↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/39

託す

 少し経って、レオンたちはガルディやジョーが襲ってこないことを確かめてから馬の速度を少し緩めた。総勢十名となった魔女討伐隊はレオンとタブ爺を先頭にルベリア王国の国外に出る城門に向けて走っている時だった。


「タブ爺! タブ爺!」

 震えるような声でレオンは言った。

「どうなさったレオン王子」


「どうしよう、どうしよう。僕のせいで多くの兵士が死んじゃった」


「レオン王子、この戦に勝つには必要な犠牲だったのです。あとはアーサー殿とダルマ殿に任せていますから我々はなすべきことをしましょう」


 手綱を持つ手が震えるレオン。

「怖いんだ、これから起こること、すでに起こったこと全て。僕が大橋から落ちた時、自分が死んでればどんなに楽だったかって、今考えてしまっている」


 レオンは手綱を持つ手を片方外して自分の顔に当てる。そして、指の隙間から進行方向を見ながらポツリと言ってしまった。


「なんであの時、殺してくれなかったの? タブ爺」


 タブ爺はそれを聞いて呆然とした。何か言葉をこぼしたがそれを飲み込んでから言った。

「そんなことを言ってはいけませんレオン王子、生きねばなりません。いや、生きなきゃダメなんです」


「なんでよ? タブ爺、僕なんか早く死んでしまった方が魔女の呪いなんて無くなっていたかもしれないのに」


 レオンの目は輝きを失っていて薄く澱んでいた。

「レオン王子!」

 声がしたのはレオンのすぐ後方の列で走っていたルワンナだった。

「話は聞こえたわ。レオン王子は一度自死しようとしていたのね」

「言ってなかったねルワンナ。ごめん、僕はそういう人間なんだ。王子なんて器じゃ無い。魔女を倒すなんて到底できないんだ。どうせ僕なんか…」

「死にたいなんて思っちゃダメ! あなたに与えられた命はたった一つよ。レオン王子…」

 ルワンナはレオン、タブ爺と並走するように前列へ出た。

「私たちがあなたを守るもの!」




「お前さんよう、少しスピードが落ちたんじゃあねぇかぁ」

「ハァ…ハァ…ったく。どこまでも粘ってくるなこのおっさん、しつこいぜ」


 アーサーはジョーが連続して放った炎のカッター攻撃を一撃交わし、もう一撃は剣でうまくいなした。攻撃の衝撃は一撃一撃が重く大岩を投げつけられてるような威力があった。


 アーサーとMCダルマはお互い背中を合わせて敵と対峙する格好になる。

「また、お前に背中を預けることになるとはなアーサー」

「全くだ、ただ今回はただの盗賊じゃねえ。敵の格が違う」

「なあ、アーサー」

「なんだよ」

「俺はレオンと約束したぜ」

「何をだ?」

「自分の手で魔女を倒せってな。なあ俺たちなしで勝てると思うか? あいつら」

 アーサーはにっと笑みを浮かべる。視線をやや上方へ移して言った。


「やるさ、あいつらなら。託そう未来を」


「おいおい貴様、戦中にどこを見ているぅ」


 アーサーは左に素早く移動してMCダルマに攻撃の当たらないような間合いをとった。そして、ジョーは剣を両手で持ち大旗でも振るうように腰を捻らせてぶんぶんと回した。炎の渦ができ、アーサーへと攻撃が向けられた。


