死を見る
MCダルマはポケットからマイクを取り出して、そしてDJカゲは顔くらいある大きなヘッドホンを取り出してかぶり、二つに折りたためる機材を取り出して何かをスクラッチするような動作を始めた。
トントンタン、トントンタン、トントンタン。
メロディア王国でラップバトルをした時と同じ規則的にドラムを叩くようなメロディが流れ始めた。
「ハハハ威勢のいいこった。おい、出てこい」
そういうと中年太りした男が座っている後ろの瓦礫の山から二名モヒカン頭の男とスキンヘッドの男で屈強な巨躯を持つ男が二人出てきた。
この二人は身長の高いアーサーと体格の良いMCダルマよりも背が高くさらに体が大きい。
二人の武器は棍棒に棘がついたような武器を持っていた。岩のようなもので作られておりとても重量感を感じさせる。
スキンヘッド頭の片方の男が「うおおおおおおお」と叫び声を上げながら巨体を揺らしてMCダルマめがけて突進してくる。
トントンタン、トントンタン、トントンタン。
「Yeah! Everybody Get Down!(みんな踊れ!)
大展開してるぜバトルフィールド!
音が聞こえるこの空間がお前の墓場、ジエンド!」
MCダルマのラップを受けて地面からシャボン玉のようにふあふあした物体が浮き上がり、針のように形を変えて、棍棒を振り回す大男に向かって放たれた。
大男はその尖ったシャボン玉を棍棒で叩くと爆破した。しかし、それでも男の突進は止まらない。
「ちっ、第一節不発かよ」
「貴様の攻撃など屁でもないわぁ!」
もう片方のモヒカン頭の男はアーサーの方へ突進を始める。そして、アーサーも剣を振りかぶって大男の棍棒と剣を交えた。
「へへへ、俺は第一兵団団長だぜ。そこらへんの雑魚に負けるわけいかないだろ」
アーサーはモヒカン頭の男が振った棍棒を上手くいなしてからみぞおちに蹴りを入れた。男は膝をついて地面に手をつく。
アーサーとMCダルマは背中を合わせた。
「鈍ったか? ダルマ?」
「まさか、ちょっと遊んだだけだぜ」
MCダルマはマイクを天に向かって投げた、そして一回転ターンしてノールックでマイクをキャッチする。MCダルマは「第二節俺のターン」と言って、マイクに口を近づけた。
「Hey! You!
綺麗なスキンヘッド! 光るぜツルピカ頭皮!
でも残念! お前が接近してきてわかった、ニキビがあるぜ! 知らんぷりしてたのは現実逃避!」
地面から出てくるシャボン玉はまた鋭利な形になった。今度はさっきよりも大きい。
「お前こそ居たくねぇだろ! こんな国!
まだまだ人生わけぇのに!
なっちまうぜ、ニキビがどんどん増えて顔面化け物に!」
スキンヘッド頭の男は体に電撃が走ったように驚いた表情して、今度は弱々しそうに顔の頬の辺りを静かに抑え始めた。ちょうどニキビができてるところである。
シャボン玉の形はどんどん大きくなり、鋭利になり、スキンヘッド男めがけて放たれた。大爆発して、スキンヘッド男は棍棒でガードしたが、粉々になった。この大爆発で大きな体を持つスキンヘッドの男は爆風で吹き飛ばされて強く体を岩に打ちつけた。そして、気絶した。
「致命傷は避けてやった。お肌ケアしてから出直してきな。栄養あるものを食べると良いぜ」
「でた! ダルマのコンプレックスディス」
アーサーはクスリと笑った。
そして、DJカゲはほっと一息ついて演奏をやめて、二つに折りたためる機材をしまった。
「アーサー今度はお前の番だぜ!」
「オッケー!」
蹴りを入れられたもう一人のモヒカンの男はすでに立ち上がっており、首を左右に振ってゴキゴキと音を鳴らした。
「何人の上に立ってると思う?」
アーサーはもう片方のモヒカンの男に問うた。
「あ?」
モヒカンの男は興味なさそうに吐き捨てるように返事した。
「俺はフォンツ王国の兵士何人の上に立っていると思ってるかって聞いてんだよ」
「知るかそんなもん」
「百五十人だ。俺は百五十人の上にいる」
「だからなんだってんだよ!」
モヒカンの男はアーサーめがけて走ってくる。そして、モヒカンの男の中ではアーサーを確実に捉えて棍棒を叩いた。はずだった。
残っていたのはアーサーの残像だった。
「え?」
それだけではなかった。モヒカンの男は思わず言葉をこぼした。
「あああああああああああああああああああああああぅ」
モヒカンの男の両腕は一刀両断されていたのである。
「電光石火のアーサー。スピードじゃこいつには敵わなねぇよ。フォンツ王国最強剣士だぜ」
無くなった腕を交互に見るモヒカンの男にゆっくりと近づくアーサー。
モヒカンの男は地面に両膝をついて後ずさるが、モヒカンの男は後方は瓦礫の壁がある。
ついに、モヒカンの男は瓦礫の壁に背をつけた。そして、アーサーはモヒカン男の顔の真横に足を踏み出して、剣を瓦礫の壁に突き刺した。モヒカン男を見下したような姿勢になり言った。
「降参するか?」
「は、はい」
モヒカンの男は涙ながらにそう言った。そして、両腕から多量に出血して気を失ってしまった。
アーサーは剣を引き抜いて肩で担ぐ。
「なんで勝てるわけないのに挑んでくるかなぁ。なあ、ダルマ」
MCダルマは指輪だらけの手を上に向けて戯けたような表情で肩をすくめる。
「アーサー団長、食料が奪われました!」
魔女討伐隊の兵士がアーサーに言った。
「あ、ちくしょう! どさくさに紛れて食料盗みやがって」
「へへへ、まともに戦うわけなかろう。バカめ!」
そう言ったのは髭面の中年太りした五十代くらいの男だった。その男は食料の入った袋を抱えて走り、その後方を矢を放った男も続いて走って瓦礫の向こう側に逃げていく。
MCダルマとアーサーからは距離があったため、近くにいたレオンが二人を追った。他の兵士もレオンに続いて二人を追っていく。その後をルワンナも追っていく。
「か、返してください僕たちの食料」
「返すわけないだろバカヤロー。おい、こいつをとっとと殺しちまえ、一人ならなんとかなるだろう」
そう言ったのは五十代くらいの男性だった。その男性が弓を打った男性に向かって指示を出した。
「はい」
男は弓に矢を装填し、照準をレオンに合わせた。
レオンは腰の剣を抜いて五十代の男めがけて振り下ろしたがあっけなくかわされ、腹を蹴られた。しりもちをついたレオンは落とした剣を拾おうとした時だった。
「構え! 打て!」
レオンの後ろから声が聞こえてレオンの両頬のすぐ横を矢が二本通過した。
二本とも五十代の男、矢を放とうとした男の心臓にそのまま入った。二人は矢の衝撃で後ろに倒れる。
「え?」
レオンは後ろを振り返る。
「レオン王子、怪我はありませんか」
魔女討伐隊の兵士が当然のことのようにレオンにそう言った。
レオンの目の前には死体が二体存在する。
「ちょっと待ってください。この人たち死んでしまったんですか」
「はい、そうですよ」
魔女討伐隊の兵士はまた当然のことのように返事をした。




