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白竜と戦闘

 私は、それを知っている。

 かつてヴァナリガルをゲームとして遊んでいた頃。それは、有名なボスモンスターの一体だった。

 序盤から挑めるが、ステータスはストーリー終盤のモンスターと遜色ないという、一種のチャレンジボスだ。

 絡め手やステージギミックがない代わりに、ひたすら基礎能力で殴ってくるボスだったのだが、ゲームのサービス初期は如何にしてこいつを倒すか、だれが真っ先に倒せるかという競争があり、ゲーム最初期を盛り上げた要素と言えるだろう。

 そして、サービス開始から三か月ほどで、とある課金プレイヤーがとうとうそのモンスターを倒した。

 ここからは噂でしか知らないが、その最初にボスを倒したプレイヤーが報酬としてもらえたのは、使うのにレベル制限がついた召喚アイテムだったという。

 そして、その召喚アイテムは、そのボスモンスターを召喚できるというものであったとか。

 つまり、今目の前にいる、この白き巨竜は、おそらく。

 私が最初期に何度も挑んでは殺されてきた、あの竜。

 白竜レディオンに違いないのだ!


「ゴォアアアアアアア!」

「っまず!アンナさん!クロウさん!」


 容赦なくブレスを放ってきたレディオンからアンナさんとクロウさんを守るべく、二人を掴んで跳躍する。

 

「ぐぇ!」

「きゃ!」


 二人は一瞬のことに目を白黒しつつ、私に抱えられて少し呻く。

 

「すいません、ちょっと飛ばします!」

「飛ばすってお前……って、ぉおおおおお!?」

「うわわ、わわわ!?」


 全速力で白竜レディオンから逃げるように走る。

 正直言って、レディオンに対して勝つことは出来る……と思う。伊達にレベルカンストしてないし、所詮はストーリー終盤のステータスで、裏ダンジョンとか攻略した自分の方が数値的には強い。

 ただし、それは周辺の被害を気にしないで戦った場合だ。

 ここで戦えば、もしやするとコートロルムの町を巻き込んでしまうかもしれなかった。

 故に、人気のない場所まで跳躍を繰り返した。


「ここなら……大丈夫ですかね」

「うぉ、おげぇ……お前、もうちょっと気づかいをだな……」

「うう……世界がぐるぐるする……」


 周辺に何もない野原まで移動すると、二人を放す。

 二人とも体調を悪そうにしていたが、そこはちょっと許して欲しい。


「二人とも、ここからなるべく離れてください。私はあの竜をぶっ倒してきますんで」

「展開が早くてついていけねえが……確かに、あの竜はやばそうだ。だが、勝てんのか?」

「雪辱戦ならば何回もしましたよ、ええ。装備がないのが不安ですが、あいつくらいなら勝てます」

「……分かりました。我々は邪魔にならないよう、離れた場所へ移動します。ご武運を」


 そう言って二人と別れ、私は白竜レディオンを待ち受ける。

 そうして、そう時間が経たないうちに、レディオンは飛んできた。


「グルルルル……」


 まるで決闘を始めるかの様に、私たちは対峙した。

 足にはちきれんばかりの力を貯め、私は相手が動くのを待つ。

 レディオンとは何度も戦ってきた。セオリー通りならば、こいつはブレス直後の隙を叩くのが基本だ。

 どちらが先に動くのか、私たちは互いに待って。

 瞬間、弾けるように同時に動いた。


「ゴアァアアア!」

「それは知ってる!」


 横薙ぎのブレスを跳躍して躱し、空中を蹴り一気に距離を詰めてかかと落としを食らわせる。


「グゥッ!」


 地面にめり込ませて蹴り砕こうとしたが、レディオンは口に貯めたブレスを、何を思ったか自分の口内で爆発させ、自爆して無理やり起き上がってきた。


「ちょ、それは知らない!」

「グゥオオオオ!」


 再び跳躍して距離をとろうとするが、それが悪手だった。

 レディオンは魔力を込めた竜翼の風を私にぶつけ、吹き飛ばした。


「ごふぁっ!?」


 いた……いは痛いが、大したことはない!

 だが、吹き飛ばされた後にレディオンから目を離したことが問題だった。

 

「ゴォオオオオ!」


 吹き飛ばした私に向かって、火球のブレスの滅多打ち。

 明らかにゲーム時代にはしてこなかった行動パターンだ。

 こいつ、明らかに戦いなれている!


