだぜ」
アーサーは頭を鷲掴みするジョーの腕を持って、引き剥がした。ジョーはふらついた。その間にアーサーは前方に落ちる剣を拾い、再び鞘に収める。
アーサーは鞘に収めた剣を持ったまま前傾姿勢になり、ゆっくりと呼吸が深くなる。
「はぁ」
すると、アーサーの剣の周りを稲妻のように光が弾ける。
「──雷電一線!」
バチッ!
雷鳴にも似た轟音が炸裂した。
地面に一本の閃光が刻まれる。
その光はジョーの体を貫くように走り抜けた。
ジョーは何が起きたのか理解するよりも先に、アーサーはすでに十メートル先で剣を納めていた。
ジョーの上半身が下半身から滑り落ちていく。
「わかっているはずだぁ。何度切ってもリマーナ様の血で回復するぅ」
「ああ、バカじゃねんだ。わかってるよそんなことは。ただ、お前は初めに言った、この血はまだ不完全だと」
「!?」
ジョーの体はまだ修復し切らない。
「リマーナの血の効力はそろそろ落ちてきたはずだぜ」
やがて、ジョーの上半身は地面にドシャッと音を立てて落ちた。上半身が滑り落ちながらもジョーは笑っていた。
「ハハハ、いい加減バレちまったかぁ」
また、上半身の切り口と下半身の切り口はお互いを引き寄せ合うようにして結合しようとしている。結合する速さは明らかに初めの時に比べれば遅くなっていた。
「ジョー」
「なんだぁ?」
アーサーは片方だけになった腕で剣を力強く握った。そして、ジョーを睨みつける。
「戦いはこれからだ」
「ハハハ、みんなメンタルが弱すぎるんだ全てをポジティブに変換して考えるのお勧めするぞ。違うか?」
「この筋肉バカが、攻撃してもまるで効いてねえ」
「なあダルマ。ちょっと気になることがある」
「ああ?」
「あのDJを攻撃したらお前の攻撃はどうなるんだ? それってお前の弱点じゃないのか? 違うか?」
「ふふ、なら攻撃してみな」
DJカゲは物陰でぎょッとした表情をきっと仮面のしたでしているだろう。仮面から汗が滴り落ちている。
ガルディはMCダルマを通過して後方の廃ビルの柱に隠れているDJカゲめがけて走り出した。この巨体では考えられないほど素早い動きだった。そして、瞬時にDJカゲの元まで到達した。
「見〜つ〜け〜…」
ガルディはにんまりとした笑みから「おや?」と何か疑うような表情に変わった。
ガルディの視線の先には誰もいなかったからである。
ガルディはDJカゲを探してあちこち見回してみると、遥か遠くの物陰に隠れてこちらをじっと見ていた。なお、演奏の手は止めていない。
もう一度ガルディはDJカゲのことを追っていくが、どこまで追っても捕まえられない。同じことを繰り返す。
トントンタン、トントンタン、トントンタン。
「Hey! ガルディ!
鬼ごっこは楽しい?
捕まえられないね! 超惜しい?
わけないね! DJカゲは超素早い!
捕まえられない鬼ごっこは楽しいかい? かい? かい?」
すかさずラップをかますMCダルマ。音のシャボン玉は無数の大きな棘となりガルディに降り注ぐ。
「ぐああああぁぁッハハハハハァハーア」
ガルディは攻撃をくらいながら笑っている。
「DJを狙うのはやめにしよう。奴の素早さには俺は勝てない。うん! 認めよう」
高質化した部分はところどころ剥がれ落ちて皮膚が見えている。しかし、
「リマーナ様の血は偉大だろ? 違うか?」
高質化が剥がれた箇所が徐々に修復していく。そして、攻撃を受ける前の状態に戻っていった。
「お前もジョーと同じってことだろ。違うか? ベイベー」
「ハハハ! いいね、その通りだ。理解が早いのはいいことだ」
トントンタン、トントンタン、トントンタン。
「超ずりぃ超ずりぃ超ずりぃ!
不死身の能力それってありぃ?
でもまぁ、俺のラップでお前の心臓を射抜く攻撃で一本釣りぃ!」
MCダルマは地面に手をついた、すると体をまるでバリアのように包み込む大きなシャボン玉が形成される。
「準備完了! バトルフィールド!」
「ハハハ、なんだそれは」
ガルディは四足歩行でMCダルマが作ったバリアの元へ歩を進める。そして、巨大な拳で何度も殴りつけてみるがバリアは壊れることがなかった。
「安心して創作できる環境が必要なもんでな、バリアを作らせてもらった」
ガルディはMCダルマを包み込むバリアを思いっきり抱きついた、それで抱きしめる力を徐々に増して破壊しようと試みた。
トントンタン、トントンタン、トントンタン。
「Hey! 来いよ! 俺のとこまであと数センチ
お前の筋肉で壊せるわけねぇだろこのトンチキ
一生へばりついてなこの壁に!」
MCダルマを包むバリアはガルディが抱きついている部分でボコボコと波打ち始めて鋭い棘を形作ってガルディの胸部を貫通した。
ガルディは吐血してバリアに血が付着する。そして、棘の勢いでガルディの体はバリアから引き剥がされて、背中から地面に落下した。胸には大きな穴が空いている。
「くぅ〜、痛い! 痛いぞー。でも、この痛みの分俺はもっと成長できる。違うか?」
「違うね。お前にはこのバリアを壊すことはできない。俺の創作を邪魔させない」
当然、ガルディはリマーナの血の効力で胸に空いた大穴は塞がりつつある。
「リマーナの血!
それって卑怯じゃね? マジ正直!
俺の攻撃でお前に刻まれるはずだった死亡歴!
借り物の命で何が楽しいのその無敵
ってか? 戦士として楽しいの? 正直!」
立て続けにMCダルマのラップ攻撃で何百発の球状の音のシャボン玉がガルディに飛んで行っては絶え間なく爆発を繰り返す。
MCダルマの攻撃はガルディの硬い装甲をも破壊する攻撃で体に穴を開けるほどダメージを与えていた。しかし、それでもダメージを与えた箇所は修復していく。
「って、全然効いてねぇし。ワット!?」
ガルディは回復した箇所の埃を払ってから言った。
「ところで楽しいかどうかって? もちろん楽しいに決まってるじゃないか」
ガルディはその場で腕立て伏せを始めた。
「リマーナ様の永遠の命が完成すればこうやって永遠に筋肉を鍛えることができるんだ。俺の筋肉はまだまだ足りなくてな、特に腕の筋肉なんて痩せ細っていてもうがりがりだよ」
「筋肉バカ、イカれすぎ、鏡見ろ。スリーアウトチェンジ!」
ガルディは腕立て伏せをやめ、立ち上がった。
「何度だって俺は回復する。そろそろ無駄な足掻きをしているということに気づいたらどうなんだ?」
「っへ! 知る…か…ゴフッ」
MCダルマは口に静かに手を当てた。手のひらを離すと赤い血がべっとりと付着していた。
「クソッ! 魔力を使いすぎたか」
「フフフ! わかったぞ! ラップ攻撃の正体は言霊だ、つまり喉をやられたら攻撃できない。そして、お前は今、攻撃を放ち過ぎて喉を酷使してしまった。違うか?」
ガルディは人差し指を立ててニヤつきながらラップ攻撃の正体を解明した。
「ああ、その通りだよ。バカやろー」
「では、そっちの攻撃は終わり! 今度はこっちの番ということだな! 違うか?」
ガルディはゆっくりとMCダルマに向かう。MCダルマは何か言葉を発そうとするがそれが言葉として、喉から先に出てこない。