 アーサーは自慢の高速移動でそれをかわしていく。大きな動作をとっていたジョーに隙が生まれアーサーはそこに一撃攻撃を左胸に与えた。


「一撃入れてもダメなら。もう一撃」

 アーサーはさらにもう一撃ジョーの右胸に与えた。

「これで終いだ!」

 三撃目はジョーの首に向けられた。ジョーの首はスッパリと地面に水平に切られ切り口からは血が吹き出している。


 切り落とされた首は重力に逆らうことなく地面に落下して、ドサっと音を立てて落ちた。遅れて胴体も地面に落ちる。


「こりゃあ、素晴らしい連続攻撃だなぁ」

 生首がしゃべった。ゆっくりと確かに生首はしゃべった。


「うう、キモ!」


 アーサーは思わずドン引きしてしまった。


「魔女の力もここまでくるとマジでキモイぞ。なあジョー、そう思わないのか?」

 横たわった胴体が地面を這うように首を探し求めて前進し始めた。そして、ジョーの生首はまた言った。


「いいや、永遠の命を得ることは大賛成だねぇ」

 胴体は首に導かれるように一直線に首の元へ地面を這い、首は胴体の切り口に吸い込まれるようにくっついた。


 ジョーは準備運動は終わりとでもいうように首を左右に振って確かにくっついてる感触を確かめた。


「永遠の命を手に入れて何をするつもりだ?」

 ジョーはよくぞ言ってくれたとでもいうように鼻で笑った。

「もっと強くなりてぇ。それで本物の武を手にいれるぅ」

 そして、拳を握りしめて、視線を自らの拳に落とした。

「そのためなら俺は何度だって蘇るさぁ」


「なら、もう蘇らないように何度でも…」


 アーサーの姿が消える。電光石火の如く、

「ぐあぁ」

 何度も、

「あうぁ」

 何度も、

「ううゔぁあああ」

「何度でも切ってっやる」

 肉片になっても再生しながらジョーは笑って言う。


「やっぱ速えぁなぁ! 全く追いつけねぇやぁ」

「これだけやればもう再生できないだろ!」

 アーサーは「これでラスト一撃」ともう一撃電光石火の如く首と腕だけになったジョーのところまで瞬時に移動し、斬撃をくらわせた。その時だった、


「捕まえた!」


 ジョーの片腕はアーサーの剣を鷲掴みしていた。アーサーは指をそのまま切り落とそうと剣に力を込めるが、ジョーの握力は凄まじくさらに口まで使って剣を意地でも離さないと言わんばかりにびくともしなかった。


「この手は絶対離さねぇ!」

「離せえ!!」


 腕と首だけになってるジョーに他の下半身や左腕などの部位が吸い寄せられるように集まってくる。


 今度はアーサーはジョーの肉体が完成する前に距離と取ろうと逆に剣を抜こうとしたが、


「はあああぁ!」


 ジョーの手からは炎が生み出され剣を抜こうと引っ張ってもジョーの握力がさらに増しており引き抜くことはできなかった。


 やがて、ジョーの体が一つの塊となり元あった体を再び形造り始めた。ジョーは再生した体のもう片方の手でアーサーの剣を持っていない方の肩をつかみ、


「ふんぬ!!」


 ジョーはそのままの怪力でアーサーを地面に叩きつけた、そして大地が大きく陥没する。


「ぐはあ!」


 アーサーは背中から地面に叩きつけられて吐血した。背中から全身に痛みが走る。下から眺めるジョーの姿は対峙してる時よりさらに大きく見えて、アーサーの体がジョーの影で覆われる。


「最近の若い奴は魔法を使っただけで簡単に焦げて死んじまう。忍耐力ってもんがねぇんだよなぁ」


 ジョーは地面に倒れるアーサーの剣を持っている方の肩を踏みつけた。背中からは炎が火山のように吹き出している。


「俺ぁよお何回でも何百回でも、何千回でも本気で殴り合える奴が欲しかったぁ」

 そして、ジョーはニッと笑った。

「ようやく見つけたぜぇ! 若くて頑丈な奴をよぉ。しかし、残念だぁお前もこうなっちゃ終わりだろう」


 ジョーは剣を高く上げる、剣からは大量の炎が吹き出している。

「これで終わらなねぇでくれよぉ。兄ちゃん!」

 ジョーはアーサーの心臓めがけて剣を突き刺そうとした、

 ガチン!

 アーサーは片手一本で攻撃を防いだ。しかし、力に押されてジョーの剣が胸元まで来ている。


「いいねぇ、簡単に死なない。このくらい根性がなければ武とは言えねぇ」

 また、ジョーはニッと笑った。

「でもなぁ、兄ちゃん一つ見落としてるぜぇ、俺はただの剣士じゃねぇんだわ。魔法が使える剣士なんだ」


「!!!」


 ジョーの剣の先で炎が集中し始めたそして、大きな球状の塊を作り始めた。アーサーはジョーの足で押さえつけられている方の腕から足を剥がそうとする。しかし、


「くそがぁぁあぁ!」


「爆ぜなぁ!」


 轟音が地面を打ちつけた。しばらくして音が止んだその跡は隕石でも降ってきたのかと思わせるほど地面に大穴が空いていた。


「間一髪、致命傷は避けたかぁ」


 アーサーは立ち上がる。片腕の断面からは血がぽとぽとと大量に出血している。顔の半分にも及ぶ大きな火傷を負っている。


 アーサーはジョーの攻撃を間一髪で交わしていた、アーサーがふらつく足で立つ真横には地面に大穴があり、無傷の男ジョーと片腕を失い顔に火傷を負ったアーサーの二人が対峙する形となる。


「痛え! 左腕の感覚が全くねえ」

 アーサーは笑みを交えてそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。