MCダルマ&DJカゲ
「ふーん」
MCダルマは退屈そうに返事をすると自分の前に並ぶ三十名を一瞥した。
「で、何をおっ始めようってんだ?」
アーサーはニヤリと笑みを浮かべて言った。
「魔女を討伐する」
「ほう、どういう経緯だ?」
アーサーはレオンの両肩を持って自分の前に差し出した。
「うちの国の王子が魔女の呪いにかけられてしまったらしくてそれを解く旅をしている。そこで、お前の力を借りたいってわけさ」
「魔女ねぇ、またどデカい案件だぜ」
MCダルマはガハハハと笑い声を上げながらそう言った。MCダルマの笑った時に見える歯は全て金歯だった。そして、笑い終えるとふーと息を吐いた。
「旅ってのは音楽と一緒だ」
MCダルマは拳を胸に当てた。
「ソウルとソウルの共鳴。波長が合うやつとじゃねぇと旅は出来ねぇ」
「波長? 俺ら昔一緒に旅した仲だろ? 波長はバッチリ合うじゃねぇか」
MCダルマは前屈みになり顔の前で両手の指の腹と腹をくっつけてゆっくりと首を横に振りながら言った。
「お前じゃねぇ」
MCダルマはレオンの方を向いた。そして、じーっとまん丸の瞳で見てから言った。
「そこのお前、なんか腹に一物抱えてる感じ? 表情? 仕草? 全てが気に入らねぇ」
「待て! レオン王子はそんな人じゃない。王子は好青年で優しくて…」
アーサーが言い返してる時、レオンは手で制してアーサーを止めた。
「いいよ、アーサー」
「おい、その王子とやらに聞く」
MCダルマは椅子からゆっくりと立ち上がり、レオンの前に歩を進めた。ふてぶてしく腕を組んで仁王立ちしてレオンを見下した。そして、レオンの胸に人差し指をついて言った。
「お前最後に笑ったのいつだよ?」
レオンは俯いて少し考えていた。
「……」
「おいダルマ! 最後に笑ったのなんて関係ねぇだろ」
MCダルマは呆れた顔をしながら首を何度も横に振った。
「わかってねぇな。アーサー」
MCダルマはポケットからマイクを二本取り出し、一本は自分が持ち、もう一本をレオンに差し出してきた。
「マイクを持て」
レオンがマイクを持とうとしたが、
「レオン様が相手をするまでもありません。俺がやります」
アーサーがマイクを横取りした。
「まあお前でもいいが、俺にラップで勝てるわけないだろ」
「やってみなきゃわかんねぇだろ?」
「わかった。お前でもいい。ラップバトルでお前が勝ったら俺も旅に行ってやるよ」
MCダルマは家の使用人に「準備しろ」と伝えると使用人はちょうど四人くらいが立てそうな幅の円形の台を持ってきた。そして、大広間の後方のドアが開いてぞろぞろとアーサーたちと同数の三十名ほど人物が出てきた。
MCダルマはこの人物たちを「ソウルメイト」と呼んでおり同じ豪邸で共に住んでいる人たちだと説明した。
使用人によって会場の設備が完了した。大広間にはMCダルマが座っていた椅子は撤去され、中央に円形の台が置かれその上にアーサーとMCダルマが立っている。そして、そのほかの人物たちはその円形の台を囲み、二人を見上げるような形で立っている。アーサーが立つ後方には魔女討伐隊の三十名が、MCダルマが立つ後方にはソウルメイト三十名がそれぞれ二人に視線を向けていた。
そして、円形に台の横に一箇所特別にデスクが用意されており、そこにはDJカゲがさまざまなキーボードが取り付けられた機材やスピーカーの中に囲まれていて、顔ぐらいの大きさのヘッドホンを装着して待機している。
「音の花だ」
そう言って、MCダルマはカプセルに入った白色の一輪の花をアーサーに向かって投げた。カプセルは魔法か何かの力で宙に浮いた状態で存在していた。
「ルールは単純だ。音の花は魂のこもったラップを聞くとその色に染まる。今は白だが俺のラップの魂が最高にこもっていれば赤色に、お前のラップの魂がこもってれば青色に染まる。このカプセルとマイクは繋がっている。どちらが魂のこもったラップでこの花を自分色に染めるか勝負しようってことだ」
「いいね。ルールは単純の方が好きだぜ」
「Are You Ready? (準備はできた?)」
アーサーが頷くとMCダルマが指をパチンと鳴らした。
トントンタン、トントンタン、トントンタン。と規則正しいリズムの音がDJカゲを囲んでいるスピーカーから発せられていた。
DJカゲは大きく頭を上下に揺らして長髪が豪快に揺れている。そして、何かをスクラッチするような動作をしている、時々キーボードに何かを打ち込んでスピーカーから発せられる音が少し変わったりする。
MCダルマはマイクを上に投げて宙で一回転させてマイクを掴み、DJカゲが奏でるメロディに身を委ねるようにして肩でリズムを取ってからスーッと息を吸ってから言った。
トントンタン。
「Hey! Yo! まずは自己紹介! 俺の名前はMCダルマ!
みんな聞いとけ届けるぜ俺のカルマ!
俺は世界が認める唯一無二のラッパー!
聞いてやるお前の気持ち、かかってこいよ我が友アーサー!
Hey Boom!」
MCダルマは腕を組んで仁王立ちしてアーサーを見下すような態度を取った。すると、MCダルマの後方のソウルメイトたちは湧きあがった。
アーサーも負けじとマイクを持って口を開く。
「Yeah! 歓迎するぜお前のソウル!
魂込めるぜ受け取れ俺のボール!
俺の名前はアーサー!
フォンツ王国代表のスーパー剣士
誰もが認める最強戦士
けど…」
アーサーは一度マイクから口を外して再びマイクを口の近くに持って行った。
「けど、まだ足りねぇぜ王子助ける最強戦力!
マジでさっさと来いや俺らのところ!」
アーサーの声が少しうわずったが、後方の魔女討伐隊のチームはアーサーのラップに湧いた。
トントンタン。
音の花に変化まだなかった。
MCダルマはアーサーのことを力強く何度も指差して言い始めた。
「ディスディスディスディスディスディス
これからディスるぜ! メーン!
Hey! D! J! Turn it up!(DJ音上げて!)
久しぶりに会ったと思ったら、何?
クソガキのお子守りで魔女狩り?
行くわけねぇだろそこのクソガキ!
なんか気味悪いぜ逸物抱えてるぜ絶ってぇ腹に!」
MCダルマは後方にいるソウルメイトたち目掛けて両手を下から上へ激しく持ち上げるポーズを取って何度も観客たちを煽った。
音の花が少し赤みがかり始めた。MCダルマのラップが音の花に魂を吹き込んでいる証拠である。




