KING AND KING
一瞬の間が開いてからアーサーはジョーとガルディに向かって言った。
「お前ら今どういう状況か分かってるのか? 完全に挟み撃ち状態だぞ?」
アーサーは後方の部下たちに声を張り上げた。
「総員に告ぐ! 中央部の魔女の部下二名を集中的に攻撃しろ!」
魔女討伐隊はその声を受けると前列と後列から中央部にいる二名に向かって総攻撃が行われた。剣士は剣を振い、魔法が使えるものは後方から火や水などの魔法を打ち続けた。
「ガルディ、後ろを頼むぅ」
「ああ、お前は前方をやる。違うか?」
「いや、違わないねぇ」
ジョーはすうっと目を瞑り腰に携えている剣に手をかけた。そして、腰を低く構えやや前傾姿勢になって、地面と水平に剣を抜いた。
すると、剣は炎で包まれ、まるで巨大なカッターのように炎の刃が飛んだ。空気を切り裂く高い音と共に、炎の斬撃は魔女討伐隊の集団を一瞬にして飲み込んだ。
前方、アーサーやMCダルマたちがいる方では魔女討伐隊の兵士たちがまた、大多数やられてしまった。
「ハハハ、手加減を知らないのか? ジョーは」
「剣を持ったら皆、武人だぁ。同じ舞台に立つものに手加減は不要」
「いいね! 俺もそうしよう」
ガルディが対峙するのは、後方にいた魔女討伐隊たちだった。皆、一斉に剣を構え、魔法が使えるものは魔法を放つ準備をしていた。
ガルディは魔女討伐隊のある兵士に向かって言った。
「俺がどんな魔法を使うかって知りたいって? いい質問だ!」
ガルディは一言一言喋るたびに身振り手振りを交えて話してくる。
ガルディは「こうやって体に力を入れるだろ?」とうずくまり始めて腕に力こぶができる。大きさは人の頭くらい大きな力こぶだった。
すると、ガルディの体全体が真っ黒に変色した。
そして、魔女討伐隊に向かってゆっくりと歩を進めた。それと同時に、魔女討伐隊もさらに身構えた。
「心の準備はゆっくりだ。そー、ゆっくりでいい」
ガルディは剣を振れば届く距離まで魔女討伐隊に接近していた。そして、一人の兵士がガルディに向かって剣を振りかざした。
すると、甲高い音が聞こえた。
兵士が振った剣は確実にガルディの頭を捉えていた。しかし、剣は欠けてしまった。
「俺の魔法、それは硬質化ってやつだ。種明かしはここまで! 準備はオーケー? ボーイ」
そう兵士に問いかけ、ガルディは兵士の頭を掴んで額に向けて頭突きした。兵士の被っていた鎧は砕け、その下にあった骨も陥没骨折して完全に凹んでいた。
ガルディの硬質化は剣士が剣を振るっても、魔法で焼いても何をしても壊れることがなかった。それとは逆に、ガルディは一人一人確実に仕留めていき一歩一歩確実に進んでいく。魔女討伐隊の後方にいたメンバーはほとんどやられてしまった。
「み、みんな死んじゃう…」
レオンは無慈悲に築かれていく死体の山に震える声を押し殺しながら言った。レオンの目の前で何度も行われる、死。それでもなお、兵士たちはガルディによって赤子のように持ち上げられて軽々と投げられていく。レオンは玉のように汗をかいていた。過呼吸気味になっており肩を上下させて息している。
「王子、大丈夫じゃ。きっと、大丈夫じゃ。どうにかなる」
タブ爺はレオンを守るようにしてガルディに背を向けて、レオンにそう言った。
ガルディに立ち向かっていくものは勇敢に死んでいき、残るは治癒魔法師たちだけになる。壁際に追いやれたかのように、じりじりと治癒魔法師たちとレオンはガルディと距離を取っていく。
ガルディは鼻歌を歌いながら、魔女討伐隊の死体の上を楽しそうにゆっくりと歩いてゆく。すると、一人だけ明らかに治癒魔法師たちに守られている人物をガルディは見つけた。
「見〜つ〜け〜た」
治癒魔法師たちはガルディが虫みたいに蹴散らした。タブ爺も投げられた。そして、一人だけ残る。
「お前がレオン! 違うか?」
ガルディがレオンに向かって拳を突き上げた時だった。ガルディの頭の上で破裂音が聞こえた。
ガルディはゆっくりと振り向く。
「Hey! You!
お前の相手は俺だぜ!」
MCダルマだった、後方にDJカゲもいる。
「ハハハ、やっぱり出てきたか! ダルマ男! お前は俺と対戦したい。違うか?」
「いいや! 違わねぇYo!」
「なあ、ジョーあれを使ってもいいのか?」
ガルディは少し離れたところにいるジョーに聞こえるようにそう言った。
「ああ、当然使おうぜぇ」
「ああ? あれ?」
MCダルマは訝しんでガルディの行動を観察していた。
二人はポケットからそれぞれ一本の注射器を取り出して首筋に注射した。注射してから二人とも少し苦しそうにして注射した箇所を押さえていた血管が浮き出て脈動しているのがわかったが、やがて元に戻った。
「うーん、これだな。違うか?」
「ああ、最高にキマるぅ」
「こいつら今何をした?」
「お前らも下がれ。ここは俺がやる」
アーサーは自分の前歩にいる残った兵士を下げ、ジョーへと近づいて行った。
アーサーは肩に剣を担いで、顎を使ってジョーを指した。
「おっさんよお。いきなりうちの兵士殺しまくったと思えばなんだ? レオン王子が欲しいとかほざきやがって」
アーサーはやや前傾姿勢になり剣を顔の前で構えるとアーサーが立っていたところには瞬く間に砂埃だけが残されていた。
「いいねぇ! 見立てた通りだぁ! いい剣筋をしているぅ」
ジョーとを剣を交えた。アーサーの方が早さで優った分、ジョーは顔付近ですれすれでガードする体勢になった。そして、ジョーの剣は魔女討伐隊を焼き払った時と同じように炎を纏っている。
「お前はこの軍隊の隊長なんだろぉ?」
「ああ」
「俺も隊長だぁ」
ジョーが持つ剣の炎はさらに激しさを増した。
「俺は炎の魔法を使う剣士だぁ。俺の炎は自由自在に操ることができるぅ」
ジョーは「そう」と前置きをして、炎はゆらりと何かの文字を形造り始めた。
「この戦い隊長同士の戦い。長と長の勝負。KING AND KING(王と王) としよう」
炎はKING AND KING(王と王)という文字を形作った。ジョーの今回の戦いのテーマそれはKING AND KING(王と王)に決定した。
「見せてくれやぁ! そこらへんの若けぇのとは違うってところをよぉ!」
ジョーは歴戦の傷跡がいくつも残る丸太のような太い腕に力を込めて剣を振り払った。アーサーは一度弾かれるが体勢を立て直し、即座に二撃目を打った。
ジョーはアーサーの速さに反応できなかった。アーサーは電光石火の如く肉を引き裂き、ジョーのさらに向こう側にたどり着いていた。ジョーは明らかにアーサーの速さに翻弄されていた。
アーサーはジョーの体に致命傷を負わせた。確実に左胸部を裂くような斬撃をジョーにくらわせた。
ジョーの巨体は膝をついて崩れるように倒れ、落ちた。
アーサーは剣を鞘にしまった。勝負は決した。その時だった、アーサーは後方から何かを感じゾクっと鳥肌がたった。