「お、おぉおおおお!?」


 転がるように移動しながらなんとか火球をよける。

 ズドォン!と音を立てて地面を消し飛ばすブレスは、自分でも当たれば痛いで済まないだろう。

 よけながらレディオンが何処にいるのか、と目を向ければ、奴は空から火球を連打していた。


「く、っそー!ゲーム時代はそんなに連打できなかった癖に!」


 いや、あるいはゲームバランス的にそうしなかっただけか。

 改めて、これが現実なのだと感じさせる。

 決まり切った行動パターンなどない。ならば、此処から先はゲーム時代のことなど一旦忘れて、あいつをぶん殴るのに集中しよう。


「ほっ、ほっ、ほっと!」

「ゴォアアア!」


 この体の能力であれば、空気を蹴ることさえできる。

 それを駆使してレディオンに近づけば、レディオンはそれを阻むかの様に再び竜翼で風を巻き起こした。


「不意打ちじゃなけりゃ、二度も同じ手にかかるかっての!」


 それを身体能力で強引に突破し、レディオンの脳天をぶん殴る。


「ゴギャァアアア!?」


 大地に叩きつけられるレディオン。

 私はそれを追撃するため、また空を蹴って。


「これで、終わり───」


 そう思いとどめを刺したと思った瞬間。

 レディオンから発せられた何かによって、私は吹き飛ばされた。


「ごはっ───!?」


 光。

 何かの光によって、私は体を焼かれた。

 それは明らかに、吸血鬼の弱点である聖属性の光だった。

 酷い痛み。全身が燃える様だ。

 けれど、立ち上がらなければ。今のがなんなのかはわからないが、レディオンも虫の息のはず。奴を倒してからゆっくり回復すれば───。


「グゥルルルル……」


 そこには、先ほどまでの傷が完全に治ったレディオンがいた。

 それを見て、気付く。今のはボスによくある第二形態移行時の復活モーションだ。

 だが、レディオンにそんなものがあったとは一切知らないし、聞いたこともない。

 ゲーム時代と違うとはいえ、変わり過ぎじゃないか?

 痛む体をなんとか起き上がらせるが、全身の痛みが動きを阻害させる。


「ゴォア!」

「ぐぁ、っく……!」


 その隙をつかれレディオンの爪に取り押さえられる。

 痛い、痛い、とても痛い。けれど動かなければやられる。

 どうにかして爪をどかそうとするが、痛みで力が入りきらない。

 くそ、これだから現実は……!

 ああ、レディオンがブレスを吐こうとしているのが見える。今の体力でも二、三発は持つだろうが、それだけだ。

 痛みに耐えきれず力尽きるのと、どちらが早いかというだけ。

 ちくしょう、こんなところで───

『死にたくない?』


 頭の中に、声が響いた。

 酷く聞き覚えのある様な、それでいて初めて聞く声。

 誰、という間もなく自分はそれに言葉を返した。


(死にたく、ない……!)

『そう。じゃ、体借りるわよ』


 言うや否や、私の視点は切り替わった。

 今までの主観の視点から、自身の背後から見ているような三人称視点へ。


「何汚い爪押し付けてんのよ。ぶっ飛ばす」


 メリア……自身の体からそんな言葉が飛び出すと同時、レディオンが赤いオーラを纏った腕の一撃によって上空に吹き飛ばされる。

 

「良く見てなさい。ああいうデカ物は、こうすりゃいいのよ」


 そう言うとメリアは赤い霧を周囲に生み出し、上空のレディオンに放つ。


「"赤い霧の惨劇"」


 それは。ゲーム時代によく使っていたスキルの名前だった。

 自身のHPを減少させ、相手のHPをドレインする霧を発生させるスキル。

 赤い霧はレディオンにまとわりつくと、体内に浸透し。次の瞬間、レディオンの体中から血が吹き出た。


「ゴギャァアアアア!?!?!?」

「あん?まだ生きてんの?案外タフね。じゃあ、これ」


 レディオンから吹き出た血が、雨の様に地上に振ってくる。

 その血の一つ一つが、球状になり、他の血と繋がって無数の槍を形成した。


「"慈悲なき血槍"」


 無数の槍は勢いよくレディオンに飛んでいき、レディオンの体を貫通していった。

 どしん、と地上にレディオンが落ちる頃には、レディオンは無数の肉片と化していた。


「はい、終わり終わり。私はまた寝るから、あんな雑魚相手に呼ばないでよね」


 そこで視点はまた変わり、自分はメリアの体に戻った。


「……た、助かった……けど、何だったんだ?一体」


 先程の声が返事をしないか、脳内で何度か呼びかけたが、一向に答えは帰ってこなかった。


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