決着
トントンタン。
「Hey! Hey! 悔しかったらもっとCome On!(来いよ)」
「謝れ王子への暴言!
お前が言ったこと全て全言!
王子は誰もが知るさわやか好青年!
困ったら国あげて全力で助けるぜ、これ宣言!」
MCダルマはもう一度ふてぶてしくアーサーを見下すように少しのけぞった姿勢になる。
「心が乱れてるぜ剣士の新人ラッパー!
俺と戦うには魂が足りてねぇぜ、やっぱ!
暴言撤回?
笑わせんな!
暴言上等、それがラップ!
魂こもったこれがリリック!」
さらにMCダルマは畳み掛けるようにラップを放ち始めた。
「音の花は正直、今赤を好きなる!
アーサーお前にはやっぱ足りねぇよ技術!
音の花、魂揺さぶるリリック!
それが俺、MCダルマが繰り出すトリック!」
音の花は真っ赤に染まった。カプセルが割れて赤い綺麗な大きな花を咲かせた。
ここで勝負がついてDJカゲも機材から手を離して音が止んだ。
その時だった、MCダルマは台の上をゆっくりと歩きながら聴衆たちを一人一人指差すような動作をした。それはソウルメイト、魔女討伐隊関係なくMCダルマは指差した。
「今日会場に来てくれてみんな…」
そして、拳と拳を突きわせて、
「マジ、感謝してる。俺たちの魂のぶつかり合いを届けられてマジ満足」
MCダルマは目を瞑ってすーっと息を吸ってから一人のことを見た。
「なあ、本音を見せてくれないか王子」
アーサーはMCダルマを指差して言った。
「お前、俺がさっさと負けることを見込んでわざとこの戦いを引き受けたわけか」
MCダルマは気だるそうに小指で耳の穴を穿りながら言った。
「ああ、お前がラップで俺に勝てるわけがない。そんなことは勝負する前からわかってんだよ。お前なんかさっさと倒して本番はここからってことだ」
そして、MCダルマはアーサーからマイクを取り上げて、レオンに差し出したがアーサーがそれを阻止しようとした。
「レオン様、もうダルマのことはあきらめましょう。レオン様がわざわざ戦う必要はありません。戦力なら他の国に行けばきっといい人材が見つかるはずです!」
「ノンノンノン! 甘やかしちゃいけねぇよアーサー」とMCダルマは口の前で人差し指を左右に振る。
レオンは差し出されたマイクを前に俯き加減で考え込んでいた。そして、後方からその姿をルワンナもタブ爺も見つめていた。
レオンはゆっくりと視線を上げた。台の下から見るMCダルマはとても大きくて威圧感に溢れていた。そして、照明が眩しくMCダルマを照らし出す。
それでもレオンはマイクを受け取った。そして、もう片方の手を台に乗せてジャンプして台に乗り込んだ。
「…レオン王子」
アーサーはそう言葉をこぼすように言った。
「これが王子の意志だ。退場しろアーサー」
アーサーは静かに台を降りて魔女討伐隊がいる集団の一部となった。
「Hey! Hey! Hey!
新しい挑戦者だぜ! みんな歓迎しろ!」
「ワァー!」
会場全体が歓声に包まれた。敵味方関係なくこの空間にいるすべての人間がレオンの登場を歓迎していた。
DJカゲもまた長髪を上下に揺らし始めた。また、機材をスクラッチするような動作をしたり近くにあるスピーカーから爆音で音楽が流れ始めた。
トントンタン! トントンタン! トントンタン!。
「Yeah! 王子! 待ってたぜ! 上がるの!
このバトルフィールド!」
MCダルマは両手を広げて歓迎しているような身振り手振りで表現していた。
そして、もう一度カプセルに入った音の花をMCダルマとレオンの真ん中あたりにMCダルマは投げ込んだ。再び白い花の状態の音の花が二人の間で魂の叫びを待っている。
「ルールは同じだ。音の花が赤色に染まれば俺の勝ち、青色に染まればお前の勝ち」
トントンタン! トントンタン! トントンタン!。
「まずは俺のターン!
Hey! よく来た問題児!
俺のこの眼で確かめてやるぜジャッジ!」
レオンはマイクを両手で握りしめる。目を瞑って息を吐いてマイクに顔を近づけてそして、口を開いた。
「僕はフォンツ王国の王子!
民のために戦う戦士!
この戦い僕は絶対勝つ!
負けるわけにはいかないそして、みんなで勝利を分つ!」
レオンの音程はかなりズレれていた、音に乗ってラップを放っていたアーサーとは逆に音程は無視して棒読みのような言い方でラップを放っていた。
「いいねいいね! 初心者歓迎!
さっき質問した意味わかるかな?
最後に笑ったのはいつか?
お前から感じる負のオーラ!
すでに理解してくれていたら全部オーライ!」
「……
……」
レオンはマイクを持って口を閉ざした。
トントンタン! トントンタン! トントンタン!。
DJカゲが出す音だけが会場内の音を満たしていく。
トントンタン! トントンタン! トントンタン!。
「おいおい、語らなきゃわからないぜ。魂、魂」
MCダルマはラップを言うことを一旦やめて親指で胸を指しながらそのままの言葉でレオンにそうしゃべった。
レオンは俯く。しかし、MCダルマは会場を煽る。
「黙ってないで出ておいで!
お前の化け物見てみたいぜ!
腹に抱えてんだろでっけぇの!
ウェーイ! 見せてみろってぇの!」
レオンはマイクを強く握りしめた。緊張して乾く唇を舌で一度舐めて潤わせる。そして、キッとMCダルマを睨みつけた。
「お前に…お前に…」
「お〜ま〜え〜に〜?」
さらに煽るMCダルマ。
「わかるかよ僕の苦しみ!
生きてるだけで襲いかかる不安の波!」
レオンは叫ぶようにラップを放ったそして、息継ぎをしてさらに続けた。
「毎夜毎夜誰かが耳元で囁く俺に!
負の感情が心を埋め尽くす、すでに!
コントロールできねぇんだよもう! 僕に!」
レオンは捲し立てるように早口でラップを放った。汗も唾も飛ばしてレオンは心の思いをラップに乗せて放った。
そして、音の花は青色に染まりカプセルが弾けて割れた。
その勢いにMCダルマは唖然としていたが、それだけでは止まらなかった。
「ワオ! それがお前の本性!
これってかなり問題児でしょう!
ってか…」
MCダルマは驚きのあまり言葉を詰まらせた。そして、レオンのさらに上を見ながらラップを続けた。
「ってか、これがお前の本当の正体参上!
でっけぇ骸骨登場!
伝わってくる相当な負の感情!
どおりで共鳴しないはずだぜソウル!」
レオンの背中から紫色の炎に包まれた三メートル近くある大きさの骸骨が顔を出していた。骸骨の影にMCダルマはすっぽりと入った。




