第四話【進化】
西暦2053年6月15日
東京第三区画
雨の中。
俺と父は向き合っていた。
正確には。
父の身体を使った存在と。
「COLONY TYPE-01」
通信越しに千尋の声が聞こえる。
「レン……気をつけて」
「それは、あなたのお父さんである前に」
「MARSの進化個体よ」
分かっている。
頭では理解している。
目の前にいるものは、六年前に父を奪った存在。
でも。
声が同じだった。
目が同じだった。
「レン……」
怪物の口から、父の声が漏れる。
「俺を……殺せ」
俺は息を止める。
「父さん……?」
黒い粒子が身体中を流れる。
その奥で、レオンの意識が抵抗している。
「こいつは……俺の身体を使っている」
「完全に消える前に……」
「終わらせてくれ」
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西暦2048年5月10日
対MARS研究施設
世界はまだ、MARSの本当の恐ろしさを理解していなかった。
最初の感染者。
レオン・ハワード。
彼は普通の感染者とは違った。
感染後も人格を維持していた。
会話ができた。
記憶が残っていた。
研究者たちは、それを奇跡と呼んだ。
しかし。
千尋だけは気づいていた。
「これは奇跡じゃない」
研究データを見つめる。
「MARSが、人間を理解し始めている」
MARSはただ宿主を壊しているのではない。
学習していた。
人間という生命を。
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西暦2053年6月15日
東京第三区画
COLONY TYPE-01が動く。
巨大な腕が振り下ろされる。
俺はGAIA装甲で受け止める。
衝撃。
身体が数十メートル吹き飛ぶ。
「……強い」
今まで戦ってきた感染体とは別次元だった。
通常個体。
進化個体。
その差は明確だった。
MARSは時間と共に進化している。
そして。
俺の中のGAIAも反応している。
『危険』
GAIAの意思が伝わる。
『進化』
奴らは同じ生命。
だから分かる。
目の前のMARSが、どれほど異常な存在なのか。
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「レン」
父の声。
「聞いてくれ」
怪物の動きが一瞬止まる。
「MARSは地球を奪うためだけに来たんじゃない」
俺は顔を上げる。
「何を言っている?」
「奴らは……探している」
「何を?」
父の声が震える。
「同じ存在を」
その瞬間。
黒い粒子が周囲に広がる。
MARSが俺を見る。
『GAIA』
『なぜ存在する』
『なぜ我々と違う』
複数の声が重なる。
「GAIAを知っているのか?」
俺が問う。
MARSは答えた。
『我々は同じ場所から来た』
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西暦2053年6月15日
対MARS特殊研究施設
千尋はその通信を聞いていた。
そして。
一つの可能性に気づく。
「……そんな」
研究データを開く。
GAIA。
地球由来だと思われていた存在。
しかし。
過去の解析記録。
火星サンプル。
GAIAとMARS。
二つの生命構造。
酷似している。
「もしかして……」
千尋は呟く。
「GAIAも……」
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東京第三区画
俺は父を見る。
「父さん」
「まだ戦えるか?」
レオンの目がわずかに動く。
「……ああ」
「最後くらい」
「父親らしいことをさせてくれ」
その瞬間。
父の身体を覆うMARSが暴走する。
COLONY TYPE-01。
完全進化開始。
「レン!」
千尋の叫び。
「離れて!」
だが。
俺は逃げなかった。
父を救うため。
そして。
この戦いの真実を知るため。
GAIAを解放する。
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白銀の光。
黒い侵食。
二つの異星生命が激突する。
人類とMARSの戦いは。
ただの侵略戦争ではなかった。
これは。
同じ起源を持つ生命同士の戦いだった。
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─COLONY─




